世界再編 〜現代は異世界と混ざりそれでも進む〜   作:お粥のぶぶ漬け

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第6話:保津峡の夜と、初めての「外ご飯」

保津峡ダンジョンの第一階層、その突き当たりにある安全地帯(セーフティエリア)。そこは巨大な岩壁に囲まれ、地元の神々の力が強く働いているのか、魔物も近寄らない静かな場所だった。

 

「ふえぇ……もう、一歩も動けません……」

 

 紬は大きな盾を地面に放り出し、大の字になって寝転んだ。

 道中、彼女の「絶対の盾」は蓮を守り抜いた。ウルフの噛みつきも、サラマンダーの火炎も、彼女の盾に当たればポヨンと弾き返される。しかし、その代償として彼女のスタミナゲージは今や風前の灯火だ。

 

「お疲れ様、佐伯さん。……今、何か作るから待ってろよ」

 

 蓮は、支給品の『打刀・改』を鞘から抜き、その刀身をまじまじと見つめた。

 今はまだ、ただの刀だ。だが、先ほどサラマンダーの尻尾を切り落とした時、蓮は確かに感じていた。この刃を「敵を殺すための武器」ではなく、「素材を活かすための包丁」として振るった方が、しっくりくることを。

 

『蓮よ、何を悩んでいる。道具は使い手次第だ。今はそのナマクラで、最高の“野営飯”を仕立ててみせろ』

「わかってるって、神様」

 

 蓮は『神の肴』スキルを起動させ、道中で収穫した素材を取り出した。

 【サラマンダーの尾の切り身】、そして道中の水場で手に入れた【清流の魔魚の身】。

 蓮は岩場に陣取ると、刀を流れるような動きで振るった。

 刀身は長すぎて調理には不向きなはずだが、蓮が振るうと、刃先が素材の繊維を的確に見極め、淀みなく解体していく。

 

「……あ、あの、霧島さん。刀の使い方が、なんだかお侍さんじゃなくて……お料理屋さんみたいですね?」

 

 紬が顔を上げて不思議そうに尋ねる。

 

「ああ、家が農家で、小さい頃から台所に立ってたからさ。……ほら、焼けたぞ」

 

 蓮が焚き火(これも加護の火種だ)でサッと炙ったのは、【魔魚とサラマンダーの串焼き・合わせ味噌仕立て】。

【ログ:料理『保津峡の即席串焼き』が完成!】

【品質:良】

【効果:スタミナ最大値の一時的な上昇、および疲労回復(中)】

 

「うわぁ……美味しいっ! 表面はカリッとしてるのに、中はホクホクで……力が湧いてきます!」

 

 夢中で串を頬張る紬を見て、蓮は自分の手元を見つめた。

 今はまだ、不器用な刀での調理だ。だが、もしこれがもっと鋭い「刺身包丁」だったら。あるいは、硬い甲殻も断ち切る「出刃包丁」や、あの巨大な魔魚を捌くための「マグロ包丁」だったら……。

 そんな想像をした瞬間、蓮のスマホが小さく震えた。

【神託:成長の導き】

• 目標設定: 料理人としての「得物」の収集。

• 報酬予告: 特定の神域クエスト達成により『神話級調理器具』の解禁。

• 現在の進捗: 0.01%

 

「……先は長いな」

 

 蓮は苦笑した。

 この世界の神々は、蓮をただの戦士にするつもりはない。

 異世界の魔力を「美味しさ」に変え、仲間を癒し、神々に捧げる。

 現代の亀岡で生まれた少年は、まだ知らない。自分が将来、巨大なマグロ包丁を背負い、異世界の龍すら「三枚に下ろす」究極の料理人へと至る道を。

 保津峡の霧の下、小さな焚き火を囲む二人の夜は、穏やかに更けていった。

 

【ステータス・中間報告】

• 霧島 蓮: レベル1.22

• 佐伯 紬: レベル1.15

• 現在の装備: 打刀・改

• 神様の機嫌: 非常に良い(次は日本酒が欲しいと催促している)

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