邪神ロキの野望を粉砕し、北欧に静寂を取り戻した数日後。私たちは懐かしき駒王学園、そして生徒会室へと帰還しました。
しかし、そこで私を待っていたのは「元通り」の日常ではありませんでした。冥界から届く新聞の紙面には、私の活躍と共に、新しい二つ名が大きく記されていたのです。
讃えられる「盾」
「『蒼穹の盾』……。ふふ、いい名前じゃない。シトリーの蒼き水を、誰にも壊せぬ鉄壁の天蓋へと変える番人。今のあなたにぴったりだわ」
ソーナが嬉しそうに新聞を置きます。その傍らでは、シグルナが瞳を輝かせて私を見つめていました。
「当然です! 祐斗様は神の権能を解析し、それを自身の『盾』として再構築してしまわれた。神々の理(ルール)さえも通さないその姿は、北欧の戦乙女たちにとってももはや伝説。……あぁ、祐斗様。あなたの解析する理の中で、私は永遠にあなたの槍として仕えたい……」
シグルナが私の手を取り、心酔した様子で愛を囁きます。すると、ソファでくつろいでいたセラフォルー様が、負けじと私の反対側の腕に抱きついてきました。
「お姉ちゃんだって負けないもん! 祐斗ちゃんのその『盾』、私の氷でさらにカッチカチにしてあげたくなっちゃう。ねえ、祐斗ちゃん。君のその鉄壁の守りの中に、私だけを閉じ込めてくれないかなぁ? ……なんてねっ!」
魔王としての威厳をかなぐり捨て、一人の乙女として甘えてくるセラフォルー様。
戦乙女の崇拝と、魔王の情熱。
私の『解析』によれば、この二人の「2:2」という比率は、今のところ絶妙なバランスを保っていますが、その熱量は計り知れません。
眷属たちとの絆
そんな賑やかな様子を、他の眷属たちも微笑ましく(あるいは呆れ顔で)眺めていました。
「木場さん、本当にお疲れ様でした。学園の女子たちの間でも、その二つ名はもう注目の的ですよ」
真羅さんがお茶を淹れながら、少し困ったように微笑みます。
「ったく、木場はどこまで凄くなるんだよ。……でもよ、お前が『盾』として構えててくれるなら、俺たちも安心して暴れられるぜ!」
匙が快活に笑い、私の肩を叩きます。他のメンバーたちも、それぞれに私の帰還と成長を喜んでくれました。
ソーナとの約束
放課後、夕闇が校舎を染める頃。ようやく二人きりになれた生徒会室で、ソーナは窓の外を見つめながら静かに口を開きました。
「……祐斗。周りが騒がしくなるのは、あなたがそれだけ強くなった証。それは誇らしいけれど……少しだけ、遠くへ行ってしまったような気がするの」
私は彼女の隣に立ち、その華奢な肩をそっと抱き寄せました。
「そんなことはありません。私が手に入れた『盾』は、あなたを守るためだけのものです。解析の果てに私が見つめる景色には、いつもあなたがいます」
私の言葉に、ソーナは安心したように身体を預けてきました。
「……なら、その盾の性能を私に証明して。今度の休日、二人で出かけましょう。……これは主(あるじ)としての命令ではなく、一人の恋人としての……お願いよ」
「喜んで。最高のデートプランを考案しておきます」
ソーナは少しだけ顔を赤らめ、私の胸に顔を埋めました。
神話の争いも、二つ名を巡る喧騒も、今は遠い。
『蒼穹の盾』が守るべき最も大切な時間が、そこには流れていました。