四大魔王を前にした不遜な宣言の余韻も冷めぬ中、会合の最後に衝撃的な決定が下された。
「――若手の実力証明として、後日、グレモリーとシトリーによる公式レーティングゲームを執り行う」
駒王学園に戻った俺たちシトリー眷属は、来たるべき対決に向け、戦略会議の真っ只中にいた。
「……祐斗。今回のゲーム、運営からあなたに対して特別な『制限』が課されることになったわ」
作戦ボードを前に、ソーナが複雑な表情で俺を見つめる。
俺の『真・聖魔剣』、そしてオーフィスの蛇をも取り込んだ解析能力は、もはや若手同士のゲームの枠を壊しかねないほどに肥大化していた。
「制限、ですか。構いませんよ。それで盤面が公平になるなら」
「ええ。条件は二つ。一つ、あなたが一度のゲームで使用できる魔剣は、生成済みのストックを含め**『三本』まで。そしてもう一つ、あなたが移動・戦闘できるのは指定された『制限エリア』**内に限定されるわ」
三本。そして範囲制限。
俺の神速と無限の武装を封じる露骨な枷だ。だが、俺は不敵に口角を上げた。
「面白い。どの三本を選ぶか、そしてどのエリアを俺の『絶対領域』にするか……。戦略の立て甲斐がありますね、ソーナ」
「そう言うと思ったわ。……エリアの選定はあなたに任せる。あなたの牙を最も効果的に振るえる場所を教えて」
仲間たちへの激励
戦略が決まり、ソーナが細部の調整に入った後、俺は特訓に励む仲間たちの元を訪れた。今回のゲームは、俺一人ではなく「シトリー」の勝利でなければ意味がない。
「匙(さじ)。……焦るな。お前の『黒龍脈(アブソープション・ライン)』は、一誠の倍加を封じ込める唯一の鍵だ。自分の限界を決めつけるな。お前は俺の同級生で、このチームの副エースなんだからな」
「……わかってるよ、木場。お前にだけ格好いいところはさせねーよ」
次に、後輩の守備役である**花戒(はなかい)と草下(くさか)**の元へ。
「二人の連携こそが、この盤面の命綱だ。お前たちが守り切る一秒が、俺が敵を刈り取る一秒を作る。……信じているぞ」
「はい、木場先輩! 必ず守り抜きます!」
そして、副会長の真羅椿(しんら つばき)。
「椿さん。……ソーナを頼みます。俺がエリア制限で動けない以上、彼女の盾になれるのは貴女だけだ。……万が一、俺のエリアを突破する奴がいたら……その時は、俺が解析した『自動治癒』の術式を編み込んだこの魔剣を使ってください」
「……ええ。死んでも、会長の隣は譲らないわ」
二人だけの前夜祭
特訓が終わり、静まり返った生徒会室。
俺とソーナは、最後に二人だけで戦術の最終確認を終えた。
「……祐斗。制限を課されて、不満はないの?」
ソーナが俺の隣に座り、そっと俺の肩に頭を預ける。
「不満? まさか。……むしろ、三本という制限があるからこそ、その三本を『神話級』にまで研ぎ澄ます理由ができました。……俺が選んだのは、解析、捕食、そして――この『真・聖魔剣』です」
俺は彼女の腰を引き寄せ、その耳元で囁く。
「ソーナ。俺が動けない分、敵は必ずお前を狙う。……だが、俺が指定したエリアは、お前の本陣を射程に収める狙撃ポイントだ。……一歩でもそこを通る者は、俺がこの三本で塵にする」
「……ふふ、相変わらず過保護ね。でも、そんなあなただからこそ、私はこの命を預けられる」
俺たちは暗い部屋の中、静かに唇を重ねた。
明日は親友である一誠や、強力なグレモリー眷属との戦い。
制限という枷を嵌められた怪物が、盤面の上でどれほどの蹂躙を見せるのか。
「……勝ちましょう、ソーナ。シトリーの勝利を、冥界に見せつけるために」
「ええ。チェックメイトは、私たちがいただくわ」