フィジカルゴリラな木場祐斗   作:お粥のぶぶ漬け

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第27話:蒼き深海、そして塵に消える黄昏

休日の市街地は、多くの人々で賑わっていました。

 水族館の巨大なアクリルパネル越しに差し込む蒼い光が、ソーナの横顔を神秘的に照らし出します。

 

「……綺麗ですね、祐斗。水の中にいると、魔力が自然と周囲に馴染んでいくのを感じます。計算や策略から離れて、こうしてただ眺めているのも……悪くありませんね」

 

 ソーナは少しだけ肩の力を抜き、穏やかな微笑みを浮かべていました。

 主として、恋人として、俺を全幅の信頼で受け入れてくれるその姿。

 この時間が永遠に続けばいい。そう願わずにはいられないほど、穏やかな一日でした。

黄昏の襲撃

 しかし、幸福な時間は、不快なノイズによって引き裂かれました。

 駅へと続く、人通りの途絶えた夜道。

 俺の『解析』が、大気中に混じる不純な魔力を捉えます。

 

「……ソーナ、私の後ろへ」

 

 俺が彼女を庇うように一歩前に出ると同時に、空間を歪めて数人の男たちが姿を現しました。纏っているのは、禍々しい旧魔王派の紋章が刻まれたマントです。

 

「シトリーの次期当主と、その飼い犬か。……ゲームの勝利で浮かれているところを、冥土の土産にしてやろう」

「旧魔王派の残党、ですか。……せっかくの素晴らしい一日を、あなたたちのような『不純物』に汚されるとは、計算外でした」

 

 ソーナの声が、冷徹な氷のように温度を下げました。

 ですが、俺の中に渦巻く感情は、彼女のそれよりも遥かに苛烈で、暗いものでした。

怒りの駆除:加重の崩落

 

「……解析終了。あなたたちの構成データに、これ以上の存続価値は見当たりません。――消去します」

 

 俺の周囲に、無数の小さな魔法陣が展開されます。

 そこに現れたのは、掌に収まるほど小さな十数本の**『加重の魔剣(短剣サイズ)』**。

「ハッ、そんな玩具で何ができる!」

 

 残党たちが嘲笑い、一斉に闇の魔弾を放ちます。

 

「……いいえ、これで十分です。――『過負荷(オーバーロード)』」

 

 俺が指先を弾いた瞬間。

 宙に浮く短剣の一本一本が、限界を超えた魔力の充填により、白銀の光を放って脈動し始めました。

 

 短剣が放つのは、もはや斬撃ではありません。

 超高密度の重力質量。一本一本が空間をネジ曲げるほどの重圧を帯び、周囲の空間そのものを歪ませていきます。

 

「な、なんだ……体が、動か……ッ!?」

 

 逃げようとした男たちの足元へ、オーバーロードした短剣が突き刺さります。

 次の瞬間、短剣を中心に**「重力崩壊」**が発生しました。

 逃げ場のない超重力が、旧魔王派の男たちの肉体を、骨ごと中心点へと引き摺り込みます。

 メキメキと嫌な音が響き、彼らの悲鳴さえもが、歪んだ空間の中に飲み込まれていきました。

 

「……無に還ってください。彼女との記憶に残る価値すら、あなたたちにはない」

 

 短剣が限界を迎えて自壊すると同時に、凝縮された重力が爆散しました。

 爆風が収まったあと、そこには血の一滴すら残っていません。

 男たちの肉体は、分子レベルまで粉砕され、夜の闇へと霧散したあとでした。

 

「……祐斗、もういいですよ。落ち着きなさい」

 

 背後から、温かい温もりが俺の背中に触れました。ソーナが俺を後ろから抱きしめていたのです。

 その体温を感じた瞬間、俺の脳内を支配していた赤黒い熱波が、急速に引いていきました。

 

「……申し訳ありません、ソーナ。取り乱しました」

「いいえ。……私を想って怒ってくれたのでしょう? 少し怖かったですが、それ以上に……あなたが愛おしいと感じてしまいました。……帰りましょう、私たちの場所へ」

 

 俺は彼女の手を握り直し、静かになった夜道を歩き始めました。

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