冥界の奥深く、四大魔王が鎮座する「謁見の間」。
現魔王サーゼクス・ルシファー、セラフォルー・レヴィアタン、ファルビウム・アスモデウス、アジュカ・ベルゼブブ。そしてオブザーバーとして、不敵な笑みを浮かべる堕天使総督アザゼル。
冥界の頂点たちが放つ圧倒的な魔圧の中、俺はシトリー家次期当主・ソーナの唯一の**「騎士(ナイト)」**として、彼女の背後に静かに、だが鋭く控えていた。
「さて、若き芽吹きたる諸君。この大戦後の新たな時代において、君たちは何を目指すかな?」
サーゼクスの問い。それは若き当主たちの覚悟を試す儀式だ。
ソーナが凛とした足取りで一歩前へ出て、自身の悲願である「レーティングゲームの専門学校」の設立を宣言する。血統に縛られない実力主義の冥界――その理想に、長老派の重鎮たちから「夢物語だ」と嘲笑が漏れた。
騎士の逆説
その嘲笑を切り裂くように、俺の声が会場に響く。
「――夢ではありません。主(ソーナ)が知略で盤面を描くなら、俺がその盤面を脅かす全ての理を『喰らう』だけですから」
俺は一歩前に出た。ソーナの背を守り、彼女と並び立つ位置へ。
「俺の名は木場祐斗。ソーナ・シトリーの騎士(ナイト)。……俺の目標は、主が掲げる理想を、絶対的な『力』をもって現実へと固定することです」
俺は右手を掲げ、その場に『真・聖魔剣(エクスカリバー・シトリー)』を顕現させた。
神々しい聖なる輝きと、禍々しい魔の闇。その刀身からは、かつて解析したレヴィアタン、オーフィスの蛇、そしてアーサーのルーラーといった強大な因子の残滓が、微かな圧力となって溢れ出す。
「……ほう。聖魔を統合し、蛇の因子まで飼い慣らしているのか」
魔王アジュカ・ベルゼブブが、興味深そうに眼鏡の奥の瞳を光らせる。
アザゼルが椅子に深くもたれかかり、ニヤリと笑った。
「面白いことを言うじゃねえか。……お前はもう、単なる駒としての『騎士(ナイト)』じゃあねえな。自らの意思で神話すら喰らう、シトリーの独占的な牙だ」
宣告の余韻
会合が終わり、静かな廊下を二人で歩く。
ソーナは少しだけ疲れたように、だがどこか誇らしげに俺の腕に触れた。
「……祐斗。あんな不遜な宣言をするなんて。あなたは本当に……私の騎士ね」
「嘘は言っていませんよ、ソーナ。……君の夢は、俺の夢だ。俺が強くなる理由は、それだけで十分です」
俺は彼女の指先を絡め、月明かりの下で立ち止まった。
魔王たちの前で放った言葉は、単なる誓いではない。俺の内側では、さらなる進化への渇望が渦巻いている。
「……次は、何を見せてくれるのかしら?」
「期待していてください。……次は、神の領域にさえ、この刃を届かせてみせます」
シトリーの騎士、木場祐斗。
彼の「捕食」と「解析」の旅は、冥界という枠を超え、次なる神話――北欧の地へと向かおうとしていた。