真面目新訳第二章 おてんば姫の望見   作:赤色ねんね

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(25.2) フレノールにて

日が暮れ終わるところ、フレノールに到着。

同様に、まず私とブライは街から見えない場所で待機。クリフトが様子をうかがいに街中へ。

そして30分ほどで帰ってきた。

「追加情報は無いですが、想像よりは深刻、なのかもしれません」

「何がわかったの?」

 

フレノールの街は平穏そのものだった。

一点を除いては。

クリフトはフレノールの騎士団(オリオン)詰め所を訪問した。隊員が一人いた。その彼から聞いた話は、旧王墓のミトスと同様。

ゼロスがサントハイムからやってきて、当時フレノール駐在だった第二隊長ロノフ以下の全隊員が、一名は残して、サントハイムに戻ったという。

その背景は副隊長以上にのみ共有され、残ったその一名は事情まで知らないとのこと。

今得られた情報はその程度。

「一名を除いた全隊員……。八名くらい?」

「十名ですね。少し事情は変わってきました」

「フレノールは巻き込まれていないにも関わらず、兵力はサントハイムに集中させている?」

「そうですね。兵の何割かが招集されているかと思っていましたが。完全に、ほぼ全兵を一点に集める動きのようです」

「他国に攻め込まれていればもう少しここも慌ただしくなるはず? となると、例えば、他国を、攻め込んでいる?」

私の思いつきにクリフトは渋い顔をした。

「いや、さすがにそれは……。ブライ様はどうお考えですか?」

「左様。我らが城を空けたこの間に、そこまで情勢が変わるなどとは、とても。また、国を攻め込むとは、同時に国に攻め込まれる可能性もあるということ。にも関わらず、フレノールを手薄に構えるというのは、それは余程のことにございます」

「そうね……」

ブライは続ける。

「フレノールではサントハイム、サランとの旅行者が行き交うものにございます。にも関わらずこの平穏とは。つまり王城には別段異変が見えない、とも言えるやもしれませぬ」

「表向きはね」

「左様。例えば、……騎士団に対して王直々の命令を出す必要に迫られ、緊急招集をかけておる、など」

「その命令内容が一番知りたいことなのだけど、それが表面化まで至らないような、大げさなことではないということ?」

「……可能性にございますれば」

「緊急招集。過去にあった事例は?」

「姫が城を抜けなさったときは、隊長以上へそのようなお達しがあったとか」

「はは、そう」

それは、苦笑いしかできない。

「やはりおかしいですな。役職問わずの、直接の下知という状況は」

サントハイムに近づいていても、何もわかってこない。

「とりあえず、宿に泊まって、明日、王城到着を目指しますか」

二人は頷いた、

早く王城に。

 

テンペはちょうど昼に到着。テンペこそ、全くの異変が確認できず。

ゴランに会った。

フレノールの騎士団(オリオン)がいなくなっていることも伝えながら、何か情報を引き出せないかと思ったが、特に変わったことは無いと言う。

騎士団(オリオン)自体、このテンペ村には寄っていないようだ。もちろんテンペを通らずに王城とフレノールを行き来することは可能。あるいは海路かもしれない。

物資補給を済ませた私たちは、すぐに王城へ急いだ。

 

夜。

王城のすぐ手前までやって来た。数時間ぶりに三人で会話をする。と言っても、今後の動きについてだ。従来通りにクリフトがまず様子見をし、その間ブライと私は物陰に隠れておくという手はずを共有する。

しかし王城の姿が見えるようになると、気が逸った。

「特に……、異変は無さそう、だよね?」

複数の明かりが城を不安定に浮かび上がらせている。

門番が一人と、城壁外の巡回は一名。少なくは、ある。

そして一方の、サランの街は静かに煌々としていて。

これって?

「行って参ります」

としてクリフトが城門へ向かった。

彼は城門前の隊員と話す。暗い上に距離があるのでその様子まではわからない。

数分経過する。

クリフトが王城に入っていく。先にこちらに戻ってくるわけではないのか。

また数分経過。

戻ってきた! それも、駆けて!

しかし、そのまま、私たちの方に来るかと思ったが、なんとクリフトはサランへ向かって駆けて行った。

「なに? どういうこと?」

「何か、あったのでしょうな」

とブライ。

一言、問題無かったとだけ聞ければ良いのに!

何度も肺に空気を入れ、それでも満たされない。

そうして、またクリフトがサランから駆けて戻ってくるまで、30分ほどかかった。

 

「まずは、聖堂まで、行きましょう。危険はありません。話は道中にでも」

息を切らせたクリフトからは、不穏な雰囲気しか感じ取れなかった。

「先に王城でしょう!?」

「誰もいません」

「えっ?」

サランの聖堂にいるということ?

その問いは遮られた。

「王城にいた全員が、行方不明です。国王様含め」

──。

 

それでも私は、先に城内を見ることを強行した。

城門前にいた騎士団(オリオン)隊員は、旧王墓でミトスと共にいた、その姉、マーテルだった。

一言二言の挨拶を済ませ、城内へ。

最低限の照明。冷え切っている。沈んでいる。

マーテルの声を聞きつけて、城内巡回中の騎士団(オリオン)二名が顔を見せる。どうでも良い。

皆を引き連れ、三階、お父様の部屋へ。

途中、二階の玉座の間を通ることになるが、暗く空座のそれに興味は持てなかった。

お父様の部屋の前。ノックをする。扉の音がおかしい。ノブを回さずに扉は開いた。

マーテルが言う。

「元は施錠されていましたが、異変を受け、王を探すべく、鍵を壊しました」

どうでも良い。

入室する。まず執務室。マーテルの持つ明かりが部屋を揺らす。部屋の正面やや奥にある机上には、筆記用具が出たままになっていた。

お父様がいらっしゃるかのようで。

それだけか。

奥の寝室へ。

入ってすぐにわかる、この部屋は清掃されたままの状態だ。お父様のいた跡は無い。

だけど。

「お父様?」

と声を投げる。返事は無い。

執務室へ戻る。

「お父様!」

返事は無い。

城内を全て回りたくなる。しかし、もう既にこれは、私の自己満足でしかないのだろう。

たった今、理解しよう。何の痕跡もなく、王城の人間は消失してしまった。

数秒、執務室で立ち尽くしていた。

もう良い。

「聖堂、行きましょう」

そう言葉を押し出した。

もうここには、留まりたくなかった。




サントハイム王の見た夢とは?
姿を消したデスピサロとは?
そしてサントハイムの人々は一体どこに行ってしまったのか?
その謎を探るためアリーナ姫たちは、さらに長い旅に出ることになる。

おてんば姫の望見 完

おまけに続く
真面目新訳第二章 おてんば姫の望見 おまけ
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