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うん、なんというか……凄まじいものを朝から見た。
「大した怪我はないわ。擦り傷程度よ。つまらないわね……次来るときは半死半生り怪我をして来なさい」
「いや、仮にも保険の先生がそれでいいんすか」
確か……華憐先生、だったか。俺全然保険室とか見ないから初めて見たよ。……美人なんだけどとってもキツイ性格してそう……。
「まあ、気分が悪いようならしばらく横になると良いわ」
「はーい」
イリヤ分裂事件の翌日。いつも通り登校して美遊とたまたま校門前であって挨拶していた時に背後から現れたイリヤ。しかしその様子はまるで災害のフルコースにでもあってきたようにボロボロでスカートなんて犬が噛みついた状態だった。
ひとまず睨みで犬を気絶させた後美遊にイリヤを保健室に連れて行ってもらった。犬はカーブの先の見づらい位置に投げ捨てておいたので少ししたらミンチ肉が出来上がってるはずだ。はっ、下等な生物がいい気味だ。あのか弱い生き物の末路を想像して笑みがこぼれる。
……っとと、今はそんなことよりイリヤだな。
「イリヤ、体は大丈夫なの?」
「平気ー、傷はどってことない」
美遊がベッド脇に腰掛けてベッドで横になっているイリヤの手を握る。……いや、ちょっと前から思ってたけどやっぱり距離メッチャ近くなってない?
「あ……そっちじゃなくて……昨日のこと。あれから体調に変化はない?」
「あー」
美遊が口にするのはやはりイリヤ分裂事件のこと。いや、魔術的に見ても一人の人間が二人になるってどういうことだよ、とは思うけどね。
「何だったんだろうね、あれ……。幻覚とかじゃないんだよね?」
イリヤがこちらに目線を向けたので頷いておく。
「あの後、凛先輩とルヴィアさんと三人であの空洞内を調べたけど幻術の類の痕跡はなかった。あの子は間違いなく実体を持ってる」
「姿はイリヤだったけど中身が何なのか……」
俺の言葉に美遊が考え込む。……実を言うと俺はある程度あの子の正体に気が付いている。あの空洞内では偶々かと思ったが今朝、イリヤとあって確信に変わってきている。
……あの子は今までイリヤの中にいた『誰か』だ。かつてのカード回収任務の時も一度だけ現れた、俺が毎日話しかけていた『誰か』。
というか前回もあのアーチャーのカードを使った姿で出てきてたな。イリヤとあのカードってなんかあるのかな相性とか。もしかしてイリヤの親族だったりして……いやないか。
ともかくいまイリヤの中にその『誰か』がいない。となれば『誰か』があの時地脈やクラスカードの影響で体を得てイリヤから分裂したってことなのか?
《私たちが呆然としている間に逃げ出したあの足の速さはイリヤさんそっくりでしたね》
「ちょっと!」
「何か……心当たりはない? あの黒いイリヤの……」
「ないない。ある訳ないよー」
「そう……」
……なんというか思ったより美遊がガチトーンで探ってる。ほらイリヤも不思議に思ってる。イリヤのことも謎だけど美遊も未だに謎を抱えてるよなー。
《まーなんにせよ早く何とかすべきですねー! 正体がどうであれイリヤさんとまったく同じ顔のコスプレ少女が野に解き放たれたわけですから!》
「ぶふっ!」
くっそ! 思わず笑っちゃった。いや、そうだよな、そういうことになるもんな!
「ホントだよ! 誰かに見られたら絶対誤解される! というか、レイなに笑って―――ドスンッ―――へっ?」
おーおー、本格的に今日のイリヤは運がない。笑った俺に文句を言おうとベッドから起き上がった瞬間、今まで頭があった位置に高速回転しているサッカーボールが飛んできた。すっごい回転、全然衰えないじゃん。ってあ!
「い、イリヤ……?」
「っく!」
あ、ダメだ。イリヤは普通に殺されそうな災厄に見舞われてるけども俺の腹筋にも笑いという災厄が降り注いでる! 回転が収まったと思ったサッカーボールが急に破裂してイリヤの顔に張り敷いた。
「
そうしてイリヤの叫びもあって俺達は早退という扱いになった。
「なにも二人まで早退することないのに」
「いや、登校時の状態を見てたらほっとけないよ」
「うん、やっぱり心配だから。されに……普通教育の義務なんかよりイリヤの方が大事」
「あ、ありがとう……。たまに美遊の気持ちが重いよ」
うん、美遊そう言う所あるよね。でも一途なのは良い事だと思うよ、俺。ん? この気配……つ!?
「避けて!!」
「きゃっ!?」
「ヴァリアブル・スライサー!」
どこからか飛んできた矢……矢かこれ? ともかく攻撃をヴァリアブル・スライサーで消し飛ばす。
「な、なになに!?」
《攻撃です! 電柱の上!》
「次、来るよ!」
電柱や家の上を移動しながら幾つもの矢が跳んで……。全部イリヤ狙いか!
「いやーーーーッ!」
逃げ足速いな相変わらず! っとやば、イリヤの前に行った!
「ほんと……逃げ足だけは速いわね……イリヤ!」
イリヤの前に降りたったのは弓を構えた黒いイリヤ。やっぱりこの気配あの『誰か』だ!
「で、出たーーー!」
《今、喋りましたよこの黒いの!》
「人格がある!? 黒化英霊とは違う……」
あー、どうしよう。ちゃんと喋って人格もあるな……。五年近く喋りかけてただけあって愛着が凄いある。すっごい戦い辛い。まだ意思がなければどうにか相手できたのに……。
《言葉は通じそうですよ! さっそくコンタクトを!》
「ワ、ワタシテキジャナイ! ナカーマ!」
「ちょ、イリヤ落ち着いて!」
なんでこういう時人ってカタコトになるんだろうね。っと!
「ほいっ!」
「むう……また防がれた」
黒イリヤ(仮称)がイリヤに向けて白い剣をぶん投げたので間に割り込んでその攻撃を防ぐ。そして後ろのイリヤに振り返る。
「イリヤ、美遊、変身して」
「う、うん!」
「分かった」
二人が変身する為にステッキを手に取ったのを見て俺は真っすぐ前を見つめ直す。
「『こんにちは』こうして会うのは二回目であってるよね?」
「えぇ! そうよレイ。あぁ、嬉しい、本当に嬉しいわこうやって貴方と話せるなんて。……ずっと、ずっとこうしたかった」
「そう思ってくれたのなら感激だよ」
な、なんかこっちのイリヤ……。すっごくあざと可愛い! 小首を傾げながら人差し指を唇において嬉しい、なんて仕草絶対イリヤならしない! ……な、なんだろう、仕草とか声とかか、恰好もなのかな? イリヤと同じ顔なのになんかすっごい、え、えっちな気がする……。
「う、あ、そ、そのき、君の目的はい、イリヤを殺すことだーよね?」
あぁー! なんか、なんかやっぱり俺、この子の相手するの無理かも! えっちだと思ったら凄くえっちに見えてきちゃて真っすぐ見れない! うまく話せない、助けてイリヤ、美遊!
「……うふふ、なぁーに赤くなってるのよ。でも良いわ、貴方にそう見られるのすっごく嬉しいから許してあげる。そう、私の目的はイリヤを殺すことよ」
「それ……止めてくれたりは?」
「……貴方のお願いなら出来るだけ叶えてあげたいのだけれどそれだけは無理な願いよ」
そう言って黒イリヤは両手に白黒の剣を構える。いや、弓使えよアーチャー。
「レイ、お待たせ!」
「一旦郊外まで退避! 街中じゃ戦えない!」
「分かった! ……君もイリヤと戦いたいならついて来て!」
変身を終えたイリヤと美遊が上空から話しかけてくる。俺も急いで翼を構成して飛び上がる。……よし、追ってきている。飛びながらイリヤ達に話しかける。
「今日のイリヤの不幸は全て人為的だったってことだな」
《まぁ、そういうことでしょうね。イリヤさんを殺害してどうしたいのかは分かりませんが》
「何にせよ、殺意を持った敵……このまま放置は出来ない」
「あ、あと今回の戦闘俺はあんまり活躍できないかも」
「ど、どうして!?」
俺の言葉にイリヤが驚愕の声を上げる。しょ、正直に『あの子がえっちで直視できない』とかいったら駄目だよなぁ……。なんか、それらしい理由は……。
「ほ、ほらキャスター戦とかで見せたけどこの剣も光線も威力が高すぎてあの子の事殺しちゃうから……」
よし、これでどうだ! 本当のことは言ってないけど嘘も言ってない!
「そっか……アレの正体も調べなきゃいけないし、しょうがないね」
「私とイリヤが前に出るからレイは後方でガンドをお願い」
「分かった」
俺は後方固定ガンド砲台役に徹するぜ。うっし、ここらの森なら問題なく戦える。
「黙ってやられるわけにはいかないし……ちょっと痛い目見ても恨まないでよね!
真っ先に着地したイリヤは姿勢を反転して魔力弾を放つ。黒イリヤは飛べないみたいだし、悪いけど直撃だな。
「てい」
「は?」
え、弾いた。……これはイリヤが力抜きすぎたのか、黒イリヤが強すぎるのか……。って撃ってきた!
「あわわわ!」
《ちょっと手加減しすぎですよイリヤさん! もっと本気で撃ってください!》
「もっ、もう一度!
再び魔力砲を放つイリヤ、最初よりは強力そうだけど……これは……。
「なんでー!?」
やっぱり弾かれた。
《なんか出力が激減してます! めっちゃ弱くなってますよー!》
「どういうこと……!?」
「マジか……」
と、なると俺も前に出るしかないか……。といっても俺からは攻撃は出来ないし肉楯になるぐらいしか……いつもとやってること一緒じゃない?
「ぷっ、あははは! そう……弱くなってるんだイリヤ。当然よね、だって
「……!?」
なんだ、どういう意味だ。イリヤの特異性というか、魔術の才能はイリヤじゃなくてイリヤの中にいた黒イリヤのものだったってことか?
「だから安心して……さくっと死んじゃってね♪」
「簡単に死ねとか言っちゃダメなのにー!」
《親の顔が見たいですねー》
両手に剣をもって黒イリヤが再びイリヤに切りかかる。あぁ、もうアーチャーのクラスカード使ってるのにどうして剣で攻撃してくるんだ!
「イリヤのとこには行かせない!」
「レイ!」
翼と腕を広げてイリヤへの動線を防ぎつつ、確実に動きを止める為に少し強めのガンドを!
「止まって!」
「残念♪」
避けられた! ―――というかはっや! もう懐に入られて! 両手を掴まれる。
「力ずくで解けるんじゃないの?」
「出来るけどそれは君に怪我をさせちゃうから……」
「優しいんだ。えぇ、貴方のそういう所、大好きよ……」
ん!? 黒イリヤの顔が目の前に見える。さっきまでとは違って殆ど距離はない。唇になにか当たってる……。え、今ちゅーしてる?
「え?」
「ハァッ!?」
イリヤと美遊の驚く声が聞こえて頭がハッとする。そうだ、見られて――ッ!?
「ん゛ッッ!?」
「あんっ、離しちゃダーメ。ん、んむ♡ んぢゅ♡ んはぁ、もっと♡ ん~、んぁ♡」
「はぁっ……、んむぅ……ちょっと、ぃッ!」
あもッ、く、ベロ、ベロ!? 入って、なんっ!? こ、こ、これ雀花の本で見たやつ! なんで、う、うぇ、本のなかでは気持ちよさそうにしてたのにッ!? な、なんかぞわぞわするっ! わかんない、分かんない!
「んくっ♡ んっ、ぢゅっ♡ ……ふっ、んっ、んっ♡♡ 」
涎すわれて……口なんか流れてきて……い、あっ、わかんない、苦しい、な、なんか嫌だ……
「ふう……ごちそうさま。なかなか美味しかったわよレ――――……レイ?」
「う、うぅ。ぐすっ。あ、あぁああぁぁぁー」
体に力はいんない。体中ぞわぞわしてる。なんでこんなことされたのか分かんない。イリヤと美遊に見られた。恥ずかしい。女の子とちゅーした。顔が熱い。どうしたらいいのか分かんない。涙が止まらない。声も止まらない。
「な、泣いちゃったー!」
《いや、いきなり舌入れベロチュー、しかも初対面でそれはあのくらいの歳なら快感よりも怖いものでしょう》
《レイ様の泣き顔なんて初めて見ましたね》
「れ、レイ……ど、どうすれば」
「そ、そんな!? 違うのよレイ! 私は貴方を泣かせたかった訳じゃないのよ! ただ、貴方のことが大好きで!」
「ううぅぅ。ぐす、いやぁ!」
わかんない、わかんない、わかんないよぉ!!
レイ君、号泣。
プリヤ時空だと完全に発情してますが、小学4年生がいきなりベロチューされたら、快感よりも混乱と恐怖が勝つだろうよ。
レイ君は『モテモテレイ君』の回で描写してますが元々ランドセルを背負っているような年頃の男の子ですので性関連にはそれほど明るくありません。雀花の本でディープキスのことは知っていても実際にしたことないし、したとしても快感を感じづらい未開発の状態ですので今回のようなことが起きました。
頑張れクロエ! レイ君の開発は君の手に(若しくは唇に)かかっているぞ!
という訳で次回からは小4褐色ギャル女子が好きな同級生の男の子を落とすために性感開発していくお話です(嘘)