最強の盾は橘福福しか見えなくなる。〈旧題:最強の盾〉 作:カブトムシの相棒
☆狼谷 犬太郎の他キャラとのアレコレ。
アキラ:数年前に寄ってから常連。犬太郎はアキラの好きなジャンルが一緒なので仲はかなり良好。アキラとしては、まだ未成年の子供なのにヘビースモーカーな一面を持つ犬太郎には少し心配している。少し前に犬太郎が気を利かせて『手作り料理』をアキラとリンに振舞っていたりもしていた。
リン :アキラとほぼ同様。しかし女好きの犬太郎にしては珍しく、リンには態度を変えない。年齢はリンの方が上だが、犬太郎から見たリンは……昔の妹に、少し似ているのだ。姿は違うが、自分に小言を言う感じが妹に似ていて、自分でも分からない感情に成って怖くなる。リン自身も何か犬太郎からは感じ取ってはいるも、彼は自信を余り語らない故、少し困っていたりする。
二コ(邪兎屋):ビジネスパートナー兼、ニコ(にとって)の金蔓。女に弱い犬太郎を利用しているニコは自分のスケベな写真を多く撮り、それを提供する事で多くの護衛依頼をしてきた、ある意味で一番犬太郎の扱いが上手い女。でも普通に仲は良い。アンビーや猫又、ビリーとも仲が良い。
ライト:男として尊敬している。偶に口調を真似たり、100均ライターからZippoに変えたり、サングラスを着用したりとモロにライトから影響を受けている。ライト自身、彼の在り方や志は素敵な事だと思っているし、可愛がっている。
他にも居ますが、また後程。
犬太郎は基本的に呼び捨てはしません。
男性なら『さん』、『くん』、『兄貴』、『坊主』
女性なら『さん』、『ちゃん』、『嬢ちゃん』
と呼称しています。
因みに、犬太郎が敬語を使っているのはライトだけ。恩があるからです。
では、本編です。
「────すまないな『ライト』さん、夜更けに付き合わせちまいまして」
「なに、気にする必要はないさ。久方振りにお前からのお誘いだ、無礙にはしたくなかっただけさ」
郊外のとある更地の崖。
其処に、大柄な男が二人居た……拠点の少し外れの、景色が良い場所に身を置いていた。
1人はこの場に呼んだ張本人、犬太郎。
そして、もう一人は────郊外で【無敵】と謂われ、【無敗のチャンピオン】とまで謳われる実力者。
新エリー都の郊外で活動する【カリュドーンの子】に所属しており、担当は武力担当交渉についている。
名を……『ライト』だ。
「さて、一先ずは乾杯といきますか?」
「あぁ、男だけの、静かな酒飲みだ」
カンッ……グラスコップの優しい音色が響く。
此処には犬太郎とライトのみ。他のカリュドーンの子のメンバー、『シーザー』や『ルーシー』、『バー二ス』は他の部下たちと共にBarで盛り上がっている。
一時はその場に居たが、犬太郎がライトを誘って……二人きりの時間を作ったのだ。
「ふぅ……相も変わらず、バーニスちゃんの作るカクテルは美味いな。新エリー都内でも風味の格が違う」
「趣味を逸脱した完璧無欠な特技だからな、俺も皆も大好きな特製物さ」
「ふっ……タバコ、要ります?」
「いや、お気持ちだけ受け取らせて貰う。俺にはこの飴で十分だからな」
「そう言うと思ったっす。じゃ、ちょっと失礼……あ?あれ、あ……しくったな、置いてきたか」
犬太郎は器用に、流れる様にタバコを咥え、火を付けようとする……が、愛用品のZippoを車に置いて来てしまったのに気付いた。
面倒だなと思いながら、車に向かおうと離れようとした瞬間……カチンッ…と、聞き馴染みの良い音と共に火が灯される。
「珍しくドジっ子だな、鋼鉄の盾さん?」
「はは、気が抜けてんのかも………すぅぅぅ…ふぅ……あざす」
「どういたしまして」
タバコに火が付く。ライトが華麗に火を差し出したのだ。
御礼を言いながら吸う……誠に、コレが中々通で旨い。
「……此処に来るのもかなり久しぶりな気がするっす」
「確か、暫くはヤヌス区で活動してたと聞いたが……その様子だと、随分と多忙を極めたな?」
「えぇ、有難い事に、少しばかり名が通って来たみたいで。僅かながら護衛の依頼が増えたんです」
「そいつは良い……だが、安い金のままだと貯まるモンも貯まらんぞ?ちゃんと飯は食えてるのか?」
「大丈夫っすよ、他にも別のバイトとかしてるんで、それなりに食えてます」
「ふっ、あんな小生意気なガキだったお前が、逞しく成ったものだな」
「いえ、まだまだっすよ。俺……ライトさんみたいに、もっとカッコよくなりたいっす」
そう言う犬太郎の表情は、憧れの眼差しを向ける子供そのもの。
ライト自身、何だかんだで嬉しい気持ちだった。こうして憧れるのは、悪い気はしないから。
────あれは、まだ犬太郎がギラついていた、数年前の事。
▽
『────よぉ、どうした?こんな所で歩いて……迷子になっちまったのか?ん?』
『……んだよ。別にどうでも良いだろ……』
『ふっ、そうか。それにしては、随分とボロボロだな?服は小さい上に汚れが目立ち、肉体は傷だらけで、何とも痛々しい』
『……ほっとけよ………心は折れてねぇんだ………ぐ、ぅぅっ……』
『……此処にはお前みたいなのがよく来る。これも運命か……どうだ?ちょっと休憩でもしてくか?俺は作ってやれないが、良い飯屋を知っている』
『な……なに言ってんだよ………俺、金なんか持ってねぇし………』
『この俺が子供に奢らせる男に見えるか?ほら、来いよ────』
▽
「……俺は、ライトさん。あんたに救われた。ちょっと色々あって、折れないって決めていた心が崩れそうな時、あんたは俺に飯をくれて、服だって与えてくれた。あんなみすぼらしく、年齢に見合わない剣を持った怪しい俺に」
感謝を、そして敬意を。あの日救ってくれた無敗のチャンピオンに。
ライトはサングラス越しで、成長した犬太郎を……優しい目付きで見つめる。
────大きく成ったなと……妙な親心を心に秘めて。
「そんな事もあったな。ふっ……にしても、暫く見ない間に随分と俺の影響を受けたみたいだな?」
「なっ……だ、誰から聞いたんすか」
「さぁな。誰、だったか……」
「くっ……何か恥ずいっすよ……」
「ククッ、昔から安直だったな、お前さんは」
「……先ずは形からっすよ何事も」
「ふっ、見え張っても、まだまだ子供だな。タバコも酒もお前の自由だが、いき過ぎるなよ」
「分かってますって……ってか、酒に関してはあんたん所のバーニスちゃんの所為っすからね?バーに入った瞬間に飲まされたの、俺忘れてないっすから!」
「そいつは……まぁ、そうだな。バーニスはちょいと理性がトブ時があるから、許してやってくれ」
「別に怒ってないっすよ。お陰で俺も酒好きになったんでね……マジで死にかけたっすけど」
タバコの火が消えるその時まで、犬太郎とライトは話し込んでた。
この時間は二人にとっても、少し特別な時間だった。
犬太郎は以前、心身共に限界を超えた事があった。
フラフラしながら歩いて、気付けば郊外にいた時に、ライトに見つかった。
当時の犬太郎は、まだ精神的に若く青かった。
ライトはそんな犬太郎を、当時の自分に重ねた。
だから、放っておけなかった。ライトは自分が出来る事の奉仕を犬太郎に与えた。
そこで、犬太郎の過去も知った。ライトとは別の、何とも形容し難い過去を。
ライトは、家族を殺した犬太郎を拒絶しなかった。
だからこそ、犬太郎はライトの情の熱さに、仲間の為に無茶が出来るライトに、憧れを抱いたのだ。
そこから数ヶ月の間、犬太郎は郊外でお世話に成り、ビック・ダディの支援もあって、新エリー都で【護衛屋】として活動するようになったのだ。
「護衛屋か……なぁ犬太郎、お前があの日俺に語ってくれた目指すべく夢の話。俺は、今でも昨日の様に感じる位には胸を打たれたんだ。俺はお前が掲げる夢、今でも応援してるよ」
「ッ!……ライトさん。あんたには勿論、ビッグ・ダディさんや他の皆にも、返しきれない恩を頂いた上での夢であると思っています。俺は必ず、今よりも強く成って、いつの日か【最強の盾】って世間に言われる様に精進するんで、見ていてほしいっす」
「そいつは良い。親っさんや大将達も喜ぶだろう……だが、あんま固くなるなよ。お前は俺よりも若い。もっと我武者羅に走って行っても良い位だ」
「っす。ホント……ありがとう御座います」
ライトよりも大きく成っても、犬太郎からすればライトは憧れだ。
ずっとずっと、それは変わらない。
「そういえば犬太郎、お前さん、確か女好きだったろ。ウチには活発な女子様が主だが、どうだ?俺と変わるか?」
「あ、いえ、大丈夫っス」
「くはっ!即答か」
「仮に俺が『え!?いいんすか!??』…って言っても変わらない癖に何言ってんすか。まぁ?仲間が大好きなライトさん、俺大好きっすけどね?」
「……それはそうだが、もしかして俺を舐めてるな?拳骨が御所望か?悪ガキめ」
「しゃ、洒落じゃないっすか~」
「冗談だ、例えお前に拳骨しても俺の手が無事かも分からん」
「ライトさんの拳はずっと痛いっすよ。俺がバカかました時は殴って下さい」
こんな悪ふざけが出来るのも、きっとライトだけ。
ついつい甘えてしまう。犬太郎には、居なかった属性をライトは持っている。
「ライトさんまだ吞むっすよね?是非注がせて下さい」
「悪いな、ありがとう……今日は良い日だ、トコトン飲むとしよう」
「お供させて頂くっす、俺も今日は酔いたい気分なんで………」
そう言って、二人はもう一度乾杯を始める。
今日は少し特別な時間。
犬太郎にとっても、ライトにとっても。
少し酒が進むと、ライトが犬太郎にこう告げる。
「……犬太郎、お前は一人じゃない。何かあったら直ぐに言え、俺が直ぐに駆けつけて助けてやる」
「ライトさん……」
「それと、いつでもカリュドーンの子に加入したくなったら言ってくれ。男手が多いと割と助かるんでな」
「それなら大丈夫っすね、ライトさん力持ちですし器用なんで。あと、俺までカリュドーンの子に入ったらルーシーちゃんが頭を抱えちまう。こう…『アホが増えてもっとアホまみれですわ~!!』って」
「ククッ……それはそれで賑やかで良いと思うがな────」
そんな会話をずっとする。
ここだけは、男だけの空間。
それは……日を跨いでも、続いた。
▼
「おろろろろろろrrr……!!」
「おいおい、大丈夫かよ犬太郎~。背中摩ってやろうか?」
「すまん、シーザーさんっ……あんがとっ……エグイ、頭痛が……吐き気も……」
「っ……流石に、飲み過ぎたな………今日は何も出来ん…っ」
「急に居なくなったと思ったら、まさか犬太郎と飲んでいたとは思いませんでしたわ!しかも揃いも揃って地面に床寝なんて……本当に男って馬鹿ですわ!私達が見つけて良かったですわね!光栄に思うのだわ!」
「ルーシーちゃん、見かけない内に美しくなった……可憐だぁ………」
「うるさいですわよ!!このアホ護衛!!」
「バーニス、悪い、俺を燃やしてみてくれないか?酔いが少し、覚める気がする……」
「えー!!良いの!?やったーー!!」
「何を言っているのですの!?アホのチャンピオンですの!?ちょ、バーニス!それ仕舞いなさい!!」
「そうだな……マフラーは外させてくれ……」
「そういう問題じゃないですのよ!?」
「ルーシーちゃん……」
「今度は何ですの!?」
「……タバコ、吸っていい?」
「死にたいんですの!?更に体調不良に成るからやめなさい!!あーもう!!アホまみれですわ~!!!」
その後、泥酔するまで飲んだ二人は其の場で寝た。
そして、朝方、返ってこないライトを探しに来たカリュドーンの子が二人を見つけ介抱。
非情に珍しい光景だ。
二人とも飲み過ぎて、二日酔いになった。
偶にはこんな日があっても良い……犬太郎とライトは、そう思った。
次回
出会ってしまった、可憐たるその子に……。
今回は少し文字数少なめで申し訳ないですわ~!!
でも、この話は犬太郎とライトとの関係を書きたかっただけなのです。ライトさん好き。
次は遂にご対面です。誠心誠意、執筆させて頂きます。
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