真面目新訳第二章 おてんば姫の望見   作:赤色ねんね

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(14.2) フレノールまでの道中にて

フレノールまでの道筋は明白。

フレノール到着までの所要時間を正確に見積もることもできる。夜の到着で良しとして、すぐにゼグラス砂漠を発った。あとは王城に帰るだけというゼロスもそこに同行する。

道中に出現した魔物は率先して彼が倒した。彼の剣は性格に似合わず、真っ直ぐだった。クリフトも目指す剣もそれなのだろうが、性格は合っているのだろうが、どちらかというとマーテルの剣の方が彼に合っている気もする。

あの彼女の軽やかな剣技。いや、クリフトにあれができるわけはないのだが。

それでもどうしてマーテルの剣の方が良いと思えたのか。理由を考えてみる。筋肉量や、剣以外で補助に回れるという役割の軽快さ、だろうか。

……それは後付な気もする。いや、どうだろう。

ゼロスの見事な剣さばきのせいもあり、私は立っているだけで済んだ。行軍スピードが早く、後ろや側面を魔物に突かれにくかったことも、中衛である私の活躍が無かった理由だろう。

ああ、2回ほど、もっと行軍ペースを上げてほしいと私から発言したんだった。

そのおかげで、夕食の良い時間にフレノールに到着できた。

私達には贔屓の宿、旧領主邸がある。ゼロスは別の宿に泊まるとのことだった。朝待ち合わせの約束をし、解散した。

さて、宿である旧領主邸。

見知ったスタッフの受付を済ませる。

「あと、レナさんに届け物が来てます」

「届け物?」

とクリフトが怪しむ横で小さな袋を受け取る。

「私の趣味。気にしないで」

「はぁ」

早く部屋に引っ込みたい。

数日過ごした私の部屋は今夜も空いていて、取ることができた。部屋のベッド横の椅子で一息つく。

明日以降の夜の明かし方としては、テンペも素通りする予定のため、王城まで野宿を残すのみとなる。まだ野宿を楽しめるというのは、なんだか良い趣向だと感じていた。この旅が終わってしまったら楽しめるべくもない野宿。……いや、この旅に浸るのは後にしよう。

夕食に行かなければ。

実はこの宿の夕食は初めて、ではないが今回初めてのようなもので、初日は誘拐事件のおかげで全くここの食事に集中できず、その後もいろいろあって夕食は別で取っていた。したがって、ここの夕食は今日初めてと言える。ランクは高いはずで、期待できる。これも最後のフレノールとして良い趣向だ。

三人で食堂に入り、ウェイターに促されて席に座った時だった。

向こうが気づき、私が気付いた。クリフトはもっと前から気づいていたようで。クリフトが話しかける。

「こんばんは、奇遇ですね」

「いや、本当にね」

以前サントハイム聖堂屋上で会った、詠者のマローニだった。

「レナさんでしたか。不思議な組み合わせだ。あなたは、初めましてですよね?」

「ブライと申します。家庭教師を生業としております」

私の名前が出たとき、クリフトが一瞬目を見開いてこっちを見た。言いたいことはわかる。

「私はマローニと申します。歌うことで生活しています。よろしく」

両者とも身分を隠している、あるいは無難な表現にする、ようだ。わ、わたしの場合はどうしたら。

今は不要だとしても、自分の自己紹介内容を考えおかねば。

クリフトが話し始める。

「恒例の旅ですか。例年より少し早いタイミングですね」

「期間を予め決めてるわけではないからね。気分だよ。……いや、私の話はよくて。そちらは、どんな一行かな?」

私は、良い答えがないのですが!? クリフト! あ、私のことをマローニがどう知っているか、過去どういう会話をしたか、クリフトが知らないので、動きにくいか。

しかしクリフトはさらっと答える。

「レナ様はスタンフィード家のご令嬢。目立たない範囲でデザフェスを見学されたいとのことなので少人数で、私は護衛として雇われました。父上の指示です。ブライ殿はもともとレナ様の学問を見ていたそうで」

「なるほど。カイラス様も、レナ様? レナさんの方が良いです? では、レナさん、の教師をされていたとか。将来有望なのですね」

あはは、と私は返すしかなかった。クリフトが睨んできていた。

クリフトにとって、カイラス様がレナの家庭教師をしていたという話が初耳ということだ。もちろんアリーナだってカイラス様を家庭教師にした事実はない。

不要な接触はするな!? あるいは接触内容を事前に共有しておけ!? 私は悪くないでしょう! カイラス様の嘘なのだそれは第一!

「しかしデザフェスとは、また、その、相当狭い領域に、興味をお持ちなのですね」

「そう? そんなことは、ないのでは? 狭い? むしろ、多種多様過ぎる内容なのでは」

「出展としてはそうでしょうが、思想と言いますか。デザフェスなんて、よくご存知でしたね。」

「ええと? このフレノールでいくつかの店がデザフェス出店のため休業していて、その張り紙で知ったの」

「なる、ほど。そんなに公開されていた、と」

「どういうこと? おかしなことなの?」

「例外はもちろんありますけど、普通は、デザフェスに出店することは隠すものだという印象です。まあ、日陰者の集まりですし」

ひかげもの?

私が怪訝に思う前に、マローニは慌てて言葉を続けた。

「いえ! 悪口を言っているわけではなく! 私もその日陰者の一人なわけですし!」

「あなたが日陰者って、そうは、見えないのだけど」

「今はそう見えるかもしれません。ただ、声が出なくなった時には、ここでよく詩を紙に書いて出してました。なかなか鬱屈とした酷いものでした」

イメージがつかない。デザフェスに対しても。

「デザフェスでは皆、楽しそうだったわよ?」

「うーん、説明が難しいですね……。クローズドだからこその楽しさなんですが」

ブライもクリフトも、ぴんと来ていないようだった。

しかし、それより、どうしても聞きたいことがあり、話題を変える。

「声が出なくなったという話。以前も聞いたのだけど、もう少し教えてほしいの。知り合いが似た症状なので参考までに、なのだけど。薬で治したと聞いたわ。なんという薬なの?」

マローニは二度まばたきをした。

「……それは、どういった症状ですか?」

「それが人伝で聞いたので詳細はわからないの。単に、声が出なくなった、とだけ」

「そうですか。私は声を出しすぎたためなので、同じことには、と思っただけです。薬ですが、奇遇なことに、あれはデザフェスで手に入れたものです」

「あそこ、薬も売っているのね……」

「なんでもありですから。ただ、確か5年前のことです。店舗も薬も、詳細を覚えていないので、まず見つからないとは思いますが」

ブライ、クリフトが私を見る。

「なるほど……。一応、他に覚えていることがあれば教えてもらえる?」

「はい、まあ、あまりないですが。ただ一応確認ですけど、デザフェスは日で出店者が異なるのはご存知ですよね?」

「えっ!?」

デザフェス二日目が終わったことを、このフレノールで感じるのだった。

残り、一日。

 

夕食を終え、ブライ、クリフトの部屋にて。

「デザフェスのことだけど」

と私は入室と同時に切り出す。

「やはり?」

とクリフトが受けた。

「うん、一度、ゼグラス砂漠まで引き返そうかと思う。お目当てのものが見つかればよし、見つからなければ、一日長く旅を楽しめるということでよし。どうせ効くかもわからない」

と私はニヤリとした。

クリフトは、ため息をつくブライを見た。

「承知しました。いつ出発されます?」

「夜が明ける前。6時くらい? であれば昼前にはデザフェスに着くはず」

「御意」

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