世界再編 〜現代は異世界と混ざりそれでも進む〜   作:お粥のぶぶ漬け

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第12話:カニの恨みは食で晴らす

滋賀の探索者たちが言っていた「変なカニ」。

 蓮と紬は、貰った「種」を植えるのに適した場所を探しつつ、そのカニが出没したという下流の岩礁地帯へと戻ってきた。

 

「……あ、霧島さん! あそこに何かいます!」

 

 紬が指差した先。川底の岩と同化していた「岩」が、カサカサと不気味な速度で動き出した。

 【鉄槌のサワガニ(アイアン・クラブ)】。

 甲羅の直径が一メートル、巨大なハサミは軽自動車のドアすら引きちぎる凶悪な魔物だ。だが、そのハサミは滋賀の連中の「食料袋」を挟んだまま、器用に中身(乾パンや保存食)を咀嚼している。

 

「……なるほど。よそ者の食いもんを奪う、行儀の悪いカニか」

『蓮、あれは良いぞ。その甲羅の中には、魔力を凝縮した“カニ味噌”が詰まっておる。……ただし、あやつは異世界の“物理反射”の理を少し残しておるぞ』

「物理反射……叩けばこっちが痛いってことか。なら――」

 

 蓮は『打刀・改』を鞘に納め、代わりに**『神域の小出刃包丁』**を抜いた。

 刀のような「斬撃」は弾かれる。だが、この包丁が示す「光の糸」は、甲羅の合わせ目の、ほんの数ミリの隙間を指し示していた。

 

「佐伯さん、あいつの正面を頼む! 挟まれないようにだけ気をつけて!」

「はいっ! ……こっちですよ、お行儀の悪いカニさん!」

 

 紬が盾をガツンと岩に打ち鳴らし、挑発スキルを発動。

 カニが激昂し、巨大なハサミを振り上げる。その瞬間、蓮は霧に紛れ、カニの死角――甲羅の真後ろへと滑り込んだ。

 

「――いただきます」

 

 小出刃の先が、光の糸をなぞる。

 「刺す」のではなく、関節のネジを外すような繊細な一突き。

 カニの全身がビクンと跳ね、次の瞬間、複雑な構造だったはずの巨大な脚が、一斉にポロポロと外れ落ちた。

【ログ:鉄槌のサワガニを「即殺・解体」】

【スキル『神の肴』発動!】

【ドロップ:大蟹の脚(浜茹で済み)、濃厚カニ味噌ポーション】

 

「……よし。ハサミの中身、パンパンに詰まってそうだぞ」

「わぁ……! 霧島さん、これ、さっきの種を植えるお祝いにしましょう!」

 

 二人はカニの襲撃を退け、その場に湧き出ていた、神域の清らかな小川のほとりに「滋賀の種」を植えた。

 カニの殻を肥料にし、小出刃で整えた土に種を埋める。

 すると、植えたばかりの種から、淡い光を放つ**「わさび」**の芽が、異常な速度で顔を出した。

 

『ほう。琵琶湖の底に眠っていた“古の山葵(わさび)”か。カニの身に、これ以上の添え物はないのう』

 

 神様の満足げな声。

 保津峡のマップに、また一つ「蓮と紬の家庭菜園」という名の、神域の拠点が刻まれた。

 

 

【現在の状況】

• 拠点確保: 「保津峡・秘密の山葵田」をマップに登録。

• 霧島 蓮: レベル1.45(急所を見抜く「料理人の眼」が成長)

• 佐伯 紬: レベル1.35(カニの強打を耐え切り、耐久値が微増)

• 報酬: 最高のカニ身と、育ち始めた魔法のワサビ。

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