俺、YouTuberだけど重音テトを買う(笑)   作:UMC OGASOU

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5. 初めての動画撮影

第五話 初めての動画撮影

 

 

 

休日の朝。

 

 

 

直人は珍しく目覚ましより先に目を覚ました。

 

 

 

理由は簡単だ。

 

 

 

「……今日、撮るんだったな」

 

 

 

重音テト購入報告動画。

 

 

 

正確には企業案件を兼ねた紹介動画。

 

 

 

既に機材の準備は終わっている。

 

台本も昨夜ある程度まとめた。

 

 

 

問題は――

 

 

 

「出演者が自由すぎる」

 

 

 

直人は天井を見上げて呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

和室へ向かう。

 

 

 

すると。

 

 

 

「おはよう直人」

 

 

 

既に起きていたテトがノートパソコンを眺めていた。

 

 

 

「おはよう」

 

 

 

「動画の資料見てた」

 

 

 

「勝手に予習してる……」

 

 

 

「出演するんでしょ?」

 

 

 

テトは当然のように答えた。

 

 

 

その姿を見て、直人は少し笑う。

 

 

 

「まあ、そうなんだけどな」

 

 

 

 

 

 

 

朝食を終え。

 

 

 

撮影機材を並べる。

 

 

 

カメラ。

 

 

 

照明。

 

 

 

マイク。

 

 

 

モニター。

 

 

 

普段なら一人で黙々とやる作業だ。

 

 

 

だが今日は違う。

 

 

 

「これ何?」

 

 

 

「照明」

 

 

 

「これは?」

 

 

 

「マイク」

 

 

 

「これは?」

 

 

 

「予備バッテリー」

 

 

 

「これは?」

 

 

 

「なんでそんな興味津々なんだ」

 

 

 

「初めてだから」

 

 

 

即答だった。

 

 

 

 

 

 

 

セットアップが終わる。

 

 

 

直人はカメラを確認した。

 

 

 

録画OK。

 

 

 

音声OK。

 

 

 

照明OK。

 

 

 

 

 

「じゃあ始めるぞ」

 

 

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

直人はカメラの前に座った。

 

 

 

「どうも、モトミヤです」

 

 

 

慣れた口調。

 

 

 

自然な笑顔。

 

 

 

50万人登録者の看板は伊達じゃない。

 

 

 

「今日はちょっと大きな報告があります」

 

 

 

そう言ってカメラに向かって説明を始める。

 

 

 

イベント。

 

 

 

企業案件。

 

 

 

アンドロイドショー。

 

 

 

そして――

 

 

 

「実際に購入しました」

 

 

 

 

 

 

 

そこで。

 

 

 

テトがフレーム内へ入る。

 

 

 

「こんにちは。重音テトです」

 

 

 

ぺこり。

 

 

 

 

 

 

 

数秒。

 

 

 

沈黙。

 

 

 

 

 

 

 

直人は気づいた。

 

 

 

「テト」

 

 

 

「なに?」

 

 

 

「今カメラ止まった」

 

 

 

「壊れた?」

 

 

 

「違う。俺が止まった」

 

 

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

あまりにも自然だった。

 

 

 

 

 

 

 

まるで昔から出演していたみたいに。

 

 

 

緊張もない。

 

 

 

カメラ慣れしている訳でもない。

 

 

 

なのに堂々としている。

 

 

 

 

 

 

 

撮影を再開する。

 

 

 

 

 

「じゃあテト、自己紹介お願い」

 

 

 

「重音テトです」

 

 

 

「うん」

 

 

 

「歌えます」

 

 

 

「うん」

 

 

 

「掃除できます」

 

 

 

「うん」

 

 

 

「洗濯できます」

 

 

 

「うん」

 

 

 

「直人と暮らしてます」

 

 

 

 

 

 

 

直人がむせた。

 

 

 

 

 

 

 

「ごほっ!」

 

 

 

 

 

 

 

撮影中断。

 

 

 

 

 

 

 

「なんでそこ言うんだよ!」

 

 

 

「事実だから」

 

 

 

「そうだけど!」

 

 

 

「事実に基づく紹介動画だよ?」

 

 

 

「正論やめろ!」

 

 

 

 

 

 

 

テトは首を傾げる。

 

 

 

本気で何が悪いのかわかっていない顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

「編集で切るからな」

 

 

 

「えー」

 

 

 

「えーじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局。

 

 

 

撮影は二時間ほどで終了した。

 

 

 

 

 

 

 

「疲れた……」

 

 

 

直人が床に転がる。

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れさま」

 

 

 

テトはそう言いながらスポーツドリンクを差し出した。

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

受け取って一口飲む。

 

 

 

 

 

 

 

「なあテト」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「楽しかった?」

 

 

 

 

 

 

 

テトは少しだけ考えた。

 

 

 

 

 

 

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

即答だった。

 

 

 

 

 

 

 

「初めてだったから」

 

 

 

「そっか」

 

 

 

 

 

 

 

窓から風が吹く。

 

 

 

 

 

 

 

部屋には撮影後の静けさが戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「また出る?」

 

 

 

 

 

 

 

直人が聞く。

 

 

 

 

 

 

 

テトは少しだけ笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「呼ばれたら」

 

 

 

 

 

 

 

その返事を聞いて。

 

 

 

 

 

 

 

直人はなんとなく思った。

 

 

 

 

 

 

 

この動画。

 

 

 

たぶん、とんでもなく伸びる。

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

その予感は、

 

数日後に現実になることを、

 

まだ二人は知らなかった。

 

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