最強の盾は橘福福しか見えなくなる。〈旧題:最強の盾〉 作:カブトムシの相棒
何度も変更があり、申し訳ございません。
では、本編です。
▽六分街・街道……逃走経路。
「ふぅ…ふ、ぅ………ゲフッ…クソ、ったれ…ッッ」
走る。走る。ただ、真っすぐ。
追手が来ない可能性は捨てきれない。ここまで暴れ回ったんだ、来ない方が可笑しいだろう。
雅とセヴェリアンが来る……のは、考えにくい。己ほどではないが、相応の傷は与えた。
大事を取り、後は他の局員に任せている……筈だ。
「雅とセヴェリアンが来ないと仮定しても、最悪セス君や柳ちゃん、朱鳶ちゃん達が追ってくるかもしれねぇ……それは、まず…ッッ…ゴプ…ッ」
”べちゃ…”
走りながら血を吐く。その量は、甚大だ。
内臓を斬られてはいないが、衝撃は誤魔化せなかったようだ。
本来なら直ぐに病院案件。だが、今の己は御尋ね者だ。
「はひゅ…はっ、はぁ…ふぅぅ………今は、血を止めなきゃならねぇ…ッ」
向かう先は自宅。
そこで直ぐに医療用裁縫セットを持って良き、即座に退去しなければならない。
追っては絶対に来る。もう特定してるかもしれない。
なら、急がなければ……終わりだ。
”ピクッ…”
「────あぁ?」
瞬間。犬太郎の第六感が違和感を感じ取る。
極限状態だったが故に、その異様な雰囲気を察知する。
舐める様な視線。敵意以上に、気味悪い気配を感じとる。
雅やセヴェリアンとは正反対の……悪意を、感じ取る。
犬太郎は走行しながら、一瞬で警戒モードに入る。
違和感。それを感じた方向に眼を向ける。
「…………ダメだ、分からん」
だが、その正体は掴めない。
目を向ければ、ビル、一軒屋、ビル、ビル、何かの店。
瞬足で駆ける犬太郎でも、今の血塗れの状態では正体を掴むのは困難。
「(敵意はない、つまり放って置いて良い。ふぅ……ッ、……今は俺だ。急がなければ…ッッ)」
犬太郎は警戒モードを解き、即座に自宅へ戻る。
違和感を感じてしまえば、それが何か気になるモノだが……相手にしてる暇はない。
犬太郎はそのまま我武者羅に駆けて行った。
▽
────犬太郎が逃走する、数刻前。
『────死んでも折れねぇのがッッ!!最強の盾だろうがァァァァァ!!!!!』
”ビリビリ……ビリビリッッ…!!”
「成程。コレが怪物、狼谷犬太郎の真価ね……あの傷でこの圧力。本当に人間なのかしら?」
戦地へと化していた、六分街の街道。
殆どの建造物が破壊され、血に塗れた其処は凄惨な死地と成っていた。
犬太郎と対峙するは、星見雅とセヴェリアン・ローウェル。
そして、特務捜査班と対六課の面々。
雅とセヴェリアンが犬太郎を削り、其処から更に応援が来る始末。
本来なら手詰まりだろう。だが、この怪物はそれでも尚、戦いを辞めない。
「……この世界の【特異点】であり、規格外の異能を保有する怪物。それだけでなく、素の身体能力まで天井の領域なんてね。ふふ、病弱一家から産まれたとは思えないわね。正しく突然変異……『狼谷猿乃介』が
そう、独り言つ女性。その者の名は────『サラ』
サラは戦闘の余波が来ない距離で、犬太郎たちの戦闘を双眼鏡越しで記録していた。
雅のデータはある程度揃っているが、せヴェリアンの戦闘データまで収穫できるとは予想外だった。嬉しい誤算である。
だがやはり、サラに取って一番の吉報は……犬太郎の異能の発現だろう。
「ッ!大剣を……そういう事。生命体相手には大剣を地面に突き刺し、地脈に異能を辿らせて、そのまま重力を圧っさせる。ふ、ふふ、ふふふ……【司教様】が彼を欲する理由がこの一戦に全て詰まっているわ。トップクラスの戦闘力、規格外の異能、そして底なしの狂気…………あら?」
”ゾクッ……”
『────』
「ッッ!?」
サラの背に、形容出来ない悪寒が走る。
本能か、瞬間的にサラは屋上ビルの壁に身を隠す。
双眼鏡で犬太郎の動向を見ていた。その、瞬間だ。
「今……目が…あった?」
ギロリと、犬太郎が一瞬此方へ目を向けてきた。
偶然。その思考が過るも、それは有り得ないと決定。
ならば何故、殺意を持って此方を睨んだのだ?
それは間違いなく、サラを……悪意の視線を瞬時に感じ取ったからだ。
「……あの状態で、どうして私の視線に気付くのかしら」
未だに背筋に鳥肌が立つサラ。
狼谷犬太郎。この男は一部を除いて隙を全く見せない。
どんな状況だろうが、どんな状態だろうが、犬太郎は己に悪意をぶつける相手の位置を即座に特定できる、過去の大荒れ期で得た第六感を持っていた。
戦闘者として、完璧に近いのだ。
齢19にして、だ。
「ふふ、あはは……」
興奮の笑みが漏れる。
狼谷犬太郎にはまだまだ知られざる能力がある。これ程までのモンスターは見た事が無い。
サラにとって、いや……【讃頌会】にとって、此の男は必ず確保しなければならない。
新エリー都の各組織があの男を欲する理由。
それを、改めて理解した。
「────此方側へ引き込むのに、どんな手段が有効かしらね……ふふふっ」
彼女は……讃頌会は狼谷犬太郎を────ターゲットにしてしまった。
▽
時は流れ、六分街のとある路地裏。
”プツッ…プツッ………”
「………ふぅ」
犬太郎はあの後、問題なく自宅に戻る事には成功した。
だがやはり治安局員の追手が早く、裁縫セットを入手した途端に即座に逃走していった。
怪我をしていた事が起因し、犬太郎は更に血を流してしまう。
結果的に、この汚い路地裏で自分で応急処置だ。
「………は、ふぅぅ……これで、胸の傷は塞いだな…ッ」
数多の傷、大量の出血で手は震えている。
だが、その出血を止めなければ結局は出血死。
ならばやる事は一つ。自身で糸を傷口に縫い、塞がなければならない。
犬太郎は覚束ない処置で、なんと麻酔なしで胸筋の傷を縫っていく。
想像を絶する痛みだろう。だが、犬太郎は痛がる素振りを全く見せない。
その行為だけで、声でバレてしまう可能性があるからだ。
「これくらい出来なきゃな、戦場じゃ死んじまうヤツ第一位だ……ッッ」
そう小さく呟く。
犬太郎の縫合技術はそこら辺の医者よりも卓越している。
手先が器用な犬太郎だからこそ、出来る芸当だろう。
確認する。
「(顔は問題はない……マズいのは背中と胸の傷だな。背中は自分じゃ出来ねぇ……包帯…しかねぇか……脚も深いな)」
犬太郎は胸と背中を手先良く何度も巻き、圧迫する。
ジワリ…と血が滲むが、止血は出来た。
本当は背中にも適切な治療は必須だが、包帯で圧迫するしかない。
そして、次のフェーズだ。犬太郎は脚の切傷を確認。
「……ッ………」
先程来から右足に妙な痛みが入っていたが、きちんと確認してみれば直ぐに原因が判明。
骨に少々傷が走っている。この太い切傷。相手は直ぐに分かった。
「(セヴェリアンめッ……やってくれる)」
大剣を小枝のように振りかざすバケモノ……セヴェリアン。
あの男が雅の為に黒子に徹していた所為で、有り得ない速度で連携の技を幾度となく食らわされた。経験則だが、己を入れてこの三者で恐らく一番戦い慣れているのはセヴェリアンだろう。
「(厄介な野郎を敵に回しちまったな……6年前からマジで変わんねぇ。あのポーカーフェイス野郎ッ……にしても、アイツが来るとはな)」
犬太郎とセヴェリアンは6年前、一度戦闘を行っている。
6年前と云えば、郊外での【隕石飛来事件】……セヴェリアンはその当事者だ。
彼の奮闘、そしてライトと共に、犬太郎を抑え込んだ。
当時の犬太郎は治安局に不快感を覚えており、それが引手となって騒動に発展してしまったと判断したセヴェリアンは犬太郎を超重要警戒対象として、何とライトに監察しておくようにと決定したのだ。
そこから紆余曲折あり、犬太郎は暫く郊外で過ごす事と成った。これが犬太郎とセヴェリアンの関係性だ。
「舐めやがって、クソが………俺は」
雅とセヴェリアン。互いに最強戦力の一角。
雅に関しては最年少で虚狩りに至った傑物。セヴェリアンもあの歳で既に治安局の最強に昇り詰めた男。
本来、一対一でも無理に等しいバケモノだ。それを犬太郎はニ対一で、あそこまで削り切った。
「────狂気には吞まれねぇぞ……ッ」
もし、犬太郎が狂気に呑まれ、全てがどうでもよくなってしまったら。
犬太郎は……六分街を崩壊させていただろう。
それで、済めば良い。犬太郎は己が持つこの異能を使いたくないのだ。
今も尚溢れる髄力の制御すら下手くそなのに、この【異能の制御】まで己は下手くそなのだ。
今みたいに満身創痍なら話は別だ。それを発揮させる力が無いのだから。
だが、もし仮に万全な状態で、最初から【殺す気】で戦うとなれば。
────犬太郎は、本物の怪物と化すのだろう。
「……ッ、は……ふぅ、ふぅぅ…」
犬太郎はそう小さく独り言を告げ乍ら、手早く足の傷を縫ってく。
麻酔無し。しかも太腿付近故、出血も酷ければ痛みもしんどい。
犬太郎とて、痛みは生じる。これはただの痩せ我慢だ。
「……ッッ!!」
”コツ、コツ、コツ……”
足音。それは犬太郎の耳に届く。
今迄の治安局員とは違い、闇雲に動き回っているのとは訳が違う。
まるで、自身の存在を教えているかのような……。
異常なのは百も承知。犬太郎は腿の傷の縫合を中断し、大剣を手に持つ。
「………?」
だが、ピタリとその足音が止まる。
気配は真正面からするのに、余りに静かなのだ。
不気味……犬太郎は警戒モードに入る。だが…。
”ぐらっ……”
「っ、お……」
立ち上がろうとした瞬間、犬太郎の身に異変が走る。
ここに来て眩暈が生じ、立ち眩みを起こす。止血したとはいえ、この出血量では幾ら犬太郎でも駄目だった。
「クソッたれ……早く、立たな…」
「その傷で無理をするな。愈々死ぬぞ、お前さん」
「ッ!!?ふんッ!!」
重い圧力。犬太郎の反応は早かった。
即座に大剣を斜め下から振り上げる動作に入る。
「私が誰かも分からぬか。この阿呆者が」
だが、それよりも相手が先に動く。
「なにッ……ぐお!?」
ドスッ……と、鈍い一撃が犬太郎の首筋に奔る。
それは余りに正確で、余りに重い打突。
衝撃からか、頭に追っていた傷が切れ、最悪な事に血が両目に垂れる。
視界が殆ど消える。急激に絶望的な状況に入ってしまった。
意識が朦朧とする。
眩暈が起きた途端にこの一撃は、キツイ。
「ッッ、が、ぁ、ぁ……………ガァァ!!!」
「なに?」
だがこの場面で、犬太郎は気合を見せる。何処の誰か分からないが…せめて、一矢は報いる。
その狂気的な粘りで、何と犬太郎は無理矢理大剣をこの狭い路地裏で横に振るう。
「噴ッッ」
”ガキィィィン……”
だが、その一撃は……その者の絶技によって防がれる。
何とその一撃を、其の者は膝と肘をクロスさせ、凶刃の峰に打ち込み止めて見せたのだ。
最後の一撃だった。コレで無理なら…………と、犬太郎は遂に。
「バケ…モンが…ッ…ゲフッッ…────────」
「……どの口が吠えるか。阿呆者が……!?なにッ…?」
犬太郎は遂に沈黙。意識を手放した。
だが、ただ意識を飛ばしたのではない。なんと、此の男は…。
「────まさか、
そう、犬太郎は立ったまま、意識を手放していたのだ。
最後まで、その強靭に身心を手放さかなった犬太郎だからこそ、この姿。
その者が膝と肘を離すと、大剣ですら、手放さない。
大剣を持つ左腕には血管が浮き出て、乱雑に巻かれた包帯から血が滲み出ている。
「……正しく、血に飢えた怪物。ここまで来れば尊敬すら覚えてしまうな」
その者の正体。それは────儀玄。
騒ぎを聞き入れ、最速で六分街に応援に来たのだ。
儀玄は犬太郎の大剣を下ろし、未だに立ち続ける犬太郎を寝かせる。
そして、儀玄は携帯に手を掛け、応援を呼ぶ。
「……福福。犬太郎を見つけた…あぁ、相当な怪我を負っている、悪いがライトと共に急ぎで来てくれ。私はこの阿呆の応急処置をする……あぁ、では頼むぞ」
儀玄はそのまま、犬太郎の応急処置を施す。
犬太郎がした処置は確かに巧い。だが、やはり背中と脚はその場凌ぎが過ぎるほど、適当だった。
このままでは本当に死に兼ねない。それ故、儀玄は一度犬太郎の服を脱がせる。
「────……途轍もないな」
犬太郎の傷はエグ過ぎた。
数えればキリがない。20箇所以上は斬られている。
それだけじゃない。打撲等の傷も散見できる。
この傷で、あの一撃を放ったというのか…。
儀玄の背に冷や汗が走る。この男に対し、些か畏怖を覚えてしまう程。
だが、そんな場合ではない。
儀玄は応援が来る迄、犬太郎に処置を施した。
▽
”ズギン……”
〈────犬太郎。貴方は誰よりも強く、そして強靭です。ですから、
これは記憶か。
しかもコレ……死ぬ前のお袋か。
久しぶりに思い出したな。お袋の声って、こんなだったっけか。
もう、遠い記憶の様に感じる。
でもどうして今、俺は、この記憶を思い出してる?
”ズギン…ズキンッ”
〈────この村で、私と
そう、そうだよ。お袋は親父と違って俺に滅茶苦茶に厳しかった。
弱い者イジメとかした事もないし、やろうとも思った事は無いが……悪戯とか、友と悪さしたら2時間はお袋に叱られてた。
”ズキンッッ…ズギンズギンッッッ”
〈────犬太郎。私はもう長くはありません…………いけません犬太郎。何を泣いているのです。貴方は桃子の兄であり、男の子です。覚悟を決めなさい。私が居なくなったら、貴方が家族を支えるのですよ〉
……子供に言う事じゃないよな、やっぱ。時代にも沿ってねぇし。
まぁ、この厳しさが俺の人格を形成してくれた。そう思えば、お袋には感謝しかねぇな。
……ってか、頭が、痛いような…?
ずっとズキズキしている。なんだ、これ。
〈────何度も言います。この命ある限り貴方に言い続けます。貴方は強く在りなさい。泥臭く生き続け、不格好にも抗い続けなさい。傷を沢山負っても、心がどうしようもなく辛く成っても、必ず立ち上がりなさい。泣いても良い、巨大な壁を前に何も出来なくっても良い、ですが諦める事は許しません。貴方の背後に護るべき存在が居る限り、逃げる事は死ぬよりも恥と思いなさい。狼谷猿乃介に為るのではありません。貴方は狼谷犬太郎です。貴方が夢思う【盾】と成ると云う事は、それ程まで重いのだと肝に銘じるのです〉
飴、鞭、鞭、超絶鞭。俺のお袋はそんな人だった。
親父には呆れながらも飴だったし、桃子に関してはクッソ甘かった。
唯一俺だけ、お袋は厳しかった。
〈────あなた。きっとあの子は私が怖く、嫌いでしょう。そう思われても良いように接してきました……いえ、後悔はありません。あの子は特別です。きっとこの世界で誰よりも強固に育ちます。えぇ、もしかしたら、もうあなたを越えているかもしれませんね……………………一度、一度で良い。我儘を一度だけ言うのならば、あの子をもう一度ギュっ…と、抱きしめたい。あの子の体温を感じたい。もうこの身は指先すら動けないのに、そう思ってしまいます………あなたと桃子は何度も抱きしめていたのに、あの子には片手で数える程度しか、私は抱きしめてあげられなかった。言動不一致も甚だしいですね……後悔なんて女々しいのに、あの子に対し私は……私、は……っっ……まだ幼く、可愛くって、大好きで……愛してるあの子に、あの子に……私は…っ〉
病室の中で、親父とお袋が話していた。
俺は入ろうとしたが、2人のそんな会話に入る事は出来なかった。
親父はしょっちゅう泣いてるが、お袋が泣いている所を、俺は初めて見た。
その日の俺は、そのまま帰った。
お袋と親父の涙の声に、いたたまれず、どうしようも出来なかったから。
〈────……おいで〉
お袋が死んだ日。
泣き続ける親父に、まだ状況が飲み込めていない桃子に別れを告げた。
最後に、お袋は……もう動かせない筈の手を使い、俺を抱き寄せた。
お袋は最期、俺を抱きしめて、こう言った。
〈────あたたかい…私の子っ……例え黄泉へ逝こうとも、私は貴方を、犬太郎を……愛しています〉
そう言って、お袋は死んだ。
俺には厳しくっても、元気で居続けたお袋が死んだ。
……なんで、俺は今、この記憶を思い出している。
俺は……お袋の言う通りの人間にはなれなかった。
親父を殺し、桃子を殺し、友を、爺と婆を、知人を……何人も殺した。
その血の温度は、感触は、今もずっと覚えている。
弱き者を救う盾が聞いて呆れる。そんな所業を、俺はしてしまった。
【最強の盾】と謳われたかった。
でも今じゃ、俺の通り名は【怪物】だ。
………。
俺は、もう前を向くと決めた。
福福の、愛する者の盾と成る事を決めた。
後悔は……本当はある。やり直したいと思った事は数え切れない。
何度も失敗した。何度も悔やんだ。何度も迷った。
”ズギンッ……ズキン────”
だけど、今の己には頼れる仲間が居る。
頼れる兄貴分や、悪友が居る。
ライトさん……福福が居る。
だから、俺はもう……後悔は────
〈──────人殺しッ!!お前が死ねば良かったのにぃッッ!!!〉
”────ズギンッッッ!!!!!”
「────あぁッッ!!!??!?」
”ガバッ……”
急激な痛みで夢から覚醒する。
心臓の鼓動が早く、全身から汗が噴き出る。
最悪な夢を見た。最低な己の罪過を思い出された。
最後に聞こえた声は……己が抱えるトラウマ。
〈────呪ってやる……ッッ!!!〉
「っ……クソったれがッ…!」
髪をグシャグシャと搔き乱す。
毛が数本抜けるほど強く掻く。前に進めたと思ったら、コレだ。
本当に、苦しくなる。辛くなる。そんな自分に腹が立つ。
「俺はいつまで過去をッ……あの日から何も、なんも変わってねぇ………この、クソ野郎が…ッッ」
卑下。どうしようもなく、己が嫌いになりそうだ。
許されて欲しいなんざ思っちゃいない。
己は、本来なら殺されても恨まれる程の事をした人間だろう。
己は、幾年も償い続けその果てに……狂死するべき怪物だろう。
今この世に生存させて頂いてる身なのは、百も、承知なのだ。
”────犬太郎くんっ!”
ふと浮かぶは、己の愛し人……福福。
己の精神安定剤。メンタルが崩れそうな時、福福を思い浮かべれば、大抵の事は我慢できた。
……それが、この様だ。許されない事をした。彼女の期待を裏切る行為をした。
その事実が、更に犬太郎の心を軋ませる。
「福福……」
何度己の愛し人を思い浮かべる。
出て来るのは、太陽の様な眩しい笑顔。
同族が大多数も亡くなり、故郷が滅び………彼女とて地獄を見てきただろうに。
それを思わせない笑顔と、元気爛漫な女の子に育って。
つくづく思う。己には、勿体なさ過ぎる。
「ふぅ…いや今は、状況確認だ………此処どこだよ」
先ずは冷静に成らなければ。
脳はもう痛くない。心拍も正常に戻りつつある。
汗は…まだ出ている。だが問題ない。
身の確認を済ませ、次は周囲を見やる。
「……衛非地区の模様。って事は、此処は………あっ」
思い出した。己は気を失う最後、誰かに会っている。
声、匂い、めっちゃデカいおっぱい、ヤケに重い打撃、クソデカおっぱい。
一瞬だが、それ等を覚えていた犬太郎は特定の人物を想起する。
「儀玄ちゃんだ……そうだ、俺は儀玄ちゃんに最後やられて……っつー事は、此処は【雲嶽山】の拠点か?」
そう、儀玄に後れを取った。
それ即ち、此処は病院ではなく、雲嶽山の拠点である事。
なんせ、この一室には見覚えがある。過去に雲嶽山の拠点に泊まった時に、己が寝た一室がこんな感じだった気がする。
それをキーに思考を巡らせ、答えに辿り着いた。
「……ふぅぅ…ッッ」
”ガバッ……”
犬太郎は勢いよくベットから降り、立ち上がる。
筋肉の可動が重い。窓からは日差しが眩く照らされている。部屋の時計を見れば午後1時を指している。
……己が戦ったのが午後2時。つまり、1日以上は時が進んでいるという事。
「(傷の状態を見るに、まだそんな経っていない……と思うが、俺は治りが早いからな………スマホ…はない。そうだ、壊れたんだった。服は……ん?)」
部屋を捜索すると、突っ張り棒にハンガーが掛けられ、其処に己のいつもの服があった。
茶色のボアジャケットに、白黒のシャツ、藍色のズボン。そしてテーブルにはティアドロップサングラスと長財布。
……違和感を覚える。己は確か、もっとラフな格好で戦った筈。
この服は己の家に置いてった。どうして、愛用している服が此処に?
「……誰かが俺の家に行って、持ってきたのか?なんでそんな事を……いや、寧ろ好都合か」
犬太郎は雲嶽山仕様の安静服から、己の愛用している服装に着替える。
身体にはまだ包帯が巻かれており、特に胸と右足はまだ突っ張る。
腕、背中、額は既に完治。やはり雅とセヴェリアンに付けられた傷は深かった。
脚に違和感はあるが、この程度なら問題はない。
胸も同様。塞がっている感覚はあるが……無理をすれば傷が開くだろう。
「ふぅ……大剣は別の場所か。まぁいい、いつでも呼ぶ事は出来る。問題はないな」
大剣が別の場所に在るのは確かなようだ。
犬太郎の異能でいつでも呼び出す事は可能。それ故、そう云った心配は不要と判断。
気掛かり。それは……福福、そして雲嶽山の面々だ。
「(この時間は確かそれぞれ修行や仕事、奉仕活動、その他諸々に時間を割いているんだよな。助けて貰った手前、礼を言いたいが……俺が今すべき事は)」
犬太郎の脳裏に一番の気掛かりが浮かぶ。
それは……優香の事。
「優香さんにはエグイ迷惑掛けちまったな……菓子折り以て今直ぐ謝罪に行かなきゃならねぇ。幸い財布はある。六分街の弁当屋に行けば会えるかや」
弁当屋の店は最後まで破壊はしなかった。いや、させなかった。
その他の建造物は……申し訳ない。そんな気持ちが募るほど、暴れてしまった。
犬太郎は優香に謝罪をしなければならない。
許されよう。そうとは全く思っていない。きっと、優香はその謝罪すら苦痛だろう。
そう思いを馳せても、己が出来るのは……謝罪のみなのだ。
「……うし、行こう」
犬太郎は意を決し、窓を開ける。
ドアから出れば、最悪誰かと鉢合わせになるかもしれない。
最悪、儀玄や福福と云った話が通じない相手とエンカウントすれば、普通にゲームオーバーだ。
藩や釈淵ならワンチャン……だが、その可能性に賭けている場合じゃない。
「さて……おっと。そうだ、流石に書き置きはしとかなきゃな。混乱を少しでも抑える為にも…………うし!こんなモンだろ」
犬太郎はテーブルに置いてあったメモ帳に書き置きを残す。
そして、そのまま窓から脱走。気配を極限まで消し、雲嶽山を……そして、衛非地区を後にする。
「(んまー、多分大丈夫だろ。俺って死ぬような男には見えないだろうし、あと帰って来る時に)」
だが……その、数分後だった……。
”「────は???」”
「んっ、すぅぅぅ~………(激焦りライト)」
犬太郎の安否を確認しに来た福福、儀玄。
そして────『リン』とライト。
その面子は、犬太郎の書置きを見ていた。
《もしかしなくとも雲嶽山の皆さんが俺を助けてくれた感じだよね?本当にありがとう!この御礼は用事を済ませて此処に帰って来た時にする!お土産期待しててくれ!多分、夕方かそれより前には帰るかも知れない。遅くなるかもだから、そこんとこ宜しく~!》
”プツン────”
「────リン」
「うん。お兄ちゃん達にも言ってくるね。ライトさん、犬が何処に行ったか、分かるよね?」
「あ、あーっとだな………も、もう衛非地区には居ないんz」
「ライトさん」
「この感じの文面は負い目を感じている時だから、もしかしたら六分街の弁当屋に行ったと思うぞ」
「だそうだ。福福とリンはアレを用意。ライトはバイクで犬太郎の阿呆を連れ戻してくるんだ」
「分かりました。直ぐに取り掛かりますっっっ」
「任せて師匠」
「あーいや、俺はこの後郊外で用事g」
”「ライト(さん)」”
「よし、俺に任せろ」
犬太郎を想い、せめて己だけは味方してやろうとしたが……女性陣のエグ過ぎる圧力を前に、チャンピオンはKO。
犬太郎の超クソバカたれは、絶対に怒らせてはいけない保護者の面々を……一気に激怒させてしまったのである。
▽
「────まさか許されるとは……優香さんって聖母?」
六分街の帰り道、テクテクと歩く犬太郎。
その手には大きな紙袋が握られていた。
中身は大量のお弁当だ。殆どが肉料理の。
犬太郎は数時間前の光景を思い返していた。
それは、弁当屋ニャン助の店長である優香への謝罪だ。
☆
『────優香さん。この度は本当に申し訳御座いまs…』
『犬太郎ちゃん!?犬太郎ちゃ~~ん!!!良かったわ無事でぇ!』
『あべしっ!?』
☆
「……まだ店員で居させてくれるの凄いよなァ。謝罪よりも俺の安否を気にしてたし。あんな優しくて美人な奥さんを捕まえた治安局員の夫さんが気になって来たぞ、俺は」
そう、犬太郎は謝罪をしたはいいモノの、まさかの怒られるよりも己の安否を尋ねられたのだ。
ってか怒られる何て事は全くされなかった。普通に抱きしめられて滅茶苦茶に心配されたのだ。
「にしてもまさか優香さん、俺の事を探してたとは……申し訳ない事しちまったなァ」
なんと優香は雅とセヴェリアンと戦い大怪我を負った犬太郎を探していたという。
結婚記念日だったのだが、店に雅とセヴェリアンがコンビを組み強制連行に向かったと報告を受けた優香の夫が、優香にもその旨を伝えたのだ。
急いで現場に向かってみれば……其処には現場清掃をしている作業員と、まだ色濃く残っている血痕。そして復興作業に務めている【白祇重工】の面々が其処に居た。
弁当屋は、少しも傷が入っていない、優香が店を留守にした時と変わらない姿を保っていた。
それが、この現場で起きた理不尽を物語っていた。
「まぁ、言われてみればアンフェアの極みだったよなァ。俺はあのバケモン二人を相手にしながら、店の原型を保つ為に動きを制限しなきゃいけなかったし。それを見透かされちまえば意味ないんだが……」
優香が唯一怒ったのは、多分犬太郎が無理をして死にかけてしまった事だろう。
怒っているのか分からんレベルの御説教だったが、それもすぐ終わり、犬太郎を泣きながら抱きしめていた。
まるで、何日も行方不明だった息子が、傷だらけで帰って来た母親の様に。
「心が痛いぜ……優香さんにはマジで申し訳ねぇな」
あれは参った。優香には余り怪我を負った姿は見せないようにしよう。
そう心の中で誓った犬太郎であった。
「にしても、こんなに弁当貰っちまうとはな……まぁ、それも仕方ない。何てったって」
優香には弁当を頂いている。
その弁当は合計10箱。その全てが肉料理だ。
実は犬太郎、優香の会話で判明したが……。
「────4日も寝ていたんだ。どうりで身体が動き辛いし、傷の回復が進んでる訳だ。だがこんなくれるかね肉ゥ……血が足りないのはマジなんだが、何か、本当に悪いな……」
そう、3日間も寝ていたのだ。
今まで数知れないほど怪我を負ってきたが、ここまで寝更けたのは初めてだった。
死ぬか生きるか、それ程の怪我を負ったんだ。寧ろ4日で起きるのこと事態が意味不明な話だが、犬太郎からしたら長く感じただけの話。
”ズキッ………ジワァ…っ”
「んッ………右脚と胸の一傷の縫合が緩くなったか。急ぎ足できたからな、仕方ねぇ」
右脚と胸に痛みが生じる。
縫合が緩くなり、箇所から血が流れ包帯に滲む。
問題は……ない。歩き辛いが、そこは根性だ。
「ふぅ……早く雲嶽山の拠点に帰んなきゃな。そういえばあそこってもしかして適当館か?前に泊まった拠点じゃない気がするが……」
犬太郎が思うのは、己が眠っていた場所。
外に出てみれば、其処は以前泊まった拠点ではなかった。
大きな……貫禄ある館。恐らく、福福が言っていた適当館。
実際に見れば、中々に威厳ある場所だったのは分かった。
道は覚えている。早々に帰ろう。そう思った。
”ブロロロロロロロロ………”
「ぬ?この耳からドーパミンの汁が出て来そうな排気音は……」
ふと、後方からバイクの排気音が鳴り響く。
そのバイクの音は良く知っている。己の憧れが愛用しているバイクだからだ。
犬太郎は振り向く。
「ッ!ライトさんッ!ライトさんじゃないすか!」
「………」
やはり、その正体はライト。
かなりの速度で走っており、犬太郎を視認したと同時に傍で停める。
犬太郎にとってライトに会えるのは嬉しい。だが、ライトは少し違った。
「ライトさん、お疲れ様です!まさかこんな所で会えるとは思わなかったっす!」
「……あー、よう犬太郎。怪我の具合はどうだ?」
「え?あ、もしかして………知ってる感じですか?」
ライトは早々に犬太郎の怪我の様子を問う。
犬太郎からしたら、それは流石に負い目を感じずにはいられない。
ライトには余りそういう心配はさせたくないからだ。
だが、あの騒動。冷静に成れば知らない訳がないのだ。
しかし犬太郎の予想を大きく上回る事を、ライトが言う。
「一応言うが、路地裏で倒れたお前を助けたのは儀玄だぞ。その後俺と福福でお前を適当館に運び、正式な医者を呼んで治療したんだ。覚えてないか?」
「いや全然覚えてないっす。でもそうだったんですね、福福たちに救われたのは予想してたんすけど、ライトさんまで……ご迷惑を掛けちまったそうで、ホント、申し訳ございません」
「いやそれは良い……んだがな?あーっと、そのだな……」
「???」
「まぁ、あれだ。取り合えず元気に動けるようで良かった」
ライトはバイクから降り、そのまま犬太郎の頭を乱雑に撫でる。
何はともあれ、元気そうで良かった。
それだけがライトは心配だった。だが犬太郎を見れば、それは杞憂だったと感じる。
「その様子だと、用事は終えたんだな?」
「えぇ。最速で終わりました。不完全燃焼は否めないっすけど……」
「そうか、なら良い……ッ。犬太郎、お前、血が……」
「あっ、すみません。動いた所為か縫合が緩んじまいまして。すみません、嫌なモン見せちまって。俺は大丈夫です。大した事じゃないんで」
「……大丈夫なら、良い」
犬太郎のズボンとシャツに滲む赤い血。
その特有の赤い血は、ライトが苦手とするもの。過去にあった出来事が、ライトをそうさせてしまった。
無論、犬太郎はそれを知っている。故に申し訳なく思う。
「……マジで迷惑掛けちまったっぽいっすね」
「気にするな。俺個人が思うに、お前がした事は決して間違ってない。ただ無理をし過ぎだ、それだけは……頂けん。反省しろ」
「はい。めちゃくちゃ反省してます」
「ふっ、じゃあ俺から言う事はもうないな」
誰にも限界はある。
それはライトもよく分かっている。無理をし過ぎてしまうのは、自分もだから。
だが、犬太郎と云う己にとって特別な存在が、あの時の様に血濡れで意識を失って居る姿を見てしまえば……必然と、無事に、平和に、そして自分に正直に生きてほしいとそう願ってしまう。
だから、ライトは説教はしない。
言うべき事を言うだけ。元々、説教は得意じゃない。
だけど、これだけは言おう。
「お前には福福が居るんだ。死ぬ気はなくとも、死ぬんなら福福の為にだぞ。死に場所は選べ」
「肝に銘じます。俺は福福とライトさんの為なら、この命賭ける気でいるんで」
「そうじゃなかったから言ってんだぞ???」
「でへへへ」
「こんにゃろう」
福福の為に生き、福福の為に死ね。
ライトが言えるのは、こういう意味が有った。
その意味、犬太郎は既に理解している。だが今回こうして死にかけているんだ、言わなきゃ嘘だ。
ライトの為にも死ねる覚悟を持っている犬太郎に若干のツッコミを入れる。本当に分かってるのか?と、些か心配してしまう。
「ま、立ち話もなんだ。後ろに乗りな」
「え、マジですか!?ライトさんと一緒にドライブだなんて光栄です…なんすけど、その、俺実はこのあと衛非地区に行かなきゃなんすよ」
そう、犬太郎は雲嶽山に行かなければならない。
かなりエグイ置手紙をしてそのままだ。
携帯が無いから仕方ないとはいえ、流石に無断に外出したのはマズかったかな~…と、犬太郎は能天気にもそう思ってはいた。
「あーーーーー、それなら安心しろ。俺も衛非地区に行く用事あるから」
「え!?そうなんすか!?ライトさんが衛非地区に行くなんて何か珍しいですね?」
「いやそうでもないぞ?何回か言った事はあるし、最近はお前の件で色々と儀玄に呼ばれるからな」
「儀玄ちゃんに、ですか?これまた珍しい組み合わせで……」
「まぁな。そういう事だから、ほら、乗れよ」
「んじゃあ、御言葉に甘えさせて戴きます!」
そうして、犬太郎はバイクに跨る。
中々のスピードだ。まるで何かに追われてんじゃないかってくらい出してる。
ライトのバイクの運転。何年振りだろうか……思い出が蘇る。
ライトの背にしがみつき、腹に手を回す。
14の時、ライトの運転で郊外を走った時を思い出す。
あの日は己が馬鹿をしでかして、各所に迷惑を掛けてしまった時だ。
心身共にガチ凹みしていた犬太郎を、ライトが無理矢理バイクに乗せ、郊外をドライブしたんだ。
思えば、あの日からか……犬太郎がライトを敬い、慕り始めたのは。
「……なんだか、懐かしいです」
「ふっ……そうだな」
「俺、ライトさんには……これから先ずっと頭上がんないっす」
「俺より目線デケェんだから当たり前だろ?」
「クッふふ……なんちゅう返しするんですか。反応に困るんですけど」
「俺よりデカく成った腹癒せだ────愚息」
「────────」
”ギュゥゥ”
犬太郎の腕に力が増す。
ズルすぎる。なんだそれ、ズルいにも程がある。
「…………」
「お?泣いてんのか?」
「泣いてないっす。眼にアブラゼミが入っただけです」
「もう季節過ぎてるぞ」
「へへ……ありがとうございます。ライトさん」
「……おう」
この2人の関係性は、福福でも入れないほど深い。
ライトからしたら、犬太郎は弟分ではなく、最早己の子に近いのだ。
郊外に流れ着いた、血濡れで服もボロボロの子供。
腹を空かせ、目付きは獣。身の丈に合わない大剣を引き摺る異様な子。
当時の郊外でも、誰も近寄ろうとしなかった。治安局の猛追を齢14で防ぎ切り、何なら力で抑え着けていたから。あの星見雅と正面から戦い、逃げ遂せている話も広がっていた。
当時から怪物の片鱗はあったのだ。
関わらないのが吉。今よりも荒くれ者が多かった郊外ですら、そういう認識だった。
それを断ち切り、救ったのが……他でもないライト。
理由は単純だ。見てられなかったから。
何よりその眼の奥底には……救いを求める光があった。
ライトは犬太郎を拾い、ケアをし、育て、常識を説き、鍛え上げた。
未だに問題の絶えない犬太郎だが……そこがまた、愛らしく感じてしまう。
「……一生着いていきます」
「重い重い。そういうのは福福に言ってやれ」
「福福も一緒に着いてくるので問題ないっす」
「おい止せ。食費が馬鹿にならん……郊外をもっと更地にする気か」
困った事に、福福もライトを尊敬している。
だからこの話、冗談にはならないのだ。
歯車が狂えば即座に郊外に来そうな2人……思わずビクビクしてしまうライト。
ただ……賑やかには、なるだろうな。
そう思う。
「にしても……風が気持ち良いっすね~!ずっと感じていたいっすよ」
「ん…あぁ。そうだな」
「それと、今日はライトさん何の用事で衛非地区に?」
「…………」
急に黙るライト。
どうした、ライト。
「ん?ライトさん?」
「………許せ、犬太郎」
「へ???」
なぜ謝る、ライト。
「え、なんで謝るんです?」
「……さぁな」
「いやいやいや、絶対なんかありましたよね!?絶対に俺に関する何かですよね!?」
「ん、まぁアレだ………死にはしない。多分」
「え!?なに!?可能性0じゃないナニかあるんすか!?俺今から衛非地区に行くんですよね!?ホロウじゃないっすよね!??……なんでまた黙るんです?ちょ、ライトさ────」
そうして、2人は衛非地区に向かった。
その先は地獄だと、犬太郎は知らずに。
次回
大大大説教。犬太郎、死す。
もうご存知かもしれませんが、適当館に『リン』が居るので、既にストーリーはシーズン2に入っています。
つまり、やっと原作を交えて構成される二次創作と云う事ですわ!
誤字報告、感想、お気に入り評価ここすき、本当にありがとうございます。