最強の盾は橘福福しか見えなくなる。〈旧題:最強の盾〉   作:カブトムシの相棒

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感想欄で福福が『お持ち帰りした!?』的な感想があって笑いました。確かに持ち帰ってる。
いつも感想、誤字報告をして頂き感謝します。

ここすきをして下さっている方も、ありがとう御座います。むっちゃ元気出ます。



■前置きは見たい方だけどうぞ!


☆犬太郎と他エージェントの掛け合い。


▼ライトの場合。


☆ライト → 犬太郎

(1)交代時

「攻守交代だ犬太郎」
「盾にも休み時はあるぞ、無理は禁物だ」

(2)クイック支援

「犬太郎」
「犬太郎ッ!」

(3)犬太郎戦闘不能時

「任せろ、俺が何とかしてやる」


☆犬太郎 → ライト


(1)交代時

「一発かましますか!ライトさん」
「拳を休めて下さい、ここは俺の剣で」

(2)クイック支援

「ライトさん!」
「ライトさんッ!!」

(3)ライト戦闘不能時

「ライトさん、敵は俺が…必ず殺しますッ」



▼ビリーの場合

☆ビリー → 犬太郎


(1)交代時

「交代しようぜ、犬太郎!」
「ここは兄貴分に任せなぁ!」

(2)クイック支援

「犬太郎!」
「犬太郎ッ!!」

(3)犬太郎戦闘不能時

「無理すんな犬太郎!少し休め!」


☆犬太郎 → ビリー


(1)交代時

「兄貴、交代っす」
「ビリーの兄貴、ここは盾である俺が」

(2)クイック支援

「兄貴」
「兄貴ッ!!」

(3)ビリー戦闘不能時

「休んでくれビリーの兄貴、後は俺が始末しますッ」




 
こんな感じです。もしかしたら別の方の掛け合いも出すかもですわ!



では、本編です。


大姉弟子による説教と、デートの後と。

 

 

☆犬太郎side

 

 

 

 

 

────あーーっと、どうも皆さんこんにちは。

 

俺は犬太郎。頑張って最強の盾を目指している者です。

 

その、ですね……今日俺は意を決して衛非地区に来ているんです。

理由が、橘福福と云う……一目惚れを果たした女性に会う為です。

 

そして、デートをする為。

 

そんな中で、来ました衛非地区。そして、その終盤に位置する時刻に、俺は今…。

 

 

 

「────という様に!未成年の方がタバコを吸うのはいけない事なんです!!成長する筈の部位を妨げてしまったり、肺が巧く機能せず、最悪……っ……肺癌の可能性にも繋がってしまうんですよ!?」

「はい……はい………」

「それで!さっき聞いた時、貴方は何て言いましたっけ!?答えて下さい!自分のお口でっ!」

「………10…10歳くれーから、吸ってますね…はいっ……」

「────こんの!!おばかさんが~~~~~~~っっっ!!!!」

 

 

 

────ハチャメチャのメチャクチャに、怒られています…(絶望)

 

 

 

 

 

 

 

 

「……帰宅途中、何やら遠方からでも怒声が聞こえて来て、一体何事かと思えば」

 

 

“ガミガミガミガミガミッッッ!!!”

《/xbig》

 

 

「────ありゃぁ、どういう事だぁ……?」

 

 

 

雲嶽山のとある拠点道場。住み込みの其処で買い物袋を持った藩と儀玄は、正門前の物陰で立ち止まっていた。

 

遡ること数十分前。

 

藩と儀玄は、犬太郎と橘福福のデートを見届け、買い物に向かっていた。

橘福福が買い物に付いてくる前に買い物はさっさと済ませてしまおう、そんな儀玄の提案もあり、二人で既に向かっていた。

 

その袋の中には多量の肉類が入っている。今日は豪勢に仕立てると藩は変更したのだ。

異性相手にすっごく頑張った、大姉弟子の為に。

 

 

そして、頃合いを見て帰って来たと思ったら……。

 

 

 

「10歳!?はいぃ!?どんなギャグですか!?あたしが見てきたハードボイルドな映画でも10歳から吸ってる子供なんかいませんでしたよ!?ほんっと有り得ません!!」

「……いやぁ~、そうなんすよね………」

「ッ!!貴方がこんな嘘を吐く御方では無いと、今は残念ですが理解しています!!だから、許せないんですよ~~っ!!9年間ですよ!?10歳から今日の今迄!!信っっじられません!!」

「はい、はい……すみません…」

「しかも、コレ……吸ってた、タール数…?ですか?何やら17mg……と書いてありますが!コレはどういう意味なんですか!!」

「……あーーっと………言わなきゃ…?」

「犬太郎くん~~~!?」

「はいっ、言います……えっと、多分平均が5~6…mgかな?すまん、細かくは分からん」

「……………それを、何年も?」

「そう……です……で、でも!今日は偶々で!いつもはウィンスフォンってタバコで!タール数は5mgだから大丈b」

────意味不明な言い訳は良いんですよおバカァァァァァァァ!!!!!

「ぎぃぃやぁぁあぁぁぁ!!!」

 

 

 

“ガミガミガミガミガミ!!!!”

 

 

 

何故か拠点の正門内にある庭にド真ん中で、福福が説教をしているではないか。

そして、綺麗な正座をかまして、粛々とその説教を受けている犬太郎にも必然と目がいく。

 

元来より、声が大きい福福の声は、少し離れているこの場所でもハッキリと聞こえて来る。

 

しかし……あそこまでの声量は非常に稀だ。大マジの時以外は中々見れない光景だろう。

 

 

 

「なぁ藩、お前さんはアレをどう汲み取る?」

「……内容を細部まで知らないから憶測に過ぎんが、見聞するに、どうやらあの青年がタバコを吸うっておイタをして、それが福姐にバレて、この大説教……に繋がったと見るぞ?」

「まぁ、そうだな。私もそんな感じだと思うな。いやしかし、あの鋼鉄の盾、まさか未成年だったとはな。福福が年上とは……聊かおもろいな」

「言ってる場合かお師さん……」

 

 

 

滅多に見れない福福のガチギレを前に、二人の反応は全く毛色が違う。

 

藩は少し焦っており、儀玄はライブ感を感じて何故か面白そうにしている。

 

 

 

「ふむ、だが藩の言う通りだな。直に『釈淵(しゃくえん)』も帰る頃合いだ、行き違いがあったら面倒になる」

「え?ちょっ、お師さん!?」

 

 

 

そうして、儀玄は悠然と気配を消して二人の所へ歩く。

その気配はまるで朧。足音が全くしない、忍び足をも超えた歩行。

 

己の存在すら、其処に無いと決めつけてしまう様な……存在感が全くなかった。

 

 

 

「(なんだ、お師さん……どういう了見だ…?)」

 

 

 

それは、藩ですらも恐ろしく感じてしまう程の気配遮断。

武の天上領域に踏み入っている技術。目の前で視認しているのに、まるで其処に居ないと錯覚してしまいそうだ。

 

本気の時の儀玄……そう、捉えてもいいだろう。

 

 

 

そして────犬太郎の真後ろに迫る。

 

福福は尚も気付かない。夕焼けがないから影すら無い。

犬太郎を凝視して説教を垂れ込む福福は、その気配をまるで察知しない。

 

 

 

……だが。

 

 

 

”ゾクッ………!!!”

 

 

 

「(────あ!?なんだ、後ろに気配ッ…なんかヤバい!!)」

 

 

 

その殺気の無い薄い気配こそ、余りの違和感。

 

幼き時から視線を潜って来た故に、身に付いた己の第六感が形容出来ない警鐘を鳴らす。

 

犬太郎はコンマの世界で決断。一気に正座を崩し、福福の前に向く。

 

 

 

「福福ッ!舌を閉じろォ!!」

「ですから…え?ぎにゃっ!!?」

 

 

 

バッ!!と、爆発的な踏み込みで福福を庇う様に腹に隠し、福福を力任せに抱きしめる。

 

身長190超え、そして筋骨隆々な肉体は、小柄な福福を包み隠すには十分で。

さっきまで説教をしていた福福は、全く状況を飲み込めないでいる。いきなりの感触、いきなりの絶叫。頭が真っ白に染まる。

 

そんな中、犬太郎は背中を向け、そのまま顔を振り返り……右目でその存在に睨む。

 

 

 

「一体誰だゴラァ……ぶち殺すz……………は?」

「ほう、やはり底なしの才を持つか。構えは守りの型と見るが、或いは………あぁ、これは失礼したな」

「はっ……マジで!?」

 

 

 

瞬間、犬太郎の眼がガッ!と開かれる。

 

その者を視認した、あぁ、知っている顔だ。

そのスタイル、その覇気、そのスタイル……その、スタイル。

 

見間違う筈が無い。あの者は……。

 

 

 

「────寸刻振りだな、名は通っているぞ護衛屋。確か狼谷犬太郎だったか……雲嶽山の宗主『儀玄』……私の名だ、覚えておけ。これから長い付き合いに成るかもしれんからな」

「────あん時の占い屋の爆美女!!?」

 

 

 

そう、犬太郎が初めて衛非地区を周ったあの日に、占って貰った美人。

 

それこそ、あの儀玄だったのだ。

 

その事に大声を出す程、驚きを隠せない犬太郎であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ……。

 

 

 

 

 

☆室内、居間…。

 

 

 

 

 

「────先ずは自己紹介から始めよう。先程も言ったが、私は『儀玄』だ」

「俺は『藩引壺』だ!雲嶽山の台所は俺が預からせて貰ってる!」

「同じく、雲嶽山の門下生の一人、『葉釈淵』です。以後お見知りおきを」

「おっ……俺は狼谷犬太郎です。一応、護衛屋って営業をひっそり営んでいる者です。どうぞよろしくお願い致します…ッ」

 

 

 

儀玄たちに連れられて、現在は拠点道場の居間のテーブルに座りながら自己紹介をしている。

歴史があり、趣がありそうな、そんな建物だ。犬太郎はそう思う。

 

そんな中……儀玄は揶揄うように犬太郎に告げる。

 

 

 

「ふっ、なんだなんだ?あの時に会った時は、もっとフランクだったと記憶してるが」

「ちょっ、マジで止めて下さい儀玄ちゃn……儀玄さん!あの、もう察してるとは思ってますが、マジで黙ってて下さいッ…!」

「犬太郎、で良いか?お前さんお師さんを見るなり…『あの時の占い屋の爆美女!?』みたいな事言ってなかったか?」

「いや、ホンマ勘弁して下さいッ……あの、福福?」

「…………ふんっ!」

「福福!?ま、待ってくれ!話を!話をーー!!」

「ふふっ、愉快な方だ」

 

 

 

場が一気に陽気な雰囲気に成る。

 

しかし、犬太郎にとってはピンチであった。

橘福福が先程の説教から機嫌が悪い。

 

途中で儀玄との睨み合いがあった時から、と云えばいいだろう。そこからだ、機嫌が悪く見えるのは。

 

 

 

「さて、そんじゃあ俺は夕飯でも作りに行くかね。皆は彼と仲良くしてくれ!」

「あぁ、頼んだぞ藩」

「ッ!……ぱ、藩さん、今日お野菜メニューって……」

「ん?いや、今日は献立を変更して、肉料理の特盛だぞ!」

「え!?そ、そうなんですか!?やったーー!!犬太郎さん!今日は良ければ夕飯を食べてって下さ……あっ………ふ、ふんっ!!」

「福福~~!!ごめん~~~!!」

「な、何に対して謝っているんですか!答えて下さいっ!」

「……俺が、女好きな事?」

 

 

 

“プチッ!!”

 

 

 

「ッッ!!やはりそうだったんですね!!ケアンさんや紅豆さんを見る眼が妙に変だとは思っていましたが!!このッ……犬太郎くんの助平さん!!」

「ふぁーー!!しまった!何か違った!!あーーっと!……え、マジで何なの?」

「~~~~っ!!ふんっ!」

「福福ーー!そっぽ向かんでくれー!!頼む教えてくれーー!」

「お前さん等なぁ……イチャイチャするなら自室でやってくれないか。無条件で刮目する我々の身にも成れ」

「い、イチャイチャ何てしていません!!変なことを言わないで下s」

「いやぁそんな、儀玄ちゃん……そう見えます?」

「んぐぅぅ!!んもうっ!可笑しな事を口走るお口はコレですか!?」

 

 

 

そう言いながら、犬太郎の頬をみょ~~んと伸ばす橘福福。

 

因みにだが、二人は並んで座っている。それ故、身長差が顕著に表れている。

だから普通は、橘福福の手が彼の頬に届く事は難しいのだ。

 

つまり、彼の頬を伸ばせている理由は単純だ。

 

犬太郎が腰を曲げ、橘福福が届く所まで近づけているのだ。

 

 

 

「……なぁ釈淵」

「師匠、言わなくても分かります。どうやら私達はお邪魔みたいです」

「一応ここは私達の住処であるんだがな。なんだこのアウェー感は……」

 

 

 

そう言う二人は、イチャコラする犬太郎と橘福福を見つめ、呆れてしまう。

一時はどうなるかと思った雰囲気であったが、何だかんだで仲睦まじいのだ。

 

まぁそんな二人を数時間に渡って見てきた儀玄だから、全く不安には思っていなかったが。

 

 

 

「うにっ!ははは、意外と力強いんだな、福福」

「ふふん!毎日修行していますからね!それにあたしは雲嶽山の一番弟子で………って!なにイイ雰囲気になっているんですか!犬太郎くん?あたしは怒っているんですよ!」

「……その事で少し聞きたいんだが、良いか?」

「……なんですか」

「タバコは、もう、だめ?」

「ダメに決まっているでしょう!!何を当たり前な事をっ……!! 今日から禁止です!!没収です没収!」

「くぅぅぅ……ぐぅぅぁぁぁ…っ!!」

「そっ!そんな、捨てられた子犬みたいな顔してもダメです!!」

「ごぉぉぉぉぉ!!!うおぉぉぉぉぉん!!!」

「いや狼に成ってどうするんですか!?あたしに反抗するなら、()()()()も辞さないですよ!!」

 

 

 

“ピクッ”

 

 

 

瞬間、犬太郎の脳裏を左右に巡る言葉が流れる。

 

 

 

「……お仕置き?」

「え?」

「むっ!宜しくない邪気を感知したぞ」

「姉弟子さん、その人は本当に大丈夫な方ですよね?」

「へ、あ…それは、はい……え?」

「ちょっと待て、何か勘違いの波動を感じるぞ」

 

 

 

しかし、思っていた以上に儀玄と釈淵の反応が早く、これ以上の発言を許さない雰囲気を放つ。

 

幸い橘福福は確りと理解していないようだ。

犬太郎は思った、ラッキーだと。失言癖は直そうとも誓った。

 

 

 

「いや、そうだ福福!タバコ!!な、なにも没収なんて…ッ!!」

「っ!!いいえ!ダメなものはダメですよ!!聞きますが貴方、いま何歳ですか!」

「……今年で20に成る」

「い・ま・は!!何歳ですかッ!」

「…………19です。誕生日は12月の30日なので、まだまだです……くっ!」

「何を悔しがっているんですか!んもうっ!いい子だと思ったら、とんでもない不良少年でしたね!?」

「だ、だってぇ……」

「だってじゃありませんっ!!」

 

 

 

そうして、プリプリと怒る橘福福。

 

この巨体の男が、小柄な少女に何も出来ない。

字面はなんかアレだが、年齢は彼女の方が上なので成り立つ違和感だ。

 

その様子を見る儀玄と釈淵には、少し微笑ましい光景に見える。内容は全く可愛くないが。

 

 

 

「い、一本!一本だけ…!」

「だーめーでーすっ!!本来なら治安局に通報されてもおかしくない事なんですよっ!それを分かってて言っているんですか?」

「いや、別に治安局の人達には毎日………いや、なんでもない」

「……毎日、なんですか」

「言わない!」

「言いなさい!」

「いやだ!」

「子供ですか!いいから言いなさいっ!」

「言ったらもっと怒るだろ!なら言わん!」

 

 

 

駄々を捏ね始める犬太郎。

そして、何故か母親みたいに叱る橘福福。

 

断固として言わないらしい。自分から墓穴を掘った癖に。

 

しかし、どうやら彼と治安局にはどうも何かあるようだ。

 

コレを聞き出さなければならない。そう判断した橘福福は、こう言う。

 

 

 

「分かりました、怒りません」

「……嘘だ!」

「嘘じゃありませんよ。あたしを信じて下さいっ!ほら、言って下さい?」

 

 

 

下から覗くようにそう言う橘福福。

 

その仕草、その雰囲気、正に……小悪魔的。

 

このねk……虎、狡い!!

犬太郎には効果抜群だ。これを自覚無しでやっているのだから、この子は恐ろしい。

 

犬太郎は橘福福のそんな様相を見て、一気に邪気が昂る。口を開いて…そして。

 

 

 

「────治安局にもよくタバコは駄目とか【酒】もイケないとか云われてたけど、もう遅いって言って逃げてたんだ。因みに10年くれー前から既にグレ散らかしてたから、当時から現役の人とは顔見知りだぞ!」

 

 

 

“ピキッ!!”

 

 

 

ベラベラと、口走っていく。

 

もう一度言おう。彼はアホである。

 

聞いても居ない事を言って、また更なる墓穴を掘った。

 

 

 

「……酒?」

「え?……あっ」

 

 

 

しまった!そう言わんばかりの顔をする犬太郎。

彼にとって、タバコの次の次には好きな酒、それを口走ってしまったのだ。

 

 

 

「……そ、そう!(サケ)!魚の鮭ね!いやー!鮭って焼いて、納豆と白米で食うと美味しいよなー!あ、あははは!」

「新エリー都で一番旨いウィスキーはなんだ?」

「んーー人に依るけど俺は"神崎12年ウィスキー!!!”あれはヤバいな、ロックで瓶ごと一気すっとマジでぶっトブ………あっ」

「どうやら間抜けは見つかった様ですね」

「お前さんを見てると段々と心配に成って来たぞ……私()な」

 

 

 

儀玄の言に……馬鹿正直に答える犬太郎。

 

微笑みながら意外と辛辣な事を言う釈淵。

頭に手を置き悩ませる雰囲気を放つ儀玄。

 

そして………。

 

 

 

「……………」

「ひっ……あ、あのぅ……」

 

 

 

そして………彼は刮目する事となる。

 

 

 

────もう限界です!!お仕置きの時間ですゥゥゥ!!!!

「いやちょ、まっ……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

虎を怒らせると、どうなるのか……。

 

 

 

 

▼数十分後…。

 

 

 

 

 

「────ま、前が……前が、見えません…っ」

「随分長い間ウチの愛猫と遊んでいた様だな。引っ掻き跡が鮮明に残っているぞ」

「それで喋れるのですね……流石と云って良いのか」

 

 

 

数十分に渡る説教+お仕置きは、非常に鮮烈なモノだった。

 

犬太郎の顔面は赤く猫の引っ掻き跡が残っている。

どうやら、福福に酷く扱かれたようだ。

 

 

 

「み、見てたでしょ目の前でッ……し、死んだかと思ったっすよマジでッ…」

「えぇ。まぁですが、誰が悪いかと云えば、色んな隠し事をしてしまっていた犬太郎さんですので、私達は何も出来ませんよ」

「言ってしまえば、それはお前さんと福福の問題だ。私たちではどうにも出来んのはマジだぞ」

「くおっ……なにも、言えん…ッ!」

 

 

 

論破される犬太郎。

しかし、その全てが正論だ。文字通り、何も言えん。

 

 

 

「あ、あれ……そういえば、福福は?」

「福福ならもう台所へ行ったぞ。匂いで感じ取ったのだろう、恐らく藩の手伝いだな」

「時間的にも、もう出来上がってもおかしくはありませんからね」

「成程……」

 

 

 

何時の間にか消えている福福の所在を確認すると、どうやら藩の手伝いとの事。

確かに肉特有の香ばしい匂いがする。その匂いだけでも、藩が作る料理が美味いことが分かる。

 

橘福福が藩の料理が大好きと云う理由。きっと、食べればソレが更に理解出来るのだろう。楽しみに成って来た。

 

 

 

「ってて……お仕置きってもっとこう、うぅん………」

「あの子はお前さんほど邪気が無い純然たる娘だ。余り、邪な考えは期待しない方がいいぞ」

「そうだな……あ、すみません。そうっすね。以後気を付けます」

「無理に気を張らずともよい。あの時の様にフランクに接して構わんぞ」

「ふふっ、そうですね。私にも敬語は不要ですよ。貴方が話し易い話し方で構いません」

「……遠慮は不要ってか。じゃ、そうさせて貰う」

 

 

 

顧客と知人。敬語の使い所は分けている犬太郎。

 

だが彼女達、橘福福以外の面々には敬語をしていた。

家族同然の者達だ、当然だ。礼儀として当たり前の事。

 

しかし儀玄と釈淵の言により、それを崩す。

 

 

 

「……許してくれたんかなぁ」

「流石にだろう。あそこまで叱ったんだ。これ以上お前さんが愚行をせん限り、福福がドカギレかます事はない筈だ」

「そうだと良いんだが……」

 

 

 

犬太郎は続ける。

 

 

 

「しかし、邪気ねぇ……そう言うのってどうやって分かるもんなんだ?」

「その者が放つ雰囲気、瞳の色が主な発生源だ。それを見れば大抵は分かる」

「ほう……じゃあ、確かに俺は邪気ってる訳だな。自慢できる人生は送ってはねーし」

「未成年喫煙に未成年飲酒……シンプルに謂えば、貴方は不良少年ですからね」

「それも10歳の時からと来たものだ。全く、それなりに生きてきたが、お前さんの様な阿呆者は初めて見たぞ」

 

 

 

手厳しい意見だ。だが、仕方のない事。

事実だからだ。列記とした正論。何も言い返せないとは、正にこの事だろう。

 

 

 

「……正論だな。言葉もない」

「で、辞めるのか?」

「でなきゃ福福は絶対に許さんでしょ。ってか没収されて吸うも何も出来やしないさ。まっ!俺ならパッと止めれるから別に良いが」

「ふむ、と言っておりますが師匠」

「十中八九無理だな」

「なんでそんな事を言うんだ!」

「手、震えてるぞ」

 

 

 

“ピクピクピク……”

 

 

 

ハッと気づき、自身の左手を見る犬太郎。

僅かに震えている。ヤバイ、もう離脱症状が出ている。

 

 

 

「……実はこれ、武者震いなんだよね」

「なんのだ」

「言い訳が苦し過ぎますよ」

「ッッ……まだ()ってちょっとしか経ってねぇのに、もうコレか……結構ヤバいなコレ」

 

 

 

そんな事を言う犬太郎に、最早呆れを通り越す何かを感じ得る儀玄と釈淵。

 

まだ19の身でこんな事を言う若者が居るとは、本当に驚きだ。

しかし、この世界は非常にシビアだ。彼にも彼なりの訳があるのかもしれない。

 

 

 

「……理由があって、長い間タバコを吸っていたのか?」

 

 

 

そう思って、儀玄は柔らかな雰囲気でそう問う。

 

 

 

「いや単純に荒れてたから吸ってただけだべ。まぁ酒に関してはちょいと環境が悪かったとしか言えんが、マジで深い意味は無い」

「心配した私が馬鹿だったな」

 

 

 

儀玄は遂に悟った。

この男は、凄まじい程の愚か者だったと。

 

もしかしたら、とんでもない背景があるのではないかと思い、聞いてみたらこんなクソしょうもない事が返ってくるとは。

 

 

 

「……なぁ、儀玄ちゃん。釈淵くん」

「ん?」

「なんでしょう」

 

 

 

すると、ふと犬太郎が問うように伺ってくる。

 

 

 

「────もう気付いていると思うが、俺は……橘福福、彼女に好意を寄せている」

「………」

 

 

 

それは、少し突発的で。

 

だが、彼女が居ないこのタイミングだからこそ、言える事。

 

 

 

「先程、俺は女好きと云った。タバコも吸うし酒も呑む。全て事実の事、傍から見なくともどうしようもない人間である事は、この俺が一番よく分かっている」

「……はい」

「それが、どうした?」

 

 

 

そう言う犬太郎の事を、鋭い眼付きで見聞する儀玄と釈淵。

 

彼が告げる発言はどれもロクデナシのフルコース。

中々に最悪だ。

 

だが、どうしてか……彼から目を離せない。信念が、籠っている。

 

 

 

「俺は、福福がそれ等を断てと言ったのならば、もうしません。例え20歳に成ったとしても、それは同じ。決して福福に悪影響を及ぼす事は致しません。なので、どうか、お願いが御座います」

 

 

 

そして、何と犬太郎は……。

 

 

 

「────橘福福さんと、まだ友達として居させて下さい」

 

 

 

深く、頭を下げたのだ。

 

それは誓いであり、懇願だった。

10年間の喫煙と飲酒を断つ。それは大好きを手放すと同義。

 

それでも、福福と友で居たい。

簡単じゃない。だから、覚悟を決めてこう口走ったのだ。

 

 

 

「────別に構わんぞ」

「ッ!!」

「師匠……」

 

 

 

それを、儀玄は承諾したのだ。

 

 

 

「福福は人懐っこいが、それ以上に人を見る素質が強く有る。そんな福福がお前さんに対し、ここまで思い、そして心を込めて叱咤を入れる存在は中々居ない。それこそ、私等の様な雲嶽山の者達以外にはな」

「………そう、なのか」

「あぁ。まぁ私からしても、お前さんが未成年ながら煙草と飲酒を好んでいた事は、関心はしないと思っていた。その誓いを建てたからには、一瞬の欲も福福と私の裏切りと思え」

「ッ!うすッ!!」

 

 

 

そう言って、福福との接触。友人の関係を維持できることに成功した。

しかし、誓いを建てたからには禁煙禁酒を断絶しなければいけない。

 

やった人には分かるだろうが、これは滅茶苦茶にキツイ。

最悪、幻覚すら見えるだとか。そう思えば、少し怖いが頑張る他ない。

 

 

 

「さて、しんみりとした雰囲気はこれにて終い。それと犬太郎、お前さんに一つ言っておく事があった」

「え?なんでっしゃろか…?」

 

 

 

手をパンッ…と叩き、しんみりした場を砕く。

 

そのまま、儀玄は彼に言うべき事があった。

それは……。

 

 

 

「────今日は此処に泊まっていくがいい」

「あぁ…………はぁ!!???!??」

 

 

 

そう、それは正に青天の霹靂。

 

思っても居なかった事だ、犬太郎は仰天の顔付きに成る。

しかし儀玄は続ける。

 

 

 

「もう夕刻を過ぎた時間帯だ。このまま帰すのは些か不安でな、お前さんの家から此処まで数時間も掛かると聞く。ならばいっそ、此処に泊まって夕飯も此処で食べていけ」

「ちょっ、ちょいと待て!!それは幾ら何でも…ッ!!あんた等と俺は今日会ったばかりの関係だろ!?」

「確かにそうだが、お前さんを連れてきたのは他でもない『福福』だ。あの子が連れてきた存在、しかも友ときた。私等は特に気にせんぞ」

「えぇ、私も全く構いません」

「釈淵もそう言っている。それに………福福!」

 

 

 

“ガタッ…!”

 

 

 

儀玄がそう発語した途端、台所まで繋がる通路の物陰から音がする。

そこに目を向けると、恐る恐る此方を覗く福福が居た。

 

 

 

「っ……」

「ふ、福福……」

「結局はお前さん等だ。此方としては泊まっても良いと受諾している。泊まるか否かは若い二人で決めると良い。釈淵、そろそろ頃合いだ。藩が作った馳走を運ぶとしよう」

「えぇ、承りました」

「はっ、お、おいっ!ちょ、待てって……」

 

 

 

それだけ言い残し、儀玄と釈淵は、福福を通り抜け台所へと向かって行った。

 

一気に静まり返った居間。

テーブルには犬太郎、物陰から覗く福福。

 

 

 

「……手伝いは、もう良いのか?」

「えっと、はい……藩さんが犬太郎くんの方に行ってあげてって、言ったので……」

「そ、そうか……何処から、聞いてた?」

「っ………犬太郎くんが、御二人に、こっ……あ、あたしに!こっ…好意………を寄せていると、お伝えしてる辺り…ですっ…!!」

「そうか、うん。ほぼ最初からだな(絶望)」

 

 

 

そう告げる福福は、尻尾をピンッ!と立て、両手をギュっと握りながら、恥ずかしそうに発語する。

 

その顔はイクラの様に真っ赤に染まって、何なら涙目を浮かべている。

彼の想いは、既に、福福には当の前にバレている。それが、彼の口から更なる口撃として出された。

 

それの所為で、二人の間には妙な雰囲気が流れる……が。

 

 

 

「な、なぁ……んっ」

「あ、あの……あっ」

 

 

 

二人が同時に発語した。それで更に気まずくなる。

 

初々しいと取るか、今更と取るか。

しかし、まだ付き合ってすらいない仲だ。二人にとって更なる一歩になるのか、将又、今日は此処までの歩みに成るのか。

 

 

 

「ふぅぅ………なぁ、福福」

「はっ……はい、犬太郎くん」

「その……だな…」

 

 

 

犬太郎が踏み込む。

 

 

 

「────良いのか?俺、此処に泊まらせて頂いても……」

 

 

 

意を決した問いは、確かに、福福の耳に届いた。

 

彼は踏み込んだ。大いなる第一歩を。

 

 

 

「────あたしは、大丈夫……ですっ!」

 

 

 

彼女も踏み込んだ。確固たる決意を抱いて。

 

拠点道場に……言ってしまえば、福福の家に泊まる。

 

それは、大きな意味を持つ。

特にアクシデントもない、普通の泊まると言う事。

 

それは、互いの距離間を縮ませるには十分だった。

 

 

 

「……お、お師匠さまにも後で貴方が泊まる事を、もっ!もう一度お伝えしましょうか!」

「そう、だな……ほ、本当に良いのか?俺、何にも、その……着替えとか持ってきてないが」

「だ、大丈夫です!道着があるのでっ!あ、でも、貴方に見合うサイズがあるかは分かりませんが……犬太郎くん、とっても大きいですからっ!」

「そ、そうだよな。あーっと……やっぱり、俺帰った方がいいんじゃないか?無理をしてるなら、その…」

「だっ、だめっっ!!!」

 

 

 

“ガシッ!”

 

 

 

犬太郎がそう言った瞬間、福福は犬太郎の腕を両手で掴む。

 

 

 

“『────福福ッ!舌を閉じろォ!!』”

 

 

 

瞬間────彼に抱かれた時を、思い出す。

 

 

 

「ッ……~~~~ッ!す、すみません、きゅっ!急に触っちゃって……ッ!」

「あ?あぁ、別に良いが……大丈夫か?」

「へ!?もち、勿論です!!えへ、えへへへ…ッ!」

 

 

 

犬太郎の腕を触ったと同時、彼に説教していた時に抱かれたあの瞬間を……脳裏に過らす。

 

太く逞しい腕、若干のタバコの匂いと彼特有の臭い、そして包まれる時に触れた、彼の硬い、かったい……何個にも分れた重厚な腹筋。

 

その全てを、思い出す。思い出してしまう。

だめだ、イケない……あぁ、分からない。この感情を知ってしまって良いのか。

 

恋とは、少し違う。種類は同じな筈なのに、何か違う『桃色な感情』が沸々と、福福に襲い掛かる。

 

 

 

「と、兎に角!もう日が落ちて外は暗く危ないので、今日は大人しく泊まってってくださいっ!着替えは少し小さいサイズでしたら有ったと思うので、それを着用して頂ければと。そっ……それでいいですね?」

「え?あ、あぁ……分かった。本当にありがとうな、福福」

「ッ……はいっ!」

 

 

 

切り替える。この感情は、まだ、気付いては駄目な気がして、考えを一旦リセットする。

犬太郎はよく分かっていないが、福福がそう言うので、ならば泊まらせて頂こうと承諾した。

 

 

 

「────おいっとぉ!良い感じな時にすまんが御二人さん。夕飯の時間だぞ~!」

「ぴっ!!!?」

「ッ!!」

 

 

 

通路から藩がドシドシと歩きながら、肉料理を持ってくる。

 

凄まじく良いタイミングで出て来た。まるで、陰から見守って、タイミングを伺っていたかの様に。

それと同時、儀玄と釈淵もそれぞれ料理を乗せた皿を持ってくる。

 

 

 

「お前さん等、話し合いは着いたのか?」

「あ、え、えっと!はいっ!犬太郎くんは今日、その……泊りますので!空いているお部屋で寝て頂く事になりました!」

「その、今日は一日お世話になります。出来得る限りお手伝いをしますので、どうか、宜しくお願いします」

 

 

 

福福と並んで、そう言う犬太郎。

そのまま頭を下げて、そう告げる。

 

 

 

「おーそうか!そいつは良い!犬太郎の分の夕飯も作っといて正解だったなぁ!」

「夕飯を食した後、あとで館内を案内致しますね。厠の場所やお風呂場など、色々と」

「よしよし、分かった。ちゃんと話し合って決めたのなら良い。あとお前さんは()()()()お客さんの身だ、手伝いはしなくていい。そういうのは、もう少し〈段階〉を踏んでからだ。なぁ?」

「え?」

「段階…?」

「……お師さん、レベルの高い事言うなよなぁ」

「あと、何年後になりますかね」

「ふふっ、少し未来を見過ぎたか?なに、年増の戯言だ。気にしなくていい」

「「???」」

 

 

 

そう言う儀玄。

どうやら藩と釈淵は理解した様だが、犬太郎と福福は理解出来ない。

 

 

 

「さて、夕刻だ。準備ができ次第ご飯を食べよう」

「っ!はい!!」

 

 

 

そのまま、ドンドンとテーブルに御馳走を運ぶ面々。

 

やっぱ俺も手伝う…と、言った瞬間、福福から圧を掛けられ、大人しく座る。

 

気付けば山盛りの料理が沢山置かれている。

 

様々な種類のチャーシューまん、小籠包に炒飯、焼き鳥に焼き豚、回鍋肉に生姜焼き……。

 

 

 

「……すっごい量」

 

 

 

そう呟くには、仕方のない量だった。

 

だが、皆なぜか冷静な顔立ちを崩さない。

まさか、この量を毎日!?マジで!?そう思ってしまう。

 

気付けば、既に夕飯の準備が出来ていた。

 

儀玄がタイミングを見て、告げる。

 

 

 

「では、頂くとしよう」

「よし!召し上がれぇ!」

「いただきま-す!」

「いただきます」

「っ!いただきます………んっ、美味い!」

 

 

 

そうして、皆がそれぞれ自分で配膳して、料理を乗せていく。

一口、チャーシューまんを食す。飲茶仙とは違う味だが、違う旨味で驚く。

 

 

 

「チャーシューまんの肉厚と肉汁、口内で広がる旨味の暴力に、ホロリと崩れ咀嚼させる食感……美味すぎる」

「はっはっは!そう言って頂けると嬉しいなぁ!ありがとよ!」

「福福が貴方の料理は絶品だと言っていた理由が分った気がする……マジで美味いわ。どんな調味料を?」

「コレには塩や砂糖の配分量と、あとラードがミソでなぁ。作る行程もミスなしで行ったら良い形のチャーシューまんが出来るんだ。こいつは俺の傑作でなぁ。旨味、弾力、大きさ、肉類を入れる容量。色々考えて辿り得た渾身のチャーシューまんだ!」

「そうか弾力とかも考え、その中に調味料の配分、そして形作る為の技術……流石、藩さんだ」

 

 

 

犬太郎と藩がチャーシューまんについて語り合う。

 

藩は料理が得意、いや、最早店を出せるレベルの料理人だ。

福福が犬太郎に彼の料理は絶品だと語っていた時があったが、犬太郎にとって、まさかこれ程までとは予想外だった。

 

 

 

「藩さん、良かったら今度俺の料理の腕前を見て欲しい。これでも料理専なんだ」

「勿論だ。だがそれは、福姐にお前さんの料理を振舞った後だな」

「ッ!」

「福姐から話は聞いているぞ?いつか福姐に食わせたいと言っていたってなぁ!はっはっは!お熱いねぇ」

「……勘弁して下さいっ」

 

 

 

そう言ってイジワルしてくる藩。

犬太郎は顔を真っ赤に染めながらも、否定はしない。

 

それを見る儀玄と釈淵はふっと微笑む。10代の若者の、こういう恋関係で奮闘している姿と云うのは、年上の世代としては面白く見えてしまうのだ。

 

 

 

ふと、隣に座る福福に目を向ける。

 

すると、彼女は……爆食していた。

 

 

 

「ん~~~っっ!!美味しいですね~犬太郎くん!」

「え?あぁ、そうだな…………いやはっや食うの」

「ふぇ?ふぁんへすか?」

「いや、何でもない……口に詰まらすなよ?」

「ふぁいっ!もひろんでふ!」

 

 

 

頬をぷっくりと膨らませ、美味しそうに咀嚼する福福。

まるでリスの様だ。小柄な体に、どう入っているのか分からない程の料理をバク食いする福福を見て、愛らしいと思う犬太郎。

 

もし、彼女に己の料理を食べさせたら……こんな感じで食べてくれるのだろうか。

 

そう思えば、あぁ……自然と笑みが零れそうになる。

 

 

 

「………やっぱ、依頼金上げるかぁ」

 

 

 

そう口から零す。

 

いつか来たる日に備え、護衛屋の仕事量も増やそう。

 

お金も、少し上げよう。そうしなければ……やはり、稼げない。

 

 

 

「んみゅ?なんひゃいいまひた?」

「ん?あぁいや、何でもない………んっ!この小籠包も美味しいな!肉汁が溢れ出て零れそうだ…ッ!」

「まだまだ一杯あるからなー!どんどん食ってくれよ~!」

 

 

 

何とか誤魔化し、犬太郎は御飯を食べていく。

 

そんな中で、犬太郎は雲嶽山の面々といろんな話をした。

今日の事、どんな仕事なのか、料理では何を作るのかなどなど……親睦を深める為に。

 

 

そうして、夜は更けていき。

 

 

 

 

────犬太郎と福福の■が、始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

☆おまけ

 

 

 

 

 

「────そうだ福福、ちょっと良いか?」

「んむ?なんでふか?」

 

 

 

食事中、犬太郎は福福の耳元でコソコソと話す様に近付き、福福はそれに同調する様に耳を傾げる。

 

 

 

「さっき儀玄ちゃん、自分の事『年増』とか言ってたけど……20代前半じゃねぇん?」

「ぶふっ!!」

「おわっ!大丈夫か?」

「けほっ、けほっ……は、はい、大丈夫ですっ……」

 

 

 

咽る福福。

背中を摩る犬太郎。

 

 

 

「え、えっと……」

「うん」

「その、お師匠さまって若く見えるんですが、あれでもイイ御歳なんですよ」

「と言うと……20代後半?アラサー系?」

「えっと……まだピチピチの3zy」

お前さん等

 

 

 

瞬間、背筋を凍らせる殺気。

 

それは、目の前のテーブル席。真ん中に居座る、この地の主。

 

儀玄……その人だ。

 

 

 

一体、なんの話をしているんだ?ん?

「あ、いえっ!なーーんにも!!疚しい事は何にも!はいっ!!」

「い、儀玄ちゃんって可愛いなーって話!な、なっ!?」

「あーそうでしたね!お師匠さまって美人で素敵ですねーって話をしてました!!」

 

 

 

身振り手振り、儀玄にそう言う犬太郎と福福。

 

彼女、儀玄は笑っている。

だが、その双眸は全く笑っていない。

 

それが恐ろしく見える。

子猫と子犬を今から狩る鬼の様な、そんなオーラを放っている。

 

 

 

「……若気の至りですか」

「多分違うぞ兄弟子」

 

 

 

薄っすらと、そう発語する二人なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■狼谷 犬太郎によるデータ総合。

 

 

 

▼プロフィール、家族構成と現在。

 

────姓名:狼谷 犬太郎。年齢19歳。血液型はO型。シリオン系統は無く、11年前の【旧都陥落】にて殉職を果たした『狼谷 猿乃介(さるのすけ)』の実の息子にあたる人物。

 

家族構成は4名。母にあたる『狼谷 雌雉子(めきじ)』は心臓病により病死。

 

妹である『狼谷 桃子』は旧都陥落にて、狼谷 猿乃介と共に死亡。

 

9歳から今に至るまで数々の問題行動を起こし、手に負えない極度の問題児であったが『朱鳶』班長が台頭し、犬太郎の対応にあたって以降、その問題行動は数を減らしつつはある。

 

狼谷 犬太郎による事件・問題行動に対し、上層部は【特務捜査班】に一任すると指令を出したとされる。その実、大きな目標として狼谷 犬太郎を【護衛屋】から“治安局”への【引き抜き】を本筋としたものである。

 

彼は現在、拠点を転々と移しながら【護衛屋】を設立。

調査によれば、1~2年間は新エリー都【郊外】に身を潜めていたと判明。会社設立の資金は其処で蓄えたと憶測される。

 

 

▼ 解明不明な点:狼谷 犬太郎による驚異的な【エーテル適応体質】

 

母、父、共に病弱体質かつ、エーテル適応には脆弱であった。それ等を受け継ぐ形として、娘にあたる『狼谷 桃子』は病弱体質であったとされる。エーテル適応体質も脆弱であり、犬太郎の特異体質とは全くの無関係であった。

 

遺伝子構造的仕組み的には、狼谷 犬太郎は受け継ぐ筈だった。

 

血統、習わし、全てが無辜の民の者。

身体能力、逸脱した長時間でのホロウ内活動可能なエーテル適応体質。

 

これらを加味し、狼谷 犬太郎は病弱体質の夫婦間で産まれた特例のイレギュラーとして、対象の人物を【突然変異】のエーテル適応体質者と判断。彼に纏わる調査は継続とする。

 

 

▼ヘッドハンティング、治安局との関係性について。

 

特務捜査班の班長『朱鳶』を中心とし、『青衣(チンイー)』治安官、『セス・ローウェル』巡査を狼谷 犬太郎の“治安局引き抜き”に指名。

 

しかし正規ルートでの方法で執り行うも状況は芳しくはなく、本人は治安局移行へ積極的ではない。最終手段として、彼の性質を使い『ジェーン・ドゥ』による懐への侵入も行ったが、ガードは固く状況に変わりはない。

 

狼谷 犬太郎の父『狼谷 猿乃介』は、元々は『青衣』の直属の部下に当たる人物であった。

この二人は特に親睦が深い上、青衣は狼谷 犬太郎が幼き頃に何度か会っていたとされる。

 

巷では、『猿乃介』巡査は『青衣』治安官に対し【好意】を寄せていたと噂で流れていたが、真偽は不明。

 

極度の子煩悩であった『猿乃介』巡査は、旧都陥落が起こる前の、11年以上も前に犬太郎と狼谷 桃子を連れ、他所属に見せ子自慢をしていたとされる。それもあってか、今を生きるベテランの治安局員は殆どの者が幼き日の彼を知っている。

 

犯罪行為・問題行動を起こす狼谷 犬太郎に心痛する治安職員が多く存在しているのは、これらが原因とされる。家族を失った彼が、現在たった一人で生きる事に対して、思う者も居る事実もある。

 

 

▼犯罪行為、問題について。

 

 

【未成年喫煙】及び【未成年飲酒の疑い】あり。加え、数多の【暴行事件】の当事者であると判明。喫煙に関しては精密な調査により、年単位での行為だと判明。諭した大人が存在する可能性有り、引き続き厳罰対象とす。

 

 

11年前、旧都陥落時に於ける【狼谷 猿乃介】と【狼谷 桃子】の殺害。エーテリアス化を前に、故意的に行ったと予測。加えその他周辺での市民127名を殺害。

エーテリアス化を事前に対処したとして、当時の状況を鑑み、この件は不問とする。

 

 

 

当時は“凡人が残した”【怪物】として、何年もの間その汚名を着せられていたが、時が経つに連れその汚名も薄れて行った。

 

 

 

▼戦闘力について。

 

未知数な部分が多いが、驚異的であると判断。

 

9歳から人を屠れる精神性、武骨な大剣(推定2m)を鞭の様に扱う絶大な筋力による身体能力。

我流の剣術に加え【ボクシング】系統による格闘能力も観測。

 

彼が起こした、又は巻き込まれた戦地に於いて、一度も【倒れた所を見た事が無い】と云われる程、驚異的なタフネスを誇る。加え、彼の持ち合わせる【脚の力】は、直線運動ならばあの【虚狩り】である『星見 雅』に匹敵するとか。

 

 

狼谷 犬太郎が【鋼鉄の盾】と謳われるのは、その【強靭な肉体】によるものとされる。

 

 

齢19を迎え、未だ明かされていないポテンシャルを秘めている可能性。

この件に関し、更なる調査を行うとする。

 

 

▼ ○月✕日。ルミナススクエアによる暴行、特務捜査班からの逃走について。

 

班長である朱鳶を最初に、セス・ローウェル巡査、他職員からの制止を振り切り逃走。僅か2時間で振り切るという異常事態。この失態は大きく出回り、今後の捜査に影響する可能性。上層部ではヘッドハンティングを更に過剰のモノとし、力付くで執り行うべきと思う者も現れ、緊急会議へと発展する始末となる。

 

この件に上層部は過剰に重く受け止め、緊急に特務捜査班及び、遊撃部隊である【H.A.N.D】に属する【対ホロウ特別行動部六課】の課長を務める『星見 雅』の参加を申請。

 

一体なぜ、上層部が『狼谷 犬太郎』にここまでの執念を見せるかは不明。

 

【虚狩り】────『星見 雅』もこの会議に参加。前向きに事を構えると声明。

 

 

▼虚狩り:星見 雅による意向。

 

 

〈────特務捜査班による捜索が難航を極めし時、私もこの件に助力する〉

 

 

会議はハイスピードで行われる。まるで、既に決定づけられたかのように。

特務捜査班による捜査への期限は2日と与えられる。

 

上層部の意向の下、狼谷 犬太郎本人が捜索員の言葉に反を取るのであれば、力尽くも辞さないと判断。

 

 

 

☆────○月✕日。期限の超過。

 

虚狩り:星見 雅が職務の合間を縫い……【狼谷 犬太郎の捜索、ヘッドハンティング】に参加。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆次回の本編、一部……。

 

 

「ふ、福福!?」

「ごっ!ごごごごご、ごめんなさっ……わ、ぁ!!!?」

 

 

 




やっぱ今回は平和(?)回にしました。

後、犬太郎と『雅』にはちょっとした【因縁】があります。


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