オレと結婚してくださァァァァァァい!!!!   作:男子生徒

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第五話

 

 

 

 

 

 空崎さんの色んな側面が見れたデート(お出かけ)から翌日────

 

 「す、すごい……!これがイージスの盾……!」

 「ただの市販の盾よ」

 

 いいや、これは誰が何と言おうと黄金のイージスの盾だ。女神から賜りし絶対防御の奇跡の盾だ!

 見てください、このオレの傷痕を。以前に比べて格段に少なくなっているでしょう?

 フッフッフ、何を隠そう。全てはこの盾のおかげなのだ!彼女の愛がオレを護ってくれているのだよ!

 

 「基本的な構え方はそれでいい。あとはもう少し工夫を加えると、より最小限のダメージに抑え込めれる」

 「工夫?」

 「たとえば、こうやって盾をほんの少し斜めに構えてみたり。そうすれば真正面から銃弾を受けずに済むし、ダメージも受け流せると思うわ」

 「なるほど!」

 

 流石空崎さん!博識だ!

 

 ────ピピッ、ピピッ。

 

 『風紀委員会全部員に通達。ゲヘナ学区二丁目の大型デパートで大規模な暴動が発生。手の空いている部員は至急鎮圧を求む』

 

 「…………丁度いい事案が発生しましたね」

 「暴動を丁度いいと言っていいのか分からないけど……はぁ、面倒くさい」

 

 空崎さん、すごく面倒くさそう。だけどそんな彼女もキュート!!

 

 「さぁ行きましょう!たくさん銃弾を受けたいです!」

 「前まで銃弾に泣いていた人とは思えない言動ね……」

 

 それは忘れてください!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「だ〜か〜ら〜!!犬より猫の方が可愛いだろうがよ!なぁ、猫派軍団!!」

 『そうだそうだ!!』

 「あぁん!?犬の方が可愛いだろうがよ!そうだろ、犬派軍団!!」

 『そうだそうだ!!』

 

 「な、なんて不毛な争いなんだ……」

 

 暴動の原因、それは二つの派閥による激突だった。

 犬と猫。ペットとして大昔から人気である両種は、その度に度々可愛さ議論に巻き込まれ、今日まで決着が付いていない。

 バカ野郎……!どっちも可愛いじゃダメなのかよ……!バカ野郎どもめ……!

 

 「こんなことのために私たちは……はぁ……」

 

 あぁ、空崎さんの不機嫌メーターが振り切っちゃった。きっと今頃メーターはクルクルと回り出しているのだろう。

 

 「早く制圧しましょう」

 「はい!」

 

 空崎さんが向かう先とは反対の方向へと回り込み、盾を構えながら銃を乱射する。

 本来なら空崎さんに着いて行くのがベストだろうが、盾の試運転含め自分一人で銃撃戦をしたかったのだ。

 

 「何だおまぐあっ!?

 「おい風紀委員会が来たぞ!早く態勢をキャア!?

 「よしっ!二人撃破!」

 

 前までは手も足も出なかった不良生徒相手に戦えている───その事実を噛み締めながら、引き金に掛ける指を震わす。

 

 「ちょこまかと!!喰らえッ!!」

 「チッ、アイツ盾を持ってやがる!」

 

 もちろん反撃を喰らうのは想定済み。そのためのイージスの盾*1だ。

 

 銃弾を弾きながら上手いこと遮蔽物へと隠れる。

 どんなに優れた盾があっても所詮物は物、いつか限界が訪れる。故に遮蔽物に身を潜める基本は崩してならない。これは基本中の基本である───空崎さんの教えは確かに活きている。

 

 「しかし、敵があまりに多いですね……」

 「これじゃあジリ貧です……」

 

 共に駆けつけて来た風紀委員会部員(同僚)の愚痴を横耳に、今の戦況を遮蔽物越しに確認する。

 目に映るだけでも十人以上、硝煙やら何やらで見えない奥先も考えれば、ざっと五十人以上。

 お前らよくここまで犬猫過激派を集められたなと感心してしまうところだが、その対処にあたっているオレたちにとっては良い迷惑すぎるわけか。

 

 ────しかし、この戦場には、ありとあらゆる戦況をひっくり返す戦神がいる。

 

 「終わったわ」

 

 気づけば銃声は聞こえなくなっていて、代わりに戦場に似つかわしくない綺麗な声が木霊する。

 銃煙が晴れて改めて周囲を見ると、そこはまさに死屍累々。一人の戦乙女のみが、その場に立っていた。

 

 「流石です、空崎さん」

 

 やはり強い。やはり凄まじい。やはり、圧倒的。

 この現実を直視する度に、自身の目指すゴールラインが遥か先なのだと再確認させられる。

 だけど、少しずつ。今日よりも明日成長していけば、いつか届くと信じていれば、きっとあの人の隣に……

 

 「モルも二人撃破できたのね。お手柄」

 「いやいや、空崎さんに比べればまだまだ……」

 「でも分かった筈。あなたは確かに成長している。その事実をちゃんと受け止めなさい」

 「………はい!!」

 

 お世辞かもしれないけど、やっぱりそう言ってもらえると嬉しいや。

 

 「フッフッフ、フッフッフ!まだだ!まだ終わらんよ!」

 

 などと浮かれていれば、地べたに這いずる不良生徒の一人が、オレたち(風紀委員会)へと嗤いかける。

 その手には、映画やドラマでよく見る()()()()()()のような物を持っていた────って!?

 

 「なんかそこら辺に落ちてたスイッチだけど、この状況を切り抜けられるなら……!」

 「そのスイッチを押させるなァァァァ!」

 「いいや限界だ!押すね!今だッ!」

 

 ────爆発音、後に衝撃。

 

 巨大な爆発と共に、ビルが傾き揺れ動く。

 これは………明らかにマズイパターンだ。

 

 「……このビル、もしかして「倒壊するわね」やっぱり!?」

 

 マズイマズイマズイ!!

 幾ら頑丈な体でもビルの下敷きは流石にマズイだろ!?

 

 「全部隊、不良生徒を抱えて即刻避難。残りは一般人の避難誘導を。おそらくあと数分で倒壊する。急いで」

 『はい!!!』

 

 一年生なのに、もうすでに現場を仕切っている空崎さんは格が違う……って違う違う。今は避難を優先しないと────あれ、なんか今……

 

 「モル、あなたも避難を────モル?」

 「…………ごめんなさい、空崎さん。オレ行きます」

 「ちょっ、モル!?」

 

 空崎さんの静止を促す声をフル無視して、ただひたすらに目的地へと駆け出す。

 心の中で何度も何度も『ごめんなさい』と『嫌いにならないで』と繰り返しながら────

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 ────数分後、ビルは倒壊を始める。

 

 デパートにいた人々の避難も終わり、風紀委員会も不良生徒も避難を完了していた。

 ───たった一人を除いて。

 

 「モルっ、モル……!」

 「ヒナさんダメです!危険ですよ!」

 「だってモルがまだ……ッ!!」

 

 人形と見紛う程に端正な少女の悲痛な叫び。

 彼女の心中は目的も理由も分からず駆け出した少年の事ばかりで埋め尽くされている。

 どうして行ってしまったのか、どうして何も言ってくれなかったのか。そんなことばかり脳裏を過っては消え、また過ぎる。

 

 倒壊が止む。辺りは恐ろしいまでに静寂に包まれていた。

 今はただ彼の無事を祈るだけ。心臓の音が嫌に鼓膜を揺らす。

 数秒、数分、もしくは数十分。まるで永遠のように感じられた静寂と祈りの時間は突如として瓦解した。

 

 「オラァ!!!」

 「ッ!?」

 

 彼の声だ。彼の姿が見えた。瓦礫の中から這い出てきた彼。ボロボロで、頭から血を流しているが、間違いなく生きている彼。

 ヒナは考えるよりも先に彼の元へと駆け出し、そして抱きしめる。

 

 「そ、そそそそそそそそ空崎さん!?!?ど、どうしたん───」

 「バカ、バカ!!何で言うこと聞けなかったのッ!?どうして行っちゃったのッ!?あなたが帰ってこないから、私、私っ……!」

 「あぁ〜……100オレが悪いですねこれ……」

 

 『あはは……』と笑う彼に怒りの頂点に達し、キッと鋭い目で彼を睨みつけようとして───ふと、彼の傍にいる小さな存在に気づいた。

 

 「お、お兄さん……?ここはどこ……?」

 「お外だよ、お嬢さん。言っただろ?すぐに外に出れるって。ほら、早くお母さんの所に行きなさい」

 「うん……うんっ!!お兄さんありがとう!」

 

 その光景を見て、ヒナは理解した。理解してしまった。

 

 「助けに、行ったの?あの子を」

 「えっと……まぁ、はい……」

 

 彼は照れ隠しをするように頬を掻く。まるでイタズラがバレた少年のように、バツが悪そうに目を泳がせながら。

 嗚呼、確かに彼は立派なことをしたのだろう。それこそ誰からも讃えられるような素晴らしいことを。

 しかし、ヒナにとってそれはそれ、これはこれであり、行き場の失った怒りが霧散することはなく。

 

 「……あなたはヘイローがあっても他の人より脆い。もしかしたら、あのまま押し潰されて死んでいたかもしれない」

 「…………そう、ですよね。分かっています」

 「分かっているなら……!」

 「ただ、聞こえてしまったんですよ。あの子の泣く声が」

 「ッ」

 

 今も親に縋り付いて泣いている女児を見て、彼はほんの少し微笑む。それは安堵の微笑みのようで、自嘲とも取れるもので。

 

 「もし見て見ぬ振りしたら夢心地が良くないじゃないですか。だからですよ。これは、オレの身勝手なエゴです」

 

 ヒナは黙って話を聞く。

 薪を焚べた筈の憤怒の炎は、すでに弱まっていた。

 

 「……何様だよって話ですよね。誰彼構わず救う聖人じゃないくせに、自分を守ることで精一杯なくせに、誰とも知らない赤の他人を助けに行くだなんて」

 

 『お叱りなら幾らでも受けます』と締めくくり、彼は頭を垂れる。

 ガツンと言ってやるつもりだった。しつこく、何度も何度もご高弁を垂れるつもりだった。

 しかし、振り上げた筈の手は、もう下がっていた。

 

 「───分かったわ」

 

 だから、こうやって抱きしめて労うことしかできなかった。

 

 「そ、空崎さん!?!?これはお叱りではなくご褒美なんですが!?!?」

 「黙って。傷が開くでしょ?応急処置で包帯巻くから動かないで」

 「………はい」

 

 救急バックから包帯を取り出し、少しキツめに頭部へと巻きつける。

 下から悶える声が聞こえてくるが、ヒナはガン無視をかます。この痛みが先ほどし損ねたお仕置きとしておこう。

 

 「私だって何も、あなたの行いを責め立てたいわけじゃない。むしろ、あなたは誰よりも立派な行いをしたと思うわ。賞賛されて然るべきことをね」

 「賞賛だなんてそんな……」

 「だけど、だけど………だけど。私は、怖かった。たまらなく、怖かった。本当に、本当に怖かったんだから……っ」

 「……………」

 「無事でよかった……」

 

 彼女は今日も新たな彼を知った。

 そして、新たな自分も知っていく。

 それが何を意味しているのか、まだ彼女は理解し得ない────

 

 

 

 

 

 ちなみに、この後血相を変えて飛び出してきた氷室セナによって強制連行されるのは、また別のお話。

 

*1
※ただの盾です

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