世界再編 〜現代は異世界と混ざりそれでも進む〜   作:お粥のぶぶ漬け

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第18話:紀州への路、あるいは神々の宴席

第一階層主「水龍の稚児」を完食し、清々しい朝日を浴びながら地上へ帰還した蓮と紬を待っていたのは、市役所の職員たちの驚愕の眼差しだけではなかった。蓮のスマホには、母・美津子からの「緊急」と銘打たれたメッセージが何通も届いていた。

 

『蓮、急な話なんだけど、和歌山のおじいちゃんの家(母方の実家)の周りに、新しいダンジョンが出たみたいでね。おじいちゃんが「裏山のミカンが魔物になって暴れとる!」って腰を抜かして大変なの。悪いけど、様子を見に行ってきてくれない?』

「……和歌山、か。スサノオ様が言ってた『海』の話と、妙にタイミングが合いすぎだな」

 

 蓮は苦笑しながら、隣で龍の身の余韻に浸っている紬を見た。

 

「佐伯さん、悪い。次は和歌山に遠征することになりそうだ。母方の実家が向こうでさ、ちょっとしたトラブルみたいなんだ」

「和歌山! 梅干しにミカン、それに……クエとかマグロとか、海の幸の宝庫じゃないですか! 行きます、どこまでもついて行きます!」

 

 紬の目は、すでに「まだ見ぬ食材」への期待でキラキラと輝いている。

 二人は一旦解散し、帰省と遠征を兼ねた準備に入ることにした。蓮は、神様から貰った『神域の砥石・鳴滝』で小出刃を研ぎ澄まし、和歌山の「荒ぶる海」の魔物に備えて、保津峡で得た素材をパッキングしていく。紀州の山と海が混ざり合う、新たな異界への旅路。それは、母方の血筋に眠る「何か」に触れる旅になる予感があった。

 

神域:丹波の奥座敷にて

 その頃、現世の人間には決して感知できない「狭間の空間」では、二人の神が対峙していた。

 一人は、蓮に小出刃を授けた丹波の地主神。狩衣を崩し、蓮から奉納された「岩魚の冷や汁」の残りを酒の肴に、上機嫌で杯を傾けている。

 そしてその正面には、荒々しい潮の香りを纏い、着流しを肌蹴た屈強な男――三貴神の一柱、スサノオがどっしりと座っていた。

 

「……おい、丹波。貴様の『御用聞き』、なかなか良い筋をしておるな。龍の稚児をあんなに綺麗に三枚に下ろすとは。我が領域の者共も、少しは見習わせたいものだ」

 

 スサノオは、蓮が調理した龍の身を一切まみ、豪快に口へ放り込む。

 

「ガハハ! 羨ましいか、スサノオ。あの蓮という小僧は、料理を『作業』ではなく『対話』だと思っておる。素材の命を繋ぐために包丁を振るう……その心根が、我ら八百万の性分に合うのだ」

「ふん、理屈はどうでもいい。だがな、和歌山の海は、異世界の連中が持ち込んだ“深淵の魔性”が混ざり合い、少々荒れておる。俺が手出しをすれば海が割れてしまうが、あの小僧なら……包丁一本で、その『荒ぶる魂』を鎮めてくれるかもしれん」

 

 スサノオは、手付けとして与えた『波紋の鑑定眼』の感触を遠隔で確かめるように目を細めた。

 

「和歌山は俺の縁(ゆかり)も深い地だ。もしあやつが、俺の期待を超える『一皿』を仕上げてみせたら……その時は、俺の秘蔵の“マグロ包丁”を預けても良いと思っている」

「ほう、あの神代の業物をか? それは蓮も、うかうか帰省もしていられんな」

 

 神々の笑い声が、保津峡の霧を揺らす。

 彼らにとって、この異世界との融合は「厄災」ではなく、新たなる「美味」と「才能」を見出すための壮大な遊戯に過ぎない。

 何も知らない蓮は、母の実家に送るための「亀岡の漬物」をリュックに詰めながら、和歌山の空の下に潜む、神話級の巨大な影に思いを馳せていた。

 

 

【現在の状況】

• 移動先: 和歌山県(母方の実家)

• 霧島 蓮: レベル1.65(和歌山遠征に向け、砥石で装備を強化中)

• 佐伯 紬: レベル1.58(「海」の魔物に対抗するため、盾に防水の加護を付与中)

• 神々の期待: スサノオが「マグロ包丁」を報酬として用意。

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