プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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協会からの刺客

住宅街

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「あっつい、熱くて干からびそ~」

 

 聞こえる蝉の声、熱気篭るアスファルト、そしてギラつく太陽。夏がもうすぐやって来る。……というよりもう夏だろこれは。いくら熱に耐性があると言っても熱いと暑いは違うんだ。やってられない! 今日はルヴィアさんに招待され、エーデルフェルト邸へ向かっているのだが正直もう帰りたい。なんか凛先輩が地脈の写しを持ってくるからルヴィアさんの家で広げて見せてくれるらしい。地脈の異常もカード回収任務の関連事項だし、それでなにか異常があればそのまま作戦会議らしい。

 

「だからってなにもこんな暑い日でなくても……ん? あ、美遊ー!」

 

 視界に入るメイド服。こんな住宅街で態々メイド服を着て歩いている可笑しな人間なんて美遊しかいない。

 

「レイ? どうしてここに……。あ、ルヴィアさんに呼ばれて」

「正解。……暑くないの?」

「平気」

 

 マジか。メイドすげぇな。

 

「美遊はなにをしてるの?」

「これを買いに行ってたの?」

「コンビニの袋……?」

 

 そう言って美遊がこちらに差し出したのはコンビニの袋。セ○ンだ。なんでセブ○の袋? 美遊に許可を取ってから中身を見させてもらう。……水羊羹。

 

「ルヴィアさんが、『これがアジアの神秘』だって言ってたの」

「ほーん」

 

 ルヴィアさんの趣味はよくわからない。……まぁ、別に不健康まっしぐら! みたいな食べ物でもないし、好きに食べて良いと思う。……コンビニの羊羹が神秘ねぇ。

 

「この暑さのなか来たんだ……一個くらい分けてもらえることを期待しよう」

「ルヴィアさんもそこまで狭量ではないと思う……」

 

 きょうりょう……? よく分からないけど分けてもらえるかもしれないってことか。ならいいや。そう思い、美遊と一緒にエーデルフェルト邸目指して歩いていた。

 

「レイ」

「……ん」

 

 あと少しでエーデルフェルト邸なんだけどどーも嫌な予感がする。同様の感覚を美遊も感じたのか、自然と歩きが早くなる。エーデルフェルト邸の敷地は既に見えているが特段おかしなところはない。

 

「たしか、認識阻害の結界が張ってあったんだっけ?」

「そう! だから中に入らないと何が起きてるか分からない!」

 

 美遊が勢いよく正門を開けて中に入る。そして僕も中に入る。そして目に飛び込んできた光景は僕の想像を超えていたものだった。庭はボロボロ、屋敷自体が潰されて、見るも無残な姿に変えられたエーデルフェルト邸。倒れたイリヤとその手を踏みつけているスーツの女性。そして……。

 

そしてなによりも……。

屋敷の瓦礫に叩きつけられたかのように倒れこんでいるクロエ。

 

「またですか……次から次へ――ッッッ!?」

「死ね」

 

 どう見ても敵で、どう見てもクロエを傷つけたスーツの女に飛び掛かって殴り飛ばす。女は咄嗟に防御の姿勢をとったが関係ない、その防御事吹き飛ばし、瓦礫の中に突っ込ませる。

 

「クロエ、クロエ!?」

「あは……やっと来たわね。私の王子様」

「あ、あぁぁ……こんな、こんなボロボロになって。ゴメン、ごめんね」

「あなたのせいじゃないでしょ。そんなに泣かないで……」

 

 邪魔者を消した後急いでクロエの元に走り寄って怪我を確認する。全身がボロボロで体にまったく力が入ってない。笑顔を見せているけど相当無理をしているはず……。腕も背中も傷ついていて血が出ている。ああ、そんなクロエも綺麗だ……。

 

「負け……ちゃった。わたしも、クロも。多分ルヴィアさんたちも……けど……」

「うん」

 

 美遊がイリヤからカードを託されている。

 

「っぐ……! 何者です、貴方は! 礼装もなしにただの子供がこれ程の力を……!」

 

 丁度瓦礫から女が這い出てくる。……ふーん、タダの人間なら両手を叩き潰す勢いで殴ったのにまだくっ付いてるんだ。……相当頑丈だな。

 

「クロエ、片付けてくる。もう少し、我慢できる?」

「えぇ、お願いするわ」

「――イリヤは私が守る!」

 

 クロエの額にキスを一つしてから立ち上がり女へと向かう。美遊の方も気力十分のようでライダーのカードをインストールする。瞬間白い閃光が女を再び吹き飛ばす。はっ! ザマぁ見ろ、下等生物!

 

「ッ!」

 

 チッ、今度は耐え切りやがったか。

 

「やっぱり使えるんだね、美遊。セイバー以外のカードも……」

 

 白い閃光はそのまま天へと駆けのぼりその姿をさらす。それは僕でも知っている神話上の生物。空をかける翼をもつ馬……ペガサスだった。

 

「やってみせろよ、美遊!」

「なんとでもなるはず……!」

「クラスカードだとッ!?」

 

 あの痴女……こんな隠し玉を持っていたのか。いや、ライダーのカードだし何かに乗るのが普通なのか? まぁどうでも良い。美遊もやる気だし、あの女も驚愕している。攻めるなら今ッ!

 

「よそ見してんなよォ!」

 

 空から美遊が轢殺を狙ってくれている。なら僕がするのは美遊が十分な加速を付けられるように時間を稼ぐこと。俺が殺せば早い話だがそうはいかない。クロエと同等、それ以上の苦痛を味わってもらわないとなァ! 女に飛び掛かる。女が拳で殴りつけてくるが片手で軽く止めてやる。

 

「なっ!?」

「シャァッ!!」

「グッ!?」

 

 突き出された右の拳を止めて内腿にローキックを放つ。当然大した技術もない俺の攻撃は防御される。が、関係ない。さっきと同じだ。防御ごと力で吹き飛ばす! 足だ! 徹底して足を狙って美遊の突撃を避けれなくしてやる!

 

「レイ!」

「やれ!」

 

 美遊が突撃してくる。僕はそれに巻き込まれないように離れる。ドガガガとまるで重機のように地面をえぐりながら飛んでくるペガサス。足に一撃入れている女はもう避けようが―――。よけやがった。

 

「糞が」

 

 ホントにこの女頑丈だな。……剣を抜くか?

 

「……仮説はありました。礼装を媒介として英霊の力の一部を召喚できると判明した時、ならば人間自身をも媒介に出来るのではないかと。しかしカードに施された魔術構造は極めて特殊で複雑。 それをいともたやすく……」

「一つだけ答えて。ルヴィアさんたちの姿が見えない……どこへ行ったの?」

 

 美遊が天空の馬上から問いかける。隙だらけだが、まぁ美遊が説明を求めてるし待ってやっても良いか。

 

「答えて!」

「そこの瓦礫の下です」

 

 もう手加減は要らないだろう。僕は剣を構成する。

 

「そう……なら、手加減はしない!」

 

 そう言って眼帯を外す美遊。その下から現れた目は妖しく輝いて……。え!? あ、か、体が動かない!? かろうじて動く視界の中で美遊は光の手綱を出現させる。それと同時にペガサスは大きく加速して女へ突っ込んでいく。

 

騎英の(ベルレ)――――手綱(フォーン)!!」

 

 これがあの痴女の宝具……。これは決まったか。……いや、どうして。どうしてあの女の眼は闘志に溢れている!? あの女一体何を考えてる!?

 

《いけません美遊様ッ 彼女相手に宝具は!!》

 

 ふと耳に届いたサファイアの悲鳴にも近い声。激情に駆られている美遊には届いていない。……宝具を使ってはいけない? すると視界の端で何かが動く。女が持ちこんだ長い筒だ。蓋が開く。中から出てきたボールが女の拳にぶつかる。女が拳を引き絞るとボールの中から剣の先らしきものが出現した。あれも……宝具か?

 

後より出でて先に断つもの(アンサラー)――――斬り抉る戦神の剣(フラガラック)!」

 

 は?

 

「何が……ッ!?」

 

 全てが止まった。ペガサスも、衝撃も、風も、美遊も。全ての攻撃が無かったのかのように停止していた。―――しまった!

 

「美遊! 動いて!」

「しまっ、キャッ!? あっ……ぐっ!」

 

 動きの止まった美遊に女が追撃をして美遊を地面に転がす。インストールが解けてライダーのカードが排出されて元の魔法少女姿に戻る美遊。

 

「ルビー! サファイア! どっちでも良い、情報! 何か知ってるんでしょ!?」

《は、はい! アレは『逆光剣フラガラック』敵の切り札より後に発動しながら、時間をさかのぼり切り札発動前の敵の心臓を抉る魔剣です!》

《あ、危ないところでした。使用者自らが振るうタイプの宝具だったら心臓を貫かれていたのは美遊様の方です……!》

 

 ルビーとサファイアが教えてくれる。倒れている美遊の隣に歩いて行き、地面に落ちているライダーのカードと美遊が持っているセイバーのカードを取る。

 

「レイ……?」

「あとは、任せて」

 

 ボロボロになっている美遊がこちらを不思議そうに見上げる。彼女を安心させるように笑って見せる。上手く笑えていると良いんだけど。

 

「その二枚のカードを渡しなさ「―――少し黙れ。心配しなくても相手してやるから」

「れ、レイ!?」

「ごめん少しだけ我慢して」

 

 負傷している美遊をお姫様抱っこしてクロエのいる瓦礫の方に運ぶ。この場所だと多分巻き添えになる。

 

「ちょっと~レイ、私まだそれしてもらったことないんだけど。 浮気~?」

「ごめんクロエ、今回だけ。それから僕はクロエ一筋だよ」

「分かってるわよ。ちょっとした冗談」

 

 クロエの近くによったらそんなことを言われた。この戦いが終わったら目一杯やってあげよう。そしてイリヤも同じように抱えてクロエの隣に並べる。三人が巻き込まれないようにして、僕は女の前に戻る。

 

「まず、僕が彼女たちを運んでいる間大人しくし出来たことを褒めてあげるよ、人間」

「私の任務は全てのカード回収です。彼女たちを傷つけることではありません。ただ障害として立ちふさがったので相手したまでです。貴方も持っているカードを大人しく渡せば怪我はさせませんよ」

 

 怪我はさせない、ねぇ……。

 

「勝てるつもりなのか人間? 僕に? 僕の前でクロエを傷つけたお前が?」

 

 擬獣化形態へと変身して手に剣を構成する。

 

「ふざけるのも大概にしろ!」

「ッ!」

 

 上段から一気に切りかかる。女はバックステップで攻撃をかわした後、接近して拳を顔面目掛けて叩き込んでくる。それを甘んじて受け入れ、吹き飛ぶ。仰向けで吹き飛びながら尻尾の先で女の腕を挟み込む。

 

「なっ!?」

「沈めェ!」

 

 翼で姿勢を制御してバク宙のように身体を回転させ、その勢いで尻尾の先の女を地面に叩きつける。

 ――とぅぇ!?

 

「ふんっ!」

 

 叩きつけた女はそれなりにダメージを与えたはずなのにすぐに立ち上がって逆に尻尾を掴んでこちらを地面に叩き返した。……怪物と化した今の僕は黒化英霊たちと戦っていた時よりもスペックは上のはずなんだが? ……この女、バーサーカー並みか? このままやっても長引きそうだし……

 

「仕方ない、埒を明けよう」

「!」

 

 この女の前ではまだ怪力程度しか見せていない。ならチャンスはそこだ。

 

「ほら、行くぞ。構えろよ。ナマクラ刀(フラガラック)を。最高のキレ味ってやつを見せてやる」

 

 再び剣を上段に構えて魔力を集中させる。

 

《駄目ですよレイさん! 彼女相手に大技は!》

《いえ、姉さんあれで良いんです。恐らく、レイ様なら……。レイ様しか出来ない方法ですが……恐らく!》

 

 ふふん、やっぱりサファイアの方が僕のことを分かってるね。

 

「先ほどの一撃やあの礼装の解説を聞いていて私にその大技を放とうというのですか……。いいでしょう。覚悟しなさい」

「言ってろ」

 

 高濃度ミクロオキシゲン、圧縮、充填……解放!

 

「あの世で後悔しろ! 『万物を融解す禁忌の光剣』(ヴァリアブル・スライサー)!」

 

 女に向かって跳躍して切りかかる。

 

「無駄なことを……後より出でて先に断つもの(アンサラー)斬り抉る戦神の剣(フラガラック)!」

 

 全てが止まる。美遊の時と全く同じ。僕の跳躍も攻撃も全てが止まる。一つだけ違うのは僕の心臓も止まってるということ。フラガラックは正確に僕の心臓を貫きその動きを止めた。これで終わりだ。

 

 普通の人間なら。

 

「しゃっおらァ!?」

「なっ!?」

 

 フラガラックの攻略法。それは至極簡単、攻撃を止められ、心臓を止められようとも死ななければいい! 心臓に穴が開いていようと、僕ならこのまま問題なく攻撃できる!

 

『万物を融解す禁忌の光剣』(ヴァリアブル・スライサー)!」

 

 そして僕の剣は神代の魔剣にさえ届いた(フラガを真っ二つにした)

 

「はぁっはァッ! ザマぁないな、女ァ!」

「ぐっ、がぁぁっ!!」

 

 その勢いのまま女の上に馬乗りになって翼、尻尾を使って手足を拘束して脇腹に剣を突き立てる。すぐには殺さない。殴り、切り、いたぶって、クロエに謝罪させてやる! 

 

「何だ体が溶けるのは初めて? もっと悲鳴を上げても良いよ? クロエの声とは違う方向で気分が良くなる」

 

 勝った! 勝った! 黒化英霊のときもハッキリ勝った時は無かったし、怪物になっても英霊やクロエに負けた。初めて勝った! ふふふ、ははは。そうか、これが"勝ち"か……。

 

「良いなぁ、これ!」

 

 僕の高笑いは凛先輩がやって来るまで続いた。

 




レイ君直伝、誰でもフラガラック攻略。

レイ「多分これが一番早いと思います」
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