魔法科高校の劣等生~4の名を持つエレメント~ 作:ウンニーニョ
「このへんで良いですかね? …あぁ…その顔ですよ朔夜ぁ。もっと、もっと絶望して下さい」
夏深が振り返ると追いかけて来た朔夜は顔を歪めていた。
「貴方の瞳は全てを見通してしまいますからね。 この状況にこの場所。 用意したかいがあったというものです」
そう言って夏深は口角を釣り上げる。
先生、先輩、何より共に授業を受けた同級生達が瓦礫の下敷きになっている。
その上その瞳は瓦礫の中の学友の魂が体から離れていく所さえ写してしまう。
この状況の原因が自分だというのは辛いという言葉だけでは言い表せ無いだろう。
ドサッ
急に夏深が倒れこんだ。
「足までダメになってしまいましたか… まあ今日さえ保てば十分ですけどね」
夏深は本を開くとそこに封じられている魔法を解放する。
炎が夏深の足となり、夏深静かに立ち上がる。
これが炎のエレメントに蝕まれている証拠だった。
体を侵し、燃やし、炭化させる。
夏深は魔法で無くした部分を補い、生きているのだ。
「今ので分かりましたか? 貴方と同じ力がこの本のおかげで手に入りました… さあ、殺し合いましょうか」
そう言い夏深は本を上へ放り投げる。
本が夏深の頭上で停止したかと思うとページが開かれ魔法が発動する。
本の封印と解放の力を利用した術式兵装《獄炎煉我》
夏深の魔力が増大し体を炎が包み込む。
その炎が弾け、中から出てきた夏深の姿は炎と一つに融合した炎帝の姿だった。
相対する朔夜も雷天大壮で雷帝化し夏深を迎え撃った。
☆★☆★
本当にここは昨日まで自分達がかよっていた一高なのだろうか?
一科とニ科のわだかまりもなくならないものの少しずつ良い方へ向かっていて、ここにあった筈の学び舎は学生達の笑顔で溢れていた。
しかし今、学び舎は瓦礫と化し、その下にはどれだけの生徒が下敷きになっているのだろうか?
朔夜君、無事でいて…
真由美は唇を噛み締め、愛する人の場所へと急いだ。
「え?」
真由美が朔夜の元へとたどり着いた時、術式兵装は解け、向かって来る夏深に反撃できないまま立ち尽くしている朔夜がいた。
怒りをあらわにした夏深が朔夜の服に手を掛け、剥ぎ取った。
「どうゆう事ですか⁈これは‼︎」
夏深が朔夜に向かって叫ぶ
服の下の朔夜の身体は真っ黒に染まっていたのだ。
体を闇に侵食され、足から崩れ落ちる朔夜に真由美は駆け寄り、抱き上げる。
「貴方も…失敗作だったって事ですか?」
そう問う夏深の身体は震えている。
深夜より真夜の遺伝子の方がただ単に少し耐性が強かった。それだけなら…
「貴方が失敗作なら、私は誰にこの憎しみを向ければいいんですか? 答えなさい朔夜‼︎」
答えられない程弱っている朔夜に、受け入れない現実に夏深の心は耐えられなかったのだろう。
まるで、何かを探すように、「I16…何処に…」と呟きながら何処かへ行ってしまった
「朔夜君、朔夜君‼︎」
真由美は諦めずに朔夜に声をかける。
するとゆっくり、しかし確実に朔夜は真由美に言葉を返す。
「真由…美…ん、一……高は大…丈夫……から…僕…四……葉の…魔法師…だ…ら」
一高は大丈夫。僕は四葉の魔法師だから
朔夜のその言葉に真由美は朔夜が何をしようと理解する。
それはあの日、朔夜とのお見合いの日に真夜に聞いた朔夜の禁断の固有魔法。
「ダメよ! 朔夜君‼︎」
真由美の制止と同時に朔夜の魔法が発動した。
☆★☆★
「葉山さん、少し付き合わない?」
「いえ、私は…はい。頂きましょう」
真夜の誘いを葉山が受ける。
本来ならば決して受けないのだが、今が特別な時だと理解したのだ。
「私は何もできなかったわ」
一口酒を酌み交わし、真夜が語り始める。
「こうならない為に朔夜と真由美さんの縁談を持ち出したり、当主を決めるのだって早めたり、色々してきたのに…」
真夜はそう話しながら空を見上げ、星を読む。
昔から何度見ても変わらない
酒をもう一口口に運ぶ真夜の頬にはツーっと涙が溢れた。