日が暮れ終わるところ、フレノールに到着。
同様に、まず私とブライは街から見えない場所で待機。クリフトが様子をうかがいに街中へ。
そして30分ほどで帰ってきた。
「追加情報は無いですが、想像よりは深刻、なのかもしれません」
「何がわかったの?」
フレノールの街は平穏そのものだった。
一点を除いては。
クリフトはフレノールの
ゼロスがサントハイムからやってきて、当時フレノール駐在だった第二隊長ロノフ以下の全隊員が、一名は残して、サントハイムに戻ったという。
その背景は副隊長以上にのみ共有され、残ったその一名は事情まで知らないとのこと。
今得られた情報はその程度。
「一名を除いた全隊員……。八名くらい?」
「十名ですね。少し事情は変わってきました」
「フレノールは巻き込まれていないにも関わらず、兵力はサントハイムに集中させている?」
「そうですね。兵の何割かが招集されているかと思っていましたが。完全に、ほぼ全兵を一点に集める動きのようです」
「他国に攻め込まれていればもう少しここも慌ただしくなるはず? となると、例えば、他国を、攻め込んでいる?」
私の思いつきにクリフトは渋い顔をした。
「いや、さすがにそれは……。ブライ様はどうお考えですか?」
「左様。我らが城を空けたこの間に、そこまで情勢が変わるなどとは、とても。また、国を攻め込むとは、同時に国に攻め込まれる可能性もあるということ。にも関わらず、フレノールを手薄に構えるというのは、それは余程のことにございます」
「そうね……」
ブライは続ける。
「フレノールではサントハイム、サランとの旅行者が行き交うものにございます。にも関わらずこの平穏とは。つまり王城には別段異変が見えない、とも言えるやもしれませぬ」
「表向きはね」
「左様。例えば、……騎士団に対して王直々の命令を出す必要に迫られ、緊急招集をかけておる、など」
「その命令内容が一番知りたいことなのだけど、それが表面化まで至らないような、大げさなことではないということ?」
「……可能性にございますれば」
「緊急招集。過去にあった事例は?」
「姫が城を抜けなさったときは、隊長以上へそのようなお達しがあったとか」
「はは、そう」
それは、苦笑いしかできない。
「やはりおかしいですな。役職問わずの、直接の下知という状況は」
サントハイムに近づいていても、何もわかってこない。
「とりあえず、宿に泊まって、明日、王城到着を目指しますか」
二人は頷いた、
早く王城に。
テンペはちょうど昼に到着。テンペこそ、全くの異変が確認できず。
ゴランに会った。
フレノールの
物資補給を済ませた私たちは、すぐに王城へ急いだ。
夜。
王城のすぐ手前までやって来た。数時間ぶりに三人で会話をする。と言っても、今後の動きについてだ。従来通りにクリフトがまず様子見をし、その間ブライと私は物陰に隠れておくという手はずを共有する。
しかし王城の姿が見えるようになると、気が逸った。
「特に……、異変は無さそう、だよね?」
複数の明かりが城を不安定に浮かび上がらせている。
門番が一人と、城壁外の巡回は一名。少なくは、ある。
そして一方の、サランの街は静かに煌々としていて。
これって?
「行って参ります」
としてクリフトが城門へ向かった。
彼は城門前の隊員と話す。暗い上に距離があるのでその様子まではわからない。
数分経過する。
クリフトが王城に入っていく。先にこちらに戻ってくるわけではないのか。
また数分経過。
戻ってきた! それも、駆けて!
しかし、そのまま、私たちの方に来るかと思ったが、なんとクリフトはサランへ向かって駆けて行った。
「なに? どういうこと?」
「何か、あったのでしょうな」
とブライ。
一言、問題無かったとだけ聞ければ良いのに!
何度も肺に空気を入れ、それでも満たされない。
そうして、またクリフトがサランから駆けて戻ってくるまで、30分ほどかかった。
「まずは、聖堂まで、行きましょう。危険はありません。話は道中にでも」
息を切らせたクリフトからは、不穏な雰囲気しか感じ取れなかった。
「先に王城でしょう!?」
「誰もいません」
「えっ?」
サランの聖堂にいるということ?
その問いは遮られた。
「王城にいた全員が、行方不明です。国王様含め」
──。
それでも私は、先に城内を見ることを強行した。
城門前にいた
一言二言の挨拶を済ませ、城内へ。
最低限の照明。冷え切っている。沈んでいる。
マーテルの声を聞きつけて、城内巡回中の
皆を引き連れ、三階、お父様の部屋へ。
途中、二階の玉座の間を通ることになるが、暗く空座のそれに興味は持てなかった。
お父様の部屋の前。ノックをする。扉の音がおかしい。ノブを回さずに扉は開いた。
マーテルが言う。
「元は施錠されていましたが、異変を受け、王を探すべく、鍵を壊しました」
どうでも良い。
入室する。まず執務室。マーテルの持つ明かりが部屋を揺らす。部屋の正面やや奥にある机上には、筆記用具が出たままになっていた。
お父様がいらっしゃるかのようで。
それだけか。
奥の寝室へ。
入ってすぐにわかる、この部屋は清掃されたままの状態だ。お父様のいた跡は無い。
だけど。
「お父様?」
と声を投げる。返事は無い。
執務室へ戻る。
「お父様!」
返事は無い。
城内を全て回りたくなる。しかし、もう既にこれは、私の自己満足でしかないのだろう。
たった今、理解しよう。何の痕跡もなく、王城の人間は消失してしまった。
数秒、執務室で立ち尽くしていた。
もう良い。
「聖堂、行きましょう」
そう言葉を押し出した。
もうここには、留まりたくなかった。
サントハイム王の見た夢とは?
姿を消したデスピサロとは?
そしてサントハイムの人々は一体どこに行ってしまったのか?
その謎を探るためアリーナ姫たちは、さらに長い旅に出ることになる。
おてんば姫の望見 完
おまけに続く
真面目新訳第二章 おてんば姫の望見 おまけ