蜃気楼の街 ウイユヴェール   作:ヴァーミ

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MC-4 渦中へ

OPERATION MC-4

渦中へ

推奨平均レベル
昇進1 LV.20

源石嵐の正体は幻影だった。だが嵐よりも恐ろしいものが、一行を待ち受けていた。

演習
行動開始

 

 

OPERATION MC-4

渦中へ

推奨平均レベル
昇進1 LV.20

源石嵐の正体は幻影だった。だが嵐よりも恐ろしいものが、一行を待ち受けていた。

演習
行動開始

 


 

源石嵐の境界線は、まるで世界の終わりのようだった。

 

紫色の粉塵が巨大な壁を形成し、空を覆い隠している。

時折、稲妻のような光が走り、オリジニウムの結晶柱が無秩序に成長していく様が見えた。

 

「ここから先は未知の領域だ」

 

ドクターが振り返り、一行を見渡した。

 

「防護措置は完璧ではない。異常を感じたら、すぐに報告しろ」

 

医療班のオペレーターが、一人ずつに特殊なマスクと防護服を配布していく。

源石粉塵を吸い込めば、数分で肺が結晶化する——それを防ぐための装備だ。

 

「アーネスト様」

 

マニュエラがアーネストの傍に寄り、防護服の装着を手伝った。

「私が前を歩きます。何かあれば、すぐにお知らせします」

 

「ありがとう、マニュエラ。でも無理はしないで」

 

「無理などしておりません」

 

マニュエラは微笑んだ。だがその目は、アーネスト以外の誰も見ていなかった。

 

ハンスは震える手で防護マスクを装着していた。

老いた体には、この旅は厳しい。だが彼の目には、確固たる意志があった。

 

「息子に……会えるんですね」

 

「ええ」アーネストがハンスの肩に手を置いた。「必ず、トーマスさんを見つけましょう」

 

「準備はいいか」

 

イプセンが低い声で言った。彼は防護装備を最小限しか身につけていない。

メテオが眉をひそめる。

 

「イプセン、それで大丈夫なの?」

 

「問題ない」

 

それ以上の説明はなかった。イプセンは常に、多くを語らない。

 

「では、出発だ」

 

ドクターが先頭に立ち、一行は紫色の壁へと踏み込んでいった。

 


 

嵐の中は、想像していたよりも静かだった。

 

視界は紫色の粉塵に遮られ、数メートル先も見えない。

だが風は穏やかで、装備が引き裂かれるような暴風は吹いていなかった。

 

「おかしい」

 

数分歩いたところで、ドクターが足を止めた。

手元の計測器を見つめ、眉をひそめる。

 

「源石濃度が——予測の10分の1以下だ」

 

「何ですって?」

 

メテオが自分の計測器を確認する。数値は同じだった。

「本当ね……この程度なら、通常装備でも数時間は持つわ」

 

「では……この嵐は、実体がないということですか?」アーネストが尋ねた。

 

「幻術か」

 

イプセンが呟いた。彼の目は、周囲の紫色の粉塵を注意深く観察していた。

 

「この嵐は見せかけだ。実体がない」

 

「幻術……?」

 

ドクターが顎に手を当てる。

 

「街を隠すための幻影、か。近づく者を威嚇し、追い返すための門番——」

 

「源石嵐だと思い込んで、誰も近づかない」

メテオが続けた。「賢いわね。嵐を突破する勇気のある者だけが、街に辿り着ける」

 

アーネストは周囲を見回した。

紫色の粉塵は相変わらず視界を遮っているが、確かに——風は穏やかで、装備への負担も感じない。

 

ハンスが呆然と呟いた。

 

「では……息子も、この幻影を突破したのでしょうか」

 

「おそらくは」ドクターが頷いた。「防護装備なしで源石嵐に突入すれば、普通は数分で死ぬ。だが幻影なら——生きて通り抜けられる」

 

ハンスの目に、光が宿った。息子が生きている可能性。それは老人にとって、何よりの希望だった。

 

「マグノリアも……これを見抜いて、街に辿り着いたのでしょうか」

 

アーネストの声には、祈りにも似た響きがあった。

 

「可能性はある」ドクターが答えた。「幻影を見破れなくても、強行突破すれば通り抜けられる」

 

「だが」イプセンが低く言った。「問題は、なぜこんな幻影を張っているかだ」

 

全員の視線がイプセンに集まる。

 

「外部の者を拒んでいる。何かを——あるいは誰かを、守るために」

 

「感染者を守るため?」メテオが首を傾げた。

 

「分からんな」イプセンは首を振った。「だが、何かを隠しているのは確かだ」

 

「問題は規模だ」ドクターが顎に手を当てた。「これほど広範囲の幻影を維持するには、相当なアーツ適性が必要になる。個人の力では不可能に近い——何らかの術式装置か、あるいは複数の術師が協力しているか」

 

沈黙が流れた。

 

街を守る幻影。それを維持する何者か。感染者たちはそこへ向かい——誰も戻ってこない。

 

「……考えても仕方ないわね」メテオが肩をすくめた。「行ってみれば分かることよ」

 

「ああ」ドクターが頷いた。「だが警戒は怠るな。これほどの幻影を維持している連中が、我々を歓迎するとは限らない——」

 

その時、地面が揺れた。

 

「何か来る!」

 

メテオが叫び、弓を構えた。

 


 

砂塵の向こうから、巨大な影が現れた。

 

最初に見えたのは、6本の脚だった。

大地を踏みしめるたびに、地面が震える。

 

そして——その全容が姿を現した。

 

「……何だ、あれは」

 

アーネストが息を呑んだ。

 

体長15メートルはあろうかという、甲殻類のような生物。

源石結晶が全身を覆い、紫色に輝いている。巨大な鋏は岩を砕き、6本の脚は大地を割るほどの重量を支えている。

 

そして——その背には、さらに小型の変異生物が数十匹、蠢いていた。

 

「源石汚染生物」ドクターが低く言った。「幻影の嵐の中で、何年も生き延びてきた個体だ」

 

「嵐が幻影でも、こいつは本物か」イプセンが剣を抜いた。

 

「散開!」

 

ドクターが即座に指示を飛ばす。

 

「ハンスと医療班を守れ。前衛はあの巨体を引きつけろ」

 


 

「ハンスさん、こちらへ!」

 

アーネストは即座に動いた。老人の手を取り、近くの岩陰へ誘導する。

 

「ここに隠れていてください。絶対に動かないで」

 

「し、しかし——」

 

「大丈夫です。私たちが何とかします」

 

アーネストが振り返ると、マニュエラが既に前に立っていた。

義肢の右腕を構え、小型生物を迎え撃つ姿勢だ。

 

「アーネスト様は下がってください。私が守ります」

 

「マニュエラ——」

 

「お願いです」

 

その声には、有無を言わせぬ響きがあった。

 

小型生物の群れが、四方から押し寄せてくる。

 

マニュエラの目が変わった。

 

普段の穏やかさは消え、代わりに冷たい集中が宿る。義肢の右腕が微かに唸りを上げ、内蔵された機構が起動した。

 

最初の一体が飛びかかってきた。

 

マニュエラは半歩だけ動いた。最小限の動きで攻撃をかわし、義肢を振り抜く。金属の拳が小型生物の頭蓋を粉砕した。

 

二体目。三体目。

 

マニュエラは淡々と処理していく。その動きには迷いがなかった。二年間、感染者として各地を転々とする中で身につけた生存術。弱者のふりをしながら、必要な時だけ牙を剥く——そうやって生き延びてきた。

 

だが今は違う。

 

守るべき人がいる。アーネストがいる。

 

「——来なさい」

 

マニュエラの声は静かだった。だがその目は、獲物を見定める獣のように鋭い。

 

小型生物が群れをなして押し寄せる。マニュエラは一歩も退かなかった。義肢が唸り、拳が閃く。叩き潰し、薙ぎ払い、踏み砕く。

 

アーネストは、その姿を呆然と見ていた。

 

あの控えめで献身的な娘が——こんな戦い方をするとは。

 

「マニュエラ……」

 

「大丈夫です、アーネスト様」

 

マニュエラは振り返らずに答えた。声は穏やかだったが、手は止まらない。

 

「あなたを守ることが、私の生きる理由ですから」

 

その言葉には、どこか狂気じみた確信があった。

 

同時に、メテオの弓が唸りを上げた。

 

彼女の腰には、二種類の装備が並んでいた。

一つは透明なガラス製の小瓶——マジックボトル。もう一つは金属製の小さな筒——カートリッジ。

 

マジックボトルは、特殊なアーツの術式を刻んだ特殊な容器だ。単体では機能しない。ボトルにカートリッジを装填し、矢に取り付けて射出。着弾と同時にカートリッジが砕け、ボトルの術式が起動する——弓使いでありながら術師の火力を併せ持つ、メテオ独自の戦闘スタイル。

 

メテオは腰から一つのボトルを取った。

淡い青色のガラス——側面に「コメット」の刻印。

 

続いてカートリッジを一本抜き取る。

 

カチン。

 

ボトルの底部にカートリッジを差し込む。ロック機構が噛み合い、術式が起動する微かな振動。

 

起動準備完了。

 

メテオはボトルを矢尻に装着し、弦を引き絞った。

狙いは小型生物の群れの中心。

 

放たれた矢は、正確無比な軌道を描いて飛翔した。

一切のブレなく、計算し尽くされた弾道。

それがカジミエーシュ随一の狙撃手と謳われた女の技量だった。

 

着弾。

 

カートリッジが砕け散り、ボトルの術式が起動する——何もない空中に、光が生まれた。

 

隕石だ。

 

人の頭ほどもある岩塊が、次々と虚空から出現する。

一つ、二つ、三つ——十を超え、なお増え続ける。

燃え盛る隕石群が、小型生物の群れに降り注いだ。

 

爆発。炎。悲鳴。

 

一射で十数体が吹き飛ばされる。

だが——それでも数が多い。

 

「キリがないわ!」メテオが叫ぶ。「親玉を倒さないと!」

 

巨大生物は、ゆっくりとメテオたちの方へ向かっていた。

6本の脚が大地を踏みしめるたびに、地面が震える。

 

そして——前脚を振り上げた。

 

「来る!」

 

ドクターが警告を発する。だが遅い。

巨大な鋏が、メテオたちのいる方向へ振り下ろされる。

 

「危ない!」

 

アーネストが叫んだ。

 

その一撃は——岩を砕き、大地を割るほどの威力。

直撃すれば、誰も生き残れない。

 


 

その時、イプセンが動いた。

 

巨大生物の前に躍り出ると、盾を構える。

ロドスから支給された近代的な装備——だが、その動きには淀みがなかった。

 

何かを呟いた——聞き取れない言葉。

 

次の瞬間、イプセンの体を淡い光が包み込んだ。

 

轟音。

 

15メートルの巨体が繰り出した全力の一撃が、イプセンの盾に叩きつけられる。

 

衝撃波が周囲の砂塵を吹き飛ばす。

地面に亀裂が走り、岩が砕け散る。

 

だが——イプセンは微動だにしなかった。

 

その瞬間、アーネストは見た。

 

衝撃が盾に叩きつけられた刹那——イプセンの姿が、一瞬だけ変わった。

近代的な装備ではない。重厚な甲冑、古めかしい意匠の盾、マントを翻す騎士の姿。

まるで演劇の舞台から抜け出してきたような、古典的な騎士の姿が——

 

瞬きの間に、それは消えた。

目の前にいるのは、いつもの軽装のイプセン。

 

だが確かに見えた。あの一瞬、別の姿が重なっていた。

 

「……は?」

 

メテオが声を失った。

 

あり得ない。あの質量、あの速度の攻撃を、人間が正面から受け止められるはずがない。

だが目の前で、それは現実に起きていた。

 

イプセンの体を覆う淡い光——それが、攻撃を完全に無効化していた。

 

巨大生物が体勢を崩した。全力の一撃を受け止められ、動揺している。

 

その隙を、イプセンは逃さなかった。

 

盾を投げる。

回転しながら飛んだ盾が、巨大生物の頭部に直撃した。

 

——シールドロブ。

 

巨大生物が怯む。

イプセンは戻ってきた盾を受け止め、即座に距離を詰めた。

 

盾を叩きつける。

鈍い衝撃音と共に、巨大生物の動きが完全に止まった。

 

——シールドバッシュ。

 

「動きが止まった!」メテオが叫ぶ。

 

「今だ」

 

ドクターが低く言った。

 

「撃て」

 


 

メテオは腰のホルダーに手を伸ばす。通常のボトルではない——最奥に収められた、赤と青の二層構造を持つ特殊なボトル。

ソウルレゾナンス。最大出力の切り札。

 

だが、このボトルには通常の三倍のカートリッジが必要だ。

 

メテオはカートリッジを三本抜き取った。

 

カチン。一本目。

カチン。二本目。

カチン。三本目。

 

ボトルの三つの装填口に、次々とカートリッジを叩き込む。

三重のカートリッジがボトル内で共鳴し、術式回路が唸りを上げた。ボトル全体が淡い光を纏い、起動準備が整う。

 

ボトルを矢尻に装着。弦を引き絞る。

 

イプセンが隙を作った。この瞬間を逃せば、次はない。

 

息を吐く。狙いを定める。

 

放たれた矢が、巨大生物の胸部に着弾する。

 

最初に訪れたのは、灼熱だった。

 

——フレアスター。

 

着弾点を中心に、炎の渦が生まれた。

 

最初は拳大の火球。それが一瞬で膨れ上がり、巨大生物の胸部を覆い尽くす。炎は生き物のように這い広がり、六本の脚を、背中を、頭部を——全身を灼熱で包み込んでいく。

 

源石結晶の装甲が赤く焼ける。紫色だった結晶が、橙に、白に、色を変えていく。熱に耐えきれず、装甲に無数の亀裂が走った。

 

巨大生物が苦悶の叫びを上げた。

 

六本の脚が暴れ、大地を踏み砕く。だが炎は消えない。メテオのアーツが生み出した業火は、獲物を逃がさない。

 

だが、それは始まりに過ぎない。

 

次の瞬間——炎が凍りついた。

 

——グレイシャルスター。

 

メテオのボトルから放たれた蒼白い光が、炎に包まれた巨体を貫く。

 

灼熱から極寒へ。その変化は、瞬きひとつの間に起きた。

 

赤々と燃えていた炎が、根元から凍りつく。炎の形を保ったまま、氷の彫刻と化していく。白い霜が這い広がり、巨大生物の全身を覆った。

 

熱で焼けた装甲が悲鳴を上げた。急激な温度変化に耐えきれず、亀裂が亀裂を呼ぶ。氷結した源石結晶が、ぱきぱきと音を立てて罅割れていく。

 

巨大生物は逃れようともがいた。だが、六本の脚はすでに凍りついていた。関節が、筋肉が、内臓が——すべてが凍結に蝕まれていく。

 

そして——砕けた。

 

最初は小さな破片。それが連鎖するように広がり、氷結した装甲が内部から爆ぜた。まるで砕け散る氷像のように、15メートルの巨体が崩壊していく。

 

凍った肉片が、砕けた結晶が、冷たい霧となって舞い散る。

 

断末魔の叫びすら上げることなく——源石汚染生物は、大地に倒れ伏した。

 

残った小型生物は、親玉の死に動揺して散り散りになった。

アーネストとマニュエラが逃げ遅れた数体を斬り伏せ、戦闘は終結した。

 

「……今の、何?」

 

アーネストは呆然としていた。

 

イプセンの異常な防御力。そしてメテオの——あの、規格外の火力。

二人とも、人間の域を超えている。

 

アーネストがイプセンに近づいた。

 

「……昔取った杵柄だ。気にするな」

 

イプセンは少し間を置いて答えた。

 

「気にするなって……あんな攻撃を無傷で受け止めて……」

 

「無傷じゃない。痛みはある」

イプセンは肩をすくめた。

「それに、あれは一時的なものだ。何度も使えるわけじゃない」

 

メテオとドクターが顔を見合わせる。

 

イプセンの正体——彼らもまだ、その全容を知らない。

ロドスに協力を申し出てきた時、彼は自分を「冒険者」と名乗った。

どこから来たのか、何者なのか——多くを語らなかった。

 

だが確かなことが一つある。

この男は、常人ではない。

 

「……先を急ごう」

 

ドクターが促した。

 

「嵐が幻影なら、時間の余裕はある。だが、こういう生物がまた現れないとも限らない」

 

「ハンスさん、大丈夫ですか?」

 

アーネストが岩陰に声をかけると、ハンスが震えながら出てきた。

 

「は、はい……なんとか……」

 

「怪我はありませんか?」

 

「ありません。あなた方のおかげです」

 

ハンスはイプセンとメテオを見た。その目には、畏怖と感謝が混じっていた。

 

「あの方たちは……一体……」

 

「私にも分かりません」アーネストは正直に答えた。「でも、味方であることは確かです」

 

イプセンの不可思議な防御。メテオの過剰な火力。

どちらも、アーネストの常識を超えていた。

 

一行は再び歩き始めた。

 

アーネストは、イプセンの背中を複雑な思いで見つめていた。

あの力は何なのか。彼は何者なのか。

 

だが今は、先を急ぐべきだ。

マグノリアが待っている——かもしれない。

 

紫色の幻影の中を、一行は進み続けた。

 


 

幻影の嵐は、奇妙な美しさを持っていた。

 

紫色の粉塵が風に舞い、光を屈折させる。時折、虹のような光が視界を横切った。源石結晶が放つ燐光が、幻想的な景色を作り出している。

 

だがそれは、死の風景だ。本物であれば。

 

「不思議な気分ですね」

 

アーネストが呟いた。

 

「これが本物の源石嵐なら、私たちはもう死んでいる。でも幻影だと分かっていても、怖さは消えない」

 

「当然だ」イプセンが前を向いたまま答えた。「幻影でも、恐れる心は本物だからな」

 

「恐れる心……」

 

「恐怖は生存本能だ。否定する必要はない」

 

イプセンは淡々と語った。

 

「大事なのは、恐怖に支配されないこと。怖いと感じながらも、足を止めないことだ」

 

メテオが横から口を挟んだ。

 

「イプセン、たまにいいこと言うわね」

 

「たまに、は余計だ」

 

「いつも無口なくせに」

 

軽口の応酬に、アーネストは少し救われた気がした。

 

ハンスは黙々と歩いていた。老いた体には堪える旅路だが、足取りは確かだ。息子に会うという目的が、彼を支えている。

 

マニュエラはアーネストの半歩後ろを歩いていた。常に視線を配り、危険がないか警戒している。その献身は変わらないが——戦闘で見せた別の顔が、アーネストの記憶に焼き付いていた。

 

ドクターが足を止めた。

 

「あれを見ろ」

 

指差す先——幻影の向こうに、淡い光が見えた。

 

街の灯りだ。

 

「まだ距離はあるな」イプセンが目を細めた。「だが、方角は分かった」

 

アーネストの胸に、希望が灯った。

 

あの光の先に、マグノリアがいるかもしれない。二年間探し続けた幼馴染が——

 

「行きましょう」

 

アーネストは前を向いた。

 

一行は再び歩き始める。光に向かって、一歩ずつ。

 

ウイユヴェールへの道は、もうすぐそこだ。

 


 

SPECIALIST

特殊
イプセン

Ipsen

イプセン。冒険者だ。……まあ、この地では通じにくいか。何でも屋、と思ってくれればいい。よろしく頼む、ドクター。

 

 

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