最強の盾は橘福福しか見えなくなる。〈旧題:最強の盾〉   作:カブトムシの相棒

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タイトルに大修羅場と書きましたが、正直そんなかもです。最後だけですし。すみません…インフルに掛かりました。


では、本編です。


大修羅場。

 

 

 

 

▼────■年前。

 

 

 

 

 

『────何故だ』

『……言った通りだ。俺は一人で生きていく』

 

 

 

何故だ。

何故だ犬太郎。

 

 

 

『一人で……生きていく?』

『あぁ……これは俺が決めた道だ。お前は、お前が目指すべく道を進めばいい』

「ふざけるのも大概にしろ!」

 

 

どうしてなんだ。

私に、ナニガ……私の何が足りなかったのだ?

 

 

 

『────お前に何があったのだ、犬太郎ッ……酒に溺れ、煙草に身を案じる何て………』

『────なんだ、聞いてないのかよ』

『なに…?』

『宗一郎の計らいか、それとも治安局全体の意志か………まぁ、知らないのならそれでいい。雅、俺の事はもう忘れろ。俺は俺が成るべく盾に成る……そこに、俺みたいな人間がお前の傍に居て良い筈が無い』

 

 

 

なんで。

なんで……私を頼らなかった。

 

どうして。

 

どうして、お前は……。

 

 

 

『────俺は消える。悪いな……』

『ッッ!!待て!待って、まて……』

 

 

 

────そんな、今直ぐにでも死にそうな顔をしているのだ。

 

 

 

『あ、そうだ雅』

『ッ!!』

『……母親を殺したとて、お前に罪はない。だがその全てを抱えてこそ英雄だ……英雄ってのはそう言うモンだと思う』

『あっ………』

『早い時期、お前は虚狩りになりそうな予感がする。そうなったら陰ながら応援してるよ……じゃあな。二度と会わない事を祈るよ』

 

 

 

お前は、ズルい男だ。

 

世界一、ズルい男だ。

 

どうして……それだけの言葉を残し、私の前に姿を消したんだ。

 

私は、それだけが心残りで仕方なかった。

私とお前は、仲は悪かったが……信頼できる関係だったではないか。

 

私は……捨てられたのだ。

 

 

 

 

 

 

────彼が父親と桃子、そして村人を殺した事を知ったのは、そのあと直ぐだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────福福褒め褒めタイムから30分後…。

 

 

 

 

「────で、あるからして、福福は頑張り屋さんにも拘らず、自身以上に他人へ気を遣い奮闘する姿が先ず最高だ。福福を福福たら占める在り方で俺が大好きな感性である。そして何よりもその髪質だ……貴女の癖っ毛には底知らぬ強さを感じる。ピンっ!て跳ねてるの唯一無二感があって何かカッコいいし、そしてn」

「も、もういい!!もういいですからっ!ずっと貴方だけで喋ってますから!犬太郎くんがあたしを見ているのはもう分かりましたからーーっ!」

 

 

 

映画館付近、近郊にて犬太郎と福福は平行して歩いていた。

 

その様相は、非常に異様な光景だった。

1人の大男が1人の小柄な少女にナンパが如く延々と褒めちぎっているのだ。

 

それも、30分以上も前から………今迄、色んな女性にナンパ、好い寄っては紳士(変態)をしてきたスキルが、この様な場面で役に立っている。

 

……福福には死んでも言えないスキル経緯である。

 

 

 

「おいおい、まだ後6章も残っているんだぞ?この10章分の福福語りはァ」

「え!?今までの30分は4章分の誉め言葉だったんですか!?」

「逆に何だと思ってたんだ?俺的にはまだ話足りないんだが……」

「変な想いが強い……んもうっ………」

「……あと満更でも無さそうな時は右耳を撫でる所と~」

「もういいですってばーっ!どんだけ、あ……あたしを、見てっ………はっ!ま、まさか今迄の女性もそうやっt」

「さッッ!!!そろそろ映画館に着く頃合いだ。観る映画でも決めようか、福福」

 

 

 

内心抱える犬太郎 → あっぶねー!!

 

犬を見つめる福福 → ふ~~~~ん……。

 

 

そんな感じの雰囲気。咄嗟に遮る犬太郎は脂汗が止まらない。

犬太郎は背中の冷や汗ダラダラ、福福はジト目を彼に送りつける。

 

だが、映画館が近づいているのも事実。一際大きい建物が見えたので、二人はそこに向かって入る。

 

チケット販売所まで行き、今日の映画のラインナップを見る……。

 

 

 

「さて、ぶっちゃけ何を観ようか考えずに着ちまったが……うん、何を観ようか。福福はバトル系が好きそうだが…どうする?」

「そうですね~………あれ?あ、現時点で上映されているB級映画は今から2時間後に開演みたいですね……」

「む、本当だ。それは困ったな………じゃあ、恋愛映画でも見るか?」

「おっ!良いですねー!あたしは余り観ないジャンルなので、この【20年越しのキス】を観ましょうか!」

「決定だな。よし、早速席の指定を………あぁん?」

 

 

 

観る映画が決まったものの、此処でちょっとしたアクシデントが発生。

 

それは……席が不規則的に埋まっており、二人並んで座れないのだ。

 

 

 

「ありゃ、これだと離れ離れになっちゃいますね……」

「だな……どれだけ近くとも、8個空いちまうか……」

「………」

「………」

 

 

 

口に出さずとも、二人の脳は同じ思考回路をしていた。

 

 

 

「(────離れたくねぇな……)」

「(────離れるのは嫌です……)」

 

 

 

そう、そういう事なのだ。

席が隣じゃない映画鑑賞など、デートの意味がない。

 

映画デートならまだ分かるが、今回は全体のデートに映画を組み込んでいるに過ぎない。

それなのに、2時間も離れるのは……少し、いや非常に嫌だった。

 

 

 

「………こ、これはやめますか!」

「だ、だなッ!うん、そうしよう」

 

 

 

二人してそう判断する。

妥当だろう、直接言わなくとも互いに分かる……早くつk

 

 

 

「それですと、コメディ系かアニメ、後は……あッ!犬太郎くんコレとかどうですかっ!」

「ん?なんか良さげな映画でも見つけた…の…………すぅ……え?」

 

 

 

すると、チケット販売所を弄る福福が声を上げ、其の映画に指を差す。

その映画の内容は……何とコレだった。

 

 

 

「────〈絶望の夜シリーズ:浜辺を這う女編〉ですっ!コレ再上映されてたんですね~!実話を基に作られたモノで、新エリー都全体でも人気な屈指の【ホラー映画】なんですよっ!それにこの映画は席がかなり空いているので、一緒に……座れ…ん?」

「ほへ…ッッ………ふぅぅん……え、えぇんちゃう?」

「………犬太郎くん?」

 

 

 

福福がその映画を説明する。

その映画は実話を基に作られているホラー映画だ。

 

人形、怨霊、はたまた人間など様々な種類があり、実はを可能な限り再現したホラーを提供している。

 

その評価は指折り付き。ホラー映画界の金字塔とまで言われた、正に屈指のシリーズだ。

 

だが、違和感……犬太郎の様子がおかしい。

 

 

 

「……ほ…他には?他のモノもちょっと見ん?まd。まっ…まだ面白いのあるぞ?きっと、うん……あ、ホラ、この映画だってコメディ系だぞ!それにこの映画は、え、えっと……」

「…………」

 

 

 

福福、全てを察する。

 

 

 

「その……あっ!ほら見ろ福福!サスペンス系だってあるぞ!ほ、ホラー感は薄れるけど、こういうのもかなり面白そうじゃりゃ、じゃ…じゃないか?だ……だから、その映画は一旦お預けn」

 

 

 

”ピロン!ウィーン、ウィーン……”

 

 

 

「……は?」

「よしっ!予約完了ですね!後20分くらい時間があるので、ポップコーンや飲み物でも買いましょう!」

「え…………はッ!!?」

 

 

 

販売所から出て来る二枚のチケット。

 

そこには、先ほど挙げたホラー映画の名前と指定席が刻まれていた。

 

因みに席は映画館の丁度ド真ん中。全てを見据える絶好(絶望)な場所だ。

 

 

 

「ちょッッ……ふ、福福さん?あの、なにをしてらっしゃるのカナ…???」

「え?何って……チケットを買ったんですよ?絶望の夜シリーズの」

「ん、スゥゥゥゥ…………寄越せッ!!!」

「甘いですっ!!!」

 

 

 

伸びる犬太郎の手。

避ける福福。

 

ジリジリと間合いを管理する二人組……そのオーラはかなりのモノ。

 

 

 

「福福……寄越すんだ、そのチケットをッ……」

「いやです」

「……あっ!あんな所に骨付き肉があr」

「ありませんよ。此処は映画館なんですから」

 

 

 

福福の右ストレート正論パンチ。

 

冷や汗が止まらない犬太郎。

もうお分かりだろう……そう、犬太郎は…。

 

 

 

「ふっふっふ~~っ!まさか犬太郎くん、さては貴方────ホラーが苦手ですね?」

「ッッッ!!??!??!?!?!?」

「その反応、図星と見ました!」

 

 

 

そう、犬太郎はまさかまさかの【ホラーが苦手】なのだ。

 

この見た目からは想像が出来ないだろう。それは福福も同じだった。

だが、此処までの動揺、此処までの冷や汗、此処までの抵抗……そして、先程の福福の発言による図星。

 

決定的だった。

 

 

 

「……は?な、なに言っちゃってるの?べべ、別に?俺、ホラー得意だし?ってか何ならホラーとか俺食った事あるし???」

「動揺し過ぎて意味不明なこと口走っちゃってますよ?」

「くっっ……小娘ェェ……ッッ!!!」

「ふっふっふ~んっ!!さっきのお返しですよーだ!あたしに、あ…あんな恥ずかしい事をいっぱい言ったツケが早速回って来たんですよっ!」

「ぐぅぅ……ッッ!!」

 

 

 

形勢逆転。犬太郎は何も言えなくなった。

 

 

 

「……わ、分かった。観てやんよッ……ってか別に怖くねーし。俺ほら、アレだから。鋼鉄の盾って言われてる男だから。べべ、別に、こんな創作物の映画なんか怖くねーから」

「これ実話を基に作られているのですが……」

「シッ!静かにせんかッ!先に呪うぞ!!」

「ぷふっ!はいはい、分かりましたよ~!」

「な、舐めやがってェェ………ッッ!!」

 

 

 

さっきのやり返しといわんばかりに犬太郎を煽る福福。

正に悪虎。変な場面で強さ(??)を魅せている……。

 

 

 

「ささっ!ポップコーンとジュースを買いに行きましょう!今度はあたしが奢るので、一緒に観ましょう!犬太郎くん!」

「…………………はいっ」

 

 

 

そうして、ポップコーンとジュースを買った福福は犬太郎を連れ、映画館へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『────はぁ、はっ……ふぅぅ………こ、此処まで来れば、もうっ…ぇ』

『────其処に居るのかァァァァァァァ!!!!』

『────いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 

 

”ドンガラガッシャ―ン!!”

 

 

 

「────ぐおわぁぁぁ!!アアァァァァァァァ!!!逃げッッ!!!バカ早く逃げろって!!はぁぁッ…無理無理無理無理無理!!!!マジ無理!!心臓抉れてまうって!!!

んふっっ……大丈夫、大丈夫ですよ犬太郎くん……

もう無理だってっ……いるいるいるいるっっっ…其処に居るって…福福、たすけてくれ…っ

大丈夫ですよっ、ほら……前見て?

え?………ッッ!!!おわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!」

っっww………んふっぅふっ……っっ…かわいい♡

 

 

 

映画館が始まって、中盤に差し掛かる頃……犬太郎は滅茶苦茶に絶叫していた。

 

立て続けに迫る恐怖のシーンが来てはずっと絶叫している。

同じくらい叫んでいる客も居るのは居るんだが、それを超える野太い絶叫が辺りを木霊させている。

 

まぁお客が二人と残り数十人しかいないので、大きな迷惑には成っていないのが救いか。

 

 

 

そして、その数十人と云うのは……この人等もそうだ。

 

 

 

────り、りり、リン??ライ、ライトさん……ぼ、僕の手握ってくれてるよね……?

んっふ……大丈夫だよお兄ちゃん。ほら、左側はライトさんでしょ?

あぁ……厳しかったら言えよ?アキラ………俺もキツイがな…ッ

「(あらあら、御二人とも可愛いですわね~♡)」

「(コッチはコッチで大変そうだし、アッチはアッチで五月蠅いし……)」

「(いやはや……まさか犬太郎さまがアキラさま同様、ホラーへの耐性が皆無だったとは……新たな発見ですね)」

”ガタガタガタガタガタガタ……”(シンプルに怯えているカリン)」

……カリン、私に手を

っっ……ライカンしゃっ……はい…っ…ありがと、ごじゃいましゅっ…

 

 

 

追跡組も同じだ。

 

動向を伺うべく、同じ映画へと足を踏み込んだはいいが……アキラがかなりヤバイ。

ライトもグロイ瞬間は目を覆っている……だが、犬太郎の絶叫で少し元気にもなっている。

 

彼も犬太郎と同じくホラーが苦手な青年だ。

シンパシーか、それともコメディ系やドキュメンタリーが好き同士だったか、そういった所で犬太郎とアキラは波長が合った。

 

だが……悪虎福福と小悪魔リンによって、犬太郎もアキラもこの映画を観ざるを得なくなったのだ。

 

アキラはリンとライトが両脇を挟む様に手を握って、何とか鑑賞している。

 

 

そして、犬太郎と福福は……。

 

 

 

『────ギャァァァァァァ!!!』

『────きゃーーーーーー!!!』

 

 

 

”ガッシャンゴロゴロリンリーン!!!”

 

 

 

「────わぁぁぁぁお!!!うわぁぁぁぁぁ来てる来てる!!バカ早く腕降れってぇえアアアああああ!!!!!」

「(んっ……ふふっ……痛いくらい、あたしの手を握って……本当にもう、貴女と云う人は…♡)」

 

 

 

死にかけていた。

 

対照的に福福は少ししか驚かず、寧ろ、犬太郎の反応で恍惚としていた。

恐らく何かしらの扉が開いたのか、やっと後半に差し掛かったのに福福は犬太郎しか見ていない。

 

そして犬太郎は福福を握る右手を確りと(無意識で)掴み、左手で顔を隠して、チラッと指の隙間から映画を観て……そしてっ!!!

 

 

 

『────死ねぇェェェェェェェェ!!!!』

『────いやーーー助けてーーッ!!!!』

 

 

 

”パンパンズクズクピーン!!!”

 

 

 

「────ひぃぃやぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ふっふふっ……!」

 

 

 

また、絶叫を繰り返している。

 

それが何と2時間弱も続いた……それで喉が潰れないのが奇跡である。

 

そうして、犬太郎と福福、そして追跡組はその映画を何とか観終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆六分街の喫茶店……。

 

 

 

 

 

「────いひゃひゃっ……あうぅ、痛いですよ~…っ!」

「何でこうなってるか分からない福福ちゃんじゃないでちゅよねぇぇ~~!!?」

「うぅぅ……ちょ、ちょっと調子に乗りましひたぁ……ご、ごべんんはやい~~っ!」

 

 

 

映画館から数歩だけ歩いた場所に在る、小さな喫茶店。

 

そこは平日だからか人気は無く、犬太郎と福福、そして()()()()()()()()()しか居くって。

和やかな音楽が流れ、穏やかな雰囲気が場を包んでいる。

 

そんな場所で、少しだけ騒がしい二人組が居た。

 

それは犬太郎と福福だ。

 

喫茶店のテーブルで、福福の頬を伸ばしてキレる犬太郎。

その内容は、先ほどの映画……まさか、このデートでホラー映画を観せられるとは思わず、ちゃんとキレる犬太郎。

 

 

 

「ふんッ!!」

「あびっ……えへへ」

「ったく………まぁ、遅かれ早かれ知られてた事か……」

「ふふっ!まさかあの犬太郎くんがホラー系が苦手だったとは!正直吃驚ですよっ!」

「ッ……恥ずいな……はぁ、鋼鉄の盾が聞いて呆れるよ……」

「まさかっ!そんな事で貴方の盾は崩れませんよ!」

「いやだが……あんなビビった姿、福福には見せたくなかったし………俺、情けないよな……はぁ……」

「~~~~っっ!!」

 

 

 

”ギュンギュンギュン!!!”

 

 

 

完全にしょぼくれて、シナシナになる犬太郎。

よっぽど怖かったのだろう……そして、その様子を福福に見られ慰められるのがキツイのだろう。

 

まるで子供のいじけた様相だ……それが、福福の内なる母性を擽る。

 

だが、今は彼のメンタルの回復が専念だ。

 

 

 

「そんな事ありませんよっ!貴方以外にも怖がっている方は居ましたし!なのでほら、どうか下を向かないで?人には一つや二つ苦手なモノがあって当たり前なんですからっ!あたしだって苦手なことはあるんですよ?例えば野菜があまり好きじゃないとか!」

「………そうなの?」

「えぇっ!なので元気出して下さい!それにあたしは……貴方の弱い所が見れて、ちょっと嬉しかったりします!」

「え…なんでや」

「………聞きたいですか?」

「ッッ!!あっ…い……いや、まだ、いいや」

「ふふっ、そうですか!」

 

 

 

福福が含みのある顔でそう告げる。

それを瞬時に理解した犬太郎が、顔を赤くして一度拒否る。

 

だめだ、今回はどうしても主導権を福福に握られてしまう……。

 

 

 

”カチャッ……”

 

 

 

「────お待たせ致しました。此方お品物になります」

「わぁぁ!ありがとう御座います!」

「ありがとう御座います……」

「どうぞ、ごゆっくり」

 

 

 

犬のシリオンだろうか、全身白毛に帯びたモフモフの年老いたイケオジ店長が頼んだ品物を持ってきた。

 

福福にはパンケーキとハーブティー。

犬太郎にはドーナツと緑茶だ。

 

 

 

「犬太郎くん!早く食べましょう!」

「おう、食おう……ふぅ…」

 

 

 

やっと一息つける。ナイスタイミングで来てくれたイケオジ。

犬太郎は心の中で、そう思った。

 

 

 

「はむっ!ん~~!美味しいですね!」

「あぁ、美味いな……ぶっちゃけ初めて訪れて食ったが、こんなにも美味いとは驚きを隠せん……福福、ちょっと交換しないか?」

「おっ!良いですね!では……はいっ!お先にどうぞ!」

「……は?」

 

 

 

犬太郎の提案に、福福が喜んで承諾する。

 

だが……福福がした行為。それに問題があった。それは……。

 

 

 

「ん?どうしました?」

「ど、どうしたって……」

「遠慮しないで良いんですよ!ほら…()()()()!」

 

 

 

そう、まさかまさかの『あーん』だったのだ!

 

コレには犬太郎も普通に驚きを隠せない。

なんだ、己はいま、試されているのか?それともシンプルに福福がこういうのに慣れているのか?

 

そんな思考をして………福福を見て、気付く。

 

 

 

「ッッ!ふ、福福……お前」

「ほーら、あ……あーんっ!」

 

 

 

露出する白い肌が真っ赤に染まっている。

顔は言わずもがな、耳も腕も……何なら、差し出すパンケーキが刺さったフォークは少し揺れている。

 

福福は……ただ、頑張っているだけなんだ。

 

 

 

「────はぐッ!!」

「わぁっ……お、美味しい、ですか?」

「……美味い。めちゃくちゃ美味い……さすが、福福が頼んだ一品だ」

「あ、あはは……それは良かったです。此処の店長さんの腕が凄いんですね」

「そうとも、言うな………」

「………」

 

 

 

勢いそのままに食らいつく。

パンケーキの食感と味が一気に伝わる。

 

その味は、確かに美味い……本当に。

 

犬太郎は福福を見る。真っ赤だ。

福福は犬太郎を見る。真っ赤だ。

 

 

 

「………は、はずかしい、ですね!意外とっ!え、えへ、えへへへ……」

「あ、あぁ………俺のも、食うよな?」

「は、はいっ!えっと、頂きますね!」

「よし。じゃあ…………っ……い、いいな?」

「あっっ…~~~~っ………はいっ」

 

 

 

ここまで来れば、もう分かるだろう。

 

福福が始めた物語だ。言い訳などせず、彼女はただ待つ。

 

そうして……遂に来る。

 

 

 

「────あ…あ~~ん……?」

「あ…あーん……んっ…おいひぃです!」

「そいつは、良かったよ……」

「へへ……あ、ありがとう御座います!犬太郎、くん…」

「俺も……ありがとう」

 

 

 

照れて、感謝してを繰り返す。

 

まだ恋人じゃない癖に、ちょっと責めた事をして。

でも、それが逆に楽しくって、だがそれを凌駕する位には恥ずかしくって。

 

そんな事を、嬉しいと思う自分達に、馬鹿と云う。

 

二人はチビチビとまた食べ始める。

なんとか言葉を繋いで会話をするも、その内容は、あまり二人の脳に入って来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、追跡組は。

 

 

 

 

☆同じ喫茶店。

 

 

 

 

ズゾゾゾゾゾゾ(ストローを吸う音)………やっばいね、私ドキドキが止まらないんだけど」

「僕、ちょっとヤラしい雰囲気にして来るよ」

「待て待て、落ち着けアキラ。あれはもうヤラしい」

「あぁ……このリナ、あの子達が生き甲斐の一つになりそうですわ♡♡」

「アレで付き合ってないは嘘でしょ」

「もう付き合って下さい。お願いします」

「あ、あのカリンがこうまで言うとは……流石、鋼鉄の盾ですね(???)」

 

 

 

同じ喫茶店でテーブルを囲む追跡組。

二人の様子がかなり見える場所。つまり、二人にもソレは同様。

 

だが、犬太郎と福福は互いに一杯一杯な為、普通にガン見できる。

 

皆が思う………はよ言えや犬太郎テメェいつまで待たせんだボケ……と。

いやそこまでは思ってはいないが、それに近い感情は抱えている。現にカリンがバグっているのがそうだ。

 

 

 

そのまま、ツッコミながらも追跡組は二人の様子を見届けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……食べましたね~」

「あぁ……もう、腹一杯だ」

「犬太郎くんって大きな体の割に食が細く感じるのですが……気の所為じゃないですよね?」

「ん?あぁ、まーこの身体はナチュラルだからな。とはいえ、昔はもっと食っていたよ」

「はえ~、でもそうですよね。そうじゃなきゃ説明が尽かないですもん!」

「俺からすれば、一杯食ってる福福が20超えてもその姿なのが摩訶不思議だがな」

「あっ!プッツ―ン来ちゃいました!見ててくださいね!あたしはもっとデカくなるんですからっ!」

「(希望は薄いが)応援してるよ」

「何か含みがあった様な………」

 

 

 

食べ終え、そのまま雑談をする二人組。

 

特に中身のない会話が、今は楽しくって。

犬太郎も福福も、最初の頃と比べて段々と遠慮が無くなってきている。

 

その変化に、気付いて居るのかは自分たちでも分かっていない……だが、楽しいと感じる感性は、そこにはあった。

 

 

 

「────ふふっ……でも、こうして見るとあたしが年上なんだなーって思えますね」

「なに?……まぁ、見た目は完全に俺の方が年上だけどな」

「あーっ!また言って!ひどいですよ犬太郎くん!童顔なの気にしてるのに……」

「絶対にソレだけじゃない」

「あーーっっ!どこ見て言ってるんですか!」

「その頭の先から爪先まで、見上げたその先まで(?)、イェア」

「ケ~ン~タ~ロ~ウ~く~ん~~~っっ!?」

「うびびびっ……しゅ、しゅみまひぇん!」

「んもうっ!ほんと、男の子なんですから……犬太郎くんは」

 

 

 

意趣返しだ。

やられっぱなしは性に合わないから。

 

でも……やっぱ今日は、福福が強い。

 

己が惚れた女性は、天真爛漫だと思っていた。

 

だが蓋を開ければ、確りと大人の女性の部分も持つ方で。

 

ちょっと自分が言い返したら、微笑みながら指先を頬っぺたに刺して、ツンツンしてくる。

その動作、その微笑み……見てしまえば、もう、自分は動けなくなってしまう。

 

それ位………大好きに成ってしまった。

 

 

 

「それにしても、犬太郎くんってほんとにミチミチ!って感じのお肌ですよね~」

「……福福はモチモチしてるよな」

「ん?えへへ、これでもスキンケアは怠りませんからね!」

「そうなのか。儀玄ちゃんとかもモチモチだもんな」

「……邪気を感じるんですが」

「え?なに??俺に邪気???ちょ、やめて下さいよ。誰が変態ですかヤだな」

「あたし何も言ってませんけど」

 

 

 

マズい、福福の視線が鋭い。

唇を尖らせて女の敵を見んが如く眼光。

 

何故だ。

女性を性的に見て何が悪い(男の性)(よくはない)

 

そう思うだけで流石に言わない自分を褒める犬太郎。クズである。

 

 

 

「………そういえば犬太郎くん、貴方は答えてませんでしたね」

「へ?なにをだ?」

「────好きなタイプですよ!」

「……あぁ、そういえば」

 

 

 

そう言う福福は膨れっ面。非常にプリプリしてるのは容易に分かる。

犬太郎が確かにとでも言いたそうな顔付きに成る。

 

福福はすかさず彼に言を投げる。

 

 

 

「何が…あぁ、そういえば~~♪…ですかっ!」

「そんなビブラートじゃなかったけどな。なんだ福福、貴女もそう言う話が好きなのか?女おこだから」

「嫌いな人ってあんま居ないんじゃないですかね?って、そんな事はどうでも良くって……あたしばっかズルいって話ですよ!あんな想いしたんですから、犬太郎くんもカミングアウトすべきですっ!」

「むっ、まぁ一理あるか」

 

 

 

犬太郎の好きなタイプ。

 

女好きで通っている犬太郎だが、その実、どんな女がタイプなのかは不明だ。

彼自身、福福に惚れるとは思っていなかったと吐露していた身……そんな彼の好きなタイプ。

 

犬太郎が答える。

 

 

 

「……先に聞かせてくれ。どこまでOK?」

「え?」

「下ネタとか大丈夫?ちょっとエッチなの入っちゃうけど良い?」

「っっ!!?な…なにを言うつもりなんですか!助平なのは、だっ…だめですからね!?」

「う~~ん……じゃあ言えんわ」

「はぁ!?」

「だって俺の好きなタイプってぶっちゃけ、身体的特徴が殆どだぞ?なのにダメって言われても答えれんって」

 

 

 

そう、この男……意外と女は顔だと思っている派閥だ。

 

ぶっちゃけ人間は内面よりも外面が好きになる事が多い生き物だ。

ビジュアルはかなり重要だ。皆ゴキブリよりもカブトムシの方が好きだろう?そう言う事だ。

 

無論、内面も大事だ。だが一番は外面及び顔面と身体だ。

 

 

 

「……内面は?」

「そりゃ答えれるが、それって好きなタイプでは最後にとっとくもんだろ」

「む……~~~っっ………分かりました、言って良いですよ」

「おっ!」

「あ、あんまり大っきな声で言わないで下さいよ……?」

「大丈夫だ。俺に任せろ」

 

 

 

福福は余り下ネタは得意ではないのか、それとも犬太郎の前では恥ずかしいのか、既に顔を赤くしている。

 

まぁ異性間とはそういうものだ。

これは気にした方が負け。それに……福福自身、犬太郎の好きなタイプは気になる。

 

すると、犬太郎が遂に告げる。

 

 

 

「────先ずおっぱいはデカけりゃデカい方が良い」

「んぐっっ!!」

「そんでもってケツだな。ケツ。ケツがいっちゃん重要。ケツはデカいに限る」

「ばっ……なにいって…っ!」

「体は痩せてても太ってても正味俺はどっちでも。あ、身長はデカい方が俺は好きだな。俺がやっぱそれなりにデカいし」

「んっ………っ…」

「顔は綺麗な方がやっぱ惹かれるよな~。可愛い系も良いんだが、カリュドーン(ルーシーやパイパー、バーニス)でエライ目に遭って懲りたしなぁ……」

 

 

 

そう告げる犬太郎は何故かイキイキしている。

 

 

 

「内面だと、それこそ芯がある子は好きだな。やっぱ芯って持ってなきゃ強くないしな」

「はぁ……」

「あとやっぱ一杯食って、何事にも感謝をする子、自分に非があれば謝罪をする子、そういった普通があれば何でもいいな、ぶっちゃけ」

「……そうなんですねぇ」

 

 

 

ぽくぽくとそう宣言した犬太郎。

余りにもアッサリと告げられた彼の好きなタイプ。

 

それは、福福にとって知りたかった事であり、同時に……少し苦しい内容だった。

 

 

 

「(……一杯食べるのと、感謝と謝罪を忘れぬこと以外は────あたしとは正反対ですねぇ)」

 

 

 

そう、胸がデカかったり身長がデカかったり、顔が綺麗系など……それは福福とは全てが別方向。

 

なんだかんだ、府には落ちていた。確かに彼らしい。

でも、それはそれで、やっぱ悔しい。なんだ、身体や顔で私を好きに成ったのではないのか……と、そう思ってしまって。

 

1人で勝手に、落ち込んでいる……その時だった。

 

 

 

「だからこそ、不思議だよな」

「……え?」

「────そんな俺は、いま眼の前にいる美少女……橘福福と云う可憐な貴女に夢中だって事だよ」

「────へ?」

 

 

 

だが、何と此処で彼が爆弾発言。

 

 

 

「今、私のこと好きじゃないんだ~~……とか思ったろ?」

「へ、へ、へっ……い、え…えぇ!?」

「はぁ……あー顔が熱い……まぁ俺も本音で話し過ぎたのもあるが、そんな訳無いだろうに……だったら今この時間はなんだ?ん?」

「あっ…で、でも……好きなタイプと、あたしって……余りにも…っ」

「かけ離れている。まぁ、そうだな。それでもな……俺は貴女に惚れ、こうして目の前に立っているんだ」

「っっ!!!」

「俺は……一目惚れだったんだ」

「犬、太郎…くん……」

「ホント、よく分かんねぇよ……」

 

 

 

そう、それでも尚彼が惚れたのは────橘福福なんだ。

 

 

可愛い。

カッコいい。

可憐だ。

綺麗だ。

ポンコツだ。

食いしん坊だ。

頑張り屋さんだ。

二つの意味で強い子だ。

清純で純粋な子だ。

 

大好きだ。

 

大好きなんだ。

こんなにも、己が感情を爆発させるのは珍しい。

何て子だ。この子には一生を懸けても逆らえそうにないと思えてしまう。

 

 

 

「────福福」

「は…はひっ」

「一度しか言わない。俺の言葉を、聞いてくれるか?」

「ぁ………はいっ」

 

 

 

犬太郎が、福福の眼を見てそう告ぐ。

福福が、息を忘れる程の緊張を覚え……身体全身が真っ赤に染まる。

 

遂に?遂に来るの?そう自分で問うては、動悸が早くなる。

 

 

 

 

 

▽ 一方その頃、同時期、追跡組は…。

 

 

 

 

 

 

「────ぅ!!(目の前に全集中リン)」

「────ッ!!(口ガン開きアキラ)」

「────………(心の中で祈るライト)」

「────っ……(心臓が持たないライカン)」

「────!!!(いけっ!!なエレン)」

「────~~!(頭が真っ白に染まるカリンちゃん)」

「────♡♡♡(大興奮リナ)」

 

 

 

こういった感じで、黙って見ている。

 

 

だが……この後の展開は。

 

 

────余りにも、予想外だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────俺は、福福……さっき好きなタイプとかほざいたがよ」

「は…はい」

「一目惚れし、心が今も熱くなっているのは……貴女なんだ」

「っっ……!」

「貴女なんだ、福福………あーだから、俺が言いたいのは…だな」

 

 

 

言い淀む犬太郎。

もう言っている。だが、一番重要なアレを言えない。

マズい、ここまで、ここまできといて……この場面で、言えないのはヤバイだろ。

 

犬太郎にとって、これほど己を呪ったのはあの日以来だ。言え、言うんだ。

 

 

 

「────ッ!!」

「…………っ!」

「ふ、福福……」

 

 

 

瞬間、福福が犬太郎の手を握る。

熱く、柔く、そして震えているその手の感触を感じる。

 

……助けられている。

 

福福も同じだ。彼女も分かっている、今この状況を。

 

だから、黙って、彼に喝を入れる。

言いたい事があるんだろう。なら、ハッキリ言えと。

 

その意味を持たすには、些か可愛すぎる手握りだが。

 

 

 

「────好きです」

「っ!」

「俺と、付き合っ────」

 

 

 

遂に、言った…………誰もが、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”チリンチリン……”

 

 

 

瞬間────誰かが喫茶店へと入ってくる。

 

 

 

”コツ…コツ…コツ…コツ────”

 

 

 

鳴りの好い靴音を鳴らし、その存在感を顕わす。

 

 

 

「────おい嘘だろマジかよ…ッ」

 

 

 

それは、位置関係的に入り口に視線が行きやすい犬太郎だから分かった事。

場違いな入店ベルは余り気にならなかった。だが、見た事のある風貌と、隠す気のない圧倒的な気配。

 

それが……彼の告白のキャンセルを促した。

 

 

 

「?…犬太郎く……え?」

「………」

 

 

 

黙る犬太郎に、即座に違和感を覚える福福。

だが、その時間は、犬太郎とその者にとっては……。

 

 

 

「────私という存在がありながら」

「ッ!ふぅッ!!」

 

 

 

”ガァンッッ!!!!”

 

 

 

「ふぎゃーっっ!!?」

 

 

 

余りにも、長すぎる時間。

 

ギチリ。

肉と鉄の弾ける音が響き渡る。

 

その者……女が放ったのは鞘付きの刀剣。それを純粋に右手で持ち薙ぐ。

それを犬太郎が前腕で受け止める。

 

その衝撃で全体の窓ガラスは割れ、福福は衝撃に耐えれず床に倒れる。

 

 

 

「他のメスに現を抜かし、遊戯に暮れ、色恋に溺れ……」

 

 

 

絶対零度の声質。

 

流し目に福福を見る女の眼は、全てを斬る程に鋭利へと変貌して。

 

そして。

その瞳は────

 

 

 

「────終いには私以外の女に好意の発露とは……()()()である私が見過ごす筈があるまい。どうやら、貴様には徹底的な躾が必要の様だな………犬太郎」

「────()()()()()()()()()だろうがッ……ッ…もう14年も前だ、いい加減にしろよこのアホ()ィッ!!」

 

 

 

────目の前の男にしか、向かっていなかった。

 

 

 

女の正体は星見雅。

 

新エリー都で最強と名高い、歳少年の虚狩り。

 

六分街のとある喫茶店にて────因縁の相手である犬太郎と交戦。

 

 

 

「今日こそ、貴様を私のモノにして……」

 

 

 

犬太郎と雅。

 

14年前にとある経緯で出会う。

 

そうして、様々な経験を二人でして……12年前のとある日────彼は。

 

 

 

「────ついでに()()に入って貰う」

 

 

 

……星見雅の人生に、初めて()()を与えた……男なのだ。

 

 

 

 

 

 

次回

 

女と女の闘い





Q:星見雅はアキラくんやリンちゃんは好きじゃないの?
A:全く以てそんな事は無く、本編通り大好き。


とだけ伝えておきます。


あと犬太郎と雅の関係はドロドロです。            




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