フィジカルゴリラな木場祐斗   作:お粥のぶぶ漬け

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幕間:怪物と騎士の境界線――匙元士郎の聞き込み調査

シトリー生徒会に加入して数ヶ月。匙元士郎は、ある「根深い疑問」を抱えていた。

 それは、生徒会書記・木場祐斗という男についてだ。

 

「……あいつ、絶対におかしいって。同じ2年で、どうしてあんなに差が出るんだ?」

 

 同じ学年、同じ「龍の神器」を宿す者。本来なら肩を並べて競い合うはずの存在だが、接すれば接するほど、木場の異常さが際立つ。圧倒的な実力、会長との異常なまでの距離感、そして時折見せる、底の知れない冷徹さ。

 匙は意を決して、周囲の面々に木場祐斗の印象を尋ねて回ることにした。

一、シトリー眷属の視点:畏怖と絶対の信頼

 まずは生徒会の先輩である真羅椿に話を振ってみた。

 

「あの、椿先輩。木場のやつ……あいつのこと、どう思います? 同じ2年なのに、あいつだけ別次元にいる気がして」

 

 副会長の椿は、眼鏡の奥の鋭い瞳を一瞬だけ和らげ、それから重々しく口を開いた。

 

「……彼は、シトリーの『盾』であり、同時に最も鋭い『矛』よ。加入当初、私たち上級生が全員で彼に挑んで、一度も触れることさえできなかった。……彼がいるからこそ、会長は安心して盤面を整えられる。私たちにとって、彼は単なる同僚というより、**『シトリーを支える不可侵の聖域』**ね」

 

 匙は顔をひきつらせた。上級生全員を相手にして無傷。同じ学年という事実が、余計に現実味を失わせる。

 

二、グレモリー陣営の視点:異質への警戒

 次に、共同訓練の合間を縫って、グレモリー眷属たちに接触した。

 

「木場先輩? ……あの人は、猫を被ってる。本性はもっと、鋭いです」

 

 最初に答えたのは、1年生の後輩である塔城小猫だった。彼女はチョコバーを齧りながら、感情の読めない瞳で続けた。

 

「……力が、悪魔じゃない。もっと別の、不気味なものを内側に飼ってます。……近付くと、本能が逃げろって」

 

 隣で、匙の親友(悪魔になってからの)である一誠が、複雑そうな顔をして頭を掻く。

 

「俺にとっては、命の恩人であり、最高のコーチだけどさ……。合宿の時のあの人は、なんていうか……**『神様が作った欠陥品を、自分で叩き直して化け物に変えた』**みたいな、凄まじい執念を感じたよ。……正直、同じ2年だと思いたくないくらいのプレッシャーだよな」

 

 匙は確信した。後輩からも、親友からも、彼はすでに「悪魔の枠組み」で測れる存在ではないのだ。

 

三、主君・ソーナの視点:愛と執着

 最後に、匙は意を決して、最も聞きにくい相手――主であるソーナ・シトリーに尋ねた。

 

「あの……会長。会長にとって、木場って……結局、どういう存在なんですか?」

 

 事務作業をしていたソーナの手が、止まる。彼女はゆっくりと顔を上げ、窓の外――独り鍛錬を積む木場の背中を見つめた。

 その瞳に宿ったのは、先ほどまでの「王」の鋭さではない。潤んだような、深い慈愛と独占欲が混ざった、一人の少女の熱だった。

 

「……彼? そうね。……彼は私の『魂の欠片』よ。……もし彼がいなくなれば、私の盤面は価値を失う。……彼が私のために泥を被り、怪物を喰らってくれるのなら、私は喜んで彼と共に地獄へ落ちるわ」

 

 ソーナは少しだけ悪戯っぽく微笑んで、匙を見た。

 

「匙君。同級生の彼にライバル意識を持つのはいいけれど……。彼は一度捕らえた獲物(わたし)を、絶対に離さないわよ? ……そして私も、彼を離すつもりはないわ」

 

 調査を終えた匙は、部室の隅で膝を抱えていた。

 

「……無理ゲーすぎるだろ……」

 

 実力、評価、そして主の心。すべてにおいて、木場祐斗は完成されていた。

 同じ2年生という肩書きが、もはや嫌がらせにさえ感じる。

 だが、匙は思い出す。あの聖剣騒動の夜、血と闇に塗れながらも、ソーナを抱きしめる木場の手が、微かに震えていたことを。

 

(……怪物だろうが何だろうが、結局あいつ、会長のことしか見てねーんだな)

 

 絶望的な差を感じながらも、匙は「いつか、一太刀くらいは報いてやる」と心に決め、今日もまた、同じ2年生の「騎士」による無慈悲な指導へと向かうのだった。

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