最強の盾は橘福福しか見えなくなる。〈旧題:最強の盾〉   作:カブトムシの相棒

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今日は出会い編ですわ!



では、本編です。


その目に映った。それだけで十分だった。

────

 

 

 

 

「────狼谷ァ!!テメェをブチ殺して拍を上げてやるッ!!」

「……ソイツ(ナイフ)を持って挑むんならやめておけ。死ぬなら自分(テメェ)の寿命で死にてぇだろ」

 

 

 

今日は快晴。犬太郎は遠い場所でお散歩をしていた。

こういう何もない日は身体を動かすのに適している。特にする事が無いから外出しているとかでは断じてないのだ()

 

しかし、そんな日でも、犬太郎に平穏は訪れない。

 

こうして名を上げれば、それなりに狙われる事もある。今がその時だ。

 

 

 

「うるせぇ!!コッチはとっくに腹を括ってんだ!テメェのそのデケェ大剣だって怖くねぇ!!」

「そうかい……じゃあ取り合えず────海老煎餅に成っとけよッッ!!!」

「へ?……ぶべぇぇええぇぇ!!!!??」

 

 

 

ボゴォォン!!と……犬太郎がカバーを巻いた大剣を横に向かせ、そのまま暴徒をホームランが如くフルスイングで誰も居ない場所に吹き飛ばす。そのまま壁にクレーターを作ってぶち当たる。

 

護衛として各地区を出入りし担当する事が多い犬太郎だが、こういった無意味な挑戦者もよく出て来る。

 

 

 

「一体何の騒ぎで………ひっ!!」

「おいおいコレ、死んでねぇよな…!?」

「ちょ、ちょっと誰か、救急車!それと治安局!!」

「もう前から呼んでるわよ!」

 

 

 

喧騒を駆けつけた一般人がワラワラと集まりだす。

別に悪い事はしていない。犬太郎はそう自覚している。暴漢を落ち着かせるには、言葉よりも結局は同じ暴力が最適解だと理解していた。ほぼぺちゃんこになった。

 

加えてその暴徒はナイフを所持していた。激情をヒートアップさせてしまえば、二次被害も予想できる。

 

 

 

「殺してねぇよ、最小限に手加減はしたんで。じゃ後は頼むわ」

 

 

 

そう言い残し、犬太郎は颯爽とその場を後にする。

この後【治安局】が到着する。一部始終を見ていた市民に代弁を任せるが吉。そう考えての行動だった。

 

そして、大剣を背中に掛けて、そのまま流れる様にタバコを咥えて、Zippoでタバコに火を付ける。

 

 

 

「っ、ふぅぅ………」

 

 

 

肺に入る煙が、脳を刺激するこの感覚。

最高の一時だ。脳がキマル。最高の快感が襲う。

 

暫くこの感覚に身を任せたい……そう思っていた。

 

 

「────そこまでよ!犬太郎くん!」

「…すぅぅ………ふぅぅ……吸ったばっかなんだ『朱鳶』ちゃん。悪ぃんだが見逃してやくれねぇか?」

 

 

 

しかし、そうは問屋が卸さない。

後ろから制止の声を掛けられ、足を止めて振り返る。

 

其処には何と、もう到着した治安局の姿が在った。

 

その中で、一際目立つ、中々に美ボディを魅せる麗人。

 

朱鳶が、犬太郎に銃口を向けけていた。

 

 

 

「エライ到着が早いな。そんなに俺に会いたくなっちゃったか?朱鳶ちゃんに追われるような事した記憶はないぜ?」

「先程の騒ぎは貴方でしょう?嘘には出来ないわ、ちゃんと証拠は出揃ってる。傷害罪に加え器物損壊罪、加えて未成年喫煙禁止法違反に入るの。因みにコレ2ヶ月前も言ったからね?」

「あの時必死に教えてくれた朱鳶ちゃん……最高にクールだった」

「下手な口説きは結構。さ、着いて来て貰うわよ」

 

 

 

どうやら今日の朱鳶も無駄な口は聞かないらしい。

犬太郎は職業柄、何度か治安局のお世話に成っている。特に朱鳶や『セス』にはよく叱られているとか。

 

しかし、今日はシンプルな罪を口上されている。

恐らく、先ほど吹き飛ばした暴徒の件だろう。誰も居ない場所に吹き飛ばしたは良いが、知らん人の壁だったか……しかし、先に襲ってきたのは暴徒だ。言い訳はあるが……。

 

 

 

 

「ふぅぅぅぅ………ま、確かに今日は俺が悪いか。一応言うけど、先に襲ってきたのはあのボケだぜ?朱鳶ちゃん」

「今までの傾向で、それは理解してるわよ。直ぐに釈放する予定だから大人しく着いて来てもら……………は?」

 

 

 

朱鳶は手錠を手に持ち近付く。

それに合わせ、犬太郎………は、一気に逆方向に向き、全力で逃げる。

 

 

 

「ごめんなぁ朱鳶ちゃん、あんたイイ女過ぎて近付き過ぎたら鼻血エグイ量出て死んじまうわ!あ~ばよ~!」

「んなっ!?ど、何処へ行くつもり!?待ちなさい!!」

「その黄金比も平伏す尻の力で追いかけて来なァ朱鳶ちゅわ~~~ん!!!追い付けんならなァァ!!はーはっはっはっは!!」

「~~~~~っっ!!馬鹿にしてっ!!!応援要請!!3時の方向に容疑者が逃走!追跡します!!」

 

 

 

なんと犬太郎は朱鳶を煽り、そのまま逃走を図る。

治安局のお世話になりたくないのもあるが、一番は朱鳶が列記とした〈女性〉だからだ。女子供と争うのは余り良しとしない犬太郎にとって、分が悪いのだ。

 

 

朱鳶は即座に車を用いて逃走する犬太郎を追いかける………だが。

 

 

 

「っ!何て速さッ!120㎞は出してるのに…!」

 

 

 

犬太郎の健脚が唸る。車よりも速く、ストライドが途轍もない。

大剣を担いでるとは思えない程、犬太郎のスピードは次元が違う。朱鳶が更に車の速度を上げても、更に差を付けられる始末。

 

これ以上速度を上げてるものなら、民間人に衝突の可能性もある。それだけは駄目だ。

 

 

 

「────痺れるねぇ!!流石ナイスバディ朱鳶ちゃんだ!流石のドラテク!!」

「何かふざけた事を言っているでしょ!?止まりなさい!!」

 

 

 

聞こえていない事を良い事に、犬太郎は朱鳶の美麗たる肉体を褒める。彼は無類の女好きだ。

 

そして、数分間の治安局との追いかけっこは………犬太郎の末脚によって、治安局の猛攻を振り切った。犬太郎は逃げ切ったのだ。

 

 

 

「………くっ!!」

 

 

 

完全に見失った犬太郎の姿を見て、徐に悔しさを露にする朱鳶。

 

まさか、今まで悪さしたら自分に大人しく従った犬太郎が、とんでもない反逆を見せた。

女の子が好きだとは聞いていたから、今迄は己が対応していた、その節はあったが……まさかの出来事だった。対応が遅れた、それもあるが……何よりも。

 

 

 

「(戦闘者として強いとは思っていたけど……まるで次元が違う…)」

 

 

 

霹靂の速度で逃げられた。只の護衛屋にだ。

 

ここ最近、少し有名になってきた、若い男の子のちょっとした暴行事件。

その件で、まさか彼の本領の片鱗を見た……朱鳶から見た、彼の雰囲気。

 

 

 

「(あの巨大な大剣を担いで凄まじい健脚を魅せる身体能力。過去に治安局に所属していた『彼の父親』とは比べ物にならない程、あの子の戦闘力と【エーテル適性】は群を抜いている。昔、あの子の履歴を調べた時、そんなデータは確かにあった………加えて、まだ十代という若さ……あり得ない、けどもしかしたら……)」

 

 

 

────あの『星見雅』にすら匹敵し得る……底なしのポテンシャルを持っているのではないか……。

 

 

 

「……いえ、考え過ぎね」

 

 

 

朱鳶は疲れた頭を整理する。そんな事はないだろう、あの【虚狩り】である雅に匹敵するなど、有り得ないのだから。

 

それは『旧友』である朱鳶が一番分かっているのだ。星見雅は己の剣技だけで虚狩りになった傑物。

 

星見雅は……誰もが認める【最強】なのだから。

 

色々と思案して、一旦はそう落とし込んだ朱鳶。

そのまま朱鳶は犬太郎の追跡を開始したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────……やっべ何処だっぺ此処」

 

 

 

治安局との追いかけっこは、意外と長い時間による幕劇だった。

俺は今……ぶっちゃけ初めて来る場所に居る。

 

意外と追いかけっこが楽しかったのか、走り過ぎて、気付けば見知らぬ土地……まだ俺もガキだな。

 

 

 

「まさか『セス』くんにも追われるとは……ちょっと予想外だったなァ」

 

 

 

そう……あれは、数十分前の事……。

 

 

 

『────待て!!犯罪者になった犬太郎め!神妙にお縄に付けー!』

『おいおいおいマジか!!セスくんちょいと落ち着いてくれや!』

『朱鳶班長から捕縛の指令が出ている!犬太郎!お前今度は何をやったんだ!』

『ちぃっと馬鹿をぶっ飛ばしただけだって!あと壁をぶっ壊した!何が悪いんだよ~!』

『傷害罪に器物損壊罪だと!?お前、立派な犯罪じゃないか!』

『俺は悪くねぇんだって!許してくれ!!』

『なら本部まで御投降しろ!話は聞いてやる!その後で確りと規則に則った指令を出す!!』

『……それは、ちょっと色々と都合が………まぁ、一旦ここで一服……すっぅぅぅ、ふぅぅ……』

『何!?じゃあ悪い事をした自覚はあるのか!?お前……もしかして俺達に知られたくない事情があるんじゃないのか!?』

『ギクーーーー!!!』

『古いぞ!そして図星だな!!絶対に捕まえてやる!……ってかなに吸っているんだ!未成年だろ!あ、おいコラ!待てーーー!!』

 

 

 

そうして、セスくんと長い追いかけっこをした末……気が付けばこんな場所に居た。

 

セスくんとは、それなりに縁がある。

どういう訳か、俺が護衛依頼を終えて一服を終えると、よく鉢合わせて怒られるんだよ。

そういう時は逃げるか、大人しく怒られとくかの二択に成る。高確率で逃げるが。

 

 

 

「セスくん、日に日に俺への当たりが強くなってるよな……本気で怒ってくれてるのは伝わって、心が爪楊枝でプスプスされてる気分になる」

 

 

 

そう独り言つ。俺より年上だが、凄まじく可愛い……弄りたくなるんだよなぁ、セスくん。

 

 

 

「いやしかし……此処は何処だ?マジで初めての土地だぞ……」

 

 

 

辺りは山岳が聳え立ち、遠くに目を向ければ海辺が見える。

極めつけは、中々なデカさを誇る『ホロウ』………まさか。

 

 

 

「ありゃ【ラマニアンホロウ】………って事は、此処はスロノス区か」

 

 

 

考察。学歴が無いとはいえ、これでも脳死はしていない。

ラマニアンホロウ……実物は初めて見るが、嫌な感じがする。

 

あのホロウとほぼ隣接してる都市か、確か、結構ムズイ名前の都市だったよな……なんつったっけ。

 

 

 

「こう、排他的な名前だったよな………うぅん、まぁ此処は一発決めるとしますかねェ」

「おい、そこのイカした兄ちゃん。どうしたんだこんな所で?」

「ん?」

 

 

 

タバコに火を付けて少し落ち着こうとした時……背後から軽快で響きの良い車の音が聞こえ……隣に付いたかと思えば、急に話しかけてきた、一人の60近い爺さん。

 

車の車種はハイラックス。俺もこの車の車種を愛用しているから、直ぐに分かった。

 

一瞬警戒しちまったが、どことなく普通の一般人の様相だ。

土地勘のない俺は、誰かに色々と聞きたい思いだった。丁度いい、此処の事について聞いてみるか。

 

 

 

「何だ爺さん、俺の事を助けてくれんのか?」

「まぁ困ってそうだったからなぁ。この辺じゃ見掛けないデケェ大剣持ってるんだ、そりゃ気になるだろうよ」

「コミュ力半端ねぇな爺さん。まぁ胆力なきゃこんな所で生きれねぇか……とはいえ、確かに此処には初めて来たんだ。ぶっちゃけた話……迷子なんだよなァ俺」

「迷子ぉ?一体ここまでどうやって来たんだよ」

「うーん……話せば長くなるんだがよォ、爺さん、あんた………タバコとかイケる口だったりしねぇ?」

「……ほう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────だっははははは!!コイツは傑作だ!治安局と鬼ごっこしたらこんな所に来たとはな!!んな面白れぇヤツ初めて見たぜ!!」

「いやぁマジ大変だったんだぜ?知り合い二人に加えて色んな局員が俺を怒髪天で追いかけて来るあの恐怖……うぅっ!思い出しただけでタバコ吸いたくなるぜ…!」

「いや末期じゃねぇか!だははは!おう!もう一本くれや!」

「勿論、ってかこの銘柄で良かったのか?俺の愛用してんの割と普通のだぞ?」

「いんや、コレが良い。俺も結局はコイツに戻ってくっからなぁ。美味いよなぁコイツ」

「爺さん、あんたとは気が合いそうだ。割と吸ってる部類だが、この実家の様な安心感が忘れられなくなる……魅力が違ぇんだよな」

 

 

 

その後、俺は何とか爺さんの車に乗せて貰い、そのまま『衛非地区』という場所に向かう事になった。

聞けば直ぐに分かったが、結局は行った事のない場所だから先ずは着いて来いとの事。

まぁ、今日は何もない日だ。一日くらい観光も良いだろう。

 

爺さんとはタバコで仲良くなれた。やはりタバコ、タバコは全てを解決する。

 

 

 

「にしても、坊主のその大剣……随分とデケェが、よく持てるな?」

「昔からアレで鍛えてたからな、手に馴染んでるだけさ。後で持ってみるか?」

「いや遠慮させてくれ。腰が砕けちまうよ」

「そいつもそうか」

 

 

 

やはり話になるのは大剣だ。

新エリー都でもそう見ない部類の武器だ。

 

後ろのバンに置かせて頂いているが、まぁ、素人目線でも武骨だし、無駄が多く見えるだろう。

 

 

 

「────昔の……弱かった憧れの人から、譲り受けた武器なんだ。使い勝手は微妙だが、使い方によっては盾にも成り得るんだぜ?」

「ふーむ、成程ねぇ……儂は特別身体が強い訳じゃ無かったから、あんた等の様なスゲェ人達の事は理解出来ねぇなァ」

「それが一番平和だ。車の運転、助かってるよ」

「へへっ……そうかい」

 

 

 

見知らぬ土地にしては、良い爺さんに会えた。

それだけで、此処に来た甲斐があった。気持ちのいい人は大好きだ。

 

 

 

「坊主、これから衛非地区に行くが、案内を呼んでやろうか?」

「案内か……(ぶっちゃけ出せる程の金は……あんま無い。適当に歩いても良いが迷いそうだしなぁ……だが、この爺さんにそこまで迷惑は掛けれんな……)いや、大丈夫だ」

「良いのか?結構広いぜ?」

「今日は観光って事にするさ。それに、確かに土地勘は無いが、覚えは良い方なんだ。今日はブラリとそこらを歩いて回るよ」

「そうか?ま、坊主にそこら辺は任せるぜ」

 

 

 

そうして、爺さんは車を走らせてくれた。

車内はタバコの煙と、衛非地区の独特な匂いが混じり合って、中々に雰囲気が良い。

 

……人が居るだけで、こんなにも良いのか。

 

いつも車を使う時……いや、常に一人だから、こうして誰かと煙を上げるのは滅多に無い。

それが車なら尚更だ。車内で吸うのに抵抗がある人も少なからず居るのだ。

 

 

俺はこれから行く『衛非地区』に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────うっま!」

 

 

 

俺は今、この土地を満喫している。

近くに在った茶屋で『チャーシューまん』と云う食いモンを買って、道を歩きながら食っている。

 

マジな話……めっちゃ美味い。んだこれ、もう食べ物売るってレベルじゃねぇぞオイ!?

 

 

 

「(昔食った肉まんを超える美味さ……流石に意気の良い人等が作る料理は一味違うな)……────ん?」

 

 

 

感想を心の中で想いながら歩いていると……ふと、道脇の方で一際『目立つ爆美女』がいるのに気付いた。少し歩いた先にあった。

 

察するに占い系だろう……俺は占いなどした事が無いが、この際丁度いい、この美女と少しお話をしたい。

 

白い髪色の長髪、中々に際どい薄着の道着、そして……美しい容姿。

 

んー、素敵。俺的美女ポイント1000点。

まぁ、女の子は年齢関係なく全員が100点満点を優に超える。その中でも、あの爆美女はエグイ、俺の心は自然と……

 

 

 

「お姉さん、俺の占い……おけい?」

「ん?あぁ、今は休憩時間だが、まぁいいか。其処にくじ引きが…ん?────ほう?これはまた……珍しい客が来たものだ」

 

 

 

俺は流れる様に美女の元へと近づき、そのまま占いのくじを頼む。

……だが、目の前の美女が俺の顔を見た瞬間、何故か目を見開いて……物珍しそうな眼付きに成った。

 

……え、何処かで会ったかぁ?まぁいい、取り合えず引かせて頂く。

 

 

 

「せいっ!!………おん、マジかよ」

「ふむ、大凶だな。最高に運が悪いらしい」

「そんなバナナ……こんなにも麗しい美女と会えたのにか?」

「口が上手いのだな。どれ、もう一回引いてみると良い」

「む?そういうのアリなのか?」

「アリ寄りのアリだ。只まぁ、お前は時稀に邪気ってる節があるだろう?邪な心に運は巡ってくれるのか、見物だな」

「(何か雰囲気は仙人って感じなのに、口調が地味に若くて良いな……)じゃあ、もう一回!」

 

 

 

俺は美女の言うまま、もう一度くじを引いた。

結果は……大吉だった。

 

 

 

「うお、マジ?大凶から大吉?……確率がエグイな」

「ふむ、運の巡り合わせが良いのだろう。お前さんの日頃の行いか」

「まぁ人に頼られる職業だからなァ、曲りなりにも好い方向に向いてるんなら、この結果も最高の出来事だなァ」

 

 

 

美女の言う通りだ。謙遜はしない、俺がしている事は護衛だ。

日頃の行いか……まぁ確かに、悪い事はしてない筈だ。

 

仮に神さんが見てんなら、俺を祝福してくれてんのかねぇ。別にクソどうでもいいが。

 

 

 

「ありがとよお姉さん、今日はつくづく良い日だ」

「そうか、此処は景気が良い、お前さんの一日が良くなる事を祈ろう」

「こんな綺麗なお姉さんに言われるたぁ、最ッ高だねぇッ!」

 

 

 

俺は満足した。あぁ、こんな綺麗な姉ちゃんに占ってもらったんだ、最高を超えた最高ってヤツだ。

色々あった日だが、今の所最高の観光じゃねぇか?

 

 

 

「じゃ、また見掛けたら寄らしてくれや!じゃあな綺麗な美女ちゃん!」

 

 

 

そう言えば、すっと手を横に振ってくれる爆美女。

その仕草も綺麗だ……あんな美女がこんな所に居るんだな……ずる。

 

はぁ、あんな美女が俺を好きだったら……どれほど幸せなのだろう。

 

 

 

「────まぁ、あんな最頂点に至る【実力者】の淑女に、見合う男が居るかっつう話になるか」

 

 

 

あの美女……エグイな。オーラだけで分かっちまった。

表情が読みづらかった……何者だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────護衛屋か。噂に違わぬ肉体と闘気。この目で初めて見たが……凄まじい氣を秘めているな。ポテンシャルが凄いと見たが……如何にして此処に?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……にしても、本当に活気に溢れてるねぇ。あのホロウと隣接してるとは思えん」

 

 

 

俺はまたチャーシューまんを食しながら、放浪する。

今日は良い日だ。いや何回言うんだって話だが、男なら誰でもあんな爆美女に占ってもらったんだ、最高だろう。

 

世間に疎いとこうも苦労するかね……あの美女、絶対に有名人だ。

 

 

 

「(……めっちゃ美人だったな。雰囲気はアンビーちゃんっぽかったが、あの人特有の色気……凄かったなぁ)」

 

 

 

ああいう美人を見てしまうと、やはり……彼女が欲しくなる。

いやマジ、欲しいなぁ……俺居た事ないんだよなぁ。護衛は何度かあるけど、いつも言いように使われて終わり。

 

はぁ、彼女欲しい……元気で可愛くもある子が良い。

こう、曲がり角で何か当たって、運命的な出会いとかねぇかな……っておわあぁっぁぁ!?

 

 

 

「ひゃぁ!!!あったたたた……」

「うおっと、大丈夫か?」

 

 

 

しくった、変な事考えていたらマジで曲がり角でぶつかっちまった。

俺としたことが、情けねぇ………しかし、大丈夫だろうか?尻餅を着いて少し痛そうにしてしまっている、打ち所が悪かったのか……俺は直ぐに膝を地面に着いて問う。

 

 

「すまん、ちょいと余所見ッつうか、まぁ前を見てなかった。悪い、怪我とかしてな……い…か」

「あ、大丈夫です!その、此方こそすみません!貴方こそお怪我はありませんか?」

 

 

 

────俺は、全ての視界に今、この子が映っている。

 

いや、何て言うのか……眼が離せないと云えば良いのか、分からないが、上手く言えないのだ。

 

 

 

「?…あ、あの?大丈夫ですか?もしかして、何処か痛めちゃいました!?」

「いっ……いや、何でもない……平気だ、俺は」

「本当ですか?すみません急にぶつかってしまって……あ、そうだ!その、少し潰れちゃったんですけど、お詫びにさっき買ったチーズチャーシューまんは如何ですか?」

 

 

 

そう言って、その『虎』のシリオンの女の子は、可愛らしく俺にチーズチャーシューまんをプレゼントする。

 

俺は、頭が上手く回らないが、そっと手渡されたソレを受け取る。

 

 

 

「転んじゃいましたけど、何とかお腹で死守しましたのできっと大丈夫です!」

「そ、うか……いや、ありがとう。初めて食べるから、メチャクチャ嬉しい」

「そうなんですか!?ソレすっごく美味しいんですよ!」

「……はむっ」

 

 

 

俺は、何故かそのまま一口齧った。

いや、何でかは分からん。ただ……目の前の子に、直ぐに感想を言いたくなってしまったのだ。

 

因みにだが味は…やはり、美味い。

 

 

 

「チーズが口の中で蕩けて、チャーシューの歯応えと共に味が広がって、凄まじく美味い……この地の歴史が詰まっている様だ」

「おぉ……何だか理知的で素敵な食レポ!お気に召して頂けて嬉しいです!」

 

 

 

俺が妙な口調で食レポをすれば、呼応するようにこの子も軽快に笑う。

……何でだ、なぜ俺は……この子に目が離せない?_

 

 

 

「……あ!そうだ師匠を待たせてしまっているんでした!えっと、ではあたしはこれで!」

「ん、あ………」

 

 

 

タッタッタッ……と、走り去って行ってしまう。

見れば、何と小さい体か……背が小さく見えるのが一瞬だ。

 

……何故だか分からない。この心のざわめきが、理解を拒む。

 

だが、一つだけ分かる事があった。

 

 

────此処で、追いかけなければ……絶対に後悔する。

 

 

 

「────ッ……待ってくれ!!」

「ひゃぁ!?え……?」

「あ、すまんっ……その、ちょっと、良いか?」

 

 

 

俺は遠くなる背に、一瞬で追い付いて、彼女の腕を握った。

傍から見たら、事案だろう。だが、此処で聞きたい。後で会えるなんて分からないから。

 

俺は女の子の腕を離し、直ぐに謝罪。

 

 

 

「えっと……どうしました?何かお困りの事が?」

「あっと、だな………」

 

 

 

気を利かせてくれたのか、彼女は俺に発言の選択肢をくれた。

何て良い子なんだ……俺も、何か……待て、俺はなんでこんな事をした?

 

えっと……落ち着け、冷静に成れ。

狼狽えるな、呼吸を整えろ……ふぅぅ。

 

 

 

「えっと……お、俺……」

 

 

 

声が、上手く出せない。

何故だ、俺が俺じゃないみたいだ。若干の恐怖すら感じる。

 

でも、言いたい事は……分かった。理解した。この気持ちは、きっとそう言う事だ。

 

 

 

「………断ってくれて良い。後で、通報しても良い……聞いて、くれないか?」

「っ!勿論です!お悩みでしたらこの【雲嶽山】の一番弟子である『橘福福』が!何でもご相談に乗ってあげましょう!」

「────そうか、橘福福って言うんだな、貴女は」

 

 

 

名前を名乗ってくれるとは、優しいのだな……。

 

なら、”漢”犬太郎……言うしかないな!!!

 

 

 

「橘福福さん、俺は今、貴女に一目惚れした」

「────ふぁ?」

「だが、順序は大切だ。だから……俺と友達に、成ってくれないか?」

「は、へ………へぇぇぇ…ひゃぁ…えぇっっ!!?!?」

 

 

 

視野が狭くなった俺は、阿呆であった。

俺は……とてつもなく愚かで馬鹿な行動をしてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

次回

 

犬太郎 「好きな人が出来た、相談に乗ってくれないか?」

ライカン「……今、何と?」




次回は【ヴィクトリア家政】が出ます。


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