不遇相伝術式で目指せアッチ側!   作:ズズツカイチェン

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天気が良かったので謝罪として明日も投稿します。


目指せ笑み!

 

 最近、ミラクルアイドル田中中田 凛月(たなかなかた りんつ)君である、俺の通う幼稚園で失踪者が4人ほど出た。

 表向きには現在も隈無く、捜査中だそうだ。

 

 そんな時に幼稚園に子供を預けられるはずがなく、俺が常に家にいるため両親の機嫌がどことなく悪い気がする。

 

 それはそれとして、失踪事件のことが普通に気になったので人に視認されない蛇福(じゃふく)鋏兜(はさみかぶと)を向かわせたのだが、捜索している人達全員が明らかに自分達を視認できているそうで2匹とも驚いたそうだ。

 

 この異形達を見れるのって転生を経験した俺だけじゃないんだ。そう驚愕を隠せない。

 

 園内を調査している人達全員が異形の姿を視認可能と言うことは幼稚園に起きた失踪事件には、この異形たちのような存在が犯人である可能性は高いと思う。

 失踪したうちの一人に、あの偽物疑惑女児もいる。

 

 知り合いがいなくなってしまうのは見過ごせないし調査が終わって人が少なくなったタイミングでこっそり入り込もうと思う。

 

 まぁ正直な話をすると本気の本気を出す覚悟を決めたのに闘いの一つもしていないので体が疼いてしょうがないのだ。

 

 仮に見つかったらバケモノに連れてこられたとかテキトウなこと言えばいいしな!

 俺のような、ぷりぷりプリティーな3歳児の魅力で信じてしまうこと間違いなしだろう。そうと決まれば侵入の準備をしよう。

 

 エネルギーによる肉体の強化が侵入前にできるようになれば楽なんだけどな。

 これに関しては実際できるかどうかすらもわかっていない状況なのであまり期待できないんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うらろじに異形がいなかったな?どこいったんだろ。」

 

 結局異形の認識が可能な人たちの調査は一日経たずに終わったので、あまり待つことはなかった。

 

 幼稚園に向かう道中に裏路地を見てみたが珍しく異形がいなかったことに不思議に思いながら歩みを進め続けていると、ようやく目的地に到着することができた。

 目的地である俺の通う幼稚園は明かりがないため、全体的に色まで暗くなっているのが不気味な雰囲気を醸し出していた。

 

 因みに父親は仕事から帰って来て、ご飯を食べながら文句を言って母と喧嘩した後に、疲れたのかすぐに自室へと眠りに行った。そして母は夜遊びしに出掛けた。

 現在時刻は午後11時。母が帰って来るまでの約4時間が俺の不法侵入に許された時間である。

 

 遠くから観察した感じ見張りは、正面に長身で落ち着いた雰囲気の眼鏡を掛けた女性が一人のみ。

 正面突破が不可能ならば裏から入るだけの話だ。

 

「たのんだぞ。蛇福、鋏兜」

 

 見張りがおり正面突破が不可能、かと言って裏に回って俺1人で柵を越えるなんてことも無理だ。

 

 ならばどうするか?いるじゃないか、うちには空を飛べる子たちが!

 

「……さすがに俺をもって、とべないか」

 

 蛇福は腕に絡みついて、鋏兜には服の上から背中をがっしりと掴んでもらいながら、羽を動かしてもらったが一向に飛ぶ気配はない。

 

 まぁ良い、飛べなければ跳ぶだけだ。

 

「せーのっ!」

 

 大きく屈んでから足に力を入れて地を蹴った。

 2匹の異形のおかげで予想より大きく跳躍することができたが、それでもまだ柵を跳び越えることはできなさそうだ。

 

(このままだと、ぶつかる……!)

 

 そこで俺は足の裏からエネルギーを放出した。

 これが肉体の強化ができない事に文句を言いながらも腐らずに修行を続けた成果である、2段ジャンプだ。

 

 エネルギー放出の後押しもあり、俺は華麗に柵を跳び越えることができた。

 

 まるで俺は夜空に浮かぶ可愛い妖精さんだな!

 

 少し飛距離が足りなかったせいで足を引っ掛けて侵入と同時に転んだけどいいもん。

 蛇福と鋏兜が慰めてくれるからね。

 

 2匹に慰めてもらっていると、急にこっちに向かう足音が聞こえてきたので、幼い体を利用して遊具の陰に隠れた。

 

 まずったなぁ。見張りのお姉さんは園内を調査してる人と同じ格好をしている訳だし、その人たち同様に異形を視認できることは予想していたが、エネルギーも感知できるとは。

 しかし、よく考えてみれば異形の身体を構成してるのと同じエネルギーだし感知できて当然だったわ。

 

 お姉さんはあっちこっちとエネルギー源を探して、ゆっくりと動く。

 

 うわ〜。探し回ってるよ。こっちの方にまで来なないくれ〜。

 そんな俺の願いも虚しく、お姉さんが一歩ずつ確かに進んでいく。

 

 このままだと俺が見つかるのは容易に想像ができる。遂には俺が言い訳の内容を考え始めた、その時だった。

 

「ねぇ?あ そぼ?」

 

 姿は四足歩行のぶくぶくと肥えたトカゲ。ただしその目はまるで人間のもののようであり、口内にも人の歯が不気味に生えていた。

 だがもっとも注目すべき要素はその巨体である。

 その身の丈は横に3メートル、縦に1メートル程、それが突如お姉さんの背後に現れた。

 

 お姉さんは勢いよく後ろを振り向くと、冷や汗を流しながらも口を開いた。

 

「まずったね……さっきの呪力は君だったのかい。さて、私は闘うのは得意じゃないんだ。

あの子が来るまで……私は逃げ延びれるかな?」

 

 どうやらお姉さんは逃げに徹するらしい。まぁそりゃそうか。

 武器も持たない人間が勝てるような相手ではない。ただの3歳児なんて、以ての外だ。

 

 もっとも、俺はただの3歳児ではないんだけどね。

 さぁ、久々のしっかりとした闘いだ。楽しもう。

 

 空から暗い何かが園内を囲むのにも気付かずに俺は笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 車の中で一人の男が足を組んで運ばれていた。

 目的地は埼玉にある、園児が4人失踪した幼稚園。

 

 その失踪事件の手掛かりは何一つなく、一般人には視認することが極めて難しい”呪霊”と呼ばれる負のエネルギーの集合体である存在の仕業であることが予測された。

 そのため負のエネルギー、”呪力”が視認可能ではあるものの戦闘には長けていない”窓”と呼ばれる人員が調査を行った。

 

 しかし、その結果は何一つ得るものがなく終わった。

 

 呪力の痕跡である”残穢”の一つすら見つからず、もしかしたらこの事件は呪霊の仕業ではないのでは?と思われ始めた、そのとき一人の男に白羽が立った。

 その男こそが現在、車内にて長い足を組みながら運ばれている五条悟である。

 

 彼は六眼と呼ばれる特殊な瞳を持っている。

 その瞳の力は凄まじく、呪力を含む多くの情報を見ることができる上に原子レベルの緻密な呪力の操作をも可能とする。

 

 窓に視認できなかった残穢でもこの男なら或いは。そして残穢を視認することができなかったとしても、他の何かを見ることによって情報を掴めるかもしれない。

 そんな理由で五条悟が派遣されたのだ。

 

(傑が離反して、もう一年か……。まったく、時の流れっつーのは早くて困るよ)

 

 車内にて揺らされる五条悟が思い浮かべるは一年前に五条悟自らも属する呪術界から離反した、親友である夏油傑の姿。

 

 しかし、それは車を運転する窓である彼からすれば性格に難があると噂高い最強が黙っている、という状況が恐ろしすぎたのか、彼は唐突に謝罪の言葉を吐き出した。

 

「五条さん、申し訳ありません、こんな時間に。如何せん早急な解決が求められる案件でして……」

 

「ん?あー、問題ないよ……。あ?やってるな、既に始まってる」

 

「え?な、何が始まって……?」

 

 窓である彼が五条悟に質問を仕掛けたが「いいから急いで」と言われて車を少し加速させるだけの結果で終わってしまった。

 

「これ、呪霊と戦ってるのか。呪霊のレベルは準二級ってところかな?お、呪霊と戦ってる奴……呪力が多いな、俺より少し多いくらいか?」

 

「え”っ!?五条さんよりもですか!?」

 

 五条悟は最強として名が通っている。

 

 彼はあらゆる分野において天才と言われる程の才能の塊、呪力量も最強と呼ばれるに相応しい程度は有している。

 そのため、どこの術師かも知らない人間が、かの五条悟よりも多く呪力を保有しているとは到底信じ難い話であったのだ。

 

「まぁ、別に俺って呪力総量が桁違いに多いわけじゃないからなぁ。比べてみて、誤差に収まる範囲ではあるけど俺より呪力総量が多い連中は今までにもいたし、別に呪力総量を超えられたこと自体に大きな驚きはない」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「そうなの。お?こいつ呪力出力も優秀だな。まだまだこっちも伸び代ありそうだし、俺を上回るんじゃないか?これ。」

 

 どうやら呪力総量に引き続いて呪力出力すらも最強を上回る可能性を秘めているらしい。

 一つ思い浮かんだ説をないと思いつつも窓の彼は質問する。

 

「も、もしかして五条さんよりも強かったり……。します?」

 

 窓の彼が固唾を飲んで五条悟に問いかけた。

 

「ないね。まず術式を使う素振りがない。遠すぎてわかんないけど術式を持ってないんじゃない?もしくはないも同然の術式か。それに呪力操作が酷すぎる、最低限もできてないよ?これ」

 

 術式という特殊能力が使えないという弱点はあまりにも大きすぎる。

 五条悟のような強力な術式を持っている相手と比べればどっちが強いか明白に分かるほどに。

 

「呪力操作ができていないとなると呪術の教えを受けていない。十中八九、野良の術師ですかね?」

 

「まっそうかも……いや待って?呪力を放出してる。これ独学かな?ハハっ!やるな。呪力特性も優秀だ、侵食って感じかな?」

 

「……呪力の放出ってそんなに凄いんですか?」

 

 ただ呪力を放出するだけであるそれが、あの最強たる五条悟が褒めるほどの技術とは思えず、またもや窓の彼が疑問を問いかける。

 

「まぁね。まず呪力を体外に流すのは九割以上の術師ができるんだけどさ、それは物に呪力を込める場合の話なわけよ。呪力という負のエネルギーを空中に留めるイメージができる奴が意外と少ない上に、生半可な奴は体外に流し出せたとしてもすぐに霧散すんだよなぁ」

 

「そういえば呪力は臍から起点に全身に流すのが常識ですが、態々体外に流し出すイメージはあんまりしたことがないかもしれません」

 

「そ。んで、いざ放出!ってなったとしても呪力の圧縮に慣れてないと蠅縄を払うことすらできないレベルにしかなんないんだよね」

 

「蠅頭も払えないってめちゃくちゃ弱いじゃないですか。私が殴った方が強いレベルでは?」

 

「使い手の呪力総量と出力次第だけどね」

 

「因みにですが呪力ってどれくらい使うんですか?」

 

「そりゃあ、すぅんごい使うよ?出す威力によって違うけど、一級レベルの呪霊を1発で倒すなら、僕の場合でも呪力総量の半分ぐらいは必要かな」

 

「そ、そんなに!?」

 

「六眼込みで撃つなら1割ぐらいの消費だけで済むけどね。それでもコスパ悪すぎて使わないけど」

 

 ヘラヘラと笑う五条悟とは反対に窓の彼は真剣な面持ちで考えた末に、一つの結論を出す。

 

「もしかして今、呪霊と戦ってる人って負けてしまいませんか?」

 

「ワンチャン」

 

 深刻な雰囲気を纏う彼と反比例するように、あっけらかんとした態度で五条悟は答え、彼はそのあまりの軽さに数秒間だけ動きが止まる。

 

「……まずいですよ?!?!私と同じく補助監督の窓が向こうで一人待機しているんですよ!?急がないとその方も死んじゃうじゃないですか!」

 

「知ってるよ。だから俺は言ったろぉ?急げってさぁ」

 

「もっと緊張感を出して言って欲しかったです!!!」

 

 窓の彼が運転する車がもう一段階スピードを上げた。

 そんな焦る彼を尻目に五条悟は顎に手を添えて考え事を始める。

 

(呪霊だけだったんなら俺が一瞬で行って呪霊を払えば良かったし、そこに関しては然したる問題はない。肝心なのは呪霊と戦ってる奴が敵かどうかも不明ってことだ。

 

てか呪力による身体の強化が苦手ってレベルじゃねぇぞ、全く1ミリもできてない。それに時々呪力を纏って防御力はあげてるけど、その纏っている輪郭が小さすぎる。誘拐された子供が死の淵に瀕して呪力に目覚めた……とかかぁ?

 

いや、呪力による身体の強化と術式の使用を禁ずる縛りによって呪力感知を乱している、とかもあり得なくはない。でもそんな縛りで何するつもりなんだ?……目的はなんだ?まず突発的な任務だし俺が来ることを知ってるっつーことはない、となると目的は俺以外の何か……うーん、わっかんねぇ!)

 

 顎に手を添えて思考に耽っていた五条悟は考えても答えが出ないやつだとすぐに理解して考えるのをやめた。

 

「まぁどうせ、この目にその身体を映しちゃえば、だいたいのことはわかるんだ。今考えてもどうせ無駄……か」

 

 何かが起きる。そう予感を感じて五条悟は笑みを浮かべた。

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