プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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少女よ、楔となれ

 大空洞

────────────────────────―――――

 

「あれが……レイ」

 

 大空洞内部へと進んだイリヤ達はついにデストロイアと対峙した。その異様な姿を直に見て少しだけ気圧される面々。デストロイアも侵入者に気が付いたのか3首をイリヤ達へと向ける。

 

「攻撃、来るわよ!」

「キュヤァァッ!!」

《防御は無意味です。回避して下さい!》

 

 デストロイアの口からオキシジェン・デストロイヤー・レイが放たれる。サファイアの助言もあり全員が散開して避けることに成功する。被弾した洞窟の壁は一瞬にして崩壊する。その様子をみた凛は頬を引きつらせる。

 

「敵に回ると恐ろしいわ力ね、本当に……!」

「あら? 怖気づいてしまったのなら帰っていただいても構いませんわよ?」

「はっ、誰が!」

 

 凛の態度を笑うルヴィア。それに対して直ぐに短剣を抜き放ち戦意を見せつける凛。そんな凛の様子に満足したのかルヴィアはにやりと笑い宝石を取り出す。

 

「それじゃあ、手筈通りに。行くわよ!」

 

 凛の号令で全員が動き出す。明らかな外敵の登場にデストロイアも蜷局を解いて戦闘態勢に入る。標的に狙いを定めようとしたデストロイアの視界を大量の羽虫が覆って塞ぐ。

 

「はは、そう簡単に自由にさせる訳ないだろ!」

 

 大量の蟲を操作しながら雁夜は笑う。羽虫の不快さにデストロイアが首をふって羽虫を散らそうとする。しかしその首も魔力の通った針金が何重にも巻き付き動きを止められる。

 

「ギィィッ!?」

「初めましてレイ君。娘がお世話になったみたいね。こんな出会い方で申し訳ないわ。あとでちゃんと挨拶させて頂戴ね」

「……虚数領域指定、沈んでください!」

「ギュアァァッ?!」

 

 アイリが首の動きを止め、同時に桜がデストロイアの足元に黒い池のようなモノを展開する。突然開いた池に足を囚われ姿勢を崩し、倒れこむデストロイア。

 

Zeichen(サイン)!」

Anfang(セット)!」

「「獣縛の六枷(グレイプニル)!」」

「舞弥! D-4発破!」

 

 倒れ込んだデストロイアをさらに拘束する凛とルヴィア。更に切嗣は焼夷爆弾を外した天井の爆弾を発破させて単純な大質量としてデストロイアに岩石をぶつける。

 

「イリヤ!」

「美遊!」

「クロエちゃん!」

「「「今よ!」」」

 

「「夢幻召喚(インストール)……」」

「我が骨子は捻れ狂う―――」

「グギャャャァッ!!」

 

 凛、ルヴィア、アイリの声にこたえるように、魔法少女たちは魔力を高める。魔力の高まりに反応してデストロイアは動かせる触手を総動員してイリヤ達に向かって繰り出す。しかしその触手はイリヤ達に届くことは無く切り捨てられる。

 

「残念だが、君の思い通りにはさせんよ。何一つな」

 

 カラボーは黒鍵を振り払いながらそう言い放つ。

 

「キャスター!」

「セイバー!」

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

イリヤはキャスターのカードをインストールしてローブを纏った姿となり、美遊は騎士の甲冑を身に付ける。クロエは手元にまるでドリルのような剣を投影し、更に過剰に魔力を込める。

 

神官魔術式・灰の花嫁(ヘカティック・グライアー)!」

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!」

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!」

 

 それぞれの最高火力が身動き一つできないデストロイアに直撃する。

 

「グガア゛ア゛ア゛ア゛ッッッウゥッ!?」

 

 眩い閃光と爆発がデストロイアを包み込み、全身を焼く。所々の甲殻に罅が入り大絶叫を上げて大人しくなるデストロイア。

 

「……やりましたの?」

「ばっ!―――「グィヤヤァァァァッ!!」

「飲み込んで! 虚数位相!」

 

 ルヴィアが勝利をしたのかと声を上げてそれに対して凛が『そういうもんを言うものじゃない』と突っ込みを入れようとしたが途中で大人しくなっていたデストロイアが全ての拘束を破って暴れ出す。狙いなんてつかずにただ乱雑にオキシジェン・デストロイヤー・レイを吐きまくる。咄嗟に桜が虚数領域を展開し、その中にオキシジェン・デストロイヤー・レイを飲み込ませることで被弾を防いだ。

 

「……なんでここにいるの?」

「レイ!?」

 

 ひとしきり暴れた後デストロイアはのっそりと起き上がり怪物としての底冷えする声だが、しっかりと言葉を口にする。聞こえてきた声にクロエは驚愕して咄嗟に語り出す。

 

「レイ、私たち、あなたを助けに来たの! パパにはあとでうんっと言って聞かせるから! わたしといっしょに帰りましょう?」

「助けなんて……求めてない!」

「キャッ!?」

 

 駆け寄って来たクロエの近くに触手を叩きつけて吹き飛ばすデストロイア。咄嗟にイリヤが飛んで吹き飛ばされたクロエを受け止める。

 

「レイ、何やってるの!? クロのこと大好きなんでしょ!?」

「大好きだよ! 大切だよ! だから、だから……クロエが、みんなが笑って暮らしていけるように怪物(ぼく)はここで死なないといけないの!! その邪魔を……しないで!」

 

 全身を動かしガリガリと岩肌を削りながら再びイリヤ達を薙ぎ払おうと暴れるデストロイア。

 

「危ない!」

 

 咄嗟にキャスターの転移の魔術を使って跳べない面子を安全な場所に飛ばすイリヤ。

 

「レイが何考えてるかは分からない。けど……貴方がいなくなったらクロは笑えない!」

 

 襲い掛かってくる触手を切り払いながら美遊がそう言い放つ。

 

「でも、これしか方法が無いんだ! 僕は、いつか世界を滅ぼしてしまうから……! そうなる前に自分で終わらせるしか……!」

「訳わっかんないこと言ってんじゃないわよ! ――是、射殺す百頭!――」

 

 イリヤに支えられていたクロエはイリヤの腕の中から飛び降り、巨大な斧剣を投影してデストロイアの顔面に叩きつける。

 

「大好きなら一緒にいてよ! 諦めたりしないでよ! 私だって諦めなかったから今、こうしてここにいるの! 貴方がいたから、貴方に会いたかったから、貴方が大好きだから! なのにどうしてあなたがいなくなるのよ! そんなの、絶対に認めないわ!」

「大した傷もつけられないのに……どうやって助けるっていうんだ!」

 

 クロエの叫びに咆哮して襲い掛かるデストロイア。クロエは巧みにデストロイアの攻撃を回避していく。美遊とクロエ、二人の前衛を触手を使い襲うデストロイアに突如雷撃が襲い掛かる。

 

「なに!?」

「レイは人に戻れる! 私はあんまり戦いが得意じゃないけどそれでも分かるもん! いまのレイはまったくその体を使いこなせてない。それはその怪物の身体に慣れていないなによりの証拠だよ!」

 

 イリヤが上空から放った雷撃に動きを阻害されるデストロイア。雷撃に業を煮やしたデストロイアはオキシジェン・デストロイヤー・レイをイリヤに向かって放つ。イリヤの言葉に動揺したのか狙いの甘いその攻撃は簡単に避けられる。

 

 魔法少女たちの戦いをイリヤに転移させられたことによって高台から眺めている大人組。

 

「今の内だな。雁夜、かつての聖遺物は持ってるか?」

「え? あぁ、お守りとして桜ちゃんが持ち歩いているよ」

 

 切嗣に話しかけられた雁夜はそう言って桜の方に目を向ける。視線が集まったサクラは胸元からペンダントを取り出す。

 

「よし、雁夜はそれを持って僕と来てくれ。他の面子はここから出来る援護を頼む」

「お、おい!? どこへ―――」

 

 アイリが切嗣の言葉に頷くのを見て、切嗣は慣れた動作で高台から降りていき大空洞の外へつながっている横穴に入っていく。それをおっかなびっくりでついて行く雁夜。

 

「ついてきた俺が言うのも何だけどあの子たちをおいてどうしようってんだ」

「英霊召喚だ」

「は?」

「聖杯にも匹敵する魔力量を持つ魔霧。かつて大聖杯があったこの場所。御三家の血筋。そして触媒。すべて揃っている。現状最高火力だったあの子たちの一撃でもあのかいぶ……少年の外殻に罅を入れるのが限界だった。ならあとは本物の英霊たちの力を借りるしかない」

「……成程」

 

 切嗣の言葉に雁夜は納得し、頷く。

 

「志久間」

 

 ふとあゆみを止める切嗣。目線の先に一人の青年が現れる。

 

「この子は?」

「助手の一人だ。……準備は?」

「魔法陣二つ、準備できています」

 

 志久間の案内に従い魔法陣のあるところまでやってきた二人。切嗣は自身の体内持っていたアヴァロンを取り出して魔法陣の上に置く。

 

「……懐かしいな」

「そんな感想が出るとは意外だな」

「そりゃあ、これのせいで俺も桜ちゃんもひどい目に遭ったさ。でも、これが無かったら今の生活もないんだ……感傷的にもなるよ」

「僕としては二度と、眼にしたくなかったがね。……始めよう」

「あぁ」

 

 雁夜もペンダントになっている聖遺物を魔法陣の上にのせて手をかざす。

 

「呪文は覚えてるか?」

「忘れられるかよ」

「「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する」」

 

 魔法陣全体に光が走り、魔力が辺りを循環し始める。ずきり、と二人の右手に鈍痛が走る。魔力が集まり手の甲に赤い令呪を刻む。

 

「「――――告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者、

 我は常世総ての悪を敷く者。

 汝三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」」

 

 辺りを眩いばかりの光が包み込む。

 

「これは……ッ!?」

「へぇ?」

 

 光が収まる頃、魔法陣の上には二人の騎士がいた。一人は片膝をつく()()()()()()()()()()。もう一人は馬に乗り()()手にもった金髪の女性。

 

「応えよう。私は貴方のサーヴァント、ランサー。最果ての槍を以って、貴方の力となる者です」

「サーヴァント、セイバー。ランスロット、参上致しました。ひとときではありますが、我が剣はマスターに捧げましょう」

 

 二人のサーヴァントの言葉に呆然とするマスターの二人。丁度、背後から聞こえてくる轟音でマスターは正気に戻り自身のサーヴァントに声をかける。

 

「あ、あぁ、僕がランサーのマスターだ。名前はえみ―――「衛宮切嗣、でしょう……?」なん……だと?」

「ふふ、貴方とまたこうして会うとは思っていませんでした」

「……記憶があるのか?」

「えぇ、恐らく抑止力の介入があったものと思われます。前回の聖杯戦争の記憶も、今の状況も理解しています」

 

 ランサー、アルトリアの言葉に切嗣は驚愕した。それをよこで聞いていた雁夜はもしやと思い今だ頭を下げているサーヴァントに声をかける。

 

「も、もしかしてバーサ……セイバーもか?」

「はい。お久しぶりです、マスター雁夜」

「お、おおぅ! 久しぶり! ……叫ばないとそんな感じなんだな」

 

 なんだがぎこちないセイバー組の関係を横目に見ながら、切嗣とアルトリアは行動を開始する。

 

「サー・ランスロット」

「ハッ!」

「我々の役目を果たしましょう。例外の現界だからでしょうか。あまり長い時間ここにはいられないようです」

「御意に」

 

 そう言って大空洞の内部へと戻って来たマスターとサーヴァントたち。

 

「こぉんの……分からずや!」

「もう、止めて! 帰ってよ! いずれ、制御が利かなくなったとき僕は君たちを傷付ける! だからここで終わらせてよ! 」

「絶対、諦めない!」

「いっしょに帰るんだからー!」

 

 飛び交う大魔術、全てを薙ぎ払おうと振るわれる触手、大盤振る舞いで降り注ぐ宝石の雨、見えない斬撃、突然現れる虚数空間。戦場は地獄の様相を呈していた。

 

「どっか行ってよ!」

「キャァッ!?」

「ランスロット!」

「お任せを!」

 

 デストロイアの攻撃で大人組がいた高台の一部が壊れ、桜が落ちる。それをみた雁夜は即座にランスロットに指示を飛ばし、ランスロットそれに応え落下している桜を抱えて着地する。

 

「怪我はありませんか、桜」

「……バーサーカー?」

「えぇ。今はセイバーですが。大きくなりましたね桜」

 

 桜を地面に下ろしながらランスロットは桜の成長を喜ぶ。

 

「だ、誰あの鎧の人?」

《あれは……英霊ですよ! カードや黒化とは違う、完全な英霊です!》

「あ、アレが……」

 

 イリヤが突然現れた人物に疑問を持つがルビーの解説に目を丸くする。

 

「少女たちよ! 《合わせなさい》!」

 

 アルトリアが聖槍を構える。槍に絡まっていた十三本の封環が解け、光の槍、『ロンゴミニアド』が姿を現わす。それに合わせてランスロットも自身の宝具を解き放つ。『アロンダイト』絶対に刃こぼれすることのないエクスカリバーと起源を同じくする神造兵装の一つ。

 

「イリヤ!」

「うん!」

 

 イリヤは自身のインストールを解除して美遊の隣へとやってきてステッキを重ねる。

 

「「並列限定展開(パラレルインクルード)!」」

 

 そして呼び出すのはバーサーカー戦で見せた無数のエクスカリバー。

 

「どうして! どうして死なせてくれないの!? 」

「死なせるわけないでしょ……! 私は、あなたが何だって構いやしないの! 貴方が人間だろうと、怪物だろうと、『怪獣』だろうと変わらず愛して見せる! そんな程度で私の愛が心変わりすると思っているなら……ふざけるんじゃないわよ!」

「―――ッ!?」

 

 クロエの手の内にも、一振りの聖剣が現れる。そしてデストロイアへの総攻撃が始まる。

 

「空の彼方、大地の向こう……其は世界の果てに立つ、光の楔!『最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)』!!」

「最果てに至れ、限界を越えよ。彼方の王よ、この光を御覧あれ!『縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)』ッ!!」

「「エクスカリバー・カレイドォー!!」」

「『永久に遥か黄金の剣(エクスカリバー・イマージュ)!』」

 

 いくつもの光線がデストロイアの身に降り注ぐ。光線を防ぐために壁とした触手はアロンダイトに切り裂かれている。結果、何の防ぐ手立てもなく胴体で神造兵器の攻撃を受けることになったデストロイア。 星の意思が作り出した、星の均衡を保つための兵器。その一撃は均衡を崩しかねない暴走した種を止めんと最大の効力を発揮する。

 

「グあぁぁぁあああぁッ!」

 

 遂にデストロイアの胴体は崩壊し、外郭が砕かれ傷だらけになった頭部が零れ落ちる。空中で落下中の頭部の体積量を計算するサファイア。

 

《レイ様を人間に戻すために削るべき体積量、あとわずかです!》

 

 しかし今だに十分にデストロイアを削り切れていないとサファイアが叫ぶ。頭部の断面からはすでに新たな骨が見え始め再生を開始している。地面に落下するころには完全に再生しきる。そうなれば事態はまた振り出しに戻る。そんななか、アルトリアがクロエに声をかける。

 

「行きなさい! 今なら神造兵器でなくても刃が通るはず! 貴女の想いが彼を形作る!」

「ッ! えぇ!  とっておき、見せてあげるわ!」

 

 落下してくる頭部に向かって走り出すクロエ。手にはいつも彼女が振るう一対の剣。

 

「山を抜き、水を割り、なお墜ちる事無きその両翼――」

 

 それを三組同時に投影しそのうち二組を頭部を囲むように投げ放つ。アルトリアはクロエの特異性を見抜いていた。だからこそ最後の一撃をクロエに託した。彼女の『一緒に帰る』という願いがデストロイアをレイへと戻す最後のピースになると。

 

「帰るわよ、レイ! 『鶴翼三連』!!」

 

 クロエの放ったその一撃はデストロイアの頭部を切り裂いた。ざっくりと開いた切り口からドロリ、と血まみれの子供がすべり落ちてくる。その子供をクロエは血に汚れることをためらわず抱きしめる。

 

「……まだ、一緒にいて良いの?」

「当たり前よ。まだ、なんて言わないで、ずっといっしょに居ましょ?」

「また暴れるかもしれない」

「心配しないの、またこうやって止めてあげるわ」

「ごめん……、ごめんなさい」

「うーん……。このまま許してあげても良いんだけど折角だからお願いしたいことがあるの」

「なに?」

「ただいまって言いながらキスして」

「え?」

「ほーら、早く♪」

「……た、ただいま」

「お帰り!」

「んぐっう!?」

 

翌日

────────────────────────―――

 

 

「おはよ、レイ♪」

「おはよう、レイ!」

「おはよう」

 

 通学路を歩いていると後ろから声をかけられる。振り返ればもはや馴染みとなった3人組。

 

「おはようクロエ、イリヤ、美遊」

 

 はい。昨日勝手に曇って、勝手に自決しようとして、近隣の魔術師のみならず英霊の方々にご迷惑をおかけした沖繫レイです。いや、でも正直デストロイアのヤバさを知っている身としてはああやって制御不能になる前に自決しておいた方が世の中の為になると思ってたんですよ。本当に。魔力や熱を放出して活動エネルギーをゼロにすることで衰弱死を狙う消極的自殺だったんだけど。いやだってこの世界スーパーX3もメーサーもないからこうするのが一番だと思ったんだよ! まぁ、それも結局愛しのクロエのお願いもあってこうして生存している訳ですが。

 

「はぁ……」

「どうしたのレイ、溜息なんかついて?」

「いやぁ……あのご迷惑をかけた方々への感謝と謝罪を考えておりまして……」

「あー……」

 

 因みに事件解決直後は切嗣さんと一緒に正座させられてアイリさんとクロエ、凛先輩にルヴィアさんこってり叱られました。

 

《それにしても驚きました。私としては呪いでレイさんを『人間』として再定義しないといけないと思っていたのでそれなりに大掛かりな術式を準備していたんですが……まさかクロさんの愛で既に人間になって出てくるとは……》

 

 ルビーが僕の眼の前までやってきてぴょんぴょんと飛び跳ねる。

 

《クロ様の力で人間となったということはレイ様のあの力は失われたのですか?》

 

 サファイアも出てきてそう聞いてくる。……んー、なんかすれ違いがあるな。

 

「クロエの願いは『いっしょに帰る』ことだよ。僕の正体はむしろなんでも良いって言ってたでしょ」

「確かに……」

「……もしかして」

 

 イリヤと美遊の表情が固まる。

 

「僕は『怪物』のままだよ。あの時は神父さんの眼を誤魔化すために人に擬態してただけ」

《マジですか……あ、この霊基反応マジです!》

「え、ええええ!?」

「大丈夫なの?」

 

 クロエを以外が驚いて絶叫する。ふふふ、なかなかびっくりしているみたい。

 

「再生、変異、進化が僕の特技だからね。擬態能力もすぐに身に付けるさ」

 

 そこまで行って僕はクロエの方へ向く。そして彼女に向けててを差し出す。

 

「どんな僕でも愛してくれるんでしょ?」

 

 そう言うとクロエは僕の手を取って指を絡めてくる。そしてこちらの頬に軽くキスをしてはにかんだ。

 

「えぇ、勿論よ!」

 

 こんなにも僕を思ってくれる彼女がいてボクは本当に幸せだ。

 

 

 

きっとクロエの為なら僕は世界も滅ぼせる……。だって彼女こそが僕の世界で、彼女だけが僕にとっての『人類』だから」

 

 





 救出後のレイ君。実は一人称が表も心の中も『僕』に変わりました。これはクロエの願いによって『沖繫レイ』という人格が強くなり、『沖繫レイ』という人間の元になった別世界の少年の魂のほとんどが消え去ったことによるものです。
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