魔法科高校の劣等生~4の名を持つエレメント~ 作:ウンニーニョ
地雷源の間を縫うように加速し、摩利は花音に近づき剣を振るう。
しかし花音はそれを躱すと今まで摩利に見せた事もないような動きで追随する。
魔力量が上がっている?
摩利の考えは的中していた。
夏深側に付いた者達はブースターを所持し、能力を底上げされている。使う事への抵抗は精神操作により失われているだろう。
花音が無差別に地雷源を使うのもそのせいだ。
威力の上がった地雷源はことごとく校舎を破壊し瓦礫へと変えていく。
混乱の中、逃げ遅れた生徒のなかには瓦礫の下敷きになっている者もいるだろう。
一刻も早く花音を止めて救助しなければ
そんな思いが摩利を焦らせ、剣を鈍らせ、膠着状態が続いていた。
☆★☆★
崩れた校舎の近く、会議室にいた者も崩れる前に脱出し、外でたたかいが繰り広げられていた。
あずさは梓弓を使い自体を終息させようとしたが、効果がなかった。
自分の無力さに唇を噛みながら見つめる先では、真由美と愛梨が戦いを繰り広げていた。
エクレールと言う二つ名のとおり、加速し、レイピア型の特化型CADを振るう愛梨。
紙一重で避け、制服を切り裂かれながらも魔弾の射手で反撃する。
しかし全てレイピアで弾かれてしまう。
その間も愛梨の説得を続けるが、愛梨は聞く耳を持たず、嫉妬を真由美にぶつけるだけだ。
その時、真由美が瓦礫に足をすくわれてしまった。
レイピアは真由美の心臓めがけて突き進んでくる。
(朔夜君…)
防げない。真由美は恐怖で目を閉じてしまった。
しかし、いつまでたっても痛みは襲って来なかった。
「大丈夫か?七草」
目の前には克人のファランクスが展開されており、レイピアを止めていた。
克人はあらかたの人数の意識を刈り取り、真由美の元へ駆けつけた。
ちょうど、深雪と将輝もこちらに集まってきた。
将輝は真紅郎の意識を刈り取ると無事なところへ移動させたようだ。
「こんな事、人の心を弄ぶなんて…許せない!」
「これも、私達四葉の招いた事です。申し訳ありません」
「深雪さん…」
「真由美先輩、私も当主候補に選ばれていた人間です。四葉として、止めなければなりません。 夏深の姉としても」
将輝の怒りに深雪が謝罪し、全てを話す。深雪と真由美の知っている全てを。
「七草と司波は行け。 ここは俺と一条が引き受ける」
「でも___」
「行ってください。一色は三高生として、同じ一の家として自分が止めます。」
将輝は、そう言ってファランクスを破壊しようとレイピアを振るう愛梨を見る
以前の少し高飛車なところが可愛く見えるくらいに狂気に満ちている。
「朔夜と達也に伝えて下さい。 こんな事、早く終わらせようって」
将輝のその言葉に深雪と真由美は頷くと、それぞれの行かなければいけない場所へ向かった。
☆★☆★
エリカは横浜で深冬の覚悟を知った。
だから今回は説得なんてことはせずに、自分達の貫き通したいもののために全力で戦った。
エリカのCADは刃入れをしていないので魔法で刃を作らなければいつもの警棒型と同じだ。
しかしエリカ専用に達也がチューニングしたのだから恐ろしく鋭く、速い。
エリカは一瞬で深冬に肉迫し、袈裟斬りを見舞う。
しかし深冬はそれを左手に持つ氷の剣で受け止めると右手に持つ氷の剣で逆袈裟斬りを返す。
エリカはギリギリで躱し、距離を取り、深冬を見据える。
2人の一進一退の攻防はまだまだ続くかの様に思えた。
終わりは突然だった。
今度は深冬が加速し、エリカはの方え向かう。
エリカは防御のために刀を構える。
しかし、深冬は剣を振るう事なく、エリカを通り越した。
何事かとエリカは振り返ると、そこには横浜で見たものがデジャブでもあるかの様に鉄骨に貫かれた深冬の姿があった。
「え?」
エリカは刀を放り出し、倒れる深冬を受け止めた。
鉄骨は心臓からずれているため、まだ息はある様だ。
「嫌ぁぁぁぁああ‼︎」
静寂を破ったのはエリカでも深雷の叫びでは無く、花音の叫びだった。
夏深の精神操作で無理矢理心の奥に閉じ込められていた感情が噴き出したのだ。
目の前で婚約者が死んでから数週間しか経っていないのだ。
本来なら悲しみに暮れていてもいい時期なのである。
啓が死んだ光景と同じ光景をみて、悲しみが噴き出したのだ。
噴き出す感情と与えられた復讐心、それに悲しみを閉じ込めようとする力が加わり心が悲鳴をあげた。
「花音‼︎」
摩利が駆け寄っても花音は頭を抱えたままうずくまっている
摩利は何もできない自分に無力さを感じながら啓の作った刀型CADを花音に握らせ、落ち着かせようと肩を抱いた。
深冬のもとえも戦闘を中止してレオと深雷も駆け寄った。
「深冬‼︎」
「お姉ちゃん‼︎」
深雷は深冬の事を昔の呼び方で呼んでいる事さえも気づかないほど狼狽えている。
「エ…リカは…ちゃん…と…回りにも…目を配らな…きゃね」
「深冬⁉︎ 喋らないで‼︎ 達也君‼︎」
深冬が笑顔でエリカに注意する中、エリカは達也に必死に訴える。
まだ息はあるのだ今なら、達也なら助けられるのだ。
達也もそれが分かっている為、満夜に注意しながら深冬のもとへとやってくる。
満夜は自分の攻撃が深冬に当たってしまった事に動揺し、動けずにいた。
しかし深冬は首を横に振る
「わた…しの時…間はも…う少ないか…ら、だから」
最後にエリカを守れて良かった。
最後の言葉は言葉として出なかった。
声を出す力さえ無く、唇を動かすだけで精一杯だった。
それを言い終わると深冬の体はまるでガラスが割れる様に砕け散った。
エリカの腕に残った破片が体温で溶けていく。
これが失敗作の最後。
自分の中の
「満夜ぁぁあ‼︎」
エリカとレオが悲しみに暮れる中、深雷が怒りに任せて力を解放した。
涙は一瞬にして蒸発し、深雷の体を雷が包み、砂鉄を纏う。
擬似的に術式兵装を再現したと言ってもい姿。
「止めろぉ! 深雷ィ‼︎」
満夜の叫びに深雷は耳を貸すことなく、光の速さで加速すると砂鉄を右手に集中させると爪の鎧を作り出し、満夜の心臓を貫いた。
同時に深雷の雷が右手に集中し、弾ける。
だから止めろって言ったじゃないかよ
満夜はそう思いながら絶命した。
「深雷?」
動かない深雷を不思議に思ったレオが声をかけるが返事がない。
レオの肩に達也が手を置き、首を横に振る。
「達也…どういう事だよ…」
レオの顔が悲しみに歪む。
深雷もまた、息を引き取っていた。
レオとの戦いの最中も四肢から麻痺していく感覚があったのだが、最後に術式兵装を再現した事で限界に至り心臓まで麻痺し、ついには停止してしまった。 満夜が止めたかったのはこれなのだろう。
「お兄様…」
深雪が合流する。
悲しみに暮れる友人達を見て間に合わなかったと顔をしかめる
「これが本当にこの方達のしたかった事なのでしょうか?」
「わからないな。だが、これから先はあいつに任せるしか無いのかもしれないな。」
達也と深雪はそう言ってたった今、火柱の上がった空を見た。
あとがき
作者はハッピーエンドを目指しております。
しかし、雲行きが怪しすぎる…