煽れば尊し。〜煽るとバフ乗るスキルでダンジョン潜ってたら案の定炎上した〜 作:あれ。
時は20XX年。
現代日本には似合わぬ石造りの洞穴を、片手剣一本で歩きながら、俺は深々と溜息を吐いた。
ここはダンジョン……全世界各地に点在する現代とは切離された空間、中には魔物と呼ばれるモンスター……頭痛が痛いみたいな文脈だな。まぁ、theありがちな魔物が居る。ゴブリンとかコボルトとかドラゴンとかそんな感じの奴らだ。
そして、このダンジョンの中でのみ行使できる異能ーー即ちスキルがある。ダンジョン内で用いる武器の類も、このスキルを介して作らなければダンジョンでは使用できない。正に現代の常識を何一つ持ち込めない切離された世界だ。
そいつらを狩るため、あるいはダンジョンのお宝を集めるためにダンジョンに潜る人を、探索者と人は呼んだ。
もっとも、今は純粋は探索者は減少傾向……多くがタレント性を意識したダンジョン内での活劇を配信する配信者の方が一般的だ。
俺は片手剣を引き摺り終えると、やけに身体に重さを感じてくる……かれこれ14時間はダンジョンに潜っているからか息苦しい。もうある程度の探索は終えて帰っているところなのだが、その帰り道がまた長いのだ。
「はぁ……しんど……」
俺は休憩しようと片手に持った剣をそっと地面に突き刺して杖代りにして項垂れる。
唐突だが自己紹介だ、俺の名前は『扇 浩一《おうぎ こういち》』今年の暮れで21歳になる。ダンジョンに潜ってアイテムかっぱらったりモンスター倒して素材売ったりするフリーの探索者だ。
俺のスキル名は『煽れば尊し。』である。
びっくりしたよ、ほかの皆が『剣聖:Ⅱ』とか『火炎の魔術:Ⅳ』とかだったのに、俺だけ唱歌のタイトルみたいになってるし、なんだその句点、何の意味があるんだよ。
オマケに皆他にも便利そうなスキルいろいろ手に入れてるのに俺にはこれしかないし……なんでスキル枠一枠しかねぇんだよ。変更できねぇし……縛りプレイやってるわけじゃねぇんだぞ!
話がそれたな。そして俺のスキルの能力は……まぁ、なんか大抵の察しはつくか。
だが、向こうに丁度いい『
「へぇい!そこのシ○レッグの完全下位互換!いいもんやるよ!」
そう言って俺は適当な石ころを手に持って、あのゴブリンに向かってぶん投げる。
今の俺のレベルならあのゴブリンなら脳天に石ぶつけるだけで瀕死位にはできるんだが……そうなるとドロップアイテムがカスくなるから、あえて
すると、投げた石ころはゴブリンの頬をかすめてダンジョンの洞窟の石壁に傷をつかた。
「ッッッ!!!」
おっ、気づいた。ってことは……
『攻撃力・ドロップ率:大幅上昇』
よしっ、成功。っとまぁあんなふうに所謂『煽るような行為』を取るとこうして俺にバフが乗っかるんだわ。さっきので仕留めなかったのも、こうして煽ることでドロップ率上昇が乗ってレアアイテム落としやすくなるからなんですね、初見さん。
こんな下級ゴブリンでもアイテムによっては悪くない値段で売れるからな。だいじな金の卵はだいじにしなきゃ。
「ッッッ!!」
「はぁい、換金アイテムいらっしゃいませぇ!」
『ドロップ率:上昇』
俺は空耳の様に響くドロップ率上昇の知らせに笑みを浮かべながら、地面に差した片手剣を即座に抜いて、飛びかかるゴブリンに刃を当てる。
振りかぶる必要はない、勝手に向こうから来て刃に当たってくれるなら、勢いよく切る必要はない。そう、剣はただ添えるだけ……!それだけでゴブリンは胴体が真っ二つになり、地面に倒れる。
「ふぅ、よっし!最後の煽りもドロップ上昇効いたし、どんなもんかなぁ?」
因みに倒したモンスターのどこが金になるのかという話だが……その答えは体内にある。俺は適当にゴブリンを剥ぎ取って体内に手を伸ばすと、手の平サイズの緑色の宝石のようなものを取り出せた。
これは魔晶石と言って、モンスターの生命の源のようなものだ。簡単に言えば心臓かな?これがダンジョンでのモンスター討伐における主な収入になる。
まぁ、勿論肉や皮や骨、角とが金になる場合も多いが。因みに、魔物に内臓は無い。そのかわりがこの魔晶石だ。
因みに、この魔晶石は手の平サイズで売価3000円ほどだが先ほどの下級ゴブリンなら魔晶石は取れてもせいぜいビー玉サイズが数個。売価は750円くらい。約3倍のドロップアイテム……
「悪くねぇな。」
因みにこの倍率は暴言や煽りの程度によって変動する。ただ単に『死ね』や『馬鹿』だのの暴言ではバフは乗らない。どんな煽りをしたかではなく、その煽りでどれだけ相手が苛ついたかでバフのノリ具合が変わるようだ。マジで嫌だなこんなスキル。
まぁ、それでもドロップやダンジョンのアイテムに直接補正がかかるのはいい。おかげで今のところフリーでダンジョン潜ってるだけで食ってイケてる。
ダンジョンの潜りを収益の主としている人は多くはない。基本的には苦学生とか金欠な人が偶に潜る程度だ。そのダンジョン潜りを収益にしている人も多くが『事務所』等に属してダンジョン内の様子を配信する『配信者』である場合が非常に多い。
俺の様にアイテムのドロップ率に直接関わるような奴や飛び抜けた実力をもつ者は配信者ではなく、完全フリーとしてやってる場合が多い。
かく言う俺も、一時期配信者として事務所に入ろうかと考えた過去がある。
が、俺のスキルではどうあがいても暴言厨になって炎上してすっ転ぶのが目に見えてる。それに配信者ともなれば入ってくる金も多いが、事務所などに取られる金も多い。
勿論、総合的に考えてどちらが良いかは考えものだが、俺にとっては狩って取った分がそのまま収入になるフリーの方が性に合っていた。成功も失敗も自責って言うのは余計な荷が無くて良い。
「……さて、そろそろ次のエリアに行くか……その前に。」
俺は片手剣を取って魔晶石を抜いたゴブリンの死体に近づき……しゃがんだり立ったりを繰り返したり、ひたすらにゴブリンの死体を剣で殴ったりしてみる。
はたから見たら魔物相手とは言え最低の行為だが……
『防御力・回避率・素早さ:大幅上昇』
「このくらいバフ乗れば後は余裕だろ。」
事実、最低な行為である。
意味のある行為とは言え、死体煽りからの死体蹴りなんて……こんな事してる所配信者とかに見られたら炎上拡散だわ。
「まぁ、こんな所そう簡単に見つかりゃせんだろwww」
『素早さ:小上昇』
えっ?もう死体蹴りはしてねぇが……誰か煽ったか?……
「んー?別に誰も居な……」
「あっ。」
あっ。
居た。
神官風の衣装を身にまとい、その周りにはカメラのような瞳を持った光の王が浮いている。あれば配信用の記録精霊だ、あれで映像を配信してるってわけだ。
配信者は皆あの精霊を使役できるスキルを手に入れられるらしい。いいねぇ、俺『煽れば尊し。』でずっとやってきたよ。うん。すると、俺よりもはるかに幼そうなその神官風な女の子が恐る恐る俺に問いかけてくる。
「あ……あのっ、何を……してるん……ですか……?」
「……ちょっと、勝利の舞を。」
俺は こんらん している !
不味い不味い、ここはしっかりと話し合わないと……悪気があったわけじゃわないことを話さないと……でないととんでもない事になる。
『攻撃力:中上昇』
ふぁっ!?待てっ!?煽り判定入った!?ヤバい!弁明!弁明しなきゃ!!!
「ま、まぁ待て。これは必要な事なんだ……!魔物を煽ると力が出てくるんだよ……!!」
「魔物とは言え……亡骸を弄んで力が溢れるって……!?」
『防御力:中上昇』
あー!また煽り判定入った!
この幻聴あの娘にも聞こえねぇかなぁ!?
くそっ!こうなりゃ埒が明かねぇ!このままやり取りするより逃げる方がいいや!!
「と、兎に角さらば!!お互い何も見なかったことにしよう!」
『素早さ:中上昇』
「もぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
くそがっ!!また煽り判定入りやがった!!
あんまパーティとか組まずにソロでやってきたからかあんま意識しなかったけど、俺の煽りバフ敵味方関係なく誰か苛ついたらバフ乗るのな!不便!!
くそっ!なんてこった……後は帰るだけなんだから念入れずに死体蹴りなんかしなきゃよかった!!……あれっ、バフのためとは言え死体蹴りが平然と選択肢に入ってる時点で俺はもう相当駄目なところまで来ているのでは………??
いっ、嫌。まだだ、ギリギリ人としての尊厳はのこってるはず……外道には落ちてない……はず……
兎に角俺は一刻も早くこの場からおさらばするためにその場から走り去る事にした……あのままあそこに居たら弁明よりも早く墓穴を掘り抜いて炎上からの火葬がオチに思えたからだ……
……まぁ、もう手遅れな気もするが。
とあるSNSの書き込み
○○○ hasaha257yb |
今日のシノカちゃんの配信に映り込んだやつヤバかったな
| こ??? | り??? | ♡???? | ふ?? | め? |
☓☓☓ f7it8y6i |
今日のダンジョン配信で放送事故あったのマ?
| こ??? | り???? | ♡ | ふ? | め |
VVVVVV C67D6UR8H |
シノカちゃんの配信の問題箇所見てみたけど想像以上にヤバかったな。魔物の死体を永遠に只管に殴りつけてた。
| こ??? | り?万 | ♡ | ふ?? | め?? |
〆〆〆〆 SImesime4 |
放送事故も良い所なこれ。何が怖いってヤバい所見られたから逃げるって理性あるのが怖い。
| こ??? | り???? | ♡????? | ふ?? | め |
CCFF v67s6ggu8n |
探索者ってマナー良いイメージあったけどあんな事する奴もいるんだな。あいつが死体蹴りされればいいのに。
| こ???? | り??? | ♡???? | ふ?? | め |