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「うーむ……参った」
アサシンのカード回収の翌日。事情はあのあと凛先輩から聞きはした。ただどうやってフォローしたものか悩むし、そもそも登校してからのイリヤの『話しかけないで』オーラが物凄い。取り付く島もないぞ。
「おい、レイ!」
「ん? あぁ、雀花か……というかそろい踏みだな」
自分の席で悩んでいると雀花に話しかけられる。さしてその後ろには美々、龍子、那奈亀がおり普段イリヤとよく絡んでいる面々がそろい踏みだった。というか龍子が涙目で那奈亀に慰められてるし一体何があったよ。
「ちくしょう、誰か俺にやさしくしてくれー!」
「はっはっはっ、このうじ虫め」
「いや、優しくしてやれよ、そこは」
よくよく聞いたら全然慰めてなかった。そう言う所あるよね那奈亀。
「龍子のことはどうでもよくて」
「おい」
「あの二人の事だよ。あの空気の悪さ、絶対何かあっただろ。大丈夫か?」
「本当に龍子を放置して話を進めるのか?」
本気か? 本気なんだな? なら別に良いが。
「イリヤちゃんと美遊さん、喧嘩でもしたの……?」
「ちょっとずつ美遊さんもうち解けてきた感じだったのに一体どうして……」
「ミユキチのやろー、そろそろデレ期かと思ったらツンに戻りやがって……! もつれか!? 痴情がもつれて爛れてるのか!?」
「それ意味分かって言ってる?」
うーむ女三人寄れば姦しいとは言うが4人も集まればそれは凄いことになったな。俺のところに来たくせに一切俺喋ってないもん。全部自分たちで話が回ってやがる。
「まぁ……喧嘩はしてないぞ。あぁ、喧嘩はしてない」
魔法少女の仕事でしくじって逃げ帰ったので顔を合わせ辛いだけだと思います。なんて言えないしなー……。もはや巻き込まれてしまったイリヤや美遊はしょうがないとしても……。
「? どうしたんだよ、ジッと見て」
「いや、イリヤと美遊はこんなにも心配してくれるクラスメイトがいて幸せ者だな、と思っただけ」
雀花たちを
「はぁ……」
「おいなんだその溜息は」
こっちが真剣に考えているというのに溜息つかれて『ダメだこいつ』みたいな顔されたんだが? んんー? 喧嘩か? 俺らが先に喧嘩するか? 負けんぞ、俺は。
「私たちはレイ君も、心配してるんだよ」
「……」
美々がそう言ってくる。
「そうだぞー、イリヤやミユキチもだがレイもなんかあっただろー!? 何があったんだ、一体何があったんだー! 俺にも教えろーい!」
「少し前からかな? なんかレイ君もそのー、ピリピリしてる? トゲトゲしてる? みたいな感じがしてて。こうやって話しかけるといつも通りなんだけどね」
……マジかぁ、もしかしたらカード回収で魔術使いとしてのスイッチが入ってそのままだったとかなのかなぁ。うーむ、まだまだ精進がたりないということだろうか。
「私たちに話せないことならそれでもいい。でも、あんま、その……心配させんなよ!」
雀花がそう言い放ってこちらにビシッと指をさす。口は悪い時もあるし、趣味が少し変わってるがこの変わり者だらけのグループをうまくまとめている誰よりも気遣い上手な雀花のことだ、かなり心配させてしまったかもしれない。丁度目の前にあった雀花の指を握る。
「ピィッ///!」
「それは悪かったよ。……イリヤ達のほうは時間で解決するしかないけど、俺の方は大丈夫。今晩には……全部終わることだから」
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「さあ、覚悟は良いわね。ラストバトル……始めるわよ!」
《半径3メートルで次元反射路形成。鏡界回廊、一部反転します》
凛先輩の掛け声とともにサファイアが魔法陣が輝きだす。……イリヤは来なかったか。まぁ、夕方凛先輩が辞表受け取ったって言ってたし当たり前か。そしてうーん、相変わらずこの瞬間は酔いそうだ。ぐるりと世界が回り、反転した。
《
「狭いわね」
「歪みが減ってきている証拠ですわ」
「これは確実に接近戦を強いられますね」
いや、前回も狭かったけど今回も狭いな! カード回収が順調なことの表れだけど面積がビル、ワンフロア分ってマジかよ。ほぼ逃げ場なんてないな……。救いなのは上下にはかなり余裕がある事だろう。最悪対象を下に誘導してビルごと爆破で押しつぶすことも視野に入れておこう。
「■■■■■■■■■■!!」
「うっさ!」
急に大声、いやもはや咆哮が聞こえてきて耳を塞ぐ。音が収まった後、咆哮の聞こえた方向を見る。そこにいたのは筋肉モリモリマッチョマンがいた。肌は黒く、身長は2メートルぐらいか髪は無造作に伸ばされて、服装も腕輪と足輪、金属板で補強された腰巻きのみ……。なんだ野蛮人か!? ヴァイキングかギリシャ系の英霊なのか!? あれと接近戦しろってのかよ!
「何あれ……」
「冗談でしょう!」
英霊が大きくジャンプしてその拳を凛先輩とルヴィアさん目掛けて振り下ろそうとする。……そうはさせない!
「シャァッ!」
「■■■!」
剣を構成して振り下ろされる拳に対してかち上げるように振るう。激突によって響く甲高い音。はぁ!? なんだその拳、金属並みに硬いってこと!? だけど……一つ分かった。
「力なら……僕が上みたいですね、野蛮人!」
剣を目一杯振り上げて英霊の手をはじき返すことに成功する。これでボディががら空きだ!
「美遊!」
「
すかさず美遊が攻撃を加えてがら空きになったボディに一撃を叩き込む。ん? あ――
「■■■■■■!」
「ごへっ!?」
全然ダメージを受けてない! というか、力もあるのにメッチャ早くない? 英霊は美遊の攻撃を物ともせず再び拳を振りぬいてきた。それも今度は俺に防がれないように瞬時に俺の背後に回ってから。英霊の速度に対応できなかった俺は背中をぶん殴られて吹き飛ばされる。……背中殴られたのに衝撃が全身に伝播して全身骨折したんだ?
「レイ!」
「大丈夫、再生してます!」
普通ならこれで終わっていただろうが残念。俺は再生するんでね。……なんか再生速度が上がってる気がする。
「なんて出鱈目な腕力……!」
《絶対に直撃は避けてください。物理保護でも守り切れません》
「避けろと言っても……フィールドが狭すぎる」
サファイアの助言に美遊は苦い顔をする。
「逃げ場のないこの場ではあの突進力は脅威ですわ……!」
「せめて足止め出来ないの!?」
《無理です……! 魔力砲が利いてる様子がありません! すべて体の表面でかき消されてるような……》
うーん、セイバーもそうだったけど魔力砲が利かないってことはもう強敵確定何だよな……。歩きながら他の三人の所に合流する。
「再生祭りを覚悟しておいた方が良さそうですね……」
「対魔力よりも高度な守り……」
「まさか……! 宝具!?」
《間違いないでしょう。恐らくは一定ランクに達しない全ての攻撃を無効化する鋼の肉体。それが敵の宝具です!》
一定の攻撃を無効化、鋼の肉体……。あ!
「なら踵とか狙ってみます?」
「なんで?」
俺の提案に、美遊が質問してくる。
「いや、図書室でちょっと昔の神話とか調べたんですよ。アキレウスって踵以外無敵って書いてあったんでもしかしたらアイツアキレウスだったりしないかなって。恰好もなんかギリシャっぽくない?」
「……それにかけてみるしかない」
「問題はあのスピードとパワーを攻略して踵を攻撃しなきゃいけないことだな」
「……それでも!」
美遊はサファイアを振り上げて高威力の魔力砲を照射で放つ。英霊はそれを片手で軽々と防ぐ。しかし顔の前で魔力砲が炸裂することで視界は奪えた!
「レイ!」
「分かってる!」
美遊の攻撃に合わせて走り出し、英霊の背後に回る。ヴァリアブル・スライサー起動! 一気に切り抜ける! 狙うは踵、というか足首からした全部ドロドロにしてやらァ! 思いっきり剣で切り捨てる!
「切った!」
「
「
俺が切断を伝えると美遊は照射を辞めて背後に回る。俺は背後から側面に移動してガンドを撃ち込み、少しでも行動を鈍らせて、目くらましは凛先輩とルヴィアさんが引き継ぐ。
「『ランサー』
しゃっぁ! 流石必中の槍! 全然外れねぇぜ! アキレウスの伝承なら踵と心臓のダブルコンボで終わり! 踵をやられて不死性が無くなったし、心臓貫抜かれたし、大体はこれで死ぬだろ俺以外。
「よくやりましたわ、美遊」
槍だけにね。ともかくこれで終わりっぽい。一瞬冷や冷やする場面はあったけど、どうにか終わった。……これでカード回収はお終い。凛先輩とルヴィアさんはロンドンに帰るし、毎晩の非日常もお終い。
……すコシだけモッタイない気ガスるのはナゼダロウ。ホントはもット暴れタカッタ、とか? やだやだ怪獣でもあるまいし。
「■■■■■■■■■■!!」
「まだ動くのか!?」
「美遊!」
急に復活したと思ったら暴れ出して背中にいた美遊を吹き飛ばしやがった! まずい、壁に叩きつけられた美遊が結構しんどそうだぞ! 二人と共に美遊の元に駆けつける。
「くっそ何だあれ!」
凛先輩とルヴィアさんが美遊の容態を確認している間俺は再び剣を構える。……視線の先には体から蒸気を吹き出して体の傷がドンドン癒えていく英霊。
「美遊!!」
「カっ……! カハッ……」
「なんで……確かに心臓を貫いたのに!」
「二つ、分かったことがあります」
まかとは思ったがそうとしか思えない。恐ろしい真実を凛先輩に伝える。
「一つ、アイツはアキレウスじゃない。二つ、アイツは僕と同じ……再生、蘇生能力を持ち合わせてる」
「……! 撤退よ、あんな奴じゃ勝ち目がない! 一度作戦を立て直すわ! ルヴィア、美遊を抱えて! レイ、ここ切り裂いて!」
「了解ですわ」
「はい!」
ヴァリアブル・スライサーで下の階へ続く扉を叩き切り、急いでその中に飛び込む。障害物をあの英霊が通れない程度に切り裂いてドンドン下へと逃げていく。
「ビル内まで空間が続いていて助かったわ……。あの図体ならここまでは入ってこられないはずよ!」
「あれだけの力に蘇生能力だなんて滅茶苦茶も良いところですわ! 貴方の親戚でなくて、レイ!?」
「お生憎様、親族には縁がなくてですね!」
つーか、あんた俺が孤児院出身って前回知っただろうが! いやだよ、あんな親!
「ここで良いわ、サファイア!!」
《はい。限定次元反射路形成! 鏡界回廊、一部反転!》
流石に非常事態だと弁えているのか本来のマスターである美遊ではなく凛先輩の命令で動くサファイア。地面に虹色の魔法陣が描かれ始める。
……美遊は怪我で動けない。ルヴィアさんは美遊の面倒を見ている。凛先輩は周囲を警戒している。誰もこちらを見ていない。なら、ここしかない。
《
「何してますの、レイ!」
「え?」
ジャンプの瞬間、魔法陣から離れる。流石にサファイアとルヴィアさんが気が付いて声をかけてくるがもう遅い。遅れて凛先輩が目を向ける頃にはジャンプがなされていて三人の姿が書き消える。
「……これで独りぼっちか。……おーおー、派手にやりなさる」
上階から聞こえてくる破壊音。どう考えてもアイツだろう。
「さて……どれだけ通じてくれるかな」
少しだけ前から考えていたことがある。俺は怪獣の力をもって生まれた。あのデストロイアの力を持って。正直な話もっと強くても良いと思う。でもカード回収における俺の戦績はなんだか悲惨な感じで正直、力を活かしきれてない感じがしてならない。それはなぜだろう? 考えたとき、一つの憶測が浮かんできた。
「もとのデストロイアの事を考えると僕は少々、お行儀がよすぎる。もっと悪辣に、もっと残酷に
戦いを愉しめ、進化に歓喜しろ、相手の骸に期待しろ。何かが自分の中で動き始める。パチリと歯車があってすべてが滑らかに動き出す。
天井が崩壊して、あの英霊が目の前に現れる。……おや?
「なんだか今までと違って僅かに理性を感じるな……。おいおい一体その目は何だ? まるで化け物を見るような目で『人様』を見るんじゃあない。お前も似たようなものだろう……大英雄」
さァ、互いに潰して、直しテ、壊シて、癒シテ、殺シテ、ヨミガエロウ。
ワタシガモットシンカデキルヨウニ。
ギリまだ人のレイ君(色々漏れ出してる)VS生前相手した連中と似た気配を感じて警戒度マックスのヘラクレスさん。
因みにレイ君は雀花の趣味を知っており理解は示しており、時たま男性体のモデルになってあげたりしている。そのため火雀とも知り合いである。
「上裸で座ったりポーズ取るだけでお小遣い貰えるし、割の良いバイトだよ」とはレイ君談。