マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート/ともだちいっぱいピアニストチャート 作:やこらしき
side:八雲 みたま
「うふふ、『梓』先輩いらっしゃ~い」
「...あら?今日は『真加奈』先輩は一緒じゃないのかしら?」
「何でも、今日もお弁当を忘れてしまったそうで、また校門まで行ってお手伝いさんから受け取るみたいなんです。」
「確か、一昨日もだったわよね...?『真加奈』先輩って実は結構おっちょこちょいなところあるわよねぇ。」
「それじゃぁ、『真加奈』先輩が戻ってくるまでまた時間もかかることでしょうし、一緒にお話ししましょ♪」
「それが良いですね、それではせっかくなので、ちょっと気になっていたんですけど。ワタシと『みたま』さんが初めて会った日って、ワタシが来るまでに何があったんです...?」
「もちろん、よろしければ、ですが。」
「先週の月曜日のことね~。」
「ふふっもちろんいいわよぉ。」
「そうねぇ、まずはわたしが『真加奈』先輩を知った日のことからお話するわねぇ~。」
『真加奈 ほのか』
その名前を知ったのは入学してから半年ほどたってからのことだったと思うわ。
あの時のわたしは、どうやって学校生活を過ごしていくか悩んでいたの。
定期テストで結果を残すほど、クラスから孤立していって、生まれを理由に遠巻きにされて、陰口も聞こえてきていたわ。
ある日、そう確か、予習の範囲でわからないところがあって放課後に職員室を訪ねようとしたときだったと思う。
偶然、ある先生同士の会話を聞いたの。
「まったく『真加奈』さんにも困ったものね...」
「ええと、『真加奈』というと確か中等部3年の。彼女何か問題でも起こしたのですか?」
「また口喧嘩で相手の子泣かせちゃって、これで何回目かしら...」
「...また、なんです?彼女結構成績良いって聞いてたんですが?」
「ええ...、そういえば貴女は今年から赴任してきたから知らないのよね。成績は良い問題児って感じの子で、これでも以前よりは相当ましになったんだけどね」
聞こえてきた話では...
神浜市街から入学試験を主席合格、その結果は偏見の目とクラスからの孤立。
けれど、『真加奈』先輩はやられっぱなしっていう人でも無いようで。
言われたことはすべて言い返して、それどころかこそこそとした陰口にも正面から向かって行っては、
口喧嘩の末に結果で示せと言い負かす。そのうえで本人はずっと好成績を示し続ける。
それをひたすら繰り返したらしい。
そして今は、小康状態で表立って突っかかる人も少ないとか。
それを聞いたとき、わたしもこうすればいいんだって思ったの。
周りの機嫌をうかがって、嫌味にも我慢をして下手に出ながら上辺だけクラスメイトと仲良くしようとして、日々精神をすり減らして。
誰にも頼れないでそんな学校生活を何年も続けていくなんて、つらいだろうってわかってたから、縋りたかったのよね。
これしかないって思ったわたしは、先生同士の会話もそれ以上聞かずにその場を去ったわ。
そしてその日からわたしは、我慢をやめた。
えぇ、それが間違いだったわ。
1人を言い負かせば、次は2人に、その次は3人に。
陰口は気が付けば正面からの罵倒に代わって、一番仲の良いと思っていた隣の席の友達だってむしろ率先してわたしを罵ってきた。
ここまでは予想通り。
でも違ったのはその先、半年たってもいじめの勢いは減るどころか増えていく一方だったわ。
言い返せば解決なんて、あまりにも短絡的よね。
わたし小学生の時は、大東ですごく期待されてて、栄転だーなんて囃したてられて、ここに来たものだから。
きっとそのストレスもあって、少し考えればわかるようなことも、わからなくなっていたのだと思うわ。
それで先週の月曜日、つまり進級初日ね。
去年、一番わたしに突っかかってくる、元親友がリーダーをしてるグループがあったんだけど
元親友とその取り巻きたちが同じクラスだってクラス名簿を見たときわかって、気分が悪くなっちゃって。
それでその日はずっと保健室にいたの。
だけど放課後、保健室からでていこうとしたら元親友と取り巻きたちが来てね、何でも"親友のわたしたちがプリントを届けに来た"なんてわざとらしく保健の先生に言い出してね。
嫌な感じだったから、その場はお礼を言って受け取って、さっさと校舎を出たの。
そしたらちょっと後ろをついてきていたわ。
もしかしたら偶然かもしれないし、わざと校門じゃなくて植込みの方に行ってみたけどついてきたの。
そしてわたしを取り囲んで、いつも以上に嫌味や皮肉を浴びせてきたわ。
わたしもいい加減、我慢の限界でね。
あなたたちの言う粗暴な東とやらに本当になってもいいのか、なんて考え始めていた時だったわ。
いきなり後ろ木の裏から、見知らぬ上級生が現れたわ。
そう、『真加奈』先輩よ。
それから、一方的にいじめは良くないみたいなことを説教し始めたのよ。
え?『真加奈』先輩の様子?
そうね...『真加奈』先輩、いつもみたいな淡々とした口調なんだけど、とても強い言葉をかけるのもそうなんだけど、有無を言わせないっていうか、すごく口喧嘩になれてるって感じだったわ。
それで、『真加奈』先輩の勢いに圧されて、一人を残して半泣きで逃げていったわ。
ほんと胸がすく思いだったわ~!
最後の一人は元親友。
その一人も『真加奈』先輩の名前を聞いたら何も言わないで、こっちを一瞥するだけで逃げていったわ。
そしてその場にはわたしと、『真加奈』先輩だけが残ったの。
実をいうとその時のわたしの心中は複雑だったわ。
もちろん助けてもらったことはわかってるし。とても感謝していたわ。
でも、それと同じくらい。どうしてわたしを助けるのって、わたしがいじめられているのは、あなたたちみたいな水名の人間のせいじゃないかって。
うふふ!もちろん今はそう考えてないわ~!
...まったく、ってわけじゃないけど。
それでも『梓』先輩や、『梢』先輩みたいに、大東っていう偏見を持たない人もいるんだってわかったから。
それでね。
「あなたが、『真加奈ほのか』、さん?」
複雑な気持ちを押さえつけて、無言で佇む『真加奈』先輩にそう問いかけたわ。
そしたら
「はい、あなたの知る真加奈ほのかさんがどなたかは存じませんが、わたくしは真加奈ほのかと申します。」
なんて、無表情で返してきたわ~。
わたしはなんとか相槌を打ったけど、ちょっとさっきまでの一方的な口喧嘩がフラッシュバックしちゃって言葉を返せなくって...。
そしたらそんなわたしの様子を察して、怪我は無いでしょうか~とか、生まれによる差別は許せるものではありません~、だとか、
それまでの無言が嘘だったかのように、すごい勢いでわたしに話しはじめたわ。
余りに勢いがすごくて、わたしはあっけに取られたまま、相槌を返すので精いっぱいだったけれど、懐かしい気持ちも感じていたの。
見た目も口調だって全く違うけど、歯に衣着せぬ物言いに激しい性格と正義感はね、なんだかわたしの友達に似ていたの。
あ!友達って言ってもこの学校じゃなくってね、『十七夜』って言うんだけど、小学生の頃の友達なのよ。
だからわかった、とまでは言えないけど、信じたの。
この人は本当にまっすぐな人で、きっと信頼できる人だって。
そこからは、早かったわ。
わたしのお礼からはじまって、境遇の話とか、貴女はどうだったのとか、聞きたいこと言いたいことがすらすらでてきて、気が付けば時間も忘れて話し込んでいたわ。
そして『梓』先輩がわたし達のところにやってきたの。
そこから先は『梓』先輩も知っての通りよぉ~。
その時の『梓』先輩は、"痴話喧嘩を見ちゃいました"みたいに、あわあわ言いながら近づいてくるものだから本当に何かと思ったわよぉ。
それに、『真加奈』先輩が『梓』先輩を呼び出したのは親しくしたいから、なんて言い出した時には驚いたわぁ~。
普通に教室で声かけて仲良くすればいいのに、しかも理由も告げずに呼び出すなんて、やっぱり『真加奈』先輩っておっちょこちょいなところあるわよねぇ。
まあでも、そのおかげでわたしも助けてもらえたことだし、それから三人でお昼を過ごすようになるなんてね~。
「はい、これでわたしの話はだいたいお~しまい♪」
「あとは~、お互いのこれまでの学校生活の時の話で、2年時から『真加奈』姓になったってことも話していたわねぇ。」
「ああ、2年生の時だったんですね。実は、ワタシと『真加奈』さんってこれまで交流も少なくて、部活動も教室も同じになることが無かったので、そのことを知ったのは3年生の学園祭のときだったんです。」
「そういえば~、家庭科ぜんぜんダメなんて話も......」
...
「これはワタシの筝曲部の体験入部の時の話なんですが......」
......
.........
「それにしても、やっぱり『真加奈』先輩遅いわねぇ~。」