強くてネフェルピトー(人間)   作:ナチュラル7l72

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目標を定める。向かうべき点の無き者に行動は起こりえない。


幼少期:点

年齢にして5歳。故 蟻ピトーは生まれて半年足らずで星になったためピトー自身はまったく実感できていないが年齢は身体能力に大きく影響する。人間の場合、12歳から20歳にかけて肉体は成長し身体能力も比例して高まっていく。

ピトーはその事実を知っていたわけではないが、己の矮小な身体で(一応)父親であるあの男の庇護下を抜け出して一人で生きていけるとは思っていなかった。それ故逃げるという選択肢はなくピトーおとなしくあの家帰るしかなかった。

しかしそれはピトーのプライドを自ら傷つける行為であることは言うまでもない。

 

(うっとしいニャ~~始末したいニャ~~)

 

底が割れ鋭いナイフとなったビンを片手に、ゆるりといびきをかく男の方へ向ける。ただの人間など家畜以下、塵芥に等しいと考えていた蟻の頃の価値観は未だ健在である。ピトーは己がその塵に転生したことももはや自分は蟻ではないこともわかっていたが、どうしてもその塵の支配に甘んじているという現状に苛立ちを覚えていただ。

 

(でもここであの男を殺したら()のボクじゃ外で生きていけないし…)

 

断腸の思いでビンを外に捨てボロボロの毛布を被り床に就く。しかしピトーは男を殺すことは諦めこそすれ外に出ていくことは諦めていなかった。

 

(念さえ会得すれば、ボクはあの時と同じくらい強くなれるはず)

 

特異な武器を出現させ戦うカイトとの戦闘を思い出す。思えばピトーは弱冠0歳にして故人となったが故にあまり戦いという行為をしてこなかったが、数少ない戦闘の中でもあの戦いで得た勝利はピトーの自己肯定感を高めるのに十分な代物だった。念さえ習得すれば大抵の人間には負けないだろうという自信は生来の性格と合わせて楽観を生み出す。

しかしここで大きな問題が浮上する。

 

(念ってどうやって会得すればいいんだニャ…?)

 

生まれたその瞬間から念を使えた蟻の頃の才能が自力で精孔を開くすべを知らないという結果をもたらすのは至極当然であった。

 

 

 

 

寝て起きては雑穀やら草やら汁やらが混ざったよくわからない朝食(兼昼食兼夕食)を食べ、トロッコを運ぶ日々が続く。

ピトーは食事を一日一食しか与えられず、炭水化物を求めるがあまりその辺に生えていたむかごを生で食し飢えを凌ぐ生活を送っていた。

何の理由も脈絡もなく拳をもらうことも多くその回数の方は飯をもらう回数より多い始末。それに耐えていられるのは偏に自分は強くなれるという自信だった。念さえ体得すればこの町一つ潰すのに一日もかからない。その自信が日々削れていくピトーの心を守っていた。

 

キャリキャリキャリとトロッコが線路を走る。不本意ではあるが全身を使う労働によりまんべんなくピトーの身体は鍛えられていった。代謝が増えよりエネルギー問題が顕著になってきはしたが段々と楽にトロッコを運べるようになっていくのをピトーは感じていた。

 

しかし、いつまで経ってもピトーはオーラのオの字すら会得することができなかった。ただただ筋肉質になっていく自分の体を死んだ目で見降ろすことが日課になっていた。

 

「もしかしてボク、才能ない…?」

 

進捗のない人生は持ち前のマイペースさを擦りつぶし、気づけば蟻の人生にて生きた年数を超え(実際はとっくに超えているが)ただただトロッコを押すだけの日々にピトーは意気消沈させられていた。

 

(…そもそもボク、この生活から抜け出して何がしたいんだろう)

 

ネフェルピトーは蟻だったから王に仕えたのか、それとも王が王だったから仕えたのか。真偽はピトー自身にも確かなことは言えないが現在もその忠誠を忘れずにいることは確かだった。

しかし仕えた王はおらず、ましてやピトーは蟻ですらない。もし仮に今メルエムに会ったとて家畜以下の扱いを受けるだけだろうということは誰の目にも明らかだった。

 

(でも、このままここで終わるのは嫌だニャァ~…)

 

 

 

仕事が終わり給金も受け取り後はあの居心地の悪い家に帰るだけ。治安の悪い箇所は避け無事に帰宅する。その後父親を名乗る男に理不尽に怒鳴られ金を全て奪われる。特にやることもないピトーは腕を枕に仰向けに寝転がり、過去に思いを馳せる。今と未来を繋ぐ道が崩落しているように感じているからだ。望む未来にたどり着ける気がしない。そんな気分は心を逆走させる。

 

(あの時は楽しかったなァ)

 

もう一度したいなァと呟きつつ、ピトーはカイトとの戦闘を思い出していた。思えば蟻の生で一番楽しかった記憶がそれだったのかもしれない。それほどまでにピトーは戦いに喜びを感じていた。

 

(もしかしてボクって戦闘狂なのかな?いやでも、ゴンと戦った時はぜーんぜん楽しくなかったし…。玩具で遊ぶのが好きなだけなんだろうニャ~…)

 

けれどあの戦いに喜びを感じていたことは事実である。

玩具といえば聞こえは悪いが、ピトーがキメラの本能ではなく己の(たち)から生じた興味を持ったのはあれが初めてだった。あの戦いでピトーは念の奥深さを知り、自身の欲求に従って発を創りカイトを好き放題に弄りまわす。常人からしてみれば悪趣味極まりない行為であるが"ボクの考えた最強のオモチャ"を創るあの時間はピトーを満たしその蟻生を豊かにした。

 

(ボクの使命は王の手足となり誠心誠意仕えること。本来それ以外に喜びを感じる意味なんてないはずなのに、なんでボクは玩具で遊ぶことが楽しいんだろう)

 

(今考えれば王が盤上競技に興味を持っていたのも変な話だ。王の資質に頭脳は関係ない。生物を統べうる力を持つことが絶対にして唯一の王の資格。ほとんどの生物が頭を良くする方向に進化してこなかったことがその証明だニャ。所詮獣の戯れ、その内の一つに興味を持つということ自体王が嫌いそうな事なんだけど…)

 

(思えばプフもよくバイオリンをギャリギャリ弾いてたけど、「音楽など所詮空気の揺らぎ。それだけの事。」とか言って興味も持たなそうなのに)

 

炭鉱で自身の何倍もの重さのあるトロッコを何時間も押し続け疲れ果てたにも関わらずこの日は夜を跨いで考え続ける。

 

この日々が延々と続くのではないか。

 

前世では対処すべき現在の問題にのみ頭を働かせていたピトーは、今世(コンゼ)では未来に対する鬱屈としたなんとなく嫌な感じ、すなわち不安を解消すべく頭を働かせていた。

 

(この不安は…放置したらダメだ。このままじゃボクは力が無い事を理由に停滞し続けてこの状況に納得してしまう)

 

鋭く鈍い痛みが頭を襲う。頭痛というにはその"イメージ"は鮮明すぎる。普通ならトラウマになり行動的な思考を抑制する楔となるはずであるが、ピトーはしかしそれを焦燥へと裏返す。

 

(そんなの、頭を潰されて終わる生より嫌だ…!)

 

ピトーは自分がこの人生で何を為したいのか、そして何を遺すのか未だ考えられずにいる。

 

(蟻の頃のあの不自然な欲求。本能じゃない、アイデンティティを持つが故に生じたあの欲望の出どころは一体…)

(その疑問の正体がボクのモチベーションを底上げする切っ掛けになるはずだ)

 

薄汚い小屋の中で襤褸のような毛布に包まり夜風に晒されその寒さに震えながらも、しかしピトーは未来に向かう決意を宿した眼光を瞳に抱えていた。




人間ピトー:念使いに殴られれば念を使えるようになる(らしい)と知ってはいるが結局念使いが周囲にいない、またはわからない為念を会得できずにいる。自分が強くてなのを自覚していない。なんならハンターハンター世界とは違う異世界にいるのでは…?と思っている。
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