フィジカルゴリラな木場祐斗   作:お粥のぶぶ漬け

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第31話:魔王の降臨、あるいは氷結の理

その夜、シトリー公爵邸の応接室は、冥界の最前線よりも過酷な緊張感に包まれていました。

 長テーブルを挟んで向かい合うのは、ソーナ、真羅椿、そして北欧の戦乙女シグルナ。私はその傍らで、針の筵(むしろ)に座る思いで控えていました。

 

「……それで? 任務の結果が『押しかけ女房の獲得』。論理的な説明をいただけますか、祐斗」

 

 ソーナの問いかけは静かですが、背後に浮かぶ水の魔力は、いつ鋭利な刃に変わってもおかしくない鋭さを帯びています。

 

「会長、落ち着いてください。……シグルナさん、貴女も。北欧の流儀をここに持ち込むのは、少し思慮に欠けるのではありませんか?」

 

 椿さんが冷静にフォローに入りますが、シグルナは不敵な笑みを崩しません。

 

「思慮に欠ける? いいえ、これは生存戦略です。私は『勝利(Sigr)』と『秘められた知識(Runa)』を司る者。祐斗様が私の魔術回路の『核』を正確に読み解き、最小限の力で美しく解体したあの瞬間……私にとっての真理は彼へと移ったのです。彼の『解析』の側にこそ、私の望む勝利がある。魂がそう叫んでいるのですから」

 

騎士たちの愚痴:ダイジェスト・北欧戦記

 応接室の外では、私は匙に事の端々をかいつまんで話していました。

 

「……つまりお前は、霜の巨人を重力で潰し、シグルナの多重複合魔術を指先一つでバラバラに解体した。そこまではいい。だが、なんでその知性的な無力化が『魂への求婚』になっちまうんだよ!」

「解析が及ばない感情の領域だよ、匙。知を尊ぶ彼女にとって、自分の術式を完全に読み解かれることは、自身の全てを明け渡すことに等しい意味を持ってしまったらしい」

「……お前の『解析』、女難の相まで引き寄せてるんじゃねえのか?」

 

魔王への誓い:セラフォルーの乙女心

 修羅場が続く応接室から、私は別の部屋で現魔王――セラフォルー・レヴィアタン様と対峙していました。

 

「祐斗ちゃん。……ソーたんを放っておいて、北欧の女のコとそんなに仲良くなっちゃうの? お姉ちゃん、許さないぞー?」

 

 いつものおどけた口調。ですが、私は彼女の目を真っ直ぐに見据え、一人の「男」としての覚悟を持って、その手を取りました。

 

「セラフォルー様。シグルナのこと、ソーナを不安にさせてしまったことは私の不徳です。ですが、これだけは断言させてください。私の解析する未来に、ソーナ以外の伴侶は存在しません。例え神話の女神が誘おうとも、私はその誘惑ごと切り捨て、ソーナ・シトリーの隣に立ち続ける。そのために、私はこの力を研ぎ澄ませてきました」

 

 魔王の威圧感に屈せず、一途な愛を覇道のごとき「覚悟」で言い切る。その圧倒的な男気に、セラフォルー様の頬が朱に染まりました。

 

「……っ! 君、ずるいよ。そんな風に真っ直ぐな瞳で言われたら……ソーたんの姉としてじゃなく、一人の女として、君が欲しくなっちゃうじゃない……」

 

 彼女の纏う大気が、熱情に呼応するように絶対零度へと収束します。

 

「……いいわ。その『男気』、私の氷で試させてもらうね。耐えられたら、私の一部をあげる」

 

 彼女から流れ込む「停止」の王権。私はそれを全身の魔力回路で受け止め、己の力へと変換していきました。

【新規因子の定着:氷結の魔剣(レヴィアタン・フリーズ)】

• 特性: 魔王セラフォルーの因子。万物の熱量と「時間」を凍結させる。

• 解析状況: 100%。神級の炎さえも静寂に沈める、絶対零度の理。

 

「……素晴らしい氷です、セラフォルー様。この冷たさ、私の心に刻み込みました」

 

 私がその手を強く握りしめると、最強の魔王は「……あぅ」と小さく声を漏らし、恋する乙女のような顔で立ち尽くしてしまいました。

 

セラフォルー様は、真っ赤になった顔を隠すように俯きながら、上目遣いで私に問いかけてきました。

 

「ね、ねえ、祐斗ちゃん……。私みたいに、いい年して魔法少女のコスプレとかしちゃうような年上……どう思う、かな?」

 

 それは魔王としての威厳を捨てた、一人の女性としての切実な問いに見えました。私は淀みなく、その瞳を真っ直ぐに見て答えます。

 

「趣味は人それぞれです。私は否定などしません。何より、自分の信念を形にして、それが似合っているのであれば、何の問題もないのではないでしょうか。……今のあなたも、とても素敵ですよ、セラフォルー様」

「っ…………!!」

 

 その瞬間、セラフォルー様の中で何かがショートしました。

 

「あ、あぅ……あわわわ……!」

 

 顔面を林檎のように真っ赤に染め、頭のてっぺんから湯気が出るのではないかと思うほどの動揺を見せると、彼女はそのまま身悶えるようにして、その場にへなへなと座り込んでしまいました。

 

「……セラフォルー様? 大丈夫ですか?」

「……無理、無理無理! 祐斗ちゃん、かっこよすぎて死んじゃう……! もー、ソーたんから奪いたくなくなっちゃったよぅ……!」

 

 最強の魔王が恋する乙女として完全に陥落したその姿に、私は自身の『解析』がまた一つ、未知の領域に踏み込んだことを悟りました。

 

「……シグルナの理知的な心酔と、セラフォルー様の情熱的な執着。私の『解析』は、どうやら戦いよりも複雑な迷宮に足を踏み入れてしまったようです」

 

 木場は自身の剣に宿る「冷気」を確かめ、静かに独白しました。






木場が何故かどんどん天然ジゴロのクソボケになって行く
なんでだろ?

他人の修羅場を想像すると笑えるから?

それはそうと今のところ読んでくれてる人ありがとう
自尊心が多少満たされつつ妄想が捗ってて楽しいです

読んでくれる人はコンゴトモヨロシク
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