世界再編 〜現代は異世界と混ざりそれでも進む〜   作:お粥のぶぶ漬け

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第11話:よそ者と、お節介な昼下がり

滝の音が轟く中流域。霧が晴れた一角で、蓮と紬は自分たち以外の「人間の声」を聞いた。

 

「おい、マジかよ……。この階層、広すぎんだろ。予備のポーションも底をついたぞ」

「だから言ったんだ。京都のダンジョンは、八百万の神々が魔改造してるからマップが当てにならないって」

 

 岩陰でへたり込んでいたのは、三人の若者たちだった。装備はそこそこ整っているが、どれも泥に汚れ、何より顔色が悪い。蓮たちが先ほど克服した「魔力酔い」に、完全にやられている様子だった。

 

「……あの、大丈夫ですか?」

 

 紬が盾を背負い直し、おずおずと声をかける。

 

「あ? ……なんだ、地元の新人か?」

 

 リーダー格の男が顔を上げた。彼は滋賀のナンバーが入ったプレートを装備に付けている。エリートというよりは、隣県から「京都のダンジョンは資源が旨い」という噂を聞きつけて遠征してきた、中堅の手前といった風情だ。

 

「滋賀から来たんだけどよ。保津峡を舐めてたわ。道は繋がってないし、魔力は妙に濃いし……。おまけに、さっき変なカニに襲われて食料袋を川に落としちまった」

 

 彼らのステータスをそれとなく確認すると、レベルは蓮たちより少し高い「3」から「5」あたり。だが、異世界のシステムをそのまま使っているせいか、この土地特有の「重い魔力」に対応できず、デバフのアイコンが点滅していた。

 

「……これ、使いますか?」

 

 蓮は、先ほど余分に作っておいた【岩魚の冷や汁】の残りを、清潔な竹筒に入れて差し出した。

 

「はぁ? 飯? ……おいおい、こんな場所で飯なんて食ってる余裕ねーよ。それよりポーション……」

 

 男が文句を言いかけたが、竹筒から漂う清涼な、そして食欲を猛烈にそそる出汁の香りに、言葉を飲み込んだ。

 

「……一口だけだぞ」

 

 半信半疑で彼らがそれを口にした瞬間、目が見開かれた。

 

「――っ!? なんだこれ、冷てぇのに体が熱くなる! 喉のイガイガが消えたぞ!」

「おい、魔力酔いのデバフが消えてる! 嘘だろ、ただの魚のスープだぞこれ!?」

 

 夢中で貪り食うよそ者の探索者たち。彼らのステータス画面で、赤く点滅していたデバフが次々と「浄化」の文字と共に消え去っていく。

 

『ガハハ! よそ者に俺様の恵みを分けるとは。蓮よ、お主も人が良いのう。……だが、礼にそやつらの持っている“珍しい種”でも貰っておけ』

「……種?」

 

 蓮が首を傾げると、腹を満たして人心地ついたリーダー格の男が、バツが悪そうに頭を掻きながら懐を探った。

 

「……助かったよ。京都の探索者はみんな、こんな高級な薬膳を持ち歩いてんのか? 礼になるかわからんが、滋賀の『琵琶湖ダンジョン』で拾った、鑑定不能の種だ。食料のお礼にやるよ」

 

【ログ:アイテム『古の淡水の種』を入手】

【神託:この種は、清らかな水場で育てれば、最高の“付け合わせ”になるだろう】

 

「……ありがとうございます。大事に育てます」

「おう。俺たちは一旦引き上げるわ。……地元の奴らがこんなに余裕なら、俺たちがここで稼ぐのはまだ早かったみたいだな」

 

 滋賀の探索者たちは、足取り軽くゲートの方へと戻っていった。

 彼らにとって、ダンジョンは「攻略対象」でしかない。だが、蓮たちにとっては、ここは「神様との遊び場」であり「巨大な台所」なのだ。その認識の差が、そのまま生存能力の差となって現れていた。

 

「霧島さん、私たち、少しずつですけど……この場所に馴染めてるんですね」

「ああ。……さて、貰った種を植えるのにちょうどいい場所、探しに行こうか」

 

 よそ者との接触で、自分たちの立ち位置を再確認した二人。

 保津峡のマップは、さらに少しずつ、鮮やかな色で埋まっていく。

 

 

【今回の成果】

• 交流: 滋賀の探索者パーティ(生存を確認)

• 新規アイテム: 『古の淡水の種』(栽培クエスト発生の予感)

• 霧島 蓮: レベル1.42(人助けによる「徳」の獲得)

• 佐伯 紬: レベル1.30(他人の評価を聞いて自信がついた)

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