魔法科高校の劣等生~4の名を持つエレメント~   作:ウンニーニョ

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偶然の奇跡

真由美は摩利と別れた後、ある場所へ向かっていた。

気持ちと共に足取りは早歩き、駆け足と速くなり、そして、とある場所へとたどり着いた。

 

しかし、そこには真由美のの望んでいた物はなく、力無くうずくまってしまう。

 

「どうして…どうして…」

 

溢れてくる涙が止まらない…

どうして、思い出して(、、、、、)しまったのだろう…

どうして、ここにあの場所(、、、、)が無いのだろう…

 

 

ここはどこにでもある閑静な住宅街。

だけどここはかつて、いや、真由美の記憶の中では御屋敷があった。

3人で住むには広すぎるくらいの家。

たった数ヶ月ではあったけど大切な彼と過ごした思い出の場所。

 

ただ、楽しかった学校生活を惜しんで後輩を順番に見ただけだった。

一人足りない様な気がして桜の木を見上げた時思い出してしまった。

学校で過ごした3年間よりもとても大切な、一年にも満たない時間を思い出してしまった。……彼の笑顔を思い出してしまった。

 

「会いたい…会いたいよ…朔夜君……」

 

「真由美さん」

 

聞こえるはずのない声に真由美は振り向き、目を見開いた。

そこには朔夜が、今の世界に居ないはずの人が立っていたのだから。

 

朔夜君。と涙で掠れた声を出して真由美は朔夜の胸に飛び込んだ。

 

「ただいま」

 

そう言って朔夜は愛おしそうに真由美の頭を優しく撫でる。

 

なぜここに朔夜が居るのか。

それは小さな偶然の積み重ねだった。

 

達也が放った雲散霧消が神の悪戯の魔法式に欠けた部分を作った。

普通ならそこで魔法式は壊れてしまうのだが、世界へ広がる世界に描かれた魔法式は問題なく発動した。

しかしその欠けた部分があったために神の悪戯は完璧な形では発動せす、朔夜が居たと言う記憶を閉じ込めるだけにとどめてしまった。

真由美が思い出してしまった事で世界に矛盾が生じ、朔夜は戻って来れたのだろうと朔夜は話す。

魔法式の欠けた部分がズレていれば夏深だったかもしれないし他の誰かだったかも知れない。

欠けた部分が大きければ朔夜の他にも誰か戻って来てまたあの出来事が起こったかも知れない。

 

朔夜だけが戻って来れたのは奇跡の様な確率だろう。

 

 

「真由美、僕はもう四葉の当主候補ですらないし有名な魔法師にもなれない。七草の家にはふさわしくないかもしれない。それでも、真由美さんと一緒に居たいから……真由美さん、僕と結婚してくれませんか?」

 

「はい!」

 

朔夜のプロポーズに真由美は涙でぐしゃぐしゃになって目が腫れ上がった顔で、しかし、今までで一番の笑顔で返事を返した。

 

 

☆★☆★

 

 

「朔夜、真由美さん、みんなが来てくれたわよ」

 

「はーい、母さん!」

 

真夜の呼ぶ声に朔夜が答える。

ここは旧長野県と旧山梨県の県境にある四葉家の本邸。の隣に立つ離れ。

6年前、朔夜のプロポーズを受けた真由美は大学への進学をやめ、七草を捨てて駆け落ちした。

 

転がりこんだのは四葉家、朔夜を見るなり全てを思い出し、涙を流して迎え入れた真夜。

それから達也ら一人一人に会い、今にいたる。

思い出した時のみんなの反応は今でも笑えるぐらい抜けた顔や申し訳ないくらい涙を流してくれた人もいた。

 

「朔夜君、行くよ?」

 

手を差し出した真由美の手を笑顔で握り返すとみんなを迎えに玄関へ向かう。

二人の左薬指には桜の花が彫刻された指輪が輝いていた。

 

☆★☆★

 

「ねぇ、エリカも来た?」

 

「レオわレオわー?」

 

「ほら二人共ちゃんと並んで!」

 

「父様、母様速くー!」

 

「「「「「「いらっしゃい」」」」」」

 

訪ねて来てくれた達也、深雪、エリカ、レオ、美月、幹比古、雫、ほのか、摩利

 

それぞれに挨拶をする中、朔夜と真由美の前に並ぶ四人の子供はその後遊んでもらうのが待ちどうしそうな顔をしている。

 

子供達は両親と同じ黒い髪に赤、水色、黄色の目をした女の子と緑の目をした男の子の四ツ子だった。

 

真由美が四ツ子を妊娠したと聞いた時はみんな驚いた物だ。

 

名前は朔夜と真由美が彼女達にも幸せに生きて欲しいと祈りを込めて、夏深、満夜、深冬、深雷。

 

深冬と深雷がエリカとレオの手を引き中庭へ遊びに向かう。

夏深は深雪の話を聞きたがり、満夜は恥ずかしそうに夏深の後ろへ隠れている。

 

この後、深雪へ真夜が早く当主を継いでもらって、四葉の仕事から解放され、孫達とずっと遊んでいたいとぼやいたりするのはご愛嬌。

 

朔夜は四葉を継がないのか?

 

朔夜はこの世界になってから魔法を一度も使っていない。

失敗作であろうともこの幸せな時間を真由美と、家族と1日でも長く過ごすために。

 

 

 

ー完ー

 

 

 

 




あとがき

この話で魔法科高校の劣等生〜四の名を持つエレメント〜を最終話とさせていただきます。

この作品を読んでくださった皆様、お気に入りに入れてくれてくださった皆様、評価してくださった皆様、本当にありがとうございました。

あとはただいま、ダンまちの二次創作を書いておりますそちらも楽しんでいただければ幸いです。
《ベル君が生き倒れを拾ってきたのは間違いだっただろうか》を読んでくださる方はこれからもよろしくお願いします。

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