オレと結婚してくださァァァァァァい!!!! 作:男子生徒
「空崎さァァァん!!オレと結婚してくださァァァい!!」
「ごめんなさい」
「ケバブっ!?」
今日も今日とて振られて始まるキヴォトスライフ。そして銃弾によって倒れ臥すのもキヴォトスライフの醍醐味だ。
嗚呼、相変わらず空が綺麗だ。空を見上げるの今日で何度目ですかね?
「だ、大丈夫?やっぱり痛かった?」
「えっ!?ぜ、全然大丈夫ですよ!?むしろなんかありました?オレ的には頬に蚊が止まった程度「思いっきり涙目よ」……………蚊に刺されて泣きました」
「それはそれでどうなのよ……」
どうやら体は正直者だったようだ。
この世界を生きていく上で。ましてやこの人の隣に並び立つと決めた以上、銃弾やら手榴弾
………………ちょっと待って。銃弾程度ってなんだよ。オレもすっかりキヴォトスに染まっちまったってワケか……
「………でも、やっぱり痛みを我慢するのは良くないと思うわ。あなたは我慢できても、いつかあなたの体が限界を迎えてしまうかもしれない」
真剣な顔で諭されてしまった。
空崎さんの言い分も御尤もで、むしろ正論しか言っていないんだけど……
「だから、明日装備を買いに行きましょう。ちょうど休暇だし丁度いいわ」
「良いですけど……そ、装備ですか……?膝当てみたいな?」
「もっとちゃんとした装備よ」
イマイチピンとこないまま話は進み、明日の9時頃にショッピングモールで待ち合わせすることになり、今日は解散した。
ふ〜ん、このショッピングモールってゲヘナでも結構大きいとこだったっけ。いつか行ってみたいと思っていたけど、まさか空崎さんと一緒に………─────
「……………これってデートでは???」
─────
────朝。
いつもは耳障りなアラームは、今日だけ祝福を伝える天使のラッパに変わり、世界最高の日の到来を告げてくれる。
一度顔を洗い、食パンにジャムを塗って食す。
オレは米よりパン派だ。手軽だし美味しいし文句なしだ。ついでにヨーグルトも食う。
いつもならこのまま制服に袖を通すのだが、今日は少しゴージャスな黒い服装を羽織る。
ちなみにこの服はオレが購入したわけではない。寮室になんかあった。きっと寮長のささやかなお祝いだったのだろう。
そういえば寮長にこの服のお礼を言ったら不思議そうに首を傾げていたな。まったく、隠さなくて良いのに……
「さぁ、行こうか!!最強で最高の
「あら、似合ってるわね。いいと思うわ」
「…………ッス」
────デートなどと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ……
デートって絶対服装意識するよね?だから勝負着で戦場へと向かったワケなんですけど……
「あの、空崎さんも似合っています……」
「いつも着ている制服なんだけど……?」
そうなんです。彼女、寸分違わず制服姿なんです。途轍もなく見慣れた姿に思わず五度見してしまった。あっ、それはいつもか。
ちなみに嘘は言っていないぞ。空崎さんが着るならなんでも似合うしなんでも可愛いだろうがよッ!!!
「ち、ちなみに制服の理由とかって……」
「ん、特にないわ。強いて言えば装備一式買うだけだし、そこまで時間はかからないと思ったから。それに服を選ぶのが面倒くさかったから」
……これってアレですよね?オレだけが意識していただけで、空崎さん的にはガチシンプルなお買い物としか見ていないですよね?
いや、それは良いんだ。オレ如きが空崎さんとデートできるだなんて烏滸がましかったんだと納得できるんだから。
ただ、ただ………………私服姿見たかったッッ……!!!!
「ど、どうしてそんなに落ち込んでいるの?」
「いやぁ……てっきり自分はデートのお誘いを受けたのかと」
「デ、デート!?」
空崎さんは目を見開き、頬を真っ赤にして慌てふためく。そんな姿が可愛らしい。
「お、大袈裟よっ。ただ装備を買いに行くだけなんだからっ」
「ですよね〜……でも、よくよく考えたら空崎さんとお出かけすることに変わりないのか。オレ嬉しいです!」
「…………本当に変わった人」
それに、ただのお出かけを特別なデートにすることだって可能なはず……!
ふふっ、全てはオレ次第ってわけね。燃えてきた!!
「さぁ行くわよ。ここは品揃えが良いから、きっとあなたに合う装備が見つかるわ」
「はい!!」
「空崎さん!少し寄り道していきませんか?例えばあのお洋服屋さん!空崎さんに合うワンピースを見つけたんです!」
「え?」
「どうですか?なかなか良いと思うんですけど!」
「…………ごめん、よく分からない」
「空崎さん!UFOキャッチャーなんかどうです?やったことありますか?」
「……ないわ。そもそもゲームセンターが苦手。五月蝿くて、ギラギラして、人が多いから……」
「あっ……じゃ、じゃあここから離れましょう!今すぐに!」
「空崎さん!見てくださいよ、この可愛らしいアクセサリー!空崎さんのバックにお付けしても違和感のない物品だと思われるんですが!」
「確かに可愛い子が多いけど……こういうのもあまり好きじゃない……」
「ですよね!オレもそうなんじゃないかって思ってたんですよ!残念だったな、人形ども!あまりに憐れだからオレが買ってやる!感謝せぇよ!」
(モルは可愛いものが好きなのかも……)
「銃弾を弾くにはやっぱりこれね」
「盾、ですか?」
「そう。収集収縮可能の最新型。使う人は少ないけどいるにはいるから、奇異な目で見られることはないはず」
「盾……良いですね!カッコいい!でもお値段が……」
「大丈夫、私が買うから」
「え!?そ、そんな、悪いですよっ」
「良いから。そもそも勧めたのは私だし」
「………分かりました。出世払いで!」
「もうなんでも良いけど………そ、それで、今日のお出かけのことなんだけど───」
「あっ、もうお昼ですね!近くのファミレスに行きましょうか」
「………………うん」
「ご注文は如何いたしますか?」
「私はブラックコーヒーで……………モル?あなたは?」
「へ!?えっと、オレも空崎さんと同じやつで……」
「かしこまりました!」
なんも聞いとらんかった。というか聞ける余裕がなかった。
なんとか良い感じのファミレスに入ったけど………なんか今日やばい。どう表現すれば良いか分からないぐらいやばい。
なんか、こう、色々と空回ってるような気がする。デートで絶対にやってはいけないことランキングTOP10を悉く踏み抜いているような……
おまけに空崎さんが先程からソワソワしている。チラチラと視線が合うのも何度目か分からない程だ。多分これは帰りたがってるサイン。うん、終わりやね。
やっぱり慣れないことはするものじゃないな。これ以上彼女の機嫌を損なわせないように、ここで昼食を摂ったらもう帰ろう。傷は浅い方がいい。
………いや待て。その前にすべきことがあるだろうが、オレ。
「「その、今日はごめんなさい……………………え?」」
鏡を見ているようだった。
申し訳なさそうな顔、申し訳なさそうな声、申し訳なさそうな態度。
きっとオレもこんな顔してんだろうなって思えるぐらい、彼女の雰囲気がオレのそれと酷似していたから。
「な、なんで空崎さんが謝るんですか?」
「それはこっちのセリフ。モルが頑張って楽しいお出かけにしようとしてくれたのに、全部私が台無しにしているような気がして……」
「台無しだなんて……!そもそもオレのリサーチ不足が原因で空崎さんに不快な思いをさせてしまったから……!」
「でも私が────」
「いやオレが────!」
話は平行線。いつもは空崎さん全肯定botのオレであるが、空崎さんの憂慮を取り除くべく、今回ばかりは全不肯定botになった。
「あ、あなたって意外と頑固なのね……」
「オレにはオレなりに譲れない一線があるだけです。そういう空崎さんこそなかなか頑固ですね……こういうのはお好きではないと思っていたんですが」
「……確かに意見を曲げずに相手と話し合うのは面倒くさくて苦手。だけど、ちゃんと言わなきゃいけないこともある」
一度クールダウンのために喉を水で潤す。
それは相手も同じようで、瓜二つの行動を見ると、やはり鏡を見ているようだと思った。
「………私、女の子らしい趣味とか好みとかなくて。服装もオシャレとか可愛らしさより機能性とか要不要かで判断しちゃうし。だから、その……私とお出かけしても楽しくなかったでしょ?」
「ッそんなことありません!」
この人は何を言い出すのか!
「オレはあなたと一緒にいられるだけで嬉しいんです。こうやってお出かけしていること自体がこの世の何よりも勝る宝物なんです。あなたと生きる毎日はずっと楽しいんですよ!」
「……………………うん」
めっちゃか細い声で返事された。しかも顔を俯かせて。
何ということだ、これでもまだ伝わっていないというのか?
「それにオレは見逃しませんでしたよ。アクセサリー見ていたとき、少し微笑んでいましたよね?あの笑顔はオレの肉眼と脳にしっかりと刻み込まれましたとも。空崎さんもあのアクセサリーを見て可愛いと思っていたんですよね?」
「あ、あれはあなたが……!」
「オレ?オレがなんです?」
「……………なんでもない」
明らかに何かある含みでしたが!?
……まぁ、無理に乙女の秘密を暴くほどバカではないので追求はしないが。
「とにかく、あなたが少しでも笑ってくれるだけでオレは嬉しいし、あなたと一緒に何かを感じられるだけで楽しいんです。ご理解いただけましたか?」
「……………分かったわ」
ふぅ、やっと分かってもらえたようだ。
これが“分からせ”というやつか?ちょっと違うような気がするが。
「でも、今日は私が悪い」
「まだ言いますか!?ですからあれは───!」
「だから私が────!」
よし分かった。今日はとことんディベートしようじゃないか。如何にオレのプランが悪かったのかとことん教え込んでやる!
(早くコーヒー渡したいんですけど……)
結局『まぁ、二人とも悪かったで良いんじゃない?』と隣に座っていたおばさんからの助言で、この論争は幕を閉じた。
納得はしていないが、これ以上の着地点は見つからないのも事実。
ありがとう、隣のおばさん。今度会ったら必ず恩返しします。
ちなみにモルは大の甘党なのでこの後地獄を見ます。