大型商業施設の中央吹き抜け広場。静謐な支配を続ける俺の前に、一誠がふらつきながらも力強く立ち上がった。その瞳には、親友としての意地と、赤龍帝としてのプライドが燃え盛っている。
「……へへ、流石だな木場。だけどよ、こいつを食らっても同じことが言えるか!」
一誠の咆哮と共に、凄まじい紅蓮の魔力が爆発した。
「『禁手(バランス・ブレイク)!!』」
『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』。ルール上、周囲の店舗を破壊せぬよう出力を一点に凝縮しているが、その密度は先ほどまでとは比較にならない。
「小猫ちゃん! 今だ!」
鎧の噴射口から魔力放出で突っ込んできた一誠が、小猫の仙術による加速を受けて、弾丸となって俺の懐へ飛び込んできた。
解析と譲渡:新たな魔剣の胎動
「面白い……! その出力、その加速、すべて俺の脳に刻ませてもらう!」
俺は『真・聖魔剣』を鞘に戻し、空いた手で一誠の紅い装甲に直接触れた。禁手状態の赤龍帝のエネルギーが、俺の「天与の身体」を焼き、内臓を揺さぶる。だが、俺の『解析の魔剣』は歓喜に震えていた。
【因子解析:赤龍帝(倍加・譲渡)】。
一誠の持つ「力を他者に託す」という概念。それを俺の魔剣創造の理で再構築する。
俺の脳内に、新しい魔剣の設計図が描き出された。
(……できた。力を溜めるのではなく、流転させ、他者の力さえも糧として分け与える――『譲渡の魔剣』)
それは、一誠との絆から生まれた、シトリーの連携を盤石にするための剣。だが、俺はそれを具現化させなかった。
「……今はまだ、必要ない。これは後で、ソーナに捧げるための力だ」
雷光の乱入、そして三本目の更新
「祐斗! 後ろよ!」
通信機からソーナの鋭い警告。
直後、天井を突き破らんばかりの勢いで、漆黒の雷鳴が俺を襲った。
「うふふ、私たちの『騎士』も忘れないでくださるかしら?」
グレモリーの『女王(クイーン)』、姫島朱乃。
彼女の放つ、堕天使の光と雷が混ざり合った「雷光」。それは過度な破壊を禁じられたこの場において、最も精密かつ致命的な「狙撃」だ。
俺は咄嗟に仙術の気を練り上げ、雷光を「解析」の魔力で受け流す。
【因子解析:雷光(神聖・雷)】。
(……凄まじいな。聖魔統合の先にある、対消滅のエネルギー。これを剣に宿せば、最強の『三本目』になり得る……**『雷光の魔剣』**か)
脳内には、紫電を纏った美しくも残酷な剣の姿が完成している。
しかし、俺は静かに首を振った。
「……朱乃さん。申し訳ないが、今の俺に許された魔剣はあと一本だけだ。そしてその最後の一枠は、既に『真・聖魔剣』が埋めている」
支配者の矜持
一誠の禁手、小猫の仙術、そして朱乃の雷光。
三方向からの同時攻撃に対し、俺はただ一本の剣――**『真・聖魔剣(エクスカリバー・シトリー)』**を再び抜いた。
「『譲渡』も『雷光』も、俺の魔剣のレパートリーに加わった。だが、実体化させるまでもない。……この一振りがあれば、十分だ」
俺は『真・聖魔剣』の能力を解放する。
アーサーから奪った「支配(ルーラー)」の因子が、吹き抜け広場の空間そのものを固定した。一誠の突進も、朱乃の雷も、俺が定めた「絶対不可侵」の法則に阻まれ、霧散していく。
「……ソーナ。見ていてください。制限の中でこそ、俺の忠誠は最も鋭く輝く」
禁手の一歩手前。限界を超えた解析と創造が、ついに木場祐斗を「魔剣創造の禁手」へと押し上げようとしていた。