フィジカルゴリラな木場祐斗   作:お粥のぶぶ漬け

37 / 39
第35話:蒼穹の盾と、束の間の休息

邪神ロキの野望を粉砕し、北欧に静寂を取り戻した数日後。私たちは懐かしき駒王学園、そして生徒会室へと帰還しました。

 しかし、そこで私を待っていたのは「元通り」の日常ではありませんでした。冥界から届く新聞の紙面には、私の活躍と共に、新しい二つ名が大きく記されていたのです。

讃えられる「盾」

 

「『蒼穹の盾』……。ふふ、いい名前じゃない。シトリーの蒼き水を、誰にも壊せぬ鉄壁の天蓋へと変える番人。今のあなたにぴったりだわ」

 

 ソーナが嬉しそうに新聞を置きます。その傍らでは、シグルナが瞳を輝かせて私を見つめていました。

 

「当然です! 祐斗様は神の権能を解析し、それを自身の『盾』として再構築してしまわれた。神々の理(ルール)さえも通さないその姿は、北欧の戦乙女たちにとってももはや伝説。……あぁ、祐斗様。あなたの解析する理の中で、私は永遠にあなたの槍として仕えたい……」

 

 シグルナが私の手を取り、心酔した様子で愛を囁きます。すると、ソファでくつろいでいたセラフォルー様が、負けじと私の反対側の腕に抱きついてきました。

 

「お姉ちゃんだって負けないもん! 祐斗ちゃんのその『盾』、私の氷でさらにカッチカチにしてあげたくなっちゃう。ねえ、祐斗ちゃん。君のその鉄壁の守りの中に、私だけを閉じ込めてくれないかなぁ? ……なんてねっ!」

 

 魔王としての威厳をかなぐり捨て、一人の乙女として甘えてくるセラフォルー様。

 戦乙女の崇拝と、魔王の情熱。

 私の『解析』によれば、この二人の「2:2」という比率は、今のところ絶妙なバランスを保っていますが、その熱量は計り知れません。

眷属たちとの絆

 そんな賑やかな様子を、他の眷属たちも微笑ましく(あるいは呆れ顔で)眺めていました。

 

「木場さん、本当にお疲れ様でした。学園の女子たちの間でも、その二つ名はもう注目の的ですよ」

 

 真羅さんがお茶を淹れながら、少し困ったように微笑みます。

 

「ったく、木場はどこまで凄くなるんだよ。……でもよ、お前が『盾』として構えててくれるなら、俺たちも安心して暴れられるぜ!」

 

 匙が快活に笑い、私の肩を叩きます。他のメンバーたちも、それぞれに私の帰還と成長を喜んでくれました。

 

ソーナとの約束

 放課後、夕闇が校舎を染める頃。ようやく二人きりになれた生徒会室で、ソーナは窓の外を見つめながら静かに口を開きました。

 

「……祐斗。周りが騒がしくなるのは、あなたがそれだけ強くなった証。それは誇らしいけれど……少しだけ、遠くへ行ってしまったような気がするの」

 

 私は彼女の隣に立ち、その華奢な肩をそっと抱き寄せました。

 

「そんなことはありません。私が手に入れた『盾』は、あなたを守るためだけのものです。解析の果てに私が見つめる景色には、いつもあなたがいます」

 

 私の言葉に、ソーナは安心したように身体を預けてきました。

 

「……なら、その盾の性能を私に証明して。今度の休日、二人で出かけましょう。……これは主(あるじ)としての命令ではなく、一人の恋人としての……お願いよ」

「喜んで。最高のデートプランを考案しておきます」

 ソーナは少しだけ顔を赤らめ、私の胸に顔を埋めました。

 神話の争いも、二つ名を巡る喧騒も、今は遠い。

 『蒼穹の盾』が守るべき最も大切な時間が、そこには流れていました。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。