世界再編 〜現代は異世界と混ざりそれでも進む〜   作:お粥のぶぶ漬け

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第3話:亀岡の霧と、はじまりの認可

京都府亀岡市。かつて明智光秀が築いた城下町は、今や「日本最大級の霧の結界」に包まれたダンジョン都市へと変貌していた。

 この街を覆う深い霧は、地元の産土神(うぶすながみ)が異世界の魔力を「浄化」し、街を隠し守るために生み出した神域の証だ。

 十九ノ町にある市役所の分庁舎。その講堂は、熱気と独特の緊張感に包まれていた。

 今日、この場に集まったのは「18歳」を迎えた若者たち。数年前の『神魔習合』以降、日本政府と神社本庁が定めた**【探索者資格(D級氏子免許)】**の取得試験が行われるのだ。

 

「……はぁ、心臓に悪い」

 

 主人公・**霧島 蓮(きりしま れん)**は、パイプ椅子に座りながら自分のスマートフォンを見つめていた。画面には、役所の専用Wi-Fiを通じて「仮設ステータス・リンク」が強制インストールされている。

 

「静かに! これより、第142回・神託授与式、および適性検査を開始する」

 

 壇上に立ったのは、市役所の職員と、烏帽子を被った神職だ。

 この世界の「資格取得」は、筆記試験ではない。神々の管理下にあるシステムにアクセスし、その身に「加護」を宿す耐性があるかを、物理的に同期(シンクロ)させる儀式である。

 

「番号順に、壇上の鏡へスマホをかざしてください。異世界のシステムを、八百万の神々が『検品・認可』します」

 

 次々と若者たちが壇上へ上がり、巨大な「八咫鏡(やたのかがみ)」のレプリカに端末をかざしていく。

 成功すれば、画面に神紋と共にステータスが躍る。失敗すれば、ただの「非戦闘員」として日常を生きることになる。

 

「次、304番。霧島蓮くん」

 

 蓮は湿った手のひらをズボンで拭き、壇上へ上がった。

 鏡の前に立つと、異界の冷たい魔力が背筋を駆け抜け、直後に、それを包み込むような温かい、そして少し「やんちゃな」気配が頭の中に響いた。

 

『ほう。亀岡の霧育ちか。……よし、少し遊ばせてもらおう』

「えっ?」

 

 蓮が声を漏らした瞬間、スマホの画面が猛烈な勢いで発光した。

【システム・アップデート完了】

• 個体識別: 霧島 蓮(山城・丹波国縁)

• 基本ジョブ: 探索者(D級)

• 神性同期: 成功

• 追加オプション(魔改造):

• 固有加護:【霧の帳(とばり)】(丹波の霧を媒介に、敵の認識をバグらせる)

• ボーナス:【道案内(導きの烏)】(ダンジョン内での迷子防止・レアアイテム検知)

• 特記事項:【神酒の相性:特A】(お酒を捧げるとステータスが跳ね上がります)

 

「……なんだこれ、バグか?」

 

 蓮の画面には、通常の探索者には表示されない「筆文字のロゴ」と、何故か「酒」に関するステータス項目が追加されていた。

 

「おい、霧島。……お前、すごいな」

 

 隣の席の友人が、驚愕の表情で蓮の画面を覗き込む。

 

「それ、『産土神の直系加護』じゃないか。亀岡の神様に、えらく気に入られたもんだ」

 

 講堂の窓の外、霧の向こう側には、かつては山だった場所が変貌した「ダンジョン・保津川渓谷」が口を開けて待っている。

 

「資格取得、おめでとう。霧島くん」

 

 神職が、小さな御守り型のデバイスを蓮に手渡しながら、悪戯っぽく微笑んだ。

 

「君の力は、異世界の神様が作った『冷たいシステム』じゃない。この土地の神様が、君と一緒に遊びたがっている印だ。……さあ、初陣に行ってきなさい」

 

 蓮は御守りを握りしめた。

 18歳。人生の始まり。

 異世界の魔力を糧に、日本の神々が面白おかしく作り変えたこの「新しい世界」へ、蓮は最初の一歩を踏み出した。

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