対決! 綾香 VS 筋肉女! 【ToHeart】 作:NapalmCrusher
浩之が、自宅への道を帰っていると…。
「…ちょっと、お兄さん…」
誰かに肩をつつかれた。
「何ですか…」
くるり…と振り返る浩之…。
「…わあああああああああああああああああ!!」
あまりのことに驚き、叫んでしまう浩之。
そこには、例の巨体筋肉女戦士がいた。
「大声出さないでっ!」
ごきっ! きゅうっ…。
「ぐふっ…」
その人物…黒忍者コスチュームのボマ子は、素早い動きで浩之を捕まえると、得意のスリーパーホールドであっさりと落としてしまった。
「あ…ついやっちゃった…てへ」
ボマ子は可愛く笑う。またも自らの筋力で相手を負かした興奮なのか、分厚い大胸筋を自慢げにピクピクしてみせる。
浩之が起きてたら、てへじゃねえよお前、と言われるかもしれない。(そしてまたもボマ子の圧倒的腕力に蹂躙されるであろう)
「まあいいか、あなたには少しの間、人質になってもらうわよ…」
☆☆☆
ぶりんばんばん ぶりんばんばん ぶりんばんばんぼん~。
綾香の持っているスマホから、某マッ◯ュルな着信メロディが鳴る。
その相手は、マッ◯ュルを遥かに超える化け物であるが…
「あれ? 誰からだろ…ぽちっとな」
変な擬音を口にして、綾香は画面を耳に当てた。
「…もしもし?」
『ふっふっふ、来栖川綾香ね?』
どこかで聞いたような声。
「…只今、この電話ハ使ワレテオリマセン。番号ヲオ確カメノウエ…」
ハナをつまんでそう答える綾香。
『そんなもので騙されないわ』
「はいはい…で、ボマ子さん、何の用?」
綾香は、ふう、とひとつため息をつく。
『…用というのは他でもないわ。これから私の言う場所に来て欲しいのよ』
「ごめんなさい、私、そのケはないから…。女同士っていうのは不毛よ」
『いんや、女同士だって本当はとても良… あ、何の話をしとるかぁぁぁぁ!』
ブチ切れ声をあげるボマ子。
「あはは~ごめんなさい、でも行く気はないわよ」
『へえ…。あなたの大事な男を預かった…と言っても?』
ボソッとボマ子が呟いた言葉に、綾香は反応する。
「大事な…男? もしかして…」
少しうろたえたような綾香の声を聞いてボマ子は、
『そう、さっきまであなたが会ってた男のことよ。学校のそばにある公園に6時までに来なさい」
と嬉しそうに言った。
「ちょっと…どういうつもりよ!」
思わず声を荒げてしまう綾香。
「私はただ勝負して欲しいだけよ。来ないと、彼は好きにさせてもらうわよ』
「浩之はそこにいるの!?」
『ふふふ、声がさっきまでと違うわねぇ…。そう来なくちゃ!待ってるわよ』
ぷつっ…。
「待ちなさいっ!?」
しかし綾香の声に答えるのは、電話が切れた「ツー」という音だけであった。
☆☆☆
寺女のすぐ近くにある公園。
ここはこの時間帯、いつもは寺女の女生徒が話し込んでいたりする。
…しかし今日は、公園中心部の異様な光景のため、誰も近寄ろうとはしなかった。
黒いレオタード姿(覆面と網ストッキングは脱いた)の巨大筋肉女と、その横の木にプラーンとぶら下がっているミノムシのような男がそこにいた。
「あの…ボマ子さん」
ロープでぐるぐる巻きにされ、木の枝に吊るされた浩之が、傍らに立つボマ子に話しかけた。
キッと睨むボマ子。
「綾香のヤツなら来ないと思うぜ…」
ヒマなのか、浩之は自らプラーンプラーンと体を揺らしながら言った。
「いえ、来ます…彼女は必ず」
「どうかなぁ…」
首をかしげる浩之だったが、ボマ子は確信していた。
「来ますよ。私にはわかるんです…」
…6時。
「…ん?」
まず、浩之がそれに気が付いた。
…ざっざっざっ…。
人影が、ボマ子と浩之の方に歩いてくる。
「…来たわね」
それは、グローブをはめ、スカートの下にスパッツを着けた、完全に戦闘態勢の綾香であった。
「来たわよ」
ボソリ、と綾香が呟いた。
感情を殺してはいるが、語尾に怒りが感じられる。
「…待ってたわ。彼を助けたかったら、私を倒すことね」
ボマ子はそう言って、ファイティングポーズを取る。そして力を込めて全身の筋肉を威圧的に盛り上がらせる。
まるで、「来栖川綾香あなたを、この巨体のパワーで軽く叩き潰すわ」と言わんばかりに…
「…わかったわ」
綾香もそれに答え、スッと構えを取った。