ご注文は東卍ですか?   作:肉野郎

3 / 4
三話目です。
今回はリゼも登場します。


第三羽

 

 

 バイクのエンジン音が静かに止まり、四人はラビットハウスの前に到着した。

 ココアが先に降り、ヘルメットを外しながら元気に手を振る。

 

 

 「着いたよー!マイキーくん!ドラケンくん!ここがラビットハウスだよ!」

 

 

 チノはドラケンの背中からそっと降り、服の裾を握りながら小さくお辞儀をする。

 

 

 「…あの……ありがとうございました」

 

 

 ドラケンはチノの小さな背中を優しく見守り、マイキーと一緒に店の裏手の方へバイク停めに向かう。

 ココアがドアを開けると中からラビットハウスのアルバイト、天々座理世の声が響いた。

 

 

 「いらっしゃいませ!…っとココアとチノか。おかえり、遅かったじゃないか。どうしたんだ?」

 

 

 リゼはカウンターで一人、バイトをこなしていた。

 制服姿で銃を腰に差したまま、いつもの男勝りな口調で二人を迎える。

 

 

 「ただいまーリゼちゃん!お仕事お疲れ様!」

 

 「リゼさん。遅くなってすみません」

 

 「いや、それは別にいいよ。大して客も来なかったし…でも遅いから心配したぞ……ん?ココア、お前ほっぺた少し赤いぞ」

 

 

 リゼはココアの頬に少し赤みがあることに疑問を抱く。

 ココアは少し申し訳なさそうに、でも明るく説明する。

 

 

 「ごめんねリゼちゃん!実はね、帰り道で不良たちに絡まれて……超ピンチだったの!でもマイキーくんとドラケンくんって子たちが、カッコよく助けてくれたんだよ!」

 

 

 不良に絡まれたとココアが口にした時、リゼの目が鋭くなった。

 

 

 「……ココアのそれ、不良にやられたのか?…チノ、お前は怪我は?」

 

 

 チノが小さく首を振る。

 

 

 「私は、大丈夫……です……」

 

 

 その時、カランと店のドアが開き、マイキーとドラケンが入ってきた。

 リゼは2人を一瞬で捉え、腰の銃に手をかけ臨戦態勢に入る。

 

 

 「お前たちか?……チノとココアに絡んできた不良は?」

 

 

 鋭い視線で睨み、ドスの効いた口で問いただす。

 マイキーは一瞬驚き、ドラケンも目を見開く。

 

 

 (この女……俺らに全くビビってねェ……)

 

 (それどころか、堂々と立ち向かってきやがる……)

 

 

 ココアが慌てて間に入って、誤解を解く。

 チノもすかさずフォローする。

 

 

 「リゼちゃん違うの!誤解だよ!この二人が助けてくれたの!不良たちを追い払ってくれて!ここまで送ってくれた恩人だよ!」

 

 「ココア庇わなくていい。本当はこいつらが…」

 

 「リゼさん…このお二人は本当に、私たちを助けてくれたんです」

 

 「…えっ!?そうだったのか!!?……私の早合点だったみたいだ。」

 

 「あれ!?なんでチノちゃんの時は信じるの!?」

 

 

 リゼは一瞬固まるがすぐに手を下ろし、マイキーとドラケンに向き直り、目線を合わせる。

 

 

 「お客様。この度は不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ありませんでした」

 

 

 リゼは自分の勘違いで、二人を見た目だけで判断し、敵視したことを深く反省した。

 そして頭を下げ、誠心誠意謝罪する。

 マイキーは笑って手を振り、ドラケンも頷く。

 

 

 「気にすンな。あの不良たちはともかく、この街見たけど雰囲気も治安も良いし、俺らみたいなヤツそうそういねェから、警戒したンだろ?」

 

 「それに俺たち、こういうのには慣れてるから大丈夫」

 

 「そ…そうか。ありがとう。それより立ち話もなんだし座ってくれ!ココアとチノの恩人なら歓迎するよ!」

 

 

 お互いに誤解も解け、ラビットハウスにはいつもの緩やかな空気が戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからお互い自己紹介が始まった。

 

 

 「それじゃあ改めて、私は天々座理世。ラビットハウスのバイトで高校三年生だ。よろしくな」

 

 「俺は佐野万次郎。マイキーって呼ばれてるから、そう呼んで」

 

 「わかったよマイキー。私のこともリゼでいいよ」

 

 「ん。よろしく、リゼ」

 

 「俺は龍宮寺堅って言います。俺もドラケンって言われてるので、そう呼んでください。あと俺もリゼさんと呼ばせてもらいます」

 

 「あぁよろしくなドラケン。…ん?なんで敬語なんだ?さっきまでタメ口だったのに?」

 

 「いや、一応年上なので、失礼のないように…」

 

 「………ちなみにお前ら学年は?」

 

 「中三」

 

 「俺もです」

 

 「…なんだ、まだ中学生だったのか。だったらチノと同い年だな…………ってええええええええ!!!!!!!」

 

 

 先ほどのココアと同じような反応をするリゼ。

 

 

 「あはは!なんかさっきのココアちゃんみたいな反応だな!」

 

 「マジか…マイキーはまだ納得がいくが、ドラケンは普通に私と同い年か年上かと思ったぞ…」

 

 「はは。よく言われます」

 

 

 先ほどのココアとのやりとりを思い出したマイキーは笑い出し。ドラケンも苦笑いする。

 自己紹介も済み、二人から注文を取る。

 マイキーはパンとカフェラテ、ドラケンはオリジナルブレンドをそれぞれ注文する。

 

 

 「ご注文、承りました!マイキーくん!お姉ちゃんがとっても美味しいパン作ってくるから、楽しみに待っててね♪」

 

 (ドラケンさんに……お礼を……ちゃんと淹れなきゃ……)

 

 

 ココアは張り切って、マイキーにパンを作る。

 チノもドラケンに、いつもより気合を入れてコーヒーを淹れる。

 リゼもマイキー用のカフェラテに、ラテアートの準備をする。

 

 その間、マイキーとドラケン、リゼは軽く会話する。

 

 

 「改めて、さっきはすまなかったな。私、チノとココアが絡まれたと聞いて……ついカっとなって」

 

 「もういいって。それより、俺ら相手にビビらねェ度胸があって驚いたぜ」

 

 「リゼさんって、なんか格闘技でもしてンスか?すぐに臨戦態勢取ってたし…」

 

 「だよな。いつも喧嘩してる不良たちと違って全く隙がなかったし、動きからして相当鍛えてンだろ?」

 

 

 マイキーとドラケンはリゼの動きから運動神経の良さを感じ、率直な感想を述べる。

 リゼは少し照れながらも、嬉しそうに。

 

 

 「ま…まぁな。私は、軍人の親父に昔から護身術、特にCQCを叩き込まれてるから」

 

 「あぁ、それで…だから銃とか持ってたンスね」

 

 「CQCか……すげェな。いつか訓練してるとこ見せてくれよ」

 

 「マイキー落ち着け」

 

 「ハハッ。まぁそのうちな。それよりホラ、先にマイキーのカフェラテから」

 

 

 リゼは、会話の片手間で精密なラテアートを描く。

 ハート型、うさぎ型、星型──見事な出来栄え。

 完成したラテをマイキーに差し出す。

 

 

 「おおお!これどうやって作ってンだ!?超上手ェな!!」

 

 「…マジで上手だな。ラテアートってやつか?つーか、あの短時間でこんなクオリティ出せンのかよ…」

 

 「ふふ。コレくらい朝飯前だよ」

 

 

 マイキーは初のラテアートに興味津々。

 ドラケンも目を丸くし、ラテアートの出来栄えに見惚れる。

 リゼは照れながらも嬉しそうにする。

 

 そうこうしているうちに、コーヒーは完成。

 チノはいつもより緊張しながら、ドラケンの前にオリジナルブレンドのコーヒーをそっと置いた。

 

 

 「おまたせしました…」

 

 「おっ。俺のもきたか」

 

 

 カップから立ち上る香りは、深みのある苦味とほのかなフルーティーさが混ざり、店内に優しく広がる。

 ドラケンはカップを手に取り、まず香りを嗅ぐ。

 

 

 「……いい香りだな……」

 

 

 ゆっくりと一口。

 ドラケンの目が、わずかに見開かれる。

 苦味が舌に広がり、すぐにまろやかな酸味と甘みが追いかけてくる。

 後味はすっきりしていて、喉を通るたびに心地よい余韻が残る。

 

 

 「……美味い……」

 

 

 チノの頰が、ぽっと赤くなる。

 

 

 「……ありがとう……ございます……」

 

 

 ドラケンはもう一口、目を細めて味わう。

 

 

 「チノちゃん…このブレンド、俺の好みにぴったりだ。香りも味も、深みがあって……最高だよ」

 

 「こ…光栄です…」

 

 「俺、普段そんなにコーヒー飲まないから、あンま詳しいことはわかんねェけど、これはマジで美味しいよ」

 

 「ドラケンさんに……そう言ってもらえて……嬉しいです……」

 

 

 チノは顔を真っ赤にしながら、視線を落とす。

 ドラケンはカップを置いて、チノに優しく微笑む。

 

 

 「俺と同い年なのに、こんな美味しいコーヒー淹れられるなんて、チノちゃんマジですげェよ。毎日でも飲みたいくらいだ」

 

 

 ドラケンはチノに目線を合わせ、本心からチノのコーヒーの味を褒め称える。

 チノはドラケンに優しい目に、自分の努力を認めてもらえたことに、嬉しくなり、胸が温かくなる。

 

 

 (ドラケンさん……私のコーヒー……美味しいって……)

 

 

 その時、ドラケンの頭に白いもふもふが乗る。

 突然現れ、ドラケンの頭に鎮座していた。

 

 

 「ん?なんだこれ……」

 

 「これはティッピーです…一応うさぎです」

 

 (………飲食店に動物って大丈夫なのか…?)

 

 「それうさぎなのかよ?毛玉かと思ったわ」

 

 

 ドラケンは、動物の持ち込みに衛生管理など内心で色々思い。マイキーはティッピーを毛玉呼びしながら突っつく。

 すると、ティッピーが突然。

 

 

 「誰が毛玉じゃ!それと、チノはやらんぞ小僧共!!」

 

 

 マイキーとドラケンが、一瞬固まる。

 

 

 「今喋った?」

 

 「私の腹話術です」

 

 「いや、今喋って……」

 

 「私の腹話術です」

 

 「でも……」

 

 「腹話術です」

 

 「…………」

 

 「腹話術です」

 

 「………カフェラテ、マジで美味いな。リゼ、カフェラテおかわりしていい?」

 

 「ん?ああいいよ。今度はマイキーのリクエストに応えてやるよ」

 

 「ラッキー。じゃあ、バイクのラテアート見たいから描いて」

 

 (マイキーが諦めた!?)

 

 

 マイキーは、突然ダンディな声で喋り出したティッピーに驚き、チノに詮索するも、腹話術の一点張り。

 これ以上の詮索は無駄と悟ったマイキーは、考えるのをやめ、カフェラテを楽しむ

 そのマイキーが食い下がった様子を見て、ドラケンは驚愕する。

 

 

 「おまたせー!パン焼き上がったよー!」

 

 

 ココアがトレイにパンを乗せて、マイキーの前にドンと置く。

 表面はこんがり黄金色に焼け、中から湯気がふわっと立ち上る。

 バターの香りと小麦の甘い匂いが、店内に広がった。

 

 

 「マイキーくん!これ、お姉ちゃんの特製ハート型パンだよ!愛情たっぷり入れて焼いたから、絶対美味しいよ♪」

 

 「いい香りだな。サンキュー、ココアちゃん」

 

 

 マイキーはパンを手に取り、じっと見つめる。

 そして── 一口、大きくかじる。

 

 

 「……ん……」

 

 

 最初は静かに噛みしめていたマイキーの目が、ゆっくりと見開かれた。

 外側はサクッと軽く、中はふわふわでしっとり。

 バターのコクとほのかな甘みが口いっぱいに広がり、噛むたびに小麦の香りが鼻を抜ける。

 マイキーの頰が、ぷくっと膨らむ。

 

 

 「…美味い……」

 

 「えっ……!? 今……美味いって……!?」

 

 

 その一言に、ココアの目がキラキラと輝く。

 マイキーはもう一口、もっと大きくかじる。

 頰を動かすたびに、幸せそうな表情が少しずつ浮かんでくる。

 

 

 「これ……すげェ柔らかい……バターの味が……ちゃんと染みてて……甘さもちょうどいい……」

 

 「マイキーくん……!マイキーくんが……そんなに美味しそうに食べてくれるなんて……!」

 

 

 ココアは感極まって、目が潤む。

 マイキーはココアと目を合わせ、感想を伝える。

 

 

 「ココアちゃんの作ったパン、俺好きになったよ。こんな美味いパンご馳走してくれてありがとな」

 

 

 次の瞬間、ココアはマイキーに抱きついた。

 

 

 「うわぁぁん!!マイキーくんありがと~~~!!お姉ちゃん嬉しいよぉぉ!!」

 

 

 マイキーはパンを咀嚼しながら、されるがままに抱きしめられる。

 ココアはマイキーの頭をぎゅーっと抱きしめ、頰をすりすりしながら甘やかす。

 

 

 「ココアちゃん近ェって。…でもこのパン、ほんとに美味い」

 

 「マイキーくんはもう、私の大事な弟だからね!もっと食べて!お姉ちゃん、もっともっと焼いてあげるから!甘やかしてあげるから!もふもふ~♪」

 

 

 マイキーは照れくさそうにしながらも、嫌がらずにパンをもう一口。

 頰が緩み、目が細くなる。

 

 

 「サンキュー、ココア"お姉ちゃん"」

 

 

 その言葉に、ココアはさらに感極まって、涙目でマイキーをぎゅうぎゅう抱きしめる。

 

 

 「お姉ちゃん……マイキーくんにそんなこと言われたら……もう……幸せすぎて死んじゃう~~~!!」

 

 「はは…面白れェな。ココアちゃんって」

 

 

 

 

 

 

 

 「……マイキーのやつ、めちゃくちゃココアちゃんに気に入られてますね」

 

 「まぁ…自分の作ったパンを褒められて、待望の姉呼びまでされたからな。感極まったんだろ」

 

 

 談笑は続き、みんなで笑い合う。

 マイキーはリゼのラテアートを褒め、ドラケンはチノのコーヒーを絶賛。

 ココアはマイキーに抱きつき、もふもふしながら「マイキーくんはお姉ちゃんの弟!」と主張。

 最後に会計を済ませ、全員、連絡先を交換する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラビットハウスは、夕陽の柔らかなオレンジ色に染まっていた。

 ココア、チノ、リゼの三人は、マイキーとドラケンの見送りをする。

 ココアが一番に飛びついてきた。

 

 

 「マイキーくん、ドラケンくん!今日は本当にありがとう!また絶対来てね!お姉ちゃん、もっと美味しいパン焼いて待ってるから!」

 

 

 マイキーは少し照れくさそうに笑う。

 

 

 「ココアちゃんのパン、マジで美味いからな。また来るよ」

 

 

 ココアはマイキーの無邪気な笑顔を見て、胸がきゅんとなる。

 

 

 「うん!マイキーくんはもう、私の可愛い弟だからね!お姉ちゃん、ずっと待ってるよ!」

 

 「だから近ェってココアちゃん。でもまァ…ありがと」

 

 「うん!」

 

 

 そう言って、ココアはマイキーをぎゅーっと抱きしめる。

 マイキーはされるがままに抱きしめられながら、苦笑い。

 

 

 「マイキー、ドラケン。またいつでも来いよ。私も待ってるよ」

 

 「俺もリゼのカフェラテ好きだし、またラテアート見たいから、また来るよ」

 

 「俺も、マイキーの見てたら作ってもらいたくなりました」

 

 「ふふ…その時はドラケンの分も作ってやるよ」

 

 

 リゼは男勝りな口調で、マイキーとドラケンに挨拶する。

 マイキーはみんなの顔を見て、軽く手を上げる。

 ドラケンも丁寧に頭を下げる。

 

 

 「また来るよ。みんなありがとな」

 

 「ココアちゃん、チノちゃん、リゼさん、…今日はありがとう。また来るよ」

 

 

 マイキーはバイクに跨り、エンジンをかける。

 ドラケンもバイクに乗ろうと後ろを向いたその時──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チノが、奥から小さな足音を立てて駆け寄ってきた。

 小さな手が、ドラケンの服の袖を、ちょこんと掴む。

 

 

 「……ドラケンさん……」

 

 

 チノの声は、蚊の鳴くように小さく、顔は真っ赤。

 視線は地面に落ちたまま、でも袖を離さない。

 

 

 「……また……来てください……」

 

 

 ドラケンは驚いて立ち止まり、ゆっくりとチノの方を向く。

 チノの小さな手が、袖をぎゅっと握っている。

 

 ドラケンは優しく微笑み、しゃがんでチノの目線に合わせる。

 大きな手で、チノの頭をそっと撫でる。

 髪がサラサラと指の間を滑る感触に、チノの心臓がドキドキする。

 

 

 「……ああ。約束するよ、チノちゃん」

 

 

 ドラケンの声は穏やかで、温かい。

 

 

 「また来る。チノちゃんのコーヒー、楽しみにしてるからな」

 

 

 チノは頰を真っ赤にしながら、こくこくと小さく頷く。

 

 

 「……はい……待って……ます……」

 

 

 ドラケンは立ち上がり、最後にみんなに軽く頭を下げる。

 

 

 「じゃあ、またな」

 

 

 ドラケンもバイクに跨り、エンジンをかける。

 ココアが手を振る。

 

 

 「マイキーくん、ドラケンくん! 絶対また来てねー!」

 

 

 リゼが腕を組んで。

 

 

 「マイキー。次はもっとすごいラテアート描いてやるよ」

 

 

 二台のバイクがゆっくりと動き出し、夕陽に向かって走り去る。

 チノは店の前で、ドラケンの背中を見送りながら、胸に手を当てる。

 

 

 (ドラケンさん……また……来てくれる……)

 

 

 ココアはチノの肩を抱き、チノにニッコリと微笑む。

 

 

 「チノちゃん……よかったね……ドラケンくん、絶対また来るよ」

 

 

 チノは頷きながら、頰を赤らめる。

 

 

 「……はい……」

 

 

 夕陽が二台のバイクを優しく照らし、木組の街に新しい絆が生まれた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マイキーとドラケンは、木組の街を後にして、夜の高速を走っていた。

 

 バブとゼファーのエンジン音が、並走しながら低く響き合う。

 街灯の光が断続的に二人の顔を照らし、ドラケンの辮髪が風に揺れる。

 マイキーは前を向いたまま、アクセルを緩めずに走る。

 ドラケンは少し後ろを走りながら、マイキーの様子を気にしていた。

 

 やがて、都心に近づいた頃、マイキーが突然スピードを落とし、路肩にバイクを停めた。

 ドラケンもすぐに追いつき、隣に停める。

 エンジンを切り、ヘルメットを外すと、夜風が二人の頰を撫でた。

 マイキーはバイクに跨ったまま、俯いて呟く。

 

 

 「……今日……なんか、すげェ疲れたな」

 

 

 ドラケンはヘルメットを膝に置き、マイキーの横顔を見る。

 

 

 「……ああ。俺もだ」

 

 

 短い沈黙。

 街の喧騒が遠くから聞こえてくる。

 マイキーが、ぽつりと続ける。

 

 

 「ココアちゃんたち、いい奴らだったな。……なんか、落ち着くっていうか……」

 

 

 ドラケンは小さく頷く。

 

 

 「……ああ。それにチノちゃんの淹れるコーヒー、俺の好みにドンピシャだった。あの子、ちっちゃいのに……ちゃんと自分の世界持ってるよな」

 

 

 マイキーは少し笑う。

 

 

 「ココアちゃんは……うるせェけど、優しいよな。『お姉ちゃん』ってうるさく言ってくるけど……なんか、嫌じゃなかった」

 

 

 ドラケンが苦笑い。

 

 

 「ココアちゃん、お前を弟認定してたからな。俺も『ココアちゃん』って呼ぶようになって……なんか、照れくせェけど……悪くねェ」

 

 

 マイキーは空を見上げる。

 

 

 「また……行こうぜ。あの街に」

 

 「ああ……絶対だ」

 

 

 二台のバイクが、再び夜の高速を走り出す。

 エンジン音が、二人を優しく包み込んだ。

 

 ──木組の街は、二人を待っている。

 

 そして、二人の心にも、あの温かさが残っていた。

 

 




ストックが尽きてしまった…
いっそストック貯まってから放出しようかな…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。