最適化の殉教者ーー多くの人々の希望たれーー 作:アンドリュー茂
初投稿です
ある時を境に人類は劇的な進化を遂げた。
始まりは中国、軽慶市で「発光する赤ん坊」が生まれたことが最初の記録とされている。
その後、世界各地で同様の超常能力を持つ人間が次々と現れた。当初は原因不明の現象として混乱を招き、既存の法律や倫理観が通用しなくなったことで、世界は一度「暗黒期」と呼ばれる大混乱の時代に突入した。
悪意を持って個性を使うヴィランに対し、正義感の強い市民たちが自ら個性を使って立ち上がり、「自警団(ヴィジランテ)」が台頭。武力による秩序の回復が行われる。
ヒーロー法の制定により、暴力の応酬だった時代は落ち着き、「ヒーローという公的な職業」が確立。
「平和の象徴」オールマイトの登場。
どんな絶望的な状況も笑顔で解決し続ける彼の功績により犯罪率が劇的に低下。
彼という「平和の象徴」が誕生したことで、人々は「個性があっても平和に暮らせる」という安心感を得た。
事実上の暗黒期の終焉となる。
超常能力を社会のシステムの中に組み込むことに成功したのだ。
とある男はこう語る。
『組み込むことには成功した。だが今の超人社会にいくつもの根深い問題がある。』
異形型への根深い差別、「個性」による選別、平和ボケした社会の「無関心」と「思考停止」
『だがもっとも根深き問題は、世代を重ねるごとにより複雑に混ざり合い、強力になっていく「個性」が人間の肉体、脳の限界を超え、人のコントロール可能な範疇を大きく超えていくことだろう。』
個性が強くなりすぎれば、既存の法律やヒーロー一人ひとりの力では抑え込めなくなる日が訪れる。今の超人社会には潜在的な不安を抱えているのだ。
個性が発現するのは4歳前後といわれ、まだ精神が未発達な時期だ。この時に強力すぎる個性が発現すると、本人の意図に反して周囲を破壊してしまうことがある。そして、こうした「突然の暴走」に対する公的な救済措置や精神的ケアの体制が不十分であり、超人社会の法整備には不備がある。
『そしてこの暴走問題の果てに、人は個性により滅びるかもしれない』
ハードウェア(肉体)の限界。
ソフトウェア(個性)の加速。
それはクラッシュを意味する。
いずれ個性が肉体の許容量を超え、生まれた瞬間から自身の力で自壊するか、周囲を無差別に破壊してしまう「制御不能な世代」が到来する。
そう、「社会の崩壊」だ。
『だからこそ、私は人類の最適化を目指している。ソフトウェア、個性を完全に制御し、ハードウェア、肉体の限界値をあげていく。強力な個性に耐えうる肉体の構築とその強力な個性を完全に制御する術を身に着けること。その方法を研究し、プログラムとして構築することで、強大な個性によって、命を失う人々を少しでも減らしていきたい』
『より多くの希望たれ。それこそが、君に背負わされたプロトコルだ。どうか「最適化の殉教者」になることを許してほしい。』
『貴方が生きて、強くなっていくこと、それがより多くの人々の希望の証となる。どうか、、、、、』
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『より多くの希望たれ。それこそが、君に背負わされたプロトコルだ。どうか「最適化の殉教者」になることを許してほしい。』
『貴方が生きて、強くなっていくこと、それがより多くの人々の希望の証となる。どうか、、、、、』
懐かしい夢を見ている。
この言葉は、
父と母のものだ。
午前5時30分。 アラームが鳴る1マイクロ秒前、意識を完全に覚醒させる。
右脳と左脳、交互に繰り返されたレム睡眠が終了し、自身の神経システムを「スタンバイモード」へと移行。
まだ暗い部屋の中で視界に半透明のホログラムが展開される。
【神路 律 バイタルデータ。[心拍:42(固定)] [血圧: 115/75] [体温: 36.52℃]】
体に埋め込まれたナノマシンにより送られたリアルタイムバイタルデータだ。
画面を横切る波形には一切のノイズはない、完璧に制御された凪。
あの懐かしい夢の、高揚の残滓も残さない。最適化された凪の波形。
リビングに降りる。
そこに両親の姿はない。
ダイニングテーブルには一杯のスープが置かれていた。
消化器系への負担を最小限に抑えつつ、一日の活動に必要な全栄養素を凝縮した「最適化食」だ。
スプーンを口に運ぶ。 温度は正確に38度。 口腔内の粘膜を傷つけず、かつ内臓の活性化を促す、。
肌よりわずかに高い、ぬるい液体。 口腔内の粘膜を刺激せず、胃腸が温度調整のために1ミリワットのエネルギーも浪費することなく、最短距離で血流へと溶け込む温度。
味覚受容体の反応は正常。栄養素の吸収効率も最大。・・・問題なしね。
自身の体の調子を確認し、神経の同期率を計算・・・99.99%
誤差範囲内。
準備をして家を出る。
今日は私たちの理論を、理想を体現していくための第一歩になる。
『強力な個性に耐えうる肉体の構築とその強力な個性を完全に制御する術を身に着けること、最適化だ。その方法を研究し、プログラムとして構築することで、強大な個性によって、命を失う人々を少しでも減らしていきたい』
両親の言葉を思い出す。
最適化の殉教者。
それが私に課せられたプロトコル。
どうか、多くの人々の希望に
その思いを胸に、私は雄英高校入学試験に向かった。
これは、私が生きた証を、人々の希望として刻む物語だ。
頑張って続かせます