遠野姉妹の牢屋敷生活   作:白原うい

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もう2か月……大変お待たせいたしました。
筆が遅いため今後も更新間隔は開いてしまうと思いますが、気を長くしてお待ちいただけると幸いです。


1-5 お屋敷探索、午後の部です!

 

午後の自由時間です。

最初の予定では、お外を見て回ってからお屋敷2階に向かうつもりでしたが――――ざんねんながらお外の探索は中止になりました。 考える時間が必要になったノアねえさまをあのお部屋に送ってさしあげた後で、お外に行くというおはなしでまとまりかけていたのですけれど……レイアねえさまが言うには、今お外に行くのは危ないみたいなので。

 

『みんな、見てくれているかな? 蓮見レイアだ。 ……今回はみんなに注意喚起をしたいと思って、この配信を回している。

 意図は全くもって不明だが……現在、牢屋敷周辺で黒部ナノカくんが通りがかった人物に対して見境なく襲いかかる事案が起こっているようだ。 かくいう私も、襲撃を受けたひとりでね……私は上手く撃退できたが、運動が得意でない娘や体格が小さい少女――――特にカンナくんみたいな娘が捕まってしまえば何をされるかわからない。

 午後は私を含む身体を動かすのが得意なメンバーで見回りをしようとは思うが、事態が収束するまでなるべく外には出ないで欲しい!

 ……ああ、それと。 行方知れずだった紫藤アリサくんだが、どうやら昨日のうちに懲罰房に連行されていたらしいね。 規則によれば明日には解放されるようだから、朝食の席であたたかく迎えてあげようじゃないか!』

 

ナノカねえさま、何してくれてるんでしょうね? そのせいでお外が見に行けませんし、そのうえシェリーねえさまが見回りに取られちゃったじゃないですか、もーっ!

……はぁ。 ちょっぴりさみしいですが、仕方ありません……シェリーねえさまが帰ってきたらお出迎えするのはぜったいとして、今はノアねえさまのことに集中しましょう。

地下の監房(おへや)から出発する、その後ろで――――ノアねえさまやエマねえさまに見つからないようにしんちょうに、おねえさまの《魔法》で画用紙の束と絵の具セット……それからお手紙もひとこと添えて、ノアねえさまたちのおへやにしのびこませてから。

 

「……あら? おかしいですわね……?」

 

なにくわぬ顔で、まっすぐお屋敷の2階に上がって……すぐそこにある隠し部屋(とびらのないおへや)の前で、おねえさまが魔女図鑑(スマホ)の地図と壁をみくらべて不思議そうにつぶやいてみせます。 ……はじまりましたね、あどりぶお芝居のおじかんです。 ほんとはここで、ノアねえさまに《魔法(おふで)》を使ってもらえるようにお話しの流れをもっていくつもりだったのですが――――ノアねえさまの《魔法》がわからず屋さんだと聞いてしまってはそうもいきません。 ノアねえさまに喜んでいただくために考えたけいかくですのに、そのせいでノアねえさまが落ちこんでしまったら台無しですもの。

……なので、ノアねえさまが魔法を使いそうだったらすぐに止められるように見張り(ちらちらと見)ながら出番を待っていたのですけれど――――くるん、とこちらを振り向いたノアねえさまとぱっちりおめめがあってしまいます。 もしかしてバレてしまったでしょうか……?

 

「ハンナちゃん、どうしたの?」

「え、えっと。 ノアねえさま、どうかしましたか?」

「んーと、ね。 のあ、朝からずーっと気になってることがあって。 ……カンナちゃんって、ハンナちゃんがエマちゃんとかシェリーちゃんとおしゃべりしてるのを見てるとき――――自分(カンナちゃん)がハンナちゃんとお話ししてるのと同じくらいにこにこしてるよね? ……どうしてかな? 寂しいきもちとかになったりしないのかな……? 」

「エマさんも見てくださいまし。 ここ、見取り図だと部屋があるはずですのに……扉がありませんの」

 

そっちのお話しでしたか……ちょっとほっとしました。 そうですね……もちろん、寂しくないなんて言ったらウソになりますけれど。

 

「ほんとだ……! なんで? もしかして、何かの魔法の影響なのかな……!?」

「ちょっと説明がむずかしいのですが……あたくし、ずーっとおねえさまにお世話されてばかりで。 いつも、いつでもおねえさまは、あたくしのことを気にかけてくださいます。 それは、とっても、とーっても、嬉しいんですが……でも、ですよ?

 あたくし、おねえさまが学校でおともだちといるのを見かけたことがなくて。 もしかして、あたくしのせいでおねえさま自身のことをにのつぎにさせちゃってるかも、って……ずっと心配してました。

 ですので……このお屋敷に来てから、同い年のおともだちと仲良くお話ししているおねえさまがいっぱい見られるのが嬉しくて、つい笑顔になっちゃうんです!」

「おぉー……カンナちゃん、すごいね! のあがカンナちゃんの歳のとき、ぜったいそんな考え方できなかったな!」

「そのようですわね。 扉を消すだなんて、なんてはた迷惑ないたずらなのかしら……!」

 

ノアねえさまはそうほめてくださいますが……。

おねえさまったら、授業さんかんの日には中学校の授業をお休みしてこっちに来てくれますし、休み時間になると時々あたくしのようすを見に来てくれたりまでしてくれて。 あたくしを育てるために小学校にも行けなかったおねえさまには、おべんきょうする時間もたくさん必要だったのに……ですよ? 本当に、いろいろとお忙しかったはずです。

そうかんがえると、……こうしてお屋敷にかどわかされてしまったのも悪いことばかりじゃないですね。 毎日すてきなお洋服をもらえますし、エマねえさまやシェリーねえさまともおともだちになれました。 おべんきょうもここにいる間はしなくていいですし、おねえさまにはいいお休みのきかいです!

それと――――自分でもまだよくわかってないので、ノアねえさまには言えませんでしたが……実は、にこにこしてた理由はもうひとつあって。

なにかとおねえさまやエマねえさまにお顔を近づけるシェリーねえさまや、今みたいにひとつのスマホをのぞき込むために身を寄せ合うおねえさまとエマねえさまのおすがたを見ていると……不思議なきもちでおむねが高鳴ってくすぐったくなっちゃうせいでもあるんです。

このお屋敷に来て、エマねえさまやシェリーねえさまと出会ってからあたくしのおむねの中に生まれたこのきもち。 その正体をつかめたら、もっとあたくしのせかいがひろがるような気がします。

これもここに来てからあった、よかったことのひとつかもしれませんね!

 

「あはは……。 でも、魔法で消されちゃったんだとしたら……ここにあるはずの部屋にボクたちが入るのは無理ってこと、なのかな?」

「それが、実はそうでもありませんの! ……魔法をかけられたせいで扉が消えてしまったのなら、その効力をなくしてしまえばいいんですわ。 そういうことが得意な魔法の天才(じまんのいもうと)が、ここにはいるんですのよー?」

 

おねえさまとエマねえさまのお話しも進んで、そろそろあたくしの出番のようです。 自慢に思ってくださってるおねえさまに応えて、とびっきりの演出をエマねえさまとノアねえさまにお見せしなきゃです!

 

「えっ……? カンナちゃんの魔法って、そんなこともできるの?

 ……あっ! じゃあもしかして、昨日の夜(あのとき)カンナちゃんがしてたのって――――むぐ」

「お察しの通りですっ、エマねえさま。 きのうの夜お料理を美味しくしたのは、あたくしの《魔法》の活用ほうほうのひとつであって、そのほんしつではないんですよ?」

 

お聡(さと)いエマねえさまのおくちをふさいで、前もっておねえさまが考えてくれた言い訳でごまかしてから……扉を隠すようにはりつけられている、壁の絵が描かれたおおきな画用紙と向き合って。

今度は、もう貼り直さない――――というより、貼りなおせなくなっちゃうと思うので。

《魔法》をつかう前に……ぺこりと、1度ふかく頭をさげておきます。 おねえさまの言うとおり、はた迷惑ないたずらかもしれませんが……魔法がずっとのこるくらいの、強い願いごとがここにはあったはずなんですもの。

……ごめんなさい。 お名前も知らない、いつかのねえさま。 どんな思いでこの魔法をかけたのかも知らないあたしの勝手で、その想いごと《不活性化(みえなく)》してしまうことをゆるしてください。

それでは、あらためて……こほん。

 

「……見ててくださいねエマねえさま、ノアねえさま。 これがあたくしの、ちょっぴりほんきの《魔法》ですっ!」

 

あたくしの魔法――――背中に生えた、《白と黒で一対のつばさ》をばさりと広げます。

それからまずは、光の反射のしかたとかいろいろをこねこねして……手のひらの上に、前におねえさまと読んだマンガに出てきた魔法のステッキの幻影(ほろぐらむ)をつくりあげて。 天井に向かって突き上げた先でくるくると手首をスナップさせて、ステッキの宝石からきらきらを振りまきます。

きらきらが落ちた床には魔法のステッキと同じようりょうで色とりどりのお花をぽこぽこと生やして、この辺りいちめんをお花ばたけにしつつ……おまけに《おまじない》もふんわりとかけちゃいましょう。 このお花ばたけを見たねえさまがたの心が安らぎますよーに!

最後に……はじける光にあわせて《画用紙》が見えなくなるまで《不活性化》することで扉をしゅつげんさせたら、エマねえさまたちの方に振り返って《お嬢さま式のご挨拶(かーてしー)》を――――決まりました、かんぺきですね!

 

「わぁ……! カンナちゃんすごい、魔女っ娘だ……!」

「ホールがお花畑になっちゃった……! きれーい!」

「ぱちぱちぱちぱちぱちですわー! さすがカンナっ、なんど見ても天才的魔法づかいでしてよー!」

 

エマねえさまとノアねえさまからもいい反応をもらえてよかったです。

それにしても、おねえさまったら。 力いっぱい拍手してくれるのはとってもうれしいですが、そんなに盛り上がられるとちょっと気恥ずかしいです。 エマねえさまにも苦笑いされちゃってるじゃないですか、もー。 ……えへ。

かくして開いた扉のさきに待っているのは、お絵描きをするためにあるようなお部屋です。

えっと……キャンバス、っていうんでしたっけ。 お絵描きにつかう布が床につみかさなっていたり、描きまちがってしまったらしいスケッチの跡がたくさん散らばっていたりで足のふみばがちょっと少ないですが……きのうの夜ここから持ち出した絵の具セット以外にも、いろいろな道具がそろっています。

まさに、ノアねえさまのためにある場所と言っちゃってもいいのではないでしょうか?

 

「わあ……! すごい場所見つかっちゃった!

 ねえハンナちゃん、ここなら好きにお絵描きしても大丈夫だよね?」

「ええ、今日からここが貴女のアトリエですわ! じゃんじゃんお絵描きしまくっちゃってくださいまし!」

「ほんと!? やった、のあのアトリエだー! わーい、わーい!」

 

ノアねえさまもこうして跳びはねて(ぴょんぴょんして)喜んでくれましたし、お屋敷探検は大成功ですね!

まだ見て回ってない残りのお部屋には、後でシェリーねえさまといっしょのときに行くと決めてるので……ノアねえさまとひとまずお別れしたら、1階のどこかのお部屋でお話ししながらシェリーねえさまの帰りを待つことにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

そうして、落ち着いてお話ができそうなお部屋……食堂に移動して、ひと息ついたところで。

 

「ねえハンナちゃん、カンナちゃん。 魔法を使うのって、どんな感覚なの? コツとかあったら教えて欲しいな。 ここに連れてこられたってことは、ボクの中にも魔法があるはずなんだもん。 みんなみたいに素敵な魔法だったら、使えるようになりたいなって……!」

 

――――ちょっとうきうきしたご様子で、エマねえさまが質問をなげかけてきます。

……そういえば、エマねえさまはご自分の《魔法》が何かわからないって言ってましたね。 魔法を使うのがどういう感じかは、自身の感覚でわかっていただくのがいちばんいいかもです!

 

「えっと……言葉でせつめいするのはむずかしいので、エマねえさま。 今から《活性化の魔法(あたくしのまほう)》で、エマねえさまの魔法を起こしますので……その時の感覚をおぼえてみてくださいっ」

「うんっ! お願い、カンナちゃん……!」

 

それじゃあ……エマねえさまの手をにぎって、念のためにエマねえさまの《魔法》がここで使っても危ないものではないと確かめ――――あらら?

 

「……どうしたの、カンナ? なにかおかしいことがあったのかしら?」

「あっ……いえ、だいじょうぶですおねえさま。 続けますね!」

 

おねえさまが心配してかけてくれた声で、はっとわれにかえります。

いとふしぎですが……みんな同じ《魔女因子(まほうのもと)》から生まれてきてるんですもの、そういうこともあるのかもですね。

気を取り直して、エマねえさまの魔法に起きてもらうと……やっぱりメルルねえさまの魔法と同じ時計の音――――《まっしろな羽根が生えた懐中時計》。

エマねえさまの魔法は、メルルねえさまとおんなじなのでした。

 

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