最強の盾は橘福福しか見えなくなる。〈旧題:最強の盾〉 作:カブトムシの相棒
連日投降です。これは誰が言おうと連日投降なんだ。
アンケートの投票、誠にありがとうございます。
殆どの方が助平なのが分かりました。最高です。福福先輩、良いっすよね。
もう少し先になりそうですが、犬太郎と福福のHはR18に執筆しようと思います。
また、実は○○が○○だったら~的なのも、いずれアンケートをしたいので、その時はまた宜しくお願い致します。
では、本編です。
☆福福side。
「────俺はッ……誰よりも優しかった村の方々を、平等に接してくれた友人達を……愛してくれた家族を……家族をっっ………この手で…殺したんだ」
「────」
呼吸を忘れてしまう程の、彼から告げられる言葉。
あたしは、今、どんな顔をしているのだろう。
お師匠さまの顔は背中を向いてて見えない。でも、犬太郎くんの言葉を聞いて……初めて、その身を完全に硬直させました。
リンちゃん……お弟子ちゃんは、瞳と唇を震わせて信じられないと云った顔。
藩さんと釈淵さんは……口内を噛んでしまった時の様な、痛みに耐えかねてる様な、そんな表情。
────犬太郎くんは……言葉で、あらわせません…っ。
あたしは、今……彼をどうしたいと、思っているのだろう。
「……詳しく、聞かせてくれないか」
数秒の間。冰の様な空間で、お師匠さまがそう告げます。
まだ、待ってほしい。彼の言葉を、咀嚼しきれていないのに…。
「俺の村は身体が弱い。それがもう、決定的だった。エーテル適応体質なんて俺か、親父ぐらいしか居なかった。瞬きの間に人が、幼子が、友達が……バケモノに変わっていく。でも俺の中にあったのは、家族だった………走れば悲鳴が聞こえた。俺よりも遥かに小さかった子供が、食われていた。助けたかった。救いたかった……でも、俺は………家族に会いたかった」
その声は震えています。きっとそれは彼のトラウマ。思い出したくもない過去。
盗み聞きしているあたしは……想い人のこんな辛い話を聞いて、何をしているのでしょうか。
でも……聞かなきゃ、いけない。
「……着けば、親父も桃子も、既に死の淵だった。侵食が重度の領域にまで到達しちまってて、もう…手遅れだった。助けを呼ぼうも、誰も来てくれなかった。当時の治安局も一杯一杯だったんだろう。天病村はもう終わりだって見限り、他のまだ助かる方々を助けに向かって居た」
「………」
「怨んじゃ居ない。合理的な判断だ、当事者の俺ですら、もう無理だって思ってた……だけど、家族。家族だけは俺は助けたかった。お袋が死んで、友達も目の前で殺され、食われ、変わっていく姿を見て………もう限界だったんだ。俺は意味もなく人工呼吸をしたっけな。そんな事をしても無理だって思う事すら出来ないほど、俺は余りにもガキだった」
言葉に、できません。
どうしてそこで、笑うんですか。無理してんのバレバレなのに…。
……そうですよね。お師匠さまの、前ですもんね。
………………あ。
だめ。あ、だめです。だめですよ、そんな……。
”ポタ…ポタ……”
「……福姐。もう…」
「………」
「福福先輩…っ」
「いえ……最後まで、盗み聞きします……彼の過去に土足で踏み入った筋として、最後まで……残り…っ」
あたしが泣いて、どうするのですか…。
ほんと、あたしは……どこまで未熟なんですか。自分の感情の弱さに、辟易しますっ。
涙が零れ落ちて、彼の言葉を待ちます。
彼の過去に、踏み入ったのなら……最後まで聞くのが、彼の恋人としての責務。
「……何で俺が、リンさんに対して苦手意識を抱いてるか。本当の理由は……桃子が、言った事が主にデカい」
「………桃子は、なにを?」
「────殺してと、俺に頼んだんだ」
心臓が締め付けられる感覚に陥ります。
その意味を、分かってしまうから。
「エーテリアスに成りたくない。最後くらい人として死にたい。その意味を込めて、俺にそう言った……………5才だ。5才の女の子が、コレを内に秘めて、今際の際でそう吐いたんだ。親父も、俺に大剣を握らせて、そう言ってくる始末…………きっと、桃子にそう言わしてしまった時から、俺は狂っていたんだと思う。幾ら否定しても、何度も、何度も助ける道を思案しても、俺にはどうしても………あの2人を、人として生を終わらせる未来しか見えなかった」
「っ…………」
「……だから、殺した。親父の大剣を持って、首を一閃。即死だった────最期の言葉は……大好きと、愛してる」
その情景が…眼に浮かびます。
……もう何も考えられません。あたしは……なんて…最低っ。
「────親父の大剣を引き継いだ俺は、エーテリアスに成った友を殺した。まだ人間だった老若男女も、殺した。殺しまくった。天病村の皆は凄くてな、いつ死んでもいいって常に心に留めてた……殺意を向ける俺に、皆口を揃えて……”ありがとう”……って言うんだ。心が揺さぶられたよ。いっその事、恨み節でも吐いてさえくれたら、俺も殺し易かったのに…みんな笑顔で死んで逝ったな」
……涙が止まりません。
いつも、いつも……あんなに元気で、おばかで、おちゃらけてたのに。
そんな……苦しすぎるものを、その笑顔の裏で隠してただなんて。
……ライトさんが言っていた事の意味を、やっと理解しました。
火傷どころじゃ、ないですよ……。
「殺して、殺して、殺しまくって……眼の前が赤く染まっていた。そう感じたと同時、俺の身に……異変が生じてな。それが……フゥゥゥゥ」
「ッ!!」
瞬間。犬太郎くんが……。
「────シィィィィ…ッッ」
「ッ……なんと云う」
────天に手を掲げ、何かを……あれは……うそ。
犬太郎くんの掌に、途轍もない速さで飛来し、その上に浮遊する物体。
石ころサイズの、でも確かな熱を帯びた……赤黒い石粒。
アレが……
初めてみました。すごい、本当に……凄い。
皆さんも魅入っています。口を開けて、驚愕の意を現して。
よく見れば、小っちゃい隕石の周りには、何か蒼白い……氣?の様なモノが纏ってあります。
なんなんだろう……そう、思った矢先です。
「ゲホッ…安心、しろ………極小粒の、隕石だ。実害は無い………ゴフゥ!」
その光景に呆けていると。犬太郎くんが……あ。
「ッ!馬鹿者ッ!身体に障るのであれば止せ!!」
「ゲフゥ…ッ……見たかったんだろ…?グフッ……分かったろ。これが、俺の異能だ」
”ガシィ!!”
「だめだ福姐ッ……」
「っ!!っ、うぅぅ……!」
「いけません姉弟子ッ……」
血。血が……また無理してっ!
藩さんと釈淵さんが止めます。だめ、またむりしてる。助け、たす…たすけないと!!
犬太郎くんっ……なんで、なん…っっ…!?
「福福先輩」
「ぁ……」
お弟子ちゃんが、あたしをギュってしました。
温かい。
落ち着く……ぁ、そうです。冷静にならなきゃ。
「……相当、2人の世界に入っているんだろうね。こんなに気配を出しても、全然振り向かないや」
「……ごめんなさい、お弟子ちゃん。あたし……あたし…っ」
「大丈夫、大丈夫。大丈夫だからね……」
リンちゃんの優しい声が、あたしを支えます…。
呼吸が浅かったのか、あたしは酷い呼吸困難になっていました。
出来るだけ静かに、息を整えます。
……彼の血を見るだけで、取り乱してしまうだなんて。
虎が聞いて呆れます……ふぅ………大丈夫、そう、大丈夫です。
彼はあの程度で死ぬような男の子じゃありません。あの傷を経て、たった4日で歩けるようになった人です。大丈夫……大丈夫っ。
「グフッ……分かったろ。俺は……狂ったと同時、何時の間にか……ッゲホ……天病村に、隕石を落としていた……天病村にあったホロウごと、原形を消していたんだ」
「……そうか。そういう事だったんだな。お前さんを各組織が追い、求める理由は」
「あぁ、きっと、そうなんだろう……まぁ、邪兎屋やヴィクトリア家政は、俺の仕事を買ってくれている、優しい方々だから、ゴフッ…そこは除外するが」
血を吐きながら、そう笑う犬太郎くん。
彼が良く語る2つの組織名。きっと、その方々は犬太郎くんの力ではなく、人としての能力を見て勧誘しているのでしょう。
彼の優しい顔を見て、そう思いました。
「………犬太郎」
「ん?」
「……お前さんは、己がした事を……後悔しているか?」
ふと、お師匠さまがそう発語します。
あたしは……その問いの意味を、よく分かりませんでした。
だって、それは……余りにも…。
「────そりゃぁな。後悔なんて、幾らしても数え切れない」
「…………」
「でも、間違ってはいなかった。それは当時から変わって居ない」
真っ直ぐな目で、そう告げる犬太郎くん。
……あぁ、この人は、本当に強いんだって。改めて思いました。
9歳の時から、人殺しの重荷を背負って。
それを10年間も、ずっと……抱え続けて。
どれだけ、辛い事か……あたし如きじゃ、計り知れませんッ…。
「……そっからは踏んだり蹴ったりだ。語る必要は、ない………結論を言おう。俺が何者なのかだが………偶々頑丈に産まれ、偶々こんな能力を授かっただけの、ただの
「………過去を掘り返すような真似をさせてしまったな。非礼を詫びる。すまなかった」
「気にするなよ。いずれ、話さなきゃいけなかったんだ………儀玄」
犬太郎くんが、踵を返して告げます。
「……少し、1人にしてほしい。福福たちには………適当に何か言っておいてくれ」
「あぁ……そうするといい」
「悪いな。じゃあ……」
「犬太郎」
何処かへ行こうとする犬太郎くんをお師匠さまが止めます。
彼は振り返らず、立ち止まって聞く。
「────何が有ろうと、私達はお前さんの傍に居る」
「ッ………」
「私に吐き出せたんだ。いずれ来る日、福福にも話すと好い」
「………そう、だな」
それだけ言い残し、犬太郎くんは中庭を後にしました。
衛非地区の何処かに、向かいました。
……そこから数分。お師匠さまが経ち続けていると……。
「────なにをしている、其処の阿呆共」
「ッ!?うげ!」
「くっ…」
「あたっ!」
「っ……」
縮地であたし達の背後に立ち、1人ずつ軽く拳骨してきます。
痛い……ですけど、あたしは……。
「うぐぉ……やっぱお師さんの拳骨は効くなぁ」
「全く、お前さん等は……待てと云ったろう」
「すみません。好奇心に抗えず、失礼ながら隅でお話を聞いていました」
「……私も気付いたのが途中から、今更何も言えんが……はぁ。まぁいい。して、あれを聞いて、お前さん等は何を想う」
”「………」”
少しの話し合いの後に、やはり告げられるのは先程の事。
お師匠さまにその事を聞かれれば、私含め皆さんは……黙ってしまいます。
なんて、言えば良いのか……分からないんです。
「っっ………」
「………はぁぁぁぁぁ……この阿呆者が」
「あぐっ!?」
”ピンッ!”
甲高い音が突如として響きます。
それは、お師匠さまが……あたしのおでこをデコピンした音でした。
ただでさえ拳骨で痛いのに、さっきよりもずっと痛いデコピンを喰らわせられました。
な、なんで……?
「な、なにをぉ…?」
「目は覚めたか?全く、釈淵と藩は兎も角、リンと福福は何を呆けている。特に福福。お前さんはあの阿呆のなんだ?」
「っ……こ、交際の仲です」
「それをもっと端的に言え」
「こっっ……恋人、ですっ!」
「なら行け」
「わぁっ!」
そう云うと同時、お師匠さまがあたしを前に突き出します。
もう頭が一杯一杯なのに、まだ頭の整理が出来て……
「そこ、深く考えるな」
「あう……」
「……想像以上だったのは否めん。だが、それでお前さんがどう思い、どう感じ、そして犬太郎とこれからどうするか。それは、今を生きるお前さん等が決める事だ」
「……お師匠さま」
「今はまだ遠くには行っていない筈だ。だが急がねば見失うぞ。ほら、行った行った」
そう云いながら、手でシッシッってするお師匠さま。
……本当に、ありがたいです。覚悟決まりました。
「────行って参ります!!」
そう言って、あたしは……走って犬太郎くんの後を追いました。
もう、言う事は決まっています。するべき事も、決まりました。
だから……犬太郎くん。
貴方の抱えるものを。あたしにも────
▼
”コツ、コツ、コツ……”
「────ふぅぅ……俺は…」
何を、しているんだろうか。
そう思考する。己が儀玄に何を話していたのか、余り覚え出せない。
何かを吐き出した。それは、言えないモノを溜めていた証のようで。
嫌に、脳がクリアだ。
「……はぁぁ」
チャリチャリと、首輪のリングを指先で揺らす。
今思えば、己はこの首輪をした状態で、あの話をしたのか。
何だか、無性に恥ずかしい。
「………福福」
想起するのは、己の想い人。
いずれ、この手の話をしなければ、いけない相手。
……今回は、儀玄だから言えた。ある意味で、ライトに次いで一番言い易いから。
でも、福福、またはリンにこの手の話をするのは……キツイ。
「折角、掴んだんだ……掴んだこの幸せを……ッ………怖え…ッ」
衛非地区の公園前。そこで、己はつい……しゃがみ込んでしまう。
あの話をして、己が人殺しの罪過を背負っていると知った福福は……己を、どう想うだろうか。
どんな……反応をするのだろうか。
それが、どうしようもなく……怖い。
「はぁ…はぁ……っぅ、はっ……」
満身創痍の身体で隕石を降らすと言う異能を使った反動か、それとも福福に対する不安か。
息遣いが荒くなる。きっと、後者なのだろう。不思議とそう感じた。
「………福福ッ」
「────はい、犬太郎くん」
え?
バッ!と振り返る。
今気づいた。気配があった。でもそれは振り返り同時に感じたから意味を為さない。
己はいま、限界なのだろう……この子の気配すら、感じ取れない何て。
そう、其処には何と……。
「意外と遠くに行っていなくて良かったです。こんな所に、居たんですね」
会えて嬉しいのに、会いたくなかった相手。
福福が、其処には居た。
「な、なんで…此処に………」
「……ごめんなさい、犬太郎くん。貴方とお師匠さまの話、陰から聞いていました」
「────は……え、あ……え?」
犬太郎の眼が見開かれ、狼狽えている表情になる。
その顔は、僅かに福福の心を痛める顔で。犬太郎に対し、申し訳が立たなくなる。
でも、聞いたからには……犬太郎に、言わなければならない。
福福は一歩近づきながら、犬太郎を安心させるように告げる。
「犬太郎くん、あたしの話を…」
「ッ!く、来るなァァ!!」
「っ!」
だが、犬太郎が起こした事は……なんと拒絶。
その瞳孔は震え、顔は今まで以上に強張っている。
こんな犬太郎は、初めてだった。
「こ、こ…来ないでくれっ……あんな。あん、あっ……あんな話を聞いて、福福は……っっ」
「……犬太郎くん」
「お、おれっ………っ……俺は、お前が思う俺じゃないんだッ。本当は薄汚い人殺しで、どうしようもないクズなんだッ……家族ですら救えないような、軟弱な……っ…う、オエっ……」
息は絶え絶え、歯を震えさせ鳴らす。
口を抑え、吐き気を催す。
パニックになっている。今の犬太郎は冷静ではない。
ならば、する事は……一つ。
「犬太郎くんっっ!!!」
”ギュゥ”
「はぇ?」
「……犬太郎くんっっ」
「ふ……福福?」
ガチガチと歯を鳴らし、怯えてる目の前の青年に……居ても立っても居られなかったのだろう。
福福は圧声を出しながら、犬太郎を力ある限り抱きしめる。
その抱きしめは、それはそれは、強くて。
犬太郎の傷が軋む程の強さだった。
「大丈夫ですよ。大丈夫、貴方は大丈夫です。さぁ、落ち着いて息を吸って……すぅ~~~…はぁ~~~……って」
「う、ぁぅ……すぅぅぅ…はぁぁ……」
「お上手です。さ、もう一回。すぅぅぅ~~~…はぁぁぁ~~~……はいっ」
「すぅぅぅぅ~~…っ…は、はぁぁぁ~~……」
「偉い偉い。よく出来ましたね。どうですか?少し、落ち着きましたか?」
「………うん」
でも、その強さが、痛みが……逆に犬太郎を安堵させた。
福福のメンタルケアは、よく出来たもので。
精神が擦り切れていた犬太郎は、次第に鼓動も落ち着いて。
眼の前の福福を見ても、もう、拒絶する事はなかった。
「…………ごめん、福福」
「ん?なにがですか?」
「来るなとか、拒絶なんかして……ごめん」
「……いいえ、気にしてません。寧ろ謝るのはあたしの方です。ずっと言えなかった事を、盗み聞きしてしまって。貴方を混乱させてしまいました……本当にごめんなさい」
「っ!い、いや!違うんだッ!それは、お、俺が…っ!」
「貴方は何も悪くありません。だから、そうしてまた自分を卑下しないで。もう、自分を責めないであげて下さい。貴方が……犬太郎くんが苦しむ姿は、もう見たくないんです」
「ふ……福福」
また、悲しませてしまった。
己はどうして、いつもこう……ままならない事か。
「……犬太郎くん」
「っ……ふ、福福…」
すると、福福が犬太郎の両手に触れる。
小さい手。柔らかくて、頑張っている女の子の手。
その形容出来ない力強い手が、己の手に添えられる。
「この手で、天病村の皆さんを、御家族を……天国へ迎えさせてあげた」
「ぇ……?」
「
「なに、を…言って……」
それは、犬太郎が……思っても居なかった言葉だった。
その言葉は、どこまでも、何よりも……優しくて、温かくて。
ライトのように、前へ進ませる力ではない。
福福独自の、包み込む力があった。
「貴方は確かに、人を殺めました。でもそれは、それは…………貴方一人が抱え、背負う事ではありません。あたしも共に背負わせて下さい」
「っっ………」
「貴方の……狼谷犬太郎の【恋人】として、共に生きさせて下さい。あたしと、一緒に居て下さい。あたしとその血を共有させて下さい。あたしは、ずっと、これから先ずっと!犬太郎くんの傍で、味方で居続けます。だから……だから、貴方の業をあたしにも背負わせて下さい。例え小さな背中でも、あたしは力持ちですから、心配は要りませんよ」
「ふ、ぁ………」
駄目だ。それは、駄目だ。
だって、福福は関係ない話だ。これは、己が抱えるべき事なんだ。
どうして、そう言うんだ。どうして、そんな事を言えるんだ。
犬太郎の返答は、無論…………無論……。
”ポロ、ポロ…………ポロ……っっっ”
「……ぐっ……うぅぅぅぅぅぅ………うううぅぅう…ぐぅぅぅ…っっっ!」
涙を流し嗚咽。それが、彼の返答。
ボロボロと……顔をクシャクシャにしてしまう。
それは、もう……答えだった。
「福福ぅ……ふ、福福ぅ、おれ……おれぇ…!」
「……はいっ、はい。あたしは此処に居ますよ……っ」
「ごめん!ごめんっ……ごめん!こんな俺で、ごめんっ……一人で背負えるって、おもてた…のにっ……ライトさんにも、心配かけたくなくて、心の何処かでずっと我慢しててっっ……リンが……福福が、俺の過去を知れば…俺を見る目が変わるんじゃないかって、ずっと、怖くって……っっっ」
「もう、おばかなんですからっ……そんな事、ある筈がないじゃないですか。貴方が優しくて、器用なのに不器用な男の子で、ずっと何かを抱えていた事は知っていたんですから……貴方と過ごした期間で、それはもう、笑っちゃうくらい知ってるんですから」
「う、ぐぅぅぅ……うぁ、あぐ………ありがとう……ありがと…おぉぉ……くぅぅう……あぁ…ぅぅっっ…!」
「……だから、もうそんな心配はしなくって良いんです。この抱擁が答えです。貴方は……あたしが、ずっとずーーーっと、傍に居ますから」
福福の胸元の中で、泣く犬太郎。
この男が泣く姿を、福福は初めて見た。
ずっと、噴き出ないよう我慢していた涙腺の蓋。
それを空ければ、まるで噴水の様に、福福の服を濡らしていく。
その姿が、その嗚咽が、その涙によって濡れていく服の感覚が……福福は、嬉しかった。
やっと、打ち明けてくれたんだって。そう思えて。
「福福……あぐぅ……福福ぅぅ……!!」
「っっっ……ん、ふぅっ……っ…だめですね、あたしも……抑えきれそうにありません」
まるで、赤子の様に泣く犬太郎。
膝を着いて、福福のお腹や胸に涙を流し続ける犬太郎。
福福から見えるその背中は……大きいのに、小さくて。
彼の今迄を、彼の苦痛を、彼の慟哭を……その背中が顕わしていて。
それを理解した……全て、分かった。
途端に来るのは……涙だ。
「ぐすっ………ふふ、犬太郎くんっ……」
「うっ!うあぁぁ……うあぁ、ぐうぅぅぅ……福福…ふぅふ…うあぁっっ!」
「ふふふっ……えぇ、あたしは此処に居ますよ。貴方が落ち着くまで…いえ、どんな時でも……あたしは傍に、貴方の隣で立ち続けますからね」
「あぐっ……うあぁ、あぁあぁああぁ……っっっ!」
そこから、何分、何十分、泣いたのだろうか。
福福がほろりと泣いて、治まって尚……犬太郎はずっと泣いていた。
幾年振りの涙なのだろうか。吐き出す勢いの嗚咽は、その背景を読むには容易くて。
ずっと我慢していたんだろう。涙を流すのは許せなかったのだろう。
きっと、逃げだと思っていたのだろう……いや、もしかしたら。
────どう、流せば良いのか……分からなくなってしまったのかもしれない。
だから、この涙は枯れるまで止まらない。
それで良いって、福福は想う。
我慢してきた分を、己に吐き出せばいい。
その為に、己は存在しているのだから。
次回
犬太郎の変化?
はい。これでやっと犬太郎くんの過去の半分が終わりました。
とはいえ、犬太郎の真の転換期でもあります。めちゃんこに成長した犬太郎は次回からですね。
ここすき、大好きなので宜しければ皆さんお願い致します。
加え、最新話を投降すれば必ず感想くれる方。
本当にありがとう御座います。心の底から愛を叫んでいます。
また、偶に感想を書いて下さる方、初めての方も本当に嬉しいです。ありがとう御座います。
誤字報告、感想ここすき評価、お気に入り、大変励みになります。
読みたい話。
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邪兎屋との出会い。
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福福ちゃんとの健全デート。
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犬太郎と福福の助平な話(専用の場で投降)
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男子会(ギャグ)