カルデア職員としてできること   作:ユナイノ

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前日譚 邪竜百年戦争オルレアン

一日ほどの時間が経過した後の昼であろう時間。

現在のカルデアは外とのつながりが途絶えているため空間の中に浮いている状況となっている。

そのおかげか内部における昼夜の時間のあやふやなものとなった。

もちろん自分たちの主観における時間の経過は存在する。

空腹や寝たいといった本能も当たり前のように機能している。

ただ自分たち以外の世界が消えてしまったことによる相対的な時間の保証が失われてしまった。

つまりあの爆破事件から一日が経過した。

 

マーリンと契約を果たした俺は館内アナウンスによる呼び出しを受けて管制室にいるロマ二に元へと向かった。

その後はロマ二の言われた通りに藤丸立香とマシュへのコンタクトと存在証明、カルデアの復旧を進めることになった。

まあ特別なことはなかったし、ロマ二の指示通りに動いただけで終わった。

ここまでは自分が覚える通り原作と同じストーリが進んでいるはずだ。

 

正直なところ少し怖かった。

自分がマーリンの手を借りることで何かしらの変化が起きてしまったのではないかと考えていた。

けど、案外なんともないみたいだった。

一つの予想としては、原作にもあったことかもしれない。

自分が手助けに入らなくてもうまくいった、もしくはマーリンが手助けをしていた。

このどちらかに似たことが原作でも起こったのかもしれない。

 

今思うと、レフは万全を期してこの計画を行った。

そうである以上カルデアを再起不能な状況になるまで破壊できて隠蔽できる量を用意しているはず。

なのに原作でもここでも失敗した。

ならば理由としては一つだ、外部的な要因があって失敗した。

観測レンズシバを作成したほどの魔術師がカルデアの「観測」に失敗して爆破位置や状況を見過ごしたなんてことはあり得ない。

 

と、ここまで考えてきたが今はそんな思考の暇はない。

窮地は脱したとはいえ人員の不足と設備の破損による問題は常に起こっている。

例えば、存在証明のための人員の不足。

それらを正確なシフト表と複数の薬品を投与することによる身体強化で問題をごまかしているのが現状だ。

かくいう自分も考え事をしているが手の方は動かし続けている。

交代時間になれば存在証明を、他の時間には元倉庫整理係として物資の把握と分配を行っている。

ならば思考能力は過去のことではなく未来に向けるべきだ。

 

そして今、俺は一つの目的のために動いている。

それはストーリーを円滑に進めることだ。

こうやって転生のようなものをして実感したことがある。

あの旅はあまりにも幸運に恵まれていたものだと。

だからできる限りのことは自分も支援する必要がある。

 

「つまりこれを探していたんだ。」

 

そうつぶやきながら物資をあさる手を止め、チョーカー型の魔術礼装を手に取る。

物資リストを見ている中でこれからの旅に必須だと考えた一品だった。

とはいえ特別優れているわけではない。

これの効果はいたってシンプルであり、あくまでも人間の学習の代用にすぎないが今は有効だろう。

 

その効果は同時通訳だ。

 

正直なところ価値がないと思われていたのだろう。

箱の隅の方に雑多に追いやられていた。

無理もない、これはカルデア成立時の魔術と機械の融合を果たす際に作成されたもの。

よく言えば実験作、悪く言えばがらくた。

そんな代物だからだ。

 

しかしこれはよくできている。

魔術的につながりを用意してカルデアのデータベースに接続、そこから電子的に導かれた言語を翻訳して装着者に返すというものだ。

もちろん逸品ではないため魔力の使用量や翻訳までの速度はAIによる同時通訳の速度と現在は変わらない。

 

だが、特異点に出向くのであれば必須だ。

もちろん、何もしなくてもダヴィンチちゃんが作成していた記憶は確かにある。

けどこうやってその手間を減らす、もしくは作成を早めることで生まれる時間は必要だと思う。

 

軽快な音が自分のポケットから鳴る。

一度魔術礼装を置いて、スマホを探る。

 

「やあやあ、君の協力者のマーリンだよ♪用事があって連絡したんだ、少しいいかな?」

 

「マーリンさん、一日ほど時間が空いていましたが何か問題でもありましたか?」

 

「なんで、敬語を使うんだい?君と私の仲じゃないか、必要ないとも。そして、問題大ありだとも。」

「契約ときたら重要なことが一つあると思わないかい?」

 

「・・・そうか!申し訳ない、名前を言うのを忘れていた。」

 

「いいとも、緊急事態だったからね。私から問うとしよう。」

「私と協力の契約を結びたい魔術師の名前はいったいなんだい?」

 

眉間にしわが寄り、手の甲に筋が浮く。

いったい自分は誰なんだと。

元のプレイヤーなのか、それともカルデアの魔術師なのか。あえて考えいなかったことを考えさせられる。

 

今までの行動を思い出し、俺は一つの決意を固めた。

 

「俺は、俺はカルデアの魔術師、そしてブレンネン家の三男であり元プレイヤーのアイン・ブレンネンといいm、いや、アイン・ブレンネンだ。これから旅が終わるまでよろしく頼む。」

 

「もちろんだとも、私の協力者アイン。旅が終わるまでの間、この花の魔術師マーリンが君の隣で手助けを行おう。これからも人類を見守るために。」

 

なんの演出もなく、なんの魔力の高まりもなく、魔術的な要素もない。

だがこの時をもって、アイン・ブレンネンはカルデアに生きていることを実感した。




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