その日、神様に出会った。
元々、私達は孤児であり、帰る場所も無ければ食う金もなくゴミを漁ったり、盗み食いする事もあった。
そんな人生先真っ暗闇の最中、私達の運命が変わった。
それはいつも通り、屋台で並んでいた人の肉まんを狙っていた時だった。標的として選んだのは私達より年上の男性。
彼が代金を払って袋に入った肉まんを持ち帰ろうとしたその瞬間、
「ごめんなさい!」
隙を伺い、狐のお面の人が持っていた肉まんを根こそぎ奪った。
しかしそれと同時に申し訳ないと思い謝りながらその肉まんを手に私達は走り去っていく。
肉まんを盗んだ私達は何処か人目のない所に身を隠すと、手に持っていた袋を見つめながら、やっと今日初めての飯を食べれる事に喜びを分かち合えた。
早速、袋を開けようとしたその時
──こんにちは、2人は姉妹かな?
突如、目の前に先程の彼が現れた。
あれだけ距離があったというのにいつの間にこんな所までと
余りの出来事に私達は恐怖し互い抱き合いながら身体を震わせていた。
当然、殴られる覚悟は出来ていた。
しかし殴られるのは自分だけでいいと姉の私は妹を守らんと抱きしめながら腹を括った。
「お願いします…殴るなら私を殴って。妹は何も悪くないの」
「姉様…!」
「盗んでごめんなさい…でも、私達もう何も食べてないの…だから、妹だけにでも食べさせてください」
妹だけでも食べさせて欲しいと懇願すると狐のお面をとった彼は微笑み
──じゃあもっと食べようか、一緒に
彼は盗んだ私達を咎めようとせず、寧ろ私達の為にいっぱい買ってきてくれた。その人はまさに神様のような人だった。
それが神永
彼は沢山ご馳走してくれた後、今は亡き先代の雲嶽山宗主に私達を預けてくれた。
あの日を境に私達の人生は大きく変わった。
少し気になったのは何故先代宗主が彼と知り合いなのか?
『私も彼に命を救われた事があった』
それを聞いた時はびっくりした。
何せ当時の宗主である「黄嶺」様の実力は雲嶽山最強と謳われ、エーテリアスの群れを葬り去ることが出来る神器「青溟剣」を扱えるが高い代償もあり、使用する度に使い手の五感と記憶、最終的には命までも奪う諸刃の剣の筈だった……
黄嶺様はこう言っていた。
『偶然か分からんが、彼と出会ってからか青溟剣の呪いは受け付けなくなった。いやそれよりも青溟剣の力を存分に引き出せるようになっていたよ。
本来、早く命を落としてもおかしくなかった。それが無くなったのも彼のお陰だろう。
もしかすると彼は神様なのかも知れんな*1』
神様……今振り返ると、確かに
けれど、本当に神様だと認めたのは旧都陥落の日
11年前零号ホロウの活性が短期間で急速に上昇し、規模も拡大しては都市はホロウに飲み込まれた。
逃げ遅れた人々の為に私は当主として青溟剣を用いてその力を振るった。
しかし無尽蔵に湧いてくるエーテリアスの対処に追いつかず、青溟剣の代償が私の身体を蝕んでいくばかり
身体に激痛が走り、視界が朧げになり、やがて記憶までもが無くなった。
妹と過ごした毎日、私達を救ってくれた
鐘の音が聞こえた。
音を聞いた途端、激痛に襲われていた筈の身体はあたかも無かったかのように治り、五感も元に戻っていて無くなっていた筈の記憶も当たり前のように戻った。
何が起きたのかと状況を確認すると
──儀玄の願いを叶えに来たよ。
優しそうな声が後ろから聞こえた。
振り向くとそこには
「姉様!」
「…儀玄」
儀玄は私の無事を確認すると、泣きそうになりながら私を抱きしめた。
「姉様、私達は約束した筈!自ら犠牲にする事はしないようにと!」
私は大切なことを忘れかけていた。
黄嶺様が老衰で亡くなられる前に言われた事を思い出す
『彼から貰った命を…決して無駄にするな。お前達姉妹はいつまでも元気に生き延びろ』
「ごめんなさい…!儀玄、貴女…を1人にしようとして…!!」
「姉様…!良いんだ!私は…姉様が生きているだけで…」
儀玄が泣き始めると釣られて私も泣いてしまった。青溟剣を手にした時から命を捨てる覚悟でいたけど妹を残して命を落とすことなんてできない。
──良かった、2人が無事で……と言いたい所だけど
「姉様…!」
「大丈夫よ儀玄。もう私は命を捨てる気はないわ」
青溟剣を納め、妹と一緒に青溟剣の代償を抑制する術「青溟鳥」を呼び寄せようとすると彼が前に出て
──ここは、俺が引き受ける
「
無限にも等しいエーテリアスの群れを相手にするのは流石に無謀だと思った途端、彼の姿が変わった
白い狐となったその姿はまさに神様。
──シーッ
「え、エーテリアス達の動きが……」
「止まっ…た?」
彼が人差し指に口をつけ「しーっ」と言うとエーテリアスの群れが止まった。
──2人は市民の救援に回ってあげて
「…姉様!」
「えぇ…ありがとう!
彼のお陰で私達は旧都陥落を生き延びることができ多くの命を救う事ができた。
あれ以降、私達は青溟剣を封印する術式を完成する事ができ、虚狩りにも匹敵する実力と謳われるようになった。
英寿には感謝しきれないほどの恩がある。あの日、私達を助けてくれて、ここまでこれたのも彼がいたからできた。
だから改めてお礼を言わせて
「ありがとう、英寿」
◆
「儀玄、来たのね」
「姉様、すまない遅くなってしまった」
ミアズマによる惨状から数時間、すっかり寝静まった頃、私達は適当観の外で待ち合わせをしていた。
「
「全く、久しぶりに会えると言うのに瞬光も一緒とはな」
「仕方ないじゃない。彼女だって私達と同じ
そう、いつからか分からないが私達姉妹は彼の事が好きになっていた。
きっとあの日、チャーシュ饅を渡してくれた時かもしれない、雲嶽山で修行する私達をいつも差し入れを持ってきてくれて誰にでも優しくしてくれた。
そんな彼の姿がとても魅力的に感じてしまい、常に彼の事だけ考えるようになった。
まさか姉様まで惚れていたとは思わなかったが
「姉様…私達はもうすぐ30になってしまう」
「そうね……かと言って諦める理由にはならないわ、ましてや相手が神様であろうと…」
もう少しでアラサーになってしまう私と姉様だが、1人の女としてこれだけは諦めない。何としてでも……英寿を
「儀玄…?分かっているとは思うけど私達は休戦協定を結んだ筈よ。独占は許されない…分かってるわね?」
「無論だ」
私は姉様と交わした休戦協定を再確認し、
「どういう…事?
最も、妹弟子のリンが付いてくるなんて気づかなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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