ぷーりん「我ら!」
魔性菩薩「三人!」
根源少女「揃って!」
「「「レイくん見守り隊!」」」
レイ君「……」
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俺が熱で寝込むとか言う訳の分からん事態に陥った日から一か月が経とうとしていた。あれ以降病気や気だるさは感じないからやっぱあの日なにかあったよな……。起源弾くらった後の再生で何か失敗でもしたのかな……。おのれ衛宮切嗣……。 衛宮切嗣といえばあの人に言われた『正体探し』は少しばかり難航している……。なんというか説明し辛いが調べることを魂レベルで拒否してるというか、無意識のうちに避けようとしている自分がいる。
「せっかく調べようとしても何故だか異様に気が散るんだよな……」
そうそう、こうやってなんでもないのに上を見上げちゃって考え込むこともできな―――。
「あの二人、何やってるんだ……」
見上げた空には見知った顔の魔法少女が二名、空を飛んでいた。恐らく遅刻しそうだからとかそういう理由なんだろうけど……。良いのか、それで良いのか、ステッキたちよ……。
色々と言いたいことはあるがああやって飛んでいる以上別に良いのだろう。
「さて、俺も急ぐか……」
予鈴まであまり時間もないはずだ。駆け足、駆け足ー!
「海いこーぜ! うみーーーー!」
「ん? 何の話?」
今日も今日とて龍子が騒がしい。それはそれとして今の海は流石にまだ早くないか?
「夏休みの予定だよ。まだ6月だってのにこいつテンション上がっちゃってさー」
「あぁ、べつに今日行こうという話じゃなかったのか」
雀花が補足をしてくれる、ありがたい。俺だけではどうやっても龍子の真意を理解しきることは出来ないからな。
「海? 海に行って何をするの?」
「何って泳ぐに決まってんだろが! あ、スク水は禁止な! 各自最高にエロい水着持参で! うっひゃあぁぁぁぁあ!」
「落ち着け」
「おぐほっ」
お、綺麗に決まった。那奈亀の強烈な一撃がテンションを上げ過ぎた龍子のボディに直撃する。そうして沈黙した龍子は床に転がされる。なぁ……毎回思うんだけど龍子の扱い流石に雑過ぎないか?
「美遊……もしかして海いったことないとか?」
「……うん」
あ、スルーですか。そうですか。……普段ツッコミだったイリヤですら既に龍子の扱いになんとも思っていないのを見るに異常なのは俺の方なのかもしれない。やっぱり俺が普通の人間じゃないってこういうことなのか……。いや、絶対そういう意味ではないと分かってるけどね。
「こんなに近いのに未だ海に行ったことがないって、少しもったいない気もするな」
「そうそう、だから美遊さんも一緒に行こ!」
「え」
「あんたのことだから泳ぎも早いんだろ? レイの言う通りもったいないよ!」
「あ」
俺はふと思ったことを言ってみたがそこへ美々と雀花の援護が入り美遊にズイズイと踏み込んでいく。この一か月で雀花たちも美遊の扱いをある程度理解したようだ。そーそー、美遊には多少強引なくらいがちょうど良いんだ。……ならどうして龍子は駄目なんだぅな。龍子だからか。
「い、イリヤが行くなら……」
「うん! みんなで行こうね!」
そして皆で海に行く約束をしたのだった。さてそろそろ藤村先生来るだろうし解散、解散っと。
うん、得に何事もなく全ての授業が終わり、掃除も終わった。……こうして全員で帰る事なんて久々じゃないか?
「あ、そうそう朝話した海の事だけど美遊って水着持ってる?」
「学校指定のなら……」
「それじゃダメだってー」
イリヤと美遊のそんな会話が聞こえてくる。学校指定ってただのスク水だったよな。あれ地味だし海を楽しむには向いてないだろ。
「そ、そそ、そういえばレイ。お前はどんな水着が好みなんだ?」
「水着の好みって……そもそも男はどれも大差ないでしょ」
雀花も何言ってるんだが、ヘタしたら同人誌書いてる都合上男の水着の種類についても君の方が俺よりも詳しい可能性があるというのに……。
「そうじゃなくて……女子の水着の話だよ。お前も男だろうレイ。み、見て見たい水着とかあるんじゃないか?」
「あー、なるほど……」
女子のね……。んー……そう言われると困るな。水着の種類とか分からないのもあるけど、そもそも綺麗な子が普段と違う恰好してたらそれだけで結構ドキドキするし……。この場にいる子全員可愛いからなに着ても似合いそうな気がする。だから具体的に見たい水着とか言われても……。ん? この音―――。
「あ、あまりに龍子の言うようなエロエロなのはこ、困るけどレイには普段から協力してもらってるし? 作画資料にもなるから、ど、どうしても、どーしてもレイが着てほしいっていうなら特別に? レイが好きな水着を着てやっても―――「雀花下がって」―――れ、レイ!?」
少しだけ急ぎ足になって車道に跳び出しそうになっていた雀花の腕を引っ張って抱き寄せる。するとすぐにカーブの先から長いリムジンがやってきて歩道ギリギリの所に停車する。この車……。
「へ」
「あっ」
「知ってた」
停車した車の中から手が伸びてきてイリヤと美遊が車の中に引きずり込まれる。車の中にいたのは凛先輩とルヴィアさん。凛先輩はイリヤさんを引っ張り込みながら顎で『お前も乗れ』と指示を出してくる。ま、予想はしてましたけど。 俺は車の急接近で驚いてしまったのか腰の抜けた雀花を那奈亀に寄りかからせて車の中に自分から飛び乗った。俺たちが入り込むと同時にリムジンは急発進してどこかへ向かう。
「急で悪いけど……仕事よ」
そうして改まった態度で仕事内容を解説する凛先輩とルヴィアさん。……この二人、カード回収の任務を終了したにもかかわらず最後の最後まで足の引っ張り合いをした結果、日本で協調性、いわゆる『和』を学んで来いと日本在留の期間を延長されたそうな。……はぁ、しっかりしてくださいよ凛先輩。
そして肝心の仕事内容は『カード回収したのに地脈がもとに戻ってないじゃん! つまり地脈が狭くなっちゃったか、栓が出来ちゃったかだよね。大量の魔力を一気に流して地脈を拡張しよう!』ってことらしい。
「それで無限の魔力を持ってる魔法少女たちが必要なのはともかくどうして僕まで?」
「レイ、あんたも無限ではないにしろ持ってる魔力量は相当な物よ。そういう意味でもあんたは普通の
あ、え。
「……」
「レイ?」
「あ、はい。大丈夫です。凛先輩」
凛先輩も心の底ではそう思ってたんだ……そうなんだ。そのあと二人が向かう場所やら行う儀式の説明をしていたような気がするけど耳に上手く入ってこなかった。
────────────────────────―――――――――
「何でこんな所に致死性トラップがー!? 沈むッ 沈むぅぅぅぅぅぅ!!」
「だ、大丈夫ですかルヴィアさん!?」
「あだだだだだだ!? 何で髪を引っ張るんですの、美遊ーッ!?」
なんか二人が沈んでる。……なんでこうなってるんだっけ?
「レイ! レイ!? ちょ、見てないで手伝ってよ!?」
「え?」
「なんとかしないと二人とも底なし沼に沈んじゃうよ!」
「あ、そっか……うん。手伝う」
ダメ、ダメだ。今は仕事に集中しないと……。このあとどうにかして二人を引っ張り上げた。
「うわー、すごい大空洞……。こんなところがあったんだ」
目の前の景色にイリヤが感心の声を上げる。確かに神秘的な景色だ。ただ、まぁ……。
「道中、危うく死に掛けたけどね」
《開始早々、最高におマヌケなデッドエンドになる所でしたねー》
振り向けば死屍累々というか、なんとも憐れな光景があるんだけども。
「うぅ……私の縦ロールがゆるふわカールに……」
《愛され系ですね》
「すみません……」
なんというか、あれだよね。美遊って一見クールだけどやっぱどこかズレてるよね。まさかルヴィアさんの髪を引っ張って引き上げようとするとは思わなかった。……比較的楽な仕事のはずだったのにどうしてここまで疲れ切ってるんだ俺達。……まだ儀式が始まってすらいないのに。
「やれやれ……ちゃっちゃっと終わらせて帰るわよ」
そう凛先輩が言うと背負っていた弓道の袋から大きな枝のようなモノを取り出し地面に投げつける。……凛先輩は弓道部では無かったはずだが、誰からか借りたんだろうか。投げつけられた木の枝は地面に垂直に突き刺さり地面には自動的に魔法陣が描かれ始める。
「地礼針設置完了。……三人とも、お願い」
「はい」
「わかりました」
「始めますよ」
凛先輩の合図で魔法少女二人と俺は地礼針に近づいて魔力を流し始める。
「魔力注入開始! 最大出力!」
「充填率20」
ここが地脈の源……。
「40……いけるわ……出力そのまま維持」
確かに魔力の高まりを感じる。
「60……75……90……」
ここに
「100……110」
「115……120!」
そうすれば
「120……」
「今度こそ私こそが『怪獣王』に……」
私は自身の一部を他の人間どもにバレないよう魔力の中に忍び込ませた。
「
次の瞬間地礼針は光り輝き私の一部を乗せた魔力をこの地に解き放った。
「……これで終わり?」
「ふぅ……一応はね。効果のほどはまた改めて観測しなきゃいけないけど……」
イリヤの言葉に凛先輩はそう答える。うーん、途中からボーっとしてたし、やっぱり
「作戦は終了。早く帰りますわよ。こんな地の底長居するところでは……」
「―――! ちょっとまってこれは……!」
「あー、なにかやっちゃいました?」
地面が揺れ始めて地鳴りも聞こえる。まっずいかもこれ。次の瞬間、地面が地礼針を中心にひび割れる。
「きゃあ!?」
「ノックバック!? うそ……出力は十分だったはずよ!」
「不味い……来ますわ! 逆流―――!」
地面は崩壊し、先ほど自分たちが流し込んだ魔力が逆流してくる。
「っ!! 何を考えて!?」
分からない、なんで、なんで俺はあんなことを考えた!? 凛先輩がルヴィアさんが、イリヤが、美遊が! 死んで良い? 死んでほしい? なん゛でそんなこと考えたんだよ俺は!? 分からない、気持ち悪い……。体の動きが遅い、間に合わない。嫌だ、皆
「クラスカード『アーチャー』
俺が間に合わないと絶望した時、イリヤが既に動いていた。イリヤはアーチャーのカードを使って変身して見た事もない光の盾を展開して全ての岩を防いでいた。
「光の盾……!?」
「イリヤ……!」
驚愕する面々だが、あの盾なにか様子が変。多分長持ちしな――消えやがった! 大きな岩は殆ど防いだがそれでも小ぶりな岩が降り注ぎ当たりは土煙にまかれた……。
《大丈夫ですか みなさーん》
「げほっ、げほっ……何だったのよ今のは!?」
少し離れた場所でルと凛先輩の声が聞こえる。
「美遊! 無事ですのびっくり? はい大丈夫で―――いや、ダメそうです! ルヴィアさんが!」
うーむ、美遊とルヴィアさんも無事ではあるらしい。美遊の珍しい声的にルヴィアさんは少し怪我したかもしれないが。
「イリヤ、レイ! どこ!?」
「あー、凛先輩。僕とイリヤはこっちにいます! 僕は怪我はありません。イリヤはー、その……無事? なんですかね、これ?」
いやー、どう説明したらいいんだ。というかこんなことあるんだ。……えー。
「ちょっとどういうことよレイ!? イリヤに何があっ……ッ!? はぁ、何それ!?」
あぁね凛先輩が来てくれた。いや、何って言われても……ですねえ……?
「これは、どういう……?」
「「え?」」
イリヤがイリヤを見つめてました。……単一生殖?
「いやー……ないでしょ、これは……」