対決! 綾香 VS 筋肉女! 【ToHeart】 作:NapalmCrusher
放課後。
学校から出ていこうとする綾香を、そっと尾行する巨体。
「ひっ!?」
そこに偶然通りかかった女生徒が、驚きの声をあげた。
その筋肉巨体はもちろん、ボマ子であったのだが…。
どこで着替えたのか、黒い覆面と、全身の筋肉質曲線ボディラインが剥き出るタイトなレオタード、そして網ストッキング。
いかにもくノ一っぽい(?)格好である。
どうやら、尾行というものはこういうニンジャーの格好でするものだ、と彼女は誤解しているらしい。あんなに強烈な存在感を放つ筋肉巨大女が、まともに忍びができるはずはないが…
(ふふふ…今日は来栖川綾香の弱みを探ってやるわ…)
腰を抜かしている女生徒には気付かず、完璧な忍びのつもりのボマ子は綾香を追って校舎の外に出て行った。
綾香は何も知らず、歩いていく。
そしてその後を、通行人を豪快に驚かしながら尾行する黒尽くめの巨大痴女、ボマ子。
(ふっ…バレてない、大丈夫ね)
どうやら当人にさえバレなければ、後は別に構わないらしい…。
やがて綾香は、とある高校の前まで来た。
そして、校舎の裏手に見える、小さな神社へと向かう。
(…何をするつもりかしら…)
ボマ子も、下校途中の生徒たちを驚かしながら、後をつける。
やがて神社に着いた綾香は、そこにいた人物に手を振って走り寄る。
(あああ!? 逢引き!?)
木の影に隠れて様子をうかがっていたボマ子は、その衝撃の事実に驚いた。
綾香は、なんと男と会っていたのである。
『来栖川綾香、可愛い振りしてわりとやる高校2年生! 実は他校の男と付き合っていた!?』
三流週刊誌の見出しのような言葉が、ボマ子の頭を駆け巡る。
(でもあの人、わりとかっこいいかしら…でも亡くなられる前のホーガン様にも、そしてあたしのこの素晴らしい筋肉にも負けるわね)
そんなことを考えていると、その男と綾香は、神社の影の方に移動する。
(も、もしや、こんなところで○△×をっ!?)
ボマ子だって年頃の女の子である。しかも、あの筋肉巨体のせいで、他の同期性より何倍も性欲が旺盛な…
こういうのをナマで見るチャンスなど、ほとんどない。
ボマ子はまるで黒い子猫でもなりきったように低く屈めて移動すると、神社の境内の下に入って様子をうかがった。
「もういいんじゃないか? 俺がマッサージしてあげるよ」
「やだもう、えっちねえ、浩之…」
「ち、違う、俺はだな…」
「ダメ、私が代わりにしてあげるわ。浩之じゃ何されるかわからないもの」
「ちぇっ…信用ねえなあ。じゃ綾香、頼むわ」
「よーし、じゃ、気持ちよくしてあげるわよ~」
そんな会話が聞こえてきた。
(き・き・気持ちよくする!? もしかしてあーんなことやこーんなことを…)
ボマ子は、ついエッチな妄想に駆られた。
(いんや、とてもイヤらしい…)
そんなことを思いながら、衝撃の現場を掴むためにボマ子はゆっくりと声のする方に近付いていく。
「うぅぅ…」
悩ましげな声が聞こえ、ボマ子はいっそう興奮し、身悶えた。みっちり鍛え込まれたボマ子の股間が、レオタードを食い込んでわずかに液を垂れ流している。
そして、様子がうかがえる場所まで来ると、そっと覗いてみる。
(あれ?)
そこには、綾香と先ほどの男…綾香は浩之と呼んでいた…の他に、ショートカットの少女の姿があった。
綾香は、座っている少女のマッサージをしている。
(か、勘違い…?)
自分の想像と全く違う展開に、1人で身悶えていたボマ子は、我に返って、そして戸惑っていた。
「…葵、あまり無茶しない方がいいわよ」
マッサージしながらの綾香の言葉に、葵と呼ばれた少女は悩ましげな声で答えた。
「…うっ…でも、もっと頑張らないと…ふぅ…綾香さんに追い付けないですよ…んっ」
「何言ってんの、もう十分追い付いてるわよ」
きゅーっとツボを押しながら、綾香はイタズラっぽく微笑んだ。
「そうそう、頑張りすぎるのも良し悪しだぜ」
横にいた浩之も、そう諭すように言った。
どうやら、葵と呼ばれた少女も、綾香と同じく格闘少女のようである。
奥の木を見てみると、その枝にはサンドバッグがぶら下がっていた。
(なんだ…ちぇっ)
ボマ子はかなりがっかりした様子だ。
だが、すぐに気持ちを切り替える。
(いやいや、これはあの女の弱みを握るための尾行よ。しっかりしよう)
そしてまた、様子をうかがう。
「…そういや葵、今日は用事あるって言ってたんじゃない?」
ポン、と葵の肩を叩いて、マッサージの終わりを知らせる綾香。
葵はゆっくりと立ちあがる。
「あ、そうなんです。ですから、今日はこれで終わりにしたいんですけど…いいですか?」
申し訳なさそうに、葵は浩之に尋ねた。
「いいんじゃないか? 休養にもなるしね」
「あ、時間が…じゃ綾香さん、浩之さん、これで失礼します」
ペコっとお辞儀すると、葵は荷物をまとめ始める。
「おう、片付けはやっとくから」
びっと親指を立てる浩之。
「じゃあね~」
「すいません、それじゃ」
葵はそのまま、ほとんど走るように去っていった。
残された綾香と浩之は、サンドバッグを片付けた後、学校を後にする。
…当然、ボマ子も後をつける。
他愛もない話をしながら、2人はマックへと向かった。
(…うーん、あんな来栖川綾香は初めて見るわ…)
尾行し続けているボマ子は、電柱の影に隠れながらそんなことを思った。
屈託のない笑顔。
ボマ子には、綾香の表情がそう見えた。
学校での綾香は、笑ってはいるものの、どこか作ったような笑顔だった。
そう、誰かに見られているのを意識しているような。
だが今の綾香の表情は、見せるためではなく、本当に心からの笑顔のように見える。
(やはり、あれは好きなのね…私も永遠のホーガン推しだからわかるわ…)
またも子猫のように見を丸めながらポッと頬を赤らめるボマ子。
…丁度その頃、そばを通行人が通りかかったのだ。そしてその通行人は、黒尽くめな雌の巨大タイガーを目の当たりにしてしまった。
一瞬険しいな眼差しに変わったボマ子と目があった瞬間、命の危険を感じて一目散に走り去った。
その後、2人はマックで1時間ほど時間を潰し、そして別れた。
(…ふふふ。あの男、使えるわ…)
1時間もの間、そばを通る通行人を不安にさせていたボマ子は、ある企みを胸に浩之の尾行を開始した…。