フィジカルゴリラな木場祐斗   作:お粥のぶぶ漬け

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第10話:加速する試練、あるいは龍の覚醒

ライザー・フェニックスとのレーティングゲームが決定し、グレモリー陣営に緊張が走る中、ソーナ・シトリーは一つの決断を下した。

 

「リアス、あなたの眷属を最短期間で仕上げるために、私の『騎士』を貸し出すわ。彼は私たちが知らない『鍛錬の極意』を知っている」

 

 その提案により、俺は数日間、グレモリー眷属の強化合宿に専属コーチとして派遣されることになった。場所は人里離れた山中にあるグレモリー領の別邸。

 

「……木場さん、よろしくお願いします!」

 

 やる気に満ちた兵藤一誠が拳を突き出す。だが、俺がこれから彼に与えるのは、天与の身体と魔剣の解析能力をフル活用した、地獄の「超効率的進化」だ。

 訓練が始まると同時に、俺は二振りの魔剣を顕現させた。

 

「一誠、お前の『赤龍帝の籠手』は強力だが、器であるお前の肉体がその出力に耐えられていない。ブーストの負荷に振り回されている状態だ。……まずは、死の淵で肉体を再構築してもらう」

 

 俺は一振りの黒い大剣を一誠に向けた。

『加重の魔剣(グラビティ・ブレイド)』。

 かつて重力系の能力を持つはぐれ悪魔から解析した因子を組み込んだ一振り。俺が剣を振るうたび、一誠の全身に通常の数十倍の重力負荷が襲いかかる。

 

「ぐ、あぁっ!? 体が……地面にめり込む……っ!」

「止まるな、動け。肉体が限界を迎えた瞬間に、これを浴びせる」

 

 もう一振りの剣、翠緑の輝きを放つ**『回復の魔剣(トワイライト・エッジ)』**を一誠の傷口に当てる。破壊と再生の超高速サイクル。天与の身体による精密な制御で、一誠の筋繊維を「より強く、より龍の力に適応する形」へと強制的に変異させていく。

 そして、一誠が「倍加(ブースト)」を繰り返すその瞬間。俺は『解析の魔剣』を彼の籠手に触れさせ、神器そのものではなく、そこから溢れ出す「現象としての魔力変異」を地道に採取していった。

(一気に深層へ潜れば、ドライグの意志に弾かれるか、一誠が制御できない力を暴走させかねない。今は……この『倍加』の基礎ロジックだけで十分だ)

 溢れ出す赤き闘気の波長を解析し、俺の魔剣へとそのエッセンスを刻み込んでいく。力の蓄積、そして臨界点での開放。そのプロセスを俺自身の魔力回路で再現できるよう、地道に、かつ確実に。

 数日後。合宿を終えた一誠は、見違えるほどの威圧感を纏っていた。

 そして俺の手の中には、新たな一振りが生まれていた。

『倍加の魔剣(ブーステッド・ブレイド)』。

 一振りごとに破壊力を底上げしていく、一撃必殺の基盤となる魔剣。

 合宿の最終日、俺はソーナへの報告のために一度学園へ戻ることにした。

 見送りに来たリアスは、俺を複雑な、それでいて熱のこもった瞳で見つめていた。

 

「……祐斗。あなたは自分の陣営ではない一誠を、なぜそこまで引き上げたの? シトリーにとっての脅威になるかもしれないのに」

「俺の主(ソーナ)が、あなたに勝ってほしいと願っているからです。……それ以上の理由は、俺には必要ありません」

 

 リアスは寂しげに微笑み、「いつか……奪ってしまいたくなるわね」と小さく呟いたが、俺はそれを聞き流して影へと消えた。

 夜。生徒会室に戻ると、ソーナが一人でチェス盤を見つめていた。

 

「おかえりなさい、祐斗。……一誠君の調子はどうかしら?」

「ええ。ライザー・フェニックスを驚かせる程度には仕上げてきました。……そして、俺もまた、新たな一振りを手に入れましたよ」

 

 俺は彼女の背後に立ち、優しくその肩を抱き寄せた。ソーナは心地よさそうに目を閉じ、俺の腕に手を重ねる。

 

「……ありがとう。あなたがグレモリーの元へ行っている間、この部屋が少しだけ広く感じたわ。……あなたは、もう私の一部なのね」

「俺も同じです。……会長、この合宿でさらに強力な因子の欠片を手に入れました。フェニックスの炎など、今の俺の敵ではありません」

 

 俺はソーナの耳元で囁き、彼女の頬を指先でなぞった。重なり合う鼓動。

 ソーナは顔を赤らめながらも、逃げることなく俺を見つめ返した。

 

「……信じているわ。私の、最高にして唯一の騎士」

 

 月明かりの下、主従という境界線が、愛という名の激情によって曖昧に溶けていく。

 すべては整った。

 不死鳥の傲慢を叩き潰し、その再生の因子を喰らうための準備は、完璧だ。

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