「ねえ、名前はなんて言うの」
明るい部屋で見ると、より一層綺麗な少女に声をかける。
何だかあそこで放置しているというのも、いけない気がして連れて帰ってしまった。
「お腹が減った」
彼女は名前を答えることもなく、ご飯の要求をしてくる。
といっても、与えられるご飯が何かある訳でもないので、適当なお菓子をあげることにした。
「小麦粉にアレルギーとかない?」
「ない」
「よかった、じゃあこれあげる」
少しばかりお高いビスケットを手にする。
つい先日行った旅行のお土産物だった。
与えられたビスケットを、彼女は大人しく食べ始める。
思ったよりも内容量は多いが、健康的ではないだろう。
時折、お菓子をごはん代わりに食べる人がいるが、あれでは身体を壊してしまう。
「ねえ、美味しい?」
私自身も味は知らなかったので気になり、問いかける。
少しだけ分けてほしい、という下心もあった。
ただ言葉にしない考えは伝わらないもので、というよりも言葉にしてもあまり伝わっていないのかもしれない。
何の反応もなく、彼女は黙々と食べている。
はて一体彼女はどこの子だろうか。
まず間違いなく日本人ではないだろう。
ぱっちりとした目は日本人的ではないし、そもそもとして銀髪なんてのもそうだ。
少し人種について考えていると、どうやら彼女は食べ終わったようで、目があった。
「それで、あなたの名前はなんて言うの?」
「モニカ」
姿に似合った可愛い名前だと思った。
食べ物のようで可愛らしい、というのが正しいのかは分からない。
ただ現実に、そう思ったことは事実である。
そのようにしていると、彼女はこちらを見て口を開く。
「貴女の名前は?」
「えっと、前山アズサです」
「良い名前、私の次に」
一言多いタイプの子なのだろうと思えた。
「モニカちゃん、あなたはどうしてあそこにいたの?」
「色々とあった。それと、ちゃんをつけるな」
「あっ、ごめん」
何だか偉そうな子だと思う。
そういう個性の子なのだろうか?
「その色々を教えてもらえるかな」
「秘密だ」
重要な話を何事も教えないままであるが、モニカはちょっとしゅんとした症状を見せる。
少し目を細めて、下を向いたように見えるだけであるが絵になる。
これが容姿の力であろうか。
「申し訳ないと思う。だが、少し泊めてはくれないだろうか」
「えっと」
少し戸惑った心があった。
先程まで静かだったなのに、いきなり元気になった。
私と似たような子なのかなと思った。
誰かにとって良い人としてあろうとしているのではなかろうか。
元気な子を好む心理を私に見たのではないだろうか。
こう考えていると、何とも同族なように思えた。
私は私の同族がたぶん嫌いだ。
うじうじとしてジメっぽくて、そして何者でもない。
私は私のことも嫌いだ。
だからこそだろうか。
私はモニカを守ってやろうという気が湧いてきた。
私が何者かになるための策謀として、そして彼女が一体何者であるかを知るために。
「うん、わかった。いいよ」
そして、私はこの時久方ぶりに両親に感謝の心を抱いていた。
普段は家にずっといないことを不幸だと嘆いているのに、我ながら酷い人間だと思う。
一週間くらいは毎日投稿頑張ろうと思ったので投稿します。
明日からは一時に投稿なので、この二時間後です。