プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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怪獣として、人として

鏡面界

────────────────────────―――――――――

 

 

 響く轟音、割れるガラス。いくつもの衝突音を響かせて壁を突き破り、地面に転がる野蛮人。

 

「元から力だけは圧倒していたが、成程ここまで差が開くとは……()も驚きだ……。それで、どうだ? 自分の三分の一程度の大きさのクソガキに転がされる気分は? あぁ、そう言えばお前は言葉も話せなかったんだなぁ、野蛮人?」

 

 よく分からないがとても気分が良い。いつもより自然と口数が多くなる。まあまあ、別に構わんだろう。なにせ圧倒的にこの私が優位なのだ。少しぐらいお喋りで場を濁してやらないと余りにパッパと片付いてしまう。それではつまらんだろう。

 

「■■■■■■!!」

「ハハハハッ! 随分苦しそうじゃないか、野蛮人! それが全力か? おいおいもっと私を楽しませろ、仮にも英雄だろう?」

 

 話しかけながら近づくと起き上がりながら苦し紛れで振るわれた拳をそのまま受ける。もはや()()()()()()()。所詮人の身ではこの程度が限界か?

 

「そら、今度はこちらからくれてやろう! ありがたく受け取ると良い」

「■■■■■■■■■!」

 

 お返しにヴァリアブル・スライサーを胸に突き刺してやる。おいおい抵抗するんじゃない、折角の私からの贈り物だぞ、感謝してほしいぐらいだ。胸に突き刺した剣は厚い野蛮人の身体を貫通して背中側まで突き抜けた。

 

「ほぅらおまけだ」

 

 そのまま剣を切り上げて心臓から左肩までぱっくりと切り裂く。野蛮人の苦悶の絶叫とおびただしい量の血が噴き出る。

 

「あっははは、死んだ! 死んだ! あの羽虫(美遊)に殺された回数も合わせればもう4回は死んでるぞ。ほらもう終わりか? また生き返るのか?」

 

 生き返るとしても若干のタイムラグがあるので暇つぶしにそのあたりに転がっていたオフィスチェアにに腰掛けて先ほど切り裂いた時に浴びた野蛮人の血を舐めとっておく。……あんまり美味しくないな。絶叫も微妙な音だったし、血も美味くない。そもそも大したエネルギーも吸い取れないとか、この野蛮人がダメなのか、カードと言うものがダメなのか判別できんな……。

 

「おい! 復活するならさっさとしろ! 私が暇だろうが!」

 

 いつまでたっても復活しない愚図にいら立って私自ら野蛮人に近づいてやって蹴りを叩き込んで活を入れてやる。まったく、もう―――お?

 

 

■■■■■■■■■■■(ナインライブス)ーーーー!!」

「やっと復活したかと思えば人の足を掴んで振り回すとはいったい全体どうした? まさか私を武器として振るうとか言ってくれるなよ!」

 

 なんか今コイツ喋らなかったか? ホントに理性ないんだよな? というかあががががが! なにが起きているかわからないけどメッチャ振り回されて、色々なところに叩きつけられて、時にはコイツ自身の手で殴られてなんかもうひっちゃかめっちゃかにされてる! なんだなんだ、俺が復活できなくなるまで徹底的に塵殺するつもりか? 

 

「あばばばばっ、面白い! 殺してみると良い!」

 

 流石にこの攻撃は耐え切れないか……。どんどん体が削られて行ってる。ふふふ、良い。凄く良い。殺せるか、お前は私を殺せるのか? とてもとても楽しみだ。

 

「あ、アハハハ、アはは――ハハハはハハははハ―――ハハハはははッっ!」

 

 

 

 どれくらい時間がたっただろう。この野蛮人は確かに再生し続ける私の身体を粉微塵に変えることに成功した。野蛮人の手にはもう何も握られておらず、辺りに血肉が飛び散っているだけだった。普通なら確かにこれで終わっていた。そう、普通なら。

 

「■■■■■■■■!」

 

 勘違いして勝利の雄たけびを上げている愚か者に襲い掛かるように私は『私』に命令する。瞬間、どこからともなく現れて野蛮人の身体に群がるクモのような6本の脚を持ち、長い胴体の1メートル程度の甲殻類。デストロイアの幼体たちだ。手足に噛みつき、上に伸し掛かり、ミクロオキシゲンを吹きかける。

 

「■■■■■!?」

 

 驚きつつもすぐさま引きはがそうと暴れ回る野蛮人。しかし数が数だ、簡単には捌き切れない。無数の幼体に群がられて藻掻いている間に数匹の幼体を集めて私を再構成する。

 

「おや、この姿……。いや、別にこれでも私は構わないが」

 

 擬獣化形態に戻ったのだが、背中に翼はなく、尻尾もない。代わりに背中から槍のように鋭い触手が二本、尻尾のあった場所からは二本の鋏つきの触手が生えていた。……デストロイア、集合体だなこの姿は。

 

「おめでとう、野蛮人。お前は素晴らしい。何せこの私を完全体から集合体まで巻き戻すことが出来たんだから。まぁ、恐らく? 今お前に群がっている幼体と再び合体すれば完全体に戻ることは出来るだろうけど。単純なダメージでここまで引き戻されるとは思わなかった。圧倒的に私が優れていて? お前がどれだけ劣っていようと慢心は良くない、と言うことだな、勉強になったよ。まァ? さっきのがお前の切り札だろう? それも効かないことが証明された。あとはゆっくり嬲らせてもらうさ。存分に楽しませろ、人間」

 

 刺殺に絞殺、溶殺……色々試したい殺し方があるんだ。存分に生き返ってくれよ……。

 

────────────────────────―――――――――

 

 

「ふんふ~ん♪ 流石に私とは違って回数制限があったみたいだな? もはや蹴っても反応が無くなった。ふふふ。お前、本当に人間か? まさか、まさかただの人が1()2()()も復活するなんて驚いた」

 

 私は英霊の周りに群がっていた幼体を解散させ自身の身体に統合する。するとみるみると私の身体は変化していき、完全体へと復活する。

 

「ふふふ。私、完全復活! ……ここらへんにしておくか」

 

 これ以上傷つける必要もないし、余りに気分が良くなりすぎて戻ってこれなくなりそうだ。そう考えて()は思考をリセットする。……うん。これで良い。別に考え方を変えただけで身体的には何も変わっていないはずなのにやっぱり少しだけ力が落ちる気がする。やっぱり怪獣の力を振るうにはそれらしく振舞う方が良いのだろうか。でもなぁ、あんまり続けると人として何かを踏み外しそうだし。

 

「そんなことをしたら―――」

 

 

『私たちはレイ君も、心配してるんだよ』

『私たちに話せないことならそれでもいい。でも、あんま、その……心配させんなよ!』

 

 大切な友人たちの言葉を思い出す。いきなり知らない世界で目が覚めて、両親も友達も好きな映画さえも失った。そんな気が狂いそうな中でできた俺を心配してくれた友達。

 

「―――友達に顔向けできなくなっちゃうから」

 

 うん。やっぱりこのモードは出来るだけ使わない方向で! 多少弱くなったって大丈夫。凛先輩やルヴィアさん。それに美遊もいるんだし。そもそもカード回収ももう終わり! またボチボチ魔術を研究して過ごせばいいさ、そのうち元の世界に帰る魔術とか見つかるかもしれないし!

 

「にしても……どうしよっかなぁ。俺一人だとジャンプ出来ないし、鏡面界からどうやって脱出しよう? ……このまま待ってたら元の世界にはじき出されるとかないかなぁ? ないよなぁ。 ……サファイアが出来るだけ早く迎えに来てくれることを祈るか」

 

 というか、あの時凛先輩のいうことを聞いたぐらいだし、すぐ戻ってこれるのでは? 通常界で何かがあった? それで迎えに来れないか……凛先輩が置いて行ったか。

 

「別に構わないんだけど凛先輩ホントに俺の再生能力を当てにしてるからなぁ……。問題ないとか思われてたらほんとに置いてったかもしれん。あー、どうし……よ?」

 

 顎に手を当てながら考えているとガシリと何かに頭を掴まれる。嘘だと思いながらそちらに目線を向けると全身から蒸気を噴出させた英霊が経っていた。

 

「じゅ、1()3()()()の復活……!? う、うそだろ―――がふぁッ!」

 

 俺が驚愕の声を上げると同時に英霊が俺をぶん投げる。いくつもの壁をぶち抜いて全身の骨を折りながらビルの端から端まで吹き飛ばされる。し、信じられない……。あいつ本当にただの英霊か? 

 

「■■■■■■■■!」

「もう、勘弁してくれ……!」

 

 再生しながらヨロヨロと立ち上がると英霊が大声を上げながらこちらに突っ込んでくるのが見える。

 

「……クソが」

 

 あんまりしないってきめたばっかりなのにまた思考を怪獣よりにしなきゃなのかと思わず舌打ちをする。

 

「■■■■■■■■■■■■■!」

「やっーーー!」

「ハァッ!」

 

 突然、空から舞い降りたピンクと青の影が英霊を切り裂く。あまり深手には見えないがそれでも突然の攻撃に英霊は動きを止めた。

 

Zeichen(サイン)!」

Anfang(セット)!」

「「獣縛の六枷(グレイプニル)!」」

 

 動きを止めた英霊に金と赤の影が色とりどりの宝石を投げつけ動きを封じた。

 

「通った……! 瞬間契約レベルの魔術なら通用しますわ!」

「ふふふ、レイの礼装のお陰でため込めた宝石たちの使いどころね!」

 

 な、なんで……。いや、助かったけども!

 

「凛先輩、ルヴィアさん! 美遊に……イリヤも! どうして!?」

 

 動きを封じたから取り合えずは大丈夫なのか俺の周りに集まった皆。余りの衝撃に呆けていると凛先輩が無言でツカツカと寄ってきた。

 

「凛先輩……」

「こぉんの……バカ!」

「痛った!?」

 

 思いっきり頭をはたかれる。そしてそのあと抱きしめられた。

 

「……無事でよかったわ。あまり先輩を心配させるんじゃないわよ」

「……すいませんでした」

「反省してる?」

「まぁ、はい」

「……今はそれで許してあげるわ」

 

 凛先輩はそう言って俺を離した。今度はルヴィアさんが俺の前へとやってくる。

 

「言いたいことは殆ど遠坂凛が言ってしまいましたから一言だけ。よく持ちこたえましたわ」

「えぇ、頑張りましたから」

 

 そう言ってルヴィアさんは頭を一撫でしてくれた。そうして最後にやって来たのはイリヤと美遊。なんか仲良くなってない? いや、べつに良い事なんだけど、仲直りまで速すぎでしょ。昼間『イリヤ達のほうは時間で解決するしかないけど、俺の方は大丈夫』とか自信満々で話した俺がマヌケすぎるでしょ。

 

「イリヤは大丈夫なのか?」

「うん、大丈夫。それに友達を見捨てたままじゃ、前へ進めないから!」

「色々なことがあった。辛いことも……楽しいことも。それら全てをなかったことには出来ない、したくない」

 

 そう言ってがっちりと手を繋ぐイリヤと美遊。……うーん、のろけられてる?

 

「後は私たちに任せてレイ」

「二人で、終わらせてくる。そして」

「「前に進むから」」

「お、おう。頑張れ?」

 

 多分似たような流れを通常界でしてたんだろうな。それで来るのが遅くなったのか……? よく分からないけどまあ、二人が仲良くなったならそれで良いか。ヨシ!

 

「「並列限定展開(パラレルインクルード)!」」

 

 イリヤと美遊が一枚のクラスカードを挟み込むようにステッキを重ねるとまるで円を描くように9本の剣が召喚される。え、あ、なんか物凄く寒気がする。あの剣全部、アレか!? エクスカリバー(若干トラウマ)なのか!? えぇ……なんか魔法ってスゴ。

 

「私たちなら二人なら……」

「何でも出来るんだからー!」

 

 9本ものエクスカリバーが一斉に英霊に向かって放たれる。確かにそいつ、スゲーしぶといし強かったけど……なにもそこまで……あー、あーあー。

 

 

通常界

────────────────────────―――――――――

 

 

 あのあと英霊は成すすべもなく、エクスカリバーの光に呑まれて消え去り、カードを回収して通常界に戻ってきましたとさ。……なっとくいかねぇ!!

 

「アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、セイバー、アサシン、そしてバーサーカー。全てのカードを回収完了るこれでコンプリートよ」

 

 少し、えぇ、少しだけ? もやもやとした感情を残しつつも、無事カード回収の任務は終了し、凛先輩が手に入ったカードを確認している。うん、ちゃんと7枚ある。

 

「イリヤ、美遊、レイ。……勝手に巻き込んでおいてなんだけどあなた達がいてくれてよかった。私たちだけじゃ多分勝てなかったと思う。最後まで戦ってくれてありがとう」

「凛先輩が真っ当に心配したり、感謝すると調子狂いますね」

「ぶっ飛ばすわよバカ後輩」

 

 おー、こわこわ。

 

「ともかく、このカードは私がロンドンに―――ん?」

「あ」

 

 凛先輩の手からカードが抜きとられる。

 

「ホーーーッホッホッホッ! 最後の最後に油断しましたわね! ご安心なさい! カードは全て私が大師父の元に届けて差し上げますわーっ!」

「んなあああっ!? 待ちなさい、このハイエナがぁ!」

 

 カードを手に突然現れたヘリに飛び乗るルヴィアさん。それに怒り狂った凛先輩が身体強化の魔術を使ってビルからビルへ飛び移りヘリを追いかけながら消えていった。うん、取り合えず……。

 

「帰ろっか」

「「うん」」

 

 そうして三人そろって帰路へと着いたのだった。

 

帰り道

────────────────────────―――――――――

 

 

 イリヤと美遊と別れた後の帰り道。孤児院は町の外れにあるためにちょっとばかり鬱蒼とした森を通る必要があるんだけど……誰かいる。道の脇にある木に寄りかかってタバコをふかしている男が一人。

 

「この道の先には孤児院しかありませんがごようでしょうか?」

「いや、様があるのは君だけさ」

「……げっ」

「その顔じゃ、僕がこの場にいる理由に覚えがあるみたいだね」

 

 木の陰から現れたのは真っ黒のスーツに真っ黒コート。熱くないのかな? 多分人除けの結界とか使ってるんだろうけどガッツリ銃を手に持ってるし。

 

「一応、自己紹介しておくよ。僕は衛宮切嗣、イリヤの父親だ。何年ぶりかな沖繫レイくん」

 

 




俺←本来のレイ君の口調
僕←凛や友達の前での口調
私←???の口調
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