プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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レイ救出作戦。作戦会議

 エーデルフェルト邸

────────────────────────―――――――――

 

 クロエの心からの願いは願望器に受け入れられ、彼女は定期的な魔力供給さえあれば普通に生活を送れるようになっていた。一件落着ということで風呂から上がったイリヤ達。

 

「お風呂ありがとう。とてもいいお湯だったわ。イリヤがいろいろとお世話になっていたみたいね。今度必ずお礼はするわ」

 

 客間に集まりアイリが凛とルヴィアに頭を下げてお礼を口にする。

 

「いえ、お気遣いなく……イリヤたちを巻き込んだのはこっちの方ですし」

「本当に申し訳ございませんでしたわ、義母様」

 

 神妙な顔つきで謝罪する凛とルヴィア。若干ルヴィアの物言いに違和感を覚えて首を傾げるイリヤと、何かを悟って頬を引くつかせるクロエ。

 

「それで……実はお願い事があるんだけど良いかしら?」

「ええ、シェロの義母様の願いであればこのルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトが叶えて御覧に入れましょう!」

「娘たちから話を聞いた時にたびたび出てきた『レイ』っていう子なんだけど、その子にもお礼が言いたいの。今どこにいるか分かるかしら? ……なにやらクロエちゃんの良い人でもあるみたいだし、お母さん気になっちゃって!」

 

 アイリの言葉にクロエとアイリを除いた全員が固まる。それはアイリの性格から二人のなれそめやら、あれこれを聞き出すと予測したからだ。確かにレイとクロエは互いに想いあっているが、若干二人の愛の方向性というか雰囲気が爛れ気味だ。はたしてそれは親に知られて大丈夫なのだろうか。実際にレイをアイリに会わす前にアイリにある程度のことを教えておくことも考えたが、全員は伝えるべきか迷った『その恋愛、娘さんの無理やりベロチューから始まったんですよ』と。

 

「あ、そうよ! 今日学校休んじゃったし、レイにも心配かけちゃったから私も会って話したい!」

 

 そんな気苦労なども知らずクロエは色々なことが解決したため気分が良いのか目を輝かせてレイに会いたいという。そんな時美遊がふと思い出した。

 

「あ、もしかしてあの場所で待ちぼうけてる……?」

「ん? どうかしたの美遊?」

 

 美遊の呟きにイリヤが気が付いて尋ねる。

 

「実はクロと戦った場所にレイも来るはずだったの。レイは荷物置いてからむかうって言ってたから」

「えー、美遊ったら一人で来てほしかったのにレイも連れてくるつもりだったたの?」

「そこに私が来てイリヤちゃん達を回収したからレイ君はあの場所で一人で待ってる可能性があるってことね」

 

 私が迎えに行こうかしらと車の鍵を取り出そうとするアイリと私にお任せしてここでごゆっくりどうぞ、とルヴィアが執事を呼ぼうとする。

 

「連れてくるつもりというか、あなたがレイの下駄箱にメモを入れたんじゃないの?」

「え? 私がメモを入れたのは美遊の所だけよ」

「「え?」」

 

 ここで二人は決定的なすれ違いに気が付く。クロエはレイを呼んでいない。ならばレイを呼び出したのは一体誰だ? と。

 

 

「グギィィヤヤァァァァッッ!!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 瞬間、全員に生物の咆哮の様な、人の叫び声にも聞こえるつんざく異音が耳に届く。余りにも恐ろしい音とその音が放つ『圧』に全員が顔面蒼白になり固まる。天敵にジッと見つめられているときの動物とはきっとこういう感覚なのだろう。何かをされている訳ではない、ただ圧倒的な『生物』としての格の差というものを思い知らされて頭が白くなり震えが体を包む。しばらくして声の放つ『圧』が消え去り全員がその場にへたり込む。

 

「い、今のはなんですの?」

「ただの声じゃないわ。魔力を帯びた特殊な声……。この感じからして魔術の素養がある人間にしか聞こえないようになってるわね」

 

 ルヴィアと凛は冷静に分析を始める。

 

「み、美遊……今のなに……?」

「イリヤ……」

 

 素の魔術の才能は低いイリヤにもしっかりと声届いたようで、恐怖に振るえて美遊の手を握り止める。そんなイリヤをなだめるように美遊はイリヤの手をしっかりと握り返す。

 

「にしてはかなり雑な術式ね。……魔力の出力で無理やり成立させてる歪な構成……」

 

 アイリは音を響かす術式を即座に解析して見せ、その出来の悪さに顔を顰める。そんななかクロエだけが呆然として声が聞こえてきた方向に顔を向ける。彼女は知っているからだ。この不出来で効率もなにもあったものではないガサツな魔術を。ただ自分に声を届ける為だけに作られた優しい術式。誰がこの術式を使ったのか、その誰かがこんな恐ろしい声を上げる様な人ではないと彼女だけが知ってるからだ。

 

「レイ……? 泣いてるの?」

 

 突如、アイリの携帯が鳴り響く。それが緊急事態の時の着信音だと知っているアイリは直ぐに携帯に出る。

 

「舞弥! なにが起きてるの!? ……切嗣が!? 分かったわ……えぇ、向かうわ」

 

 携帯をしまうと凛とルヴィアに向き合うアイリ。

 

「ごめんなさい、二つ目のお願い。事態の収拾に力をかして欲しいの」

「ええ、もとより冬木のセカンドマスターとして動かない訳にはいきませんから」

「私も勿論お力添えを。高貴なものとして、その勤めを果たしましょう!」

 

 ただ事ではないとテキパキと戦闘に備えて準備を始める凛、ルヴィア、アイリ。そんなの三人にクロエが声をかける。

 

「ママ、私も行くわ」

「クロエちゃん?」

「クロ、アンタが強いのは知ってるけどこれは明らかに異常事態が過ぎる。貴方はイリヤと美遊と一緒にここに残りなさい」

「いいえ、私は行くわ」

 

 凛はこの場にクロエに残るように言うがクロエは首を振ってついて行くと譲らない。

 

「……あの声はレイよ」

「はぁ!?」

「……レイの?」

 

 クロエの言葉に驚愕する凛。ルヴィアも声こそ上げなかったが動きが止まる。アイリはクロエの眼から嘘をついていないことを察する。

 

「うふふ、好きな男の子を助けに行きたいってことね。いいわね、そういうの。良いわ、いらっしゃい」

「ママ!」

 

 感激した様子でアイリに抱き着くクロエ。親がそれでいいならと渋々だが納得した様子の凛。そんなアイリとクロエの様子を見ていたイリヤは何かを決心したように真剣な顔になる。そして隣に寄り添ってくれている美遊に目を向ける。美遊もイリヤを見ており視線が゛合った二人は頷きあう。

 

「ママ、私も行く!」

「ルヴィアさん、私も同行します」

 

 年長組は顔を見合わせて苦笑いする。全員が分かっていたのだ。こうなったこの子たちは止められないと。

 

 結局全員で大空洞を目指すことになった一行。大空洞の入り口に向かい森の中を進む中アイリが状況を説明する。

 

「まず、事の原因は私の夫……切嗣がレイくんを殺害しようとしたことによるものよ」

「はぁ!?」

「パパァ!?」

「……殺害?」

 

 アイリの言葉に驚く面々。

 

「私の知らない間に切嗣はレイ君と接触したことがあったみたい。その時にレイ君の危険性、特異性を身をもって知ったらしいわ。そこで切嗣は聖堂教会の代行者と協力してレイ君を『怪物』として秘密裏に処理しようしていたそうよ」

「なにそれ……。危険だから殺そうっての!? それも……なによ『怪物』って!」

 

 アイリの言葉に憤慨するクロエ。しかし凛は冷静に判断する。

 

「クロエ、貴方は本当にレイを人間だと思う?」

「凛、あなた何を言って!?」

「熱と魔力による再生、変異、進化。魔力で構成されたものを含めたあらゆる者を溶かす力。ほぼ無限の魔力。……これらを持っているのが本当に()()()()()?」

「……ッ」

 

 凛の言葉に黙り込むクロエ。その重い空気に黙り込む面々。そんな中サファイアが話し出す。

 

《正直に申し上げますと、私と姉さんは大分前からレイ様の正体について理解しておりました》

「サファイア……本当?」

《はい、美遊様》

「ルビーも知ってたなら教えてよ!」

《教える訳にはいかなかったんですよ!》

 

 イリヤの糾弾にルビーは説明する。

 

《良いですか、レイさんとイリヤさんたちは知らず知らずのうちにレイさんに呪いをかけていたんですよ。それは皆さんがレイさんを『沖繁レイ』という一人の人間と認識してそう呼んでいたからです!》

「照応の概念ね」

「……?」

 

 ルビーの言葉にアイリが理解をし、イリヤが首を傾げる。

 

《簡単に言えばレイさんもイリヤさんたちもレイさんを『人間』だと思っていたからこそレイさんは『人間』だったんです。その呪いが今は中途半端に解けてしまっている状態なんです》

「中途半端ですの?」

《はい。おそらく『怪物』というのもレイ様の本来の在り方ではないのでしょう。私と姉さんの計算ではレイ様が本来の在り方正しく認識した場合。簡単に世界を終末へと導ける存在へと変化すると結論が出ています》

 

 サファイアの人羽に全員が絶句する。確かに説明を受ければレイが規格外の存在であるとは理解していたがまさかそれ程とは思っていなかった。サファイアの説明を受けてアイリはあることが頭に思い浮かぶ。

 

「世界を終わらす……まさか終末の『けも―――《はい、ストップですよアイリさん。言ったでしょう、『それ』は彼に与える言葉ではありません》―――そうね。なんでもないわ」

 

 寸でのところでルビーがストップをかけた。元とはいえ、聖杯の器たる小聖杯のアイリがもし『それ』を口に出した瞬間、何が起きるかわからなかったからだ。すると今まで俯いて黙っていたクロエが遂に我慢できなくなったように大声を上げる。

 

「聞いていればさっきから好き勝手言って何なのよ! 私はレイの正体なんて知ったこっちゃないわ! 終末が何よ、怪物がなによ、人間がなによ! 私は『沖繫レイ』が大好きなの、愛しているの! だから絶対に殺させないし、殺そうとしたパパも絶対許さないんだから! あなた達は分からないだろうから教えて上げるわ、あの声、アレは泣き声よ! レイは泣いてるの! だから私はレイを助けに行くの! ここまで来てあれだし、折角和解してなんだけどレイを殺そうと思ってここから先に進もうってのなら私がここで相手になるわよ!」

 

 クロエは戦闘衣装に身を包み、剣を召喚して戦闘態勢に映る。クロエ以外の面々は顔を見合せたあと呆れたように溜息をつく。

 

「な、なによ!?」

「クロ、今更何言ってるの。……私たち全員、レイを助けに来たんだよ」

 

 イリヤがそう言ってクロに手を伸ばす。

 

「ほら、行こっ!」

 

 あっけにとられたクロエはそのままイリヤに手を引かれた。そんな二人の後ろ姿を見て笑いながら他の面子も再び歩き出す。

 

 

 そんなこんなで大空洞の入り口近くの拠点に着いたイリヤ達はそこで意外な人物と出会う。

 

「姉さん!」

「や、凛ちゃん久しぶり」

「桜! 雁夜おじさん!?」

 

 切嗣やカラボーと話していた和服に白髪の男性、現間桐家当主、間桐雁夜とその養子、間桐桜だ。意外過ぎる人物の登場に凛は大きく狼狽する。

 

「桜はともかくね雁夜おじさんも来ていたんですか?」

「ははは、まだまだ凛ちゃんに心配されるほど老いぼれちゃいないさ! ……ッ!」

「あぁ、雁夜さん無茶しちゃダメじゃないですか」

 

 凛の言葉に雁夜は自身の元気さを見せつけようと思いっきり体を伸ばして見せたが、一瞬体が震えた後顔色を青くして椅子に寄りかかる。そんな雁夜の腰を桜が優しく摩っている。

 

「アイリ……」

「切嗣、失敗しちゃたみたいね。娘たちがお冠よ?」

「うっ」

 

 アイリの所へやって来た切嗣。そんな切嗣にアイリは笑いながら娘たちの状態を伝える。切嗣がゆっくりとアイリの後ろを見るとそこにはムスッとした表情をしたイリヤと口元こそ笑顔だが目が笑っていないクロエがいた。

 

「や、やぁ、久しぶりイリヤ。それから……初めまして、クロエ」

「ふんっ」

「あぁ、イリヤ……」

 

 しゃがんでイリヤ達と視線を合わせて挨拶する切嗣だったがイリヤには視線を逸らされる。そんな中クロエはスタスタと切嗣に歩みよる。

 

「く、クロエ?」

「せいっ!」

「ぐほっ!?」

 

 クロエは油断しきった切嗣の脛を思いっきり蹴り上げる。激痛にもだえ苦しむ切嗣。

 

「今はそれで済ましてあげる。黙ってレイを助けるのに協力して。じゃないと一生許さないから」

「わ、分かったよ……」

 

 腰痛から復活した雁夜が切嗣の肩をポンっと叩く。

 

「間桐雁夜?」

「娘には誰も敵わないんだよ、衛宮切嗣」

「……そうだな」

 

 父親同士に妙な絆が生まれた後、拠点内に集まって作戦会議をすることに。

 

「目標は――「レイ」……レイくんだが現在大空洞内部で蜷局を巻いて活動を停止している。舞弥がドローンを使って偵察した映像がこれだ」

 

 そう言ってプロジェクターに映像を流す切嗣。そこには体を丸めて大人しくしているデストロイア怪物態の姿が映し出されている。

 

「ッ!?」

「これがレイなの?」

《姉さん》

《えぇ、あの時と似ていますが確実に別の姿です。これならやり様があります》

「何か作戦が?」

 

 ルビーの言葉に切嗣が反応する。因みに千倉と雁夜は初めて見る魔法のステッキに興味心身だ。

 

《既にイリヤさんたちに説明はしましたが、いなかった人の為にもう一度レイさんの呪いについて話しますね》

 

 そしてレイについての説明をするルビー。

 

《以前にも一度レイさんが異形の状態で巨大化したことがあります。これです》

 

 ルビーはセイバーのカード回収時の映像を流す。流し終わった後皆の前でクルリと飛びながら説明する。

 

《やるべきことはこの時と同じです。もう一度レイさんに呪いをかけて、人として生活するのに余分な部分を切り落とします。幸いにここには腕のいい魔術師が集まっています。無意識の内の呪いなんかじゃありません。しっかりと強固な呪いを込めてやりましょう!》

「とは言うが、あれだけの巨体を削り、呪うのにも莫大な魔力が必要じゃないか?」

 

 雁夜が手を上げて発言する。

 

「それなら問題ない。現在大空洞内部は彼自身から漏れ出している莫大な魔力の霧が満ちている。視界を妨げる程ではないが魔力の密度が異常だ。普通の人間には致死量の濃度だ。お陰で内部ではどれだけ魔力を使おうがすぐに回復する。大魔術も儀式も使い放題だ。」

 

 カラボーがそう言う。それならどうにかなるか? と刈谷は顎に手を当てて考え込む。

 

「それだけの魔力があればもしかすれば……」

 

 切嗣は今の話を聞いてそっと自身の胸に手を当てる。

 

《では、決まりですね! 折角の機会です。ド派手でリリカルな魔法でぶっ飛ばしてレイさんを起こして人間にしてあげましょう!》

「ええ、バカな弟子をたたき起こしてやるわ!」

「待ってて、レイ。今、迎えに行くわ……」

 

 それぞれが準備を終えて大洞窟へ向かう。レイ救出作戦が今始まる。

 

 





雁夜おじさん、生存。



『かつて大聖杯があった場所』
『魔霧』
『御三家そろい踏み』
『切嗣の体内にあるもの』

 抑止力「ほう?」
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