最強の盾は橘福福しか見えなくなる。〈旧題:最強の盾〉   作:カブトムシの相棒

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スターライトビリーかっこよすぎで草です。


では、本編です。


最高のデート。そして、嵐の前の静けさ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────皆さん、如何お過ごしでしょうか。

 

お仕事で働いている方、学校に行っている方、家で休日を満喫している方、様々でしょう。

そんな皆様に、幸あれ……。

 

………………。

 

うん、キャラじゃないな。

まぁ俺がこんな聖人君子みたいなキャラに成るのは列記とした理由がある。

それはだな……これだぁ!!

 

 

 

「────んぅ~~っっ!おいひぃですーっ!」

「応よッ!良い食いっぷりだな嬢ちゃんッ!気持ちが良いねぇ!!」

「ありがとう御座いますっ!あたしラーメンが大好きでっ!こんなに美味しいラーメン生まれて初めてですっ!!幸せですっ!」

「なぁっはっはっはっは!!そうかそうかッ!衛非地区の女の子にそう太鼓を叩いて貰えんのは嬉しいねぇ!おいケン坊!お前さん良い子連れて来るじゃねぇか!」

「いやそんな……当たり前ッつうか、それが俺っつうか?福福は良い子っつうか!はっははー!」

「そうかぁ!調子が良さそうで何よりだ。今回は特別だ、替え玉を無料でどうだ?」

「はっ!?マジかよオッサン!福福、言葉に甘えんぞ!」

「いいんですかっ!?やったーーっ!ありがとう御座いますチョップ大将さん!」

 

 

 

────可愛い……あ、間違えた。カッコいい……。

 

そう、俺と福福はいま昼食を食べている。

滝湯谷・錦鯉……天狗のオッサンが営んでいるラーメン屋でだ。

 

そこに俺は福福を連れ、ラーメンを啜っているが……此処がまた美味いんだわ。

一応、常連ではある。最近は仕事やら治安局との追いかけっこで来れなかったが、やはり此処のラーメンは旨い。

 

俺はきのこラーメン、福福は豚骨ラーメンだ。

 

 

 

「犬太郎くん!こんな素敵な所に連れて来て頂きありがとう御座います!あたし、今すっごく感動しています!」

「とんでもない。福福も俺に衛非地区の美味いお茶屋に連れてってくれたろ?それのお返しだ」

「っ!えへへへ!」

 

 

 

嬉しそうに照れる福福を見る。

 

あぁ、本当に可愛い。

この可愛さで、この子に対して可愛いと云うのは余り宜しくない。

前にも言ったが、かなりキツイ……だって可愛いんだもん。と、誰かに対し愚痴りそうになる程に。

 

そうして福福の方を見ると……ラーメンが空に成っていた。

 

 

 

「……餃子も頼むか?」

「え?で、でも……」

「正直足りんだろ。良いよ俺の奢りだから。オッサン、この子に替え玉と餃子を」

「応ッ!」

「あっ……っ……ありがとうございますっ!」

 

 

 

最後まで聞かず、犬太郎はチョップ大将に注文をする。

チョップ大将も呼応するように、即座に作業に取り掛かる。犬太郎の意義を汲み取ったからだ。

 

そうすれば、物の数分で替え玉と餃子が提供された。

 

 

 

「へいお待ちッ!替え玉と餃子セットだぁ!」

「ふわぁぁぁ!!美味しそうーっ!」

「遠慮せず食ってくれ。此処は餃子もそれなりに美味い」

「それなりじゃねえよケン坊!凄まじくだこらッ!」

「はっはっは!悪い悪い!あぁ、オッサンの自画自賛の言う通り、マジで美味いぞ。何ならコンプリート目指すか?」

「さ、流石に動けなくなっちゃいますし、申し訳が立たないので……次来る時にまた新しいのを頼みますっ!先ずはこの替え玉と!香ばしい匂いの餃子をっ……いただきまーす!」

 

 

 

そう言いながら、福福はバクバクとお品を食べていく。

 

 

 

「旨いか?嬢ちゃん」

「はいっ!はむっ!はむっ!!ん~~~っ!!ラーメンは言わずもがな、餃子は肉汁たっぷりでジューシーで!すっごくすっごく美味しいですっ!」

「はっは!そいつは良かったァ!にしても……あのケン坊がなぁ、まさかこんな可憐な子を連れて来るとはなァ……初めてのナンパ成功ってヤツか?」

「ナンパ……まぁ否定は出来んな。ありゃナンパだし」

「ぷふふっ!貴方があたしに言った事、今でも鮮明に覚えています……本当に、吃驚したんですからっ」

「んぅ……あれは忘れてほしいんだがなァ………ちょいと俺らしくなかった発言だったし」

「ふーん?はぐっ、もぐ………良いんですか?そんな事言っちゃって」

「なに?」

「あたしにとって、あの時のお言葉は今や……待ち続ける源力なんですよ?」

「ッッ……………」

「ふふふっ!お顔が真っ赤ですよ?犬太郎くん!」

 

 

 

今日は珍しく福福が少し犬太郎を煽る。

 

チャイナ服を着用し、小柄ながらもその様相は非常に蠱惑的。

ギリギリその口調でまだ幼さを醸し出しているが、半分以上は福福の雌を出していて、かなりエッチだった。

 

だが犬太郎とてまだ10代の少年。やられっぱなしは性に合わず、頭をフル回転させ何とか反撃の言を繰り出す。

 

 

 

「誰の所為だとッ……んな格好してっから、羞恥心とか色々その他諸々とレベルが上がって、そんなイジワルな虎に成ってんじゃ無いか?福福の方が助平だろ」

「んなっ!?!?何てこと言うんですかっ!ひどいじゃないですかー!」

「事実を言ったまでですー!今日の福福は魅惑的で素敵だけどちょっと悪虎ですー!」

「ん---っ!!んもっっ……っ……ほ、本当に?」

「……あぁ………嘘は付かん」

「っ!へへ、えへへ……うれしいですっ」

「他所でやってくんないか???」

 

 

 

言い合って、そして最後は急にイチャつく。

それを間近で見せつけられるチョップ大将………ブラックコーヒーを一気飲みしたくなったと、彼は後に綴ったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────まさかデートで最初の目的地がラーメン屋とはな………あの()の顔を見るに喜んでいるのが面白いが」

「あの御二人だからこそのデートで御座いましょう。ありきたりではないからこその特別、彼が橘福福さまをよく見ている証ですね……ラーメン屋の大将さまが御二人に困り果てているのは、少し同情いたしますが」

 

 

 

物陰から犬太郎と福福の様子を監視する見守り部隊。

ライトとライカンが二人の様子を見て、そう告げる。デートで最初に行く場所がまさかのラーメン店に驚きを隠せない面々の心情等を顕わすかのような発言だ。

 

リンが発語する。

 

 

 

「それにしても橘福福って子、すっごい食べるね……これでもう替え玉3個めだし、餃子も頼んでるし」

「事前に調べた所、どうやら虎のシリオンの御方は食欲旺盛な方が多く居るみたいですわ。遺伝的に戦闘に特化した虎のシリオンは、瞬発力と連撃性が非常に高い故、燃費も激しいと伝えられていますが……コレは個人差もあるとの事らしいですわ~」

「そうなのかい?それは知らなかったな。ありがとうリナさん。しかしあの小柄な体躯で、あの量の料理を平らげる胃袋か……凄まじいね」

「美味しそうに食べるもんだから、私もお腹空いて来ちゃった。飴たーべよ」

 

 

 

気配を消してそう告げる面々。

話題に成るのはやはり福福の脅威的な食事量。小柄な体躯なのに凄まじい量のラーメンや餃子を食すその姿は、流石としか言いようがない。

 

少しの間、カリンが告ぐ。

 

 

 

「……犬太郎さんのあんな顔、初めて見ました」

”「ッ!」”

 

 

 

屋台に座る背中越しから見える、福福を見る横顔。

 

その横顔は……今迄の犬太郎には見られなかった愛ある顔付き。

 

 

 

 

 

『────俺には、生きる資格すら、ないってのにッ……』

 

 

 

 

 

「…………」

「……ライトさん?」

「いや……ちょいと、感慨深い気持ちに成った。まさかあのクソガキが、こうまで成長するたぁ………橘福福って娘には感謝しきれん」

「ライトさま……」

 

 

 

犬太郎と一番親密な関係なのは他でもない、ライトだ。

 

彼が14歳に成りたての頃に初めて会った。今年で6年目になるが……中学生の年代の犬太郎は、ハッキリ言ってメチャクチャだった。

 

クソガキと云う文字で済ませて良いのか……The・不良少年。そういう感じだった。

郊外の岩崖を幾多も粉砕し、近付くなオーラ全開で、誰も信頼できなくなってしまっていた時期。

 

それを根気強く粘り、誰よりも傍に居続けたのが……ライトだった。

 

 

 

「犬太郎はな……エレンやカリンくらいの年代の頃はそれはまぁハチャメチャな子供でな。リンとアキラには少し言ったが、あん時のアイツを見ていたのは俺ぐらいだった。14のガキが、当時の郊外じゃトップ級の強さと狂気性を持ち合わせてたんだ。そら誰も近づけんわって話だ……因みにだが、女にもそうだったぞ」

「マジ?あの犬太郎が……?」

「そ、想像もできません……っ」

「犬太郎は女性好きで有名だが、それはつい3年ほど前の事。きっかけはウチの女子陣だがな……それまでの犬太郎はかなりグレ散らかしてたんだ。見る者は睨み付け、挑む者には半殺し。当時の俺がやっとの思いでボコしても次の日にはケロっとしてると来た。何故か俺には反抗心はなかったが……色々と大変だったのは、昨日の様に覚えている」

 

 

 

そう言うライトの表情は、苦々しい思い出ながらもどこか嬉しそうで。

サングラス越しから見えるライトの眼は……まるで、成長した息子を見ている様な、親の様な目付きで。

 

 

 

「……最早、兄弟分じゃないね。僕から見た君たち二人は親子だ」

「おいおい店長、冗談は止せ………育てた覚えはあるが、あんなデカブツを産んだ(?)覚えはない」

「育ての親もまたその子の親……といった言葉が御座います。ライトさまも十分に彼の親と呼べましょう」

「犬太郎さまがライトさまにお父さんと呼ぶ事があれば、このリナ、もらい泣きしてしまう自信がありますわ~♡」

「犬太郎とあの子の結婚式で、ライトさんが正装を纏ってスピーチしてる姿が僕には見えたね」

「ぷっ!それホント面白い!多分ライトさん泣いてる!」

「”俺が居なくても、お前にはもう福福が居る”……とか言ってそう(ド失礼エレン)」

「ぷひゅっふ!…っ、ふひっ…w…(ツボり掛けるカリン)」

「……俺も犬太郎もこういうキャラか」

 

 

 

女子陣の痛烈なイジリ。

これにはあの無敗のチャンピオンも白旗を上げざるを得ない。苦笑いを浮かべてそう告げる。

 

犬太郎もライトも、何故かそういう役に回りがちな時がある。育て親とその子は似た者同士、なのだろう。

 

 

 

「っと、お喋りはそこまでだ。二人が移動し始めた、追いかけるぞ」

 

 

 

無理矢理話題を逸らし、先頭に立って二人の行方を追うライト。

 

彼のその耳は……少し赤くなっていた。

 

その事に気付いたのは、リンただ一人だったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ぷひゅーっ!お腹いっぱいです~!あんなに美味しい豚骨ラーメン初めてですっ!連れて行ってくれてありがとう御座いますっ!犬太郎くん!」

「喜んで頂けたんなら、これほど嬉しい事は無い。どういたしまして……次は映画館だが、少し遠い。歩けるか?」

「えへへっ!勿論です!食後の運動ってやつですね!……でも、本当に良かったのですか?ラーメンとか奢って頂いちゃって……あたしばっか食べていたのに」

「気にするなと言ったろ?今回は福福が主役ので…デートで、引率は俺だ。それに誘った身として、何よりも男としての作法だ。金に関して貴方は何も気にせんで良い……強いて言うなら、雲嶽山の皆にお土産を買う事くらいだ」

「犬太郎くん………ふふっ、分かりました。では御言葉に甘えさせて頂いても良いですか?」

「あぁ、どんどん甘えてくれ」

 

 

 

午後12時を等に過ぎ、1時を回る頃合い。

二人は少し休みながら歩道を並んで歩く。少しお腹が膨れた福福に歩幅を合わせている故か、犬太郎の歩行速度はかなり遅い。

 

だが、それが良い。それで良いと思える程、犬太郎はいま幸福だった。

 

なぜか、それは……。

 

 

 

「にしても、やっぱ福福の食いっぷりは見てて最高だな。一口一口を大事に食べ、その時の美味しいと云う感情を前面に溢れ出す。料理人からしたら冥利この上ないだろう」

「そうですかね?あたしは美味しいー!って感じをただ出してるだけなので、よく分からないのですが……」

「逆にそれが良いのかもな。可憐たる喜びと素直さ、それが分かり易いと有り難いんだ……オッサンも嬉しそうだったしな」

「えへへ……なんだか、照れますねっ」

「貴女ほど可憐で、人に好かれる素質を持つ者は早々居ない。俺が出会った中では二人居るが、福福はその二人と同じくらいには……モテる」

「も、モテる!?」

「あぁ、モテる。俺はそう確信したな」

 

 

 

急に変な方向へ舵を回転させる犬太郎。

無論、福福は驚きを隠せない。この男は急に何を言い出すんだと、そう言いたい顔をして。

 

 

 

「そういえばモテるで思い出したんだが、そういう話題をした事がなかったな」

「な………なんですか?」

「福福の……その……聞いて良い?」

「なんでそこで怖気づくんですか……」

「いや、なんか、急に聞いて良いのか怖くなっちゃって」

「……大体予想は出来ましたけど、大丈夫ですよ。その……聞いて、下さいっ」

 

 

 

彼の突拍子もない発言には大分慣れつつある福福だが、まだ吃驚してしまう。

きっと此の先、己は彼に振り回されるのかな……と、少し耽った思いも抱いて。

 

福福が予想した事……それは、犬太郎の心を読んでいた。

 

 

 

「分かった…その────好きなタイプって、ある?」

「っっっ………んもうっ……!」

「え?おわっ……ご、ごめん?」

「疑問形で謝ってどうするんですかっ!もうっ……今迄の交流は、一体何だったんですか……」

 

 

 

やっぱり。

予想した通りだ。

この男は、やっぱりこういう男なんだ。

 

掌をギュっと握り、何て言ってやろうか悩む。

 

数秒の間……福福が、告ぐ。

 

 

 

「────強面で」

「ッ!ふむ」

「黒髪で」

「ほう」

「筋肉が凄くて、カッコよくって」

「おー」

「見た事はありませんけど、凄く強い御方で」

「ほうほう」

「……夢があって、その夢に向かう強さもある人です」

「……」

 

 

 

福福が顔を真っ赤に染めて、そう告げる。

言った。言い切った。

最早コレは……もう、アレに近い。

 

でも自分には嘘は付けない。

無論、この人にも……。

 

それに、自分は一度待ったを掛けられているんだ。

あんな寸でで掛けられて、焦らされたんだ。

 

……ちょっとの、仕返しだ。

 

だから……直接じゃないけど、こうやって少し言ってやった。

 

 

 

「………福福の」

「ッ……~~~っ!」

「福福のタイプって……」

 

 

 

まさか……言うのか?

もう、この場で?

 

犬太郎が不気味に淡々として何かを云おうとしている。

こんな、こんなアッサリと言うのか?

 

待て、心が持たない。まだ準備が出来ていない。

 

そう思い、福福は声を出す。

 

 

 

「あっ!あのっ……あ、あぁ、あたし…!」

「……ってーと、福福は、アレだな」

 

 

 

だが、そんな事お構いなしに犬太郎は発語する。

遮って、何かを言おうとする。

 

その顔は……何処か、少年の様な風貌で。

 

意を決する。その、瞬間だ────

 

 

 

「────何かアレだな!福福って古代の格闘漫画の”地上最強の親父である『範〇勇〇郎』みたいな男”が趣味なんだな。なんかそれっぽいかm」

「────フシャァァァァァァァァァァ!!!!!」

「うぇ!?な、なんだ何すr……いやぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

福福は後悔した。

 

この男に………惚れてしまった事を。

 

 

……一応、犬太郎の言い訳を説明する。

 

彼は決して恋愛漫画の様なクソボケな主人公タイプではない。

寧ろ、そういう場面が来たら迷わず突っ込むタイプだ。

 

何故か遠くなる耳や、人からの好意に疎いとか、全く以てそんなではない。

 

では何故、今回こんな馬鹿をしたのか……それには、一つの理由があった。

 

 

 

「貴方みたいな朴念仁は初めてですよっ!!このっ!このこのこの!」

「ま、待て福福ッ!ホンマごめん!でも原因を教えてくんね!?俺なんでボカボカ殴られてんの!?」

「っっ~~~~~!!!!あっ!あたしが!あたしが、どんな想いで……っ!!」

「重い?いや、福福はまだ軽い方だろ?あと俺は福福が重くても、凄く良いと思うz」

「誰もそんな話はしてないんですよ~~~っ!!!禁煙の所為で脳の思考回路が可笑しくなってるんですか!?そうですよね!?そうだと言って下さい!!!」

「えぇ!?そうなのか!?」

「あたしが聞いているんですよ~~~~!!!!」

 

 

 

そう────福福の言う通り、彼は過度な【禁煙】の所為で少し脳が疲れているのだ。

 

身体を動かしたまま10回の徹夜が可能な犬太郎だが、タバコが介すると一気に脳が疲れ始めてしまう。

離脱症状は大分治まっているが、未だにその疲れは残っている。現に今、福福に対して最悪とも云えるクソボケをブチかましたのが証明だ。

 

それを何となく理解して上で、犬太郎の胸板をボコスカ殴る福福。

流石に許せなかった。なんだ、その地上最強は……結構気になっている自分が居るのが更に腹が立つ。

 

 

 

「あだだだだっ……ぷっ!ククッ!ふははは!」

「はぁ!?なんで笑ってるんですか!」

「いや、すまんすまん!だって……綺麗で()()()何て、余りに反則だろって思っちまってな。つい笑いが…………あッ」

「あっ…か、かわっ………」

 

 

 

犬太郎は失言に気付いても、既に遅いとも気付いてしまった。

福福は彼の言葉を脳内で反復する。

 

何度も、何度も……何度も。

 

 

 

「お、怒られているからって!あ、ああ、あたしに、そんな誉め言葉……じゃないですよっ!綺麗なんて……か、可愛いなんて言葉は、い、意味なんてないんですからねっ!!」

「わ、分かっているッ……すまん、福福は綺麗だが可愛くない!コレで良いか?」

 

 

 

”ズキッ……”

 

 

 

「ッ……そ、それは言わなくっても……」

「福福って偶にメンドクサイ時あるよな」

「んなっ!?」

「あ、いや、そういう所も俺は……良いと思っている」

「付け足したように言ってー!本気で怒りますよ!!」

「可愛い可愛い可愛い可愛い……怒った?怒ったべ???」

「け~ん~た~ろ~う~く~ん~っっ!!!?」

「あ、マズ……流石にヤバいか……」

 

 

 

プルプルと身を震わせ、彼の煽りを正面から受ける。

 

それを抑えられる福福な訳がなく……遂に。

 

 

 

「────もう怒りましたっ!謝っても許さないんですから~~!!」

「いぃぃヤァァバイ!!!此処で一句(!?)……~エグイマジ、最高の虎から、逃げる俺~」

「最高の虎だなんてそんな………って!!んもーーっ!!!おふざけが過ぎますよっ!映画を観る前に貴方には徹底的なお仕置きが必要みたいですね!?ってか字余りですしっ!」

「川柳の才能ないかもしれんわ!!だから許して―!」

「そんなんで許せるわけないでしょっ!!コラ!待ちなさーーいっっ!!!!」

 

 

 

そうして、何故か追いかけっこが始まった二人組。

福福が追いかけ、犬太郎が逃げる。

 

福福は少し走り辛そうにしている。

彼女が着用しているチャイナ服は戦闘用ではない。列記とした、お洒落用の服だ。

 

加え、珍しく福福の今日の靴はヒールだ。

 

服装も相俟って、かなり遅い。だが……。

 

 

 

「捕まえたっ!」

「ぎゃーー!!捕まった!」

 

 

 

何故か直ぐに捕まる犬太郎。

彼女と違い、犬太郎は服装も靴も走り辛くはない筈。

 

つまり、犬太郎は……。

 

 

 

「……わざと捕まりましたね?」

「クハハッ、まぁな」

 

 

 

そう、わざと捕まったのだ。

無論、理由はただ一つ。

 

 

 

「福福が折角俺の為に着てくれた服と靴だ。駄目にしちゃ、それこそダメだろ?」

「ッ…!」

「それに……一度やってみたかったんだ!その………福福と、追いかけっこ的なの」

 

 

 

福福の心は、彼の愛おしさで溢れた。

その言葉は劇薬に等しく、怒りの情が失せていく。

 

生意気なガキから、可愛い子供に変わった瞬間だ。

 

 

 

「~~~~~!!もう!貴方という人は………しゃがんで下さいっ」

「ん?わかった……あびっ!うびびび……ほっぺた、のびりゅ…!」

「本当に硬いお肌ですね………お仕置きはこれで勘弁してあげます。今日はデートですし…っ」

「ッ!へへっ!」

「んっ!で、でも!またさっきみたいな事をしたら!ちゃんと御説教なんですからねっ!分かりましたか?」

「おうッ!」

 

 

 

福福は、こういった無邪気な彼には敵わない。

そう感じてしまう程……犬太郎は、己が年上だと確認するにはまだ子供だった。

 

それ故か……可愛く見えてしまう。

 

 

 

「顔を真っ赤に染めて、恥ずかしがっているんですか?あたしに頬っぺたを伸ばされるの」

「そりゃ……福福は恥ずかしくないのか?」

「あたしは……頬っぺた位はもうそんなに。だって……手、握ったじゃないですか」

「……そうか、そうだよな。俺等ってもう手握ってんだよな」

「そう……ですね」

 

 

 

犬太郎は続ける。

 

 

 

「………握って、いい?」

「……勿論ですよ」

 

 

 

そう言ったら、福福は頬っぺたから手を離し、そのまま自分から犬太郎の右手を握る。

 

 

 

「ッ……柔らかいっす」

「なんで敬語なんですか?」

「つい……」

「ふふっ……やっぱ、貴方は硬いですね。すっごくすっごく……硬い」

 

 

 

前回と似た様な会話をする二人。

本来なら、このまま映画館に向かう流れ…だが。

 

 

 

「……俺の、硬い?」

「?……はい、硬いですけど……ガッチガチですっ!」

 

 

 

なんと犬太郎、ここで男が出る。

 

 

 

「あたし、こんなに硬いの初めてだったんですっ!だから、またこうして触れて……えへへ、結構嬉しかったり!」

「ぶふっw……ふっ………俺、頑張るからな、福福」

「え?これ以上もっと硬く成るつもりなんですか?」

「ぶふっふッ………いやマジで凄いから、福福多分だけど吃驚するんじゃないかな」

「そりゃ、こんなに硬いのに、これ以上硬くなるんですから……あたし、感心しちゃうかもです!」

「ほっっ…っ……!!」

「あの、さっきから何で笑ってるんですか?」

「いやっ…っっ………んぅ!!なんでもないよ。福福は素敵だなって思ったら笑っちゃっただけだ」

「絶対嘘ですよ!そういう感じの笑い方じゃなかったですもんっ!」

「ホントホント!マジで俺はっ…w……福福、映画のジャンルは何が好き?」

「もうちょっと確りと話題を逸らしてほしいんですけど!?」

「まぁまぁ!一旦この話は置いといて……因みに俺は色んなジャンルが好きだけど、最近見たのは【燃えよタイガー】シリーズだぜ。あれガチでおもろい」

「っっっ!!!?燃えよタイガーですか!?あたしも好きなんですっ!犬太郎くんも観てたんですねっ!!」

「え?マジ?福福も観てたん?虎のシリオンの『虎威威』が主演のヤツだべ?……うっそガチで!?こんな偶然あんだすっご!アッツ!!え、あれめっちゃイイよな!ドロップキックも良いけど俺はエルボーも好き」

「分かります!あの!えっとえっと!シリーズはやっぱり────」

 

 

 

そうして、まさかの観ていた映画が福福の推し映画であったと発覚。

そのまま、二人は手を繋ぎながら映画の話をして映画館に向かって行った。

最初こそ羞恥はあったものの……今では、それも次第に抜けて来ている。

不思議な事に、それは犬太郎も福福も楽しく感じ取れている。

 

もう言ってしまいたい。

 

 

 

「(……焦るな。今日は福福を楽しませる事だけに集中しろ……悲しませるなんざ許せん)」

 

 

 

犬太郎にも、力強い意志が芽生え始めている。

 

今日は家に福福が来る。

それによって浮かれ、避妊具を買ったりして。

だが、冷静になれば、まだ付き合ってもいないのにソレはダメでは?と、考えて。

 

仮に、マジのマジで仮に、福福と付き合えたとしても……付き合って即日でヤル……は倫理的にも、そして福福的にはどうなんだ?

 

と、男の子らしい思考をこの短期間でしていた犬太郎。だがゴムは普通に持ってるし何ならしたい気持ちはある。

 

 

 

「(だって、俺は童貞だし男だ。なんか悪いのかって話……絶対に言えんけど)」

 

 

 

そう、儀玄も言っていたが、コレが犬太郎の邪気だ。

確りと男の欲を持ち合わせている、そして19歳という若気の頂点とも云える年代での情欲。

 

福福は年上。見た目は幼いが、今日の服装はチャイナ服。

露出もかなりのもので、良い匂い。

 

 

 

「(ふぅ……福福にはバレる訳にはいかまい。正味、福福のおっぱいと尻のデカさが最高って子とはな……)」

 

 

 

これ等も相俟っての犬太郎の欲望。ってか癖。

 

犬太郎は尻派だ。おっぱいも無論好きだが、それ以上に尻が好きなのだ。

 

 

 

「────って感じで……犬太郎くん?」

「ん?なんだ?」

「………スケベ」

「ふぁ!!??!?!?!?!?」

「視線がエッチですよっ……んもう」

「ま……まさか、普通に知られてた?」

「……そういう視線って、意外と分かり易いですからね?おっぱいとか、お、お尻……とか……っ!あ、あたし以外には……メっ!ですよ…?」

 

 

 

悲報:犬太郎、普通にバレてた。

 

女性はそういう視線には敏感と聞くが……こうも意図も簡単にバレるとは思わなかった犬太郎は、驚愕を隠せないでいる。

 

 

 

「なんかバレた事にショック受けてますけど、お尻に関してはガン見してましたからね…?」

「……すんません」

「はぁ……あたしの身体なんか見ても、別に……あたしはお師匠さまみたいなモデル体型でもないので、見てて楽しくも無いと思うんですけど……」

「は?福福はエッチだが!?」

「!!?!??!???!??!?」

「なに言っちゃってんのマジで……いや俺マジで自分を過小評価してる女の子はホンマこの世で一番許せんのだわッ!!なに?自分はつまらない!?はぁぁぁぁ!?俺から言わせれば福福は立派な虎で且つ綺麗なお姉さんだぞ!?純粋から溢れ出る綺麗でカッコいい女性の姿と云うギャップが凄まじいんだが!?あんま舐めとんちゃうぞ……ッ」

「は、はいっ……しゅひまひぇん…っ」

「分かって無さそうだから映画館に着くまで俺が貴方の魅力を語ってやる……先ず────」

 

 

 

一転して、二人の会話の内容は映画系から福福の魅力話に。

 

それが意外と確りとしたプレゼンテーションで、福福は彼の発言が嫌に成るくらい耳から脳へと走り、赤面を隠せないでいた。

 

時が変わって、攻守が変わる二人……だが、やはり無敵と化した犬太郎は恐ろしく強い。

 

そうして……犬太郎の言葉の連撃をその身に受けながら、福福は映画館へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

”────ゾゾゾゾゾッッ!!!”

 

 

 

「────ッ!?」

「あうぅ……も、もう、勘弁して………あれ?」

「………まさか」

「犬太郎くん?」

「……いや、幾ら何でも関係はないか……まさか、雅?………すまん福福、急にクシャミが出そうになった。んで、福福は何よりもその髪質が綺麗で────」

「あ、続けるんですね……」

 

 

 

瞬時に福福に誉め言葉をぶっ放す犬太郎だが、内心は穏やかではないかった。

 

……犬太郎の身体が芯まで警鐘を鳴らす。

まるで、心臓を握られたかのような悪寒が襲う。

……絶対強者によるその威圧、その殺意、その覇気……まさに規格外の者。

 

 

犬太郎は深く考えず、福福との時間を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────やっと見つけた。そう思っていた矢先………なんだ、あの娘は」

 

 

 

六分街のとあるビル、その屋上。

そこには一風変わった女の人が居た。

 

 

 

「犬太郎……その女はなんだ?私と会わない期間、お前は何をしていたんだ?……まさか、その娘はお前の女なのか?」

 

 

 

黒髪の長髪で、何よりも特徴的なのがその大きな狐耳。

 

犬太郎との距離は20㎞はあるであろう。

 

 

 

「……いや、良い。少しの火遊びは許してやる。一歳上の余裕を身につける修行を終えたばかりだ」

 

 

 

その距離感で犬太郎を視認し、爆発的な圧を向けるこの女性の正体は……。

 

 

 

「今は楽しんでいると良い……だが刻が迫り、それでもその女と共に居るのならば」

 

 

 

新エリー都の公的組織【対ホロウ特別行動部第六課】の課長を務める最強。

 

────虚狩り:『星見雅』その人だ。

 

新エリー都でも屈指の武術一家で、その知名度は頂点に位置する名家だ。

 

その中で彼女は【星見家】に代々伝わる妖刀”骸討ち・無尾”を受け継いだ跡取り娘。

 

そんな女傑である雅の双眸が捉えている男、犬太郎は……。

 

 

 

「────今日、私のモノにしてやる」

 

 

 

12年前の因縁が蘇る。

 

そう、なんと犬太郎は……現代最強格の雅に、上層部から命令された任務など関係なく、狙われてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

次回

 

大修羅場。







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