世にもオサレな怖い?話   作:ニコラス―NICORUTH―

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死神と落ち武者

 

 あの廃病院での肝試しから数日経った日のこと。馬場とあの時一緒にいたもう一人の友人、秋葉と、馬場の知り合いの女性の千葉さんとで遊ぶことになった。

昼間からカラオケに行かないか?と誘われ、どこかキナ臭く感じながらも、丁度暇だったので付き合ってやることすにしたのだ。

そして、いざいってみれば、そのカラオケはかなりボロくなっていた。

私が如何にも出そうな感じだというと、馬場は部屋中に札を貼り付けながらサラッといった。

 

「 いるよ。 」

 

 その一言で、私は背筋が寒くなるのを感じていた。

秋葉もどうやら同じであるらしく、顔色はあまりよろしくない。

 

「 大丈夫なのか? 」

 

「 大丈夫だって、多分。 」

 

 そうして、いわれるがまま、人生でもっとも奇妙なカラオケが始まった。

馬場はラップを歌い、秋葉も気を紛らわせる為か、地獄先生の歌を歌った。

 

かくいう私はというと、いまいちノれていない千葉さんとデュエットを歌わされた。

慣れない男性パートで、トーンが低いところが特に難しかったのを覚えている。

 

その間に、部屋中にはラップ音が響いていたのだが、それよりももっとヤバいことが起きた。

バチバチッと室内で放電が発生したのだ。

どれだけヤバいのがカラオケボックスの中にいるのだろうかと思ったが、また放電が起こった後、それ以降の5時間はなにも起こらなかった。

 

その後、近くのファミレスで私が馬場になにがあったのかと問い詰めようとした時、千葉さんが正直に話してくれた。

 

「 ごめんなさい。本当に、黙っててごめんなさい・・・ 」

 

 曰く、千葉さんの家系はもの憑きであり、長いこと悪いものに憑かれていた。

そこで馬場は洒落怖のサイトなどから、強力な守護霊を持った人と一緒にいさせて、その守護霊に怪異を倒して貰う、という例を参考に、私の守護霊とその悪霊を戦わせたらしい。

あの札は結界で、カラオケボックスの中で、霊同士のデスマッチを組んだのだと。

結果は、私の守護霊が勝ったらしく、千葉さんに憑いていた悪霊は持ってた棺桶の中に入れられたらしい。

 

「 死神無双なんてゲームがあったらあんなかもな。 」

 

 馬場のそんな呑気な一言に、私は呆れ返るばかりだったが、彼がもしものときがあったときにと持っていた護符を見せたときに、どこからか雷が飛んできて彼の護符に命中し、黒焦げにした。

幸い命に別状はなかったが。

 

 ・・・怖くね?私の守護霊。やっぱり、死神でしょ。

 

 

 

 

 

 

「 死神無双だと?冗談じゃない。 」

 

 ゲームなんてものは十一番隊がやってたのをみたことあるし、オレ自身やったこともある。

だが、実際の虚は、画面のモンスターなどよりよっぽど恐ろしい存在だ。

それを遊びと一緒くたにするなど言語道断。

戦いをそんなポリゴンとポリゴンのぶつかり合いに例えるな。

戦いとは陰惨で、かつ神聖なものでなければならない。

今の時代こんな平和ボケしたやつばっかだと、ついこないだの尸魂界みたいになりそうで正直心配になる。

こうなる経緯は、5時間前に遡る。

 

 

 例に溺れず見回りをしていたのなら、やたらとデカい虚に死神のそれが混じった霊圧がしたので来てみれば、またこいつらか。

しかもなんか一人増えてるし。

乳は控えめではあるものの全体的にはいい感じではあるが、それよりも目を引くのはこの女、なんてものに憑かれている。

見た感じ落ち武者のようだ。

白黒の東洋鎧のようなプロテクターのついた服装に、太刀。この感じ、斬魄刀か。そして顔には割れた仮面。

なんということだ。虚だらけのこの街に、まさか破面(アランカル)までいるとは。

虚の最終進化形。もとは人であった虚が死神の力を得たことで先祖返りに近い姿へと変わった。

人や死神との違いは、虚特有の孔が残っていること。

こいつの場合は、丁度心臓の辺りだ。

主に大虚がなるものだが、極稀に通常の虚からなる奴もいると聞く。

これも、そんな一個体なのかもしれない。

大昔に大虚がでたのなら、当時の護廷が対処しない筈がないからな。

霊圧は流石に十刃(エスパーダ)クラスとはいわないがやはりデカい。しかし触れてみた感じまだどうにか相手にできるだろう。

こんなん現世にいたらどうなるかなど知れたものではない。

 

 早急に、払ってやらねば。

 

「 やるなぁ、お前。 」

 

 この四人の人間がいるカラオケボックスの中、対峙した破面を褒める。刃と刃が軋り合う中、本人は自惚れることなく、言葉を静かに返した。

 

「 そちらも、良いお手並みで。 」

 

「 ・・・ここは狭いな。そう思わないか? 」

 

「 左様。それにどうも、見せ物にされている感が否めない。彼奴らは我らが凌ぎを削る側で呑気に歌など歌いおる。

いつから民草はあのバカな貴族連中と同じに成り果てたか。 」

 

 毒ある一言とともに、莫迦者どもの耳障りな声が聴こえてくる。馬場とあの千葉っていう秋葉っていう男が気に入らず、オレは神薙の能力で、コケ威し程度に結界を張っている札の一つに電撃を飛ばした。

破道の一 衝 にも劣るくらいの威力だが、充分だろう。

実際に効果があり、多少はビビってくれた。

あともう一発、さっきと右隣の札に撃ち込んで、焼き切っておく。

これで結界は解除された。

馬場の奴は、なにか豆鉄砲でも喰らったような顔をしていた。そうか、お前にはこれが新鮮ななにかにみえるか。

ならば、例えば地獄はさぞ刺激的に映るだろうし、退屈もしないだろうさ。

 

「 外にでるぞ。 」

 

「 良いのか? 」

 

「 構わねぇよ。どうせやるんだろう?なら広いところで殺り合いたいじゃんか。

ただ、一旦こいつに収まってくれ。

この間抜け面どもに変な解釈をされたくない。 」

 

 背負った棺を差し出すと、落ち武者は心得たと、すんなり中に入った。

オレはその後にその場を後にして、カラオケから外に出る。

これであのバカな連中には、オレがあのカラオケボックスの中で悪霊を始末したように見えるはずだ。

オレが守護霊という誤解が晴れるかどうかはさておいて。

 

 

 

 

 

 街の上空、人の行き交う景色がまさしく蟻の行列のように見える。

その空の上で、オレと侍は改めて対峙するが、気になる点があったので、まずはそれを確認してみることにした。

 

「 ここなら面倒な野次馬もいない。憂いなく戦える。 」

 

「 かたじけない。 」

 

「 一つ聞きたいが、いいか? 」

 

「 なにを? 」

 

「 お前、生前の記憶があるのか?人間だった頃のことを覚えているのか? 」

 

「 ・・・何故そう思った。 」

 

「 なにせ、さっきパンピー、まぁつまり一般の人間を貴族に例えていたからな。

現世にその概念があったのも、800年以上くらい昔のことだ。

お前、その辺りの人間だったのか? 」

 

 通常、虚は魂魄を取り込んで成長する性質上、個体を構成する魂魄が増えれば増えるほど、核になった人物の記憶は薄れていく。

主に共食いをしていかなければ退化してしまう中級大虚(アジューカス)からなることの多い破面ともなれば、尚の事だ。

基本的に大虚になった時点で、人間としての記憶はないものと思っていい。

しかし、目の前の落ち武者は確かに、馬場を含めたあの場の4人を、"あのバカな貴族連中"と軽蔑していた。この現世で貴族が栄えたのは、今から千年も前の、平安時代。あの辺りは、貴族以外の階級の人間には生きづらい時代だったと聞く。

まるでその当時の貴族階級を知っているかのような口ぶり。

虚が歴史本を読むとも思えないし、当時を生きた人間のようにも思える。

だからオレは、虚になる前のことを覚えているのかなどと、尋ねてみることとした。

そして、思った通りの答えが返ってきた。

 

「 左様。拙者は朽原十兵衛(くちはらのじゅうべえ)。平安の世を貴人どもより簒奪せし、平家に仕えし武士(ものこふ)なり。 」

 

 平家。なるほど源平合戦で生命を落としたか。

それで死んでも死にきれず、虚になって魂魄を喰らいながら生き延び、やがて破面に進化したと。

 

「 時折この現世に訪れ、時代の移り変わりを見てきた。

あの娘の家系は、我らに縁あるもの故、その都度邪魔していたに過ぎん。

それを悪霊憑きなどとは大袈裟にも程があろう。

もののけなのは、確かだが。 」

 

「 だが、怯えているのも事実。無理もないな。人間にとって、なにより恐ろしいのは、己の知らぬもの。

知らぬが故に、恐怖はより色を増す。 」

 

「 なんとも、臆病なものか。なんとも脆弱なものか。 」

 

「 平家は滅びて久しいんだ。彼らは戦を知らない。きっとそれがいいんだ。 」

 

「 理解できぬ。脆弱は滅せねばならぬ。 」

 

「 いや、滅するのはお前だ。厳密に言えば、尸魂界にご招待といったところだろうが。 」

 

「 左様なことだから、我らは源氏に敗れたのだ。

力なきものに明日を生きる資格はない。

人の子は、強くあらねばならぬのだ。 」

 

 源氏ねぇ。なにがいいたいかはまぁわかるわ。こっちだってこないだ平氏みたいな連中に襲われたもんなぁ。

丁度旗の色と同じく白い奴らだったな。

 

「 生きるも死ぬも資格なぞいらん。お前がどうほざこうが、世界は周り、人は歩み生き、そして死んでいくのだ。

そして生命は巡っていく。

大昔の常識で今を語るな。平安の亡霊め。 」

 

 まったくてめぇの価値観を他人に押し付けるなよ。こいつの言い分がどうあれ、オレが成すべきは一つのみ。虚を斬る

のみ。あの千葉って人のご家庭は長いことこいつに苦しめられてたらしいしな。

本来ならば、下手に破面を殺ってしまうと三界のバランスがどうだのとなりかねないが、そう容易く崩れるほど均衡とは脆くもないだろうし、なんなら現世への害意がある以上、こいつは放置しておいた方が不味いだろう。

 

「 さて、やるか。 」

 

 オレは神薙を構え、向こうさんも刀を突きだし、叫んだ。

 

「 猛り叫べ!刀蟲王(エスカラバホ)!! 」

 

 斬魄刀がカブトムシの角によく似た槍の形状に変化する。

帰刃(レスレクシオン)。刀剣解放とも呼ばれる、破面特有の能力。

斬魄刀に封じた虚としての力を解き放つ。

死神と虚の混ざりものだった破面の霊圧は、これで完全に虚のそれに切り替わる。

まぁ、それでも充分始解でやれるだろう。

破面ならば、前に霊術院やら流魂街やらで死ぬほど斬り殺したからな。

あの連中は斬魄刀を取り上げられてたらしいが、その分手を加えられてるのでイーブンだ。

さぁ、楽しい時間の始まりだ。

この檜佐木不滅を昂らせてくれよ、武士らしく。

 

「 さぁ、どこからでも来い! 」

 

「 あぁ、そうさせてもらお・・・ 」

 

 

「 お~い、檜佐木弟! 」

 

 ・・・ん?この声は・・・大前田副隊長!?

振り向いた先のビルの屋上に、確かにあの超モミアゲのデブの愛嬌のある顔が死覇装を着て立っている。

彼はオレの上司で、ウチの兄貴がよく世話になっている。

まったくあの人も金遣いが荒いものだ。

 

「 ど、どうしてこちらに? 」

 

「 十二番隊が現世に破面の霊圧反応を見つけてよ。丁度お前の持ち場だったので見に来たんだけどよ、そいつでいいよな? 」

 

「 お前、破面でいいよな? 」

 

「 然り。 」

 

「 そうみたいですよ。 」

 

「 だったらさっさと卍解して始末しちまえ。変にちんたらかち合わずとっととケリつけろ・・・って隊長がいってたぞ。 」

 

 あぁそうか。あの人がそういうなら仕方ない。

 

「 どうした?そなたもまだ上があるのか? 」

 

「 悪いな。のんびり戦いたかったが、上にこういわれちゃ仕方がない。

・・・その魂魄、貰い受けるぜ。 」

 

 神薙を構え直し、右手で柄を持って、前に翳し、オレは呟く。

 

「 卍解・・・! 」

 

 基本戦法、斬拳走鬼の斬の奥義。斬魄刀との対話の後にこれを屈服させることで、初めて会得する、死神の切り札。

その発動を宣言すると、大鎌が眩い光を放ち、紫電が迸る。

 

「 オレは常々、この鎌の始解を、生命を刈り獲る形と呼んでいる。だが武士。お前ならわかるだろう? 」

 

「 ん? 」

 

 そんな惚けた面すんなよ。今お前が持ってるものを言ってるんだぜ?

人間が手にした中で、最も原始的な武器の一つ。

マンモスを狩ってた時代から、戦う者たちが手に持ち続けたもの。

 

「 生命を刈り獲る、奪うものの形は、これに行き着く。 」

 

 光が消えて、オレが握っているのは、西洋風の、とも言い表せぬ、独特な形状の槍だ。

ただ鋭利で、ものを刺し穿つことしか、文字通り生命を奪い取ることしか考えていないような。

これが、オレの卍解だ。オレはその昔、今は亡き一番隊副隊長の世話になったことがあって、その時に彼の影響を受けて、西洋の神話を読み漁った。

その影響が、この卍解に如実に表れている、そう思っている。

斬魄刀の能力もあの人のそれと同じく、雷に纏わるものだしな。

 

「 ほう。それがそなたの・・・ 」

 

 穿て、死雷閃撃(グングニル)。ちなみにこれは卍解の名ではなく、槍になった斬魄刀に電気を溜めて、一突きに乗せて放つ技をそう呼んでいる。

自慢じゃないが、オレはスピードには自信がある。

そんなとろとろした動きじゃ、対応できんだろう。

凌げるかサムライ?エスカラバホ(カブトムシ)らしく。

最も、生半可な鋼皮(イエロ)では、防ぎきれないだろうが。

 

 歩の技術である走法、瞬歩によって瞬時に距離を詰めたうえでの一撃により、この破面の頭は紫電に吹き飛ばされ、残った首から下は力なく落下していった。

あぁ、どうやらダメだったらしい。勝負ありだ。

勿論、オレの勝ちで。

斬魄刀の斬撃を受けていない以上、こいつの身体が崩れて魂魄になるわけではない。

今のところは、三界にさした影響は出ないはずだ。

あいつが一番上の大虚、ヴァストローデ級から進化した個体だったのなら、こうはいかない。

逆に、オレがやられていたかもしれない。

もっとも、ヴァストローデは虚圏にもそんなに数いないらしいが。

 

「 あ、あぁ・・・ 」

 

 普段卍解は進んで見せないが、副隊長はもうかなり見ているはずなのに、開いた口が閉じないようだ。

 

 その後、破面を尸魂界に輸送して見回りに戻った後、例のファミレスで馬場たち四バカが話してるのを聞いて腹が立ったので雷を落としてやった。

まあ、死にはしないだろうが、どうも調子に乗っている感じが気に入らない。こいつは痛い目をみたほうがいいタイプだな。この野郎自分だけ助かろうと護符まで用意してやがった。

 

あの滅却師(シロンボのカス)どもと似た感じがするな。

いや、曲がりなりにも一介の兵として死神に戦いを挑んだ彼らと比較するのは、滅却師たちに失礼か。

 

そんで、その件の破面であるが、大前田副隊長が十二番隊に押し付けたらしい。

あそこの隊長さんなら、彼を有効活用してくれるだろう。

そう、実験動物(モルモット)として。




 オリキャラ紹介はそのうちに。
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