世界再編 〜現代は異世界と混ざりそれでも進む〜 作:お粥のぶぶ漬け
ロック・ライノ・ビートルとの激闘から数時間。蓮と紬は、霧のさらに深い場所で、空間がぐにゃりと歪むような感覚に襲われた。
「……あれ? 霧島さん、ここ、地図にない場所ですよ」
紬が指差した先には、切り立った岩壁の狭間に、隠されるように広がる色鮮やかな平原があった。
そこは**【隠れ里の薬草園】**。異世界の植物と、日本の古来種が混ざり合い、独自の進化を遂げた新エリアだ。
空中に漂う魔力濃度は一段と高く、蓮の『丹波霧隠』が心地よさそうに波打っている。
「すごい……。これ全部、薬草か?」
見渡す限り、ルビーのように赤い実をつける「ヒール・ベリー」や、触れると清涼な香りが弾ける「清流ミント」が自生している。
蓮がその香りに包まれていると、スマホのスピーカーが勝手に起動し、あの豪快な神様の声が響き渡った。
『ガハハ! 良い場所を見つけたな、蓮。……だが、酒とつまみだけでは夜は明けぬ。そろそろ“〆”が欲しくなってきたぞ』
「えっ、神様? ……〆って、まさか」
『そうだ。その薬草園の奥に、魔力を吸って育った**【銀紋の野ウサギ】**がおるはずだ。そいつの肉と、そこにある薬草を使い、俺様の魂を揺さぶるような「極上の薬膳雑炊」を作って奉納せよ!』
【神託:緊急無茶振りクエスト】
• 課題: 『神の〆・薬膳雑炊』の奉納
• 条件: 銀紋の野ウサギの肉、清流米(蓮のリュックにある非常食)、薬草園の特産品を使用。
• 報酬: ???(神の秘蔵コレクションより)
「雑炊かよ……。佐伯さん、悪い。もうひと踏ん張りだ」
「はいっ! 美味しいご飯のためなら、どこまでも盾になります!」
二人は薬草園の奥へ進み、素早い動きで翻弄してくる【銀紋の野ウサギ】を、紬の広域挑発と蓮の『霧隠れ』による連携でなんとか追い詰め、収穫に成功した。
蓮は薬草園の清らかな水を用い、その場で調理を開始した。
刀を包丁のごとく繊細に操り、ウサギの肉を叩き、薬草の苦味を旨みに変える絶妙な配合で煮込んでいく。
【ログ:料理『神渡(かみわたり)の薬膳雑炊』が完成!】
【品質:秀】
蓮がスマホの「奉納ボタン(神棚アイコン)」をタップすると、鍋から立ち上がる湯気が一筋の光となって空へ消えていった。
『……ふぅ。五臓六腑に染み渡るわい。合格だ、蓮。褒美をやるぞ』
光が収まったあと、蓮の手元には一振りの小さな**「小出刃包丁」**が握られていた。
支給品の刀とは違う、神々しいまでの輝きを放つ調理専用の刃。
「これ……包丁じゃないか!」
『それは俺様の古い友人が打った一品だ。今はまだ小さな獲物しか捌けぬが、お主の技が上がれば、いずれ龍の鱗も剥げよう』
初の「調理専用武器」を手に入れ、二人はホクホクとした気分でダンジョンを後にした。
霧を抜け、亀岡の市役所分庁舎に帰還した時には、すでに夜の帳が下りていた。
「お疲れ様、霧島さん。今日は……なんだか不思議な一日でしたね」
「ああ。でも、この包丁があれば、次はもっと美味いものが作れそうだ」
役所の受付で今日のマップ埋めの成果と、ウサギの残りの肉(換金用)を提出する。
職員たちは「新人のくせに、なんでこんなに高級な薬草と肉を持ってるんだ……?」と驚愕の表情を浮かべていたが、蓮はそれを気にすることなく、隣で鳴る紬のお腹の音を聞いて笑った。
一歩ずつ、確実に。
神様を満足させ、仲間を救う「神の料理人」への道は、まだ始まったばかりだ。
【今回の成果】
• マップ踏破率: 2.1%(新エリア「隠れ里の薬草園」登録完了)
• 霧島 蓮: レベル1.30(料理スキルの熟練度が大幅上昇)
• 新規アイテム: 『神域の小出刃包丁』
• 佐伯 紬: レベル1.22(スタミナ効率が向上し、さらに頑丈に)